【極上の納涼】恐ろしくも芸術的!鳥肌が立つほど美しいホラー映画3選

映画も音楽も本も好き。

丸山瑞生

夏は、ホラー映画の季節ですね。
普段は敬遠していても、この時期には友人や恋人と楽しむ人もいるのではないでしょうか。

今回は独自に美学を追求した、芸術的なホラー映画をご紹介。
身体がひんやりと凍える恐怖をご堪能ください!

グッドナイト・マミー

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森と畑に囲まれた一軒家で母親の帰りを待つ、9歳の双子の兄弟。
ところが、家に戻った母親は顔の整形手術を受けて、頭部が包帯でぐるぐるに巻かれていた。また、性格までもが別人のように変わり、兄弟はその女性が本当の母親なのかと疑いを抱くように。
兄弟はその正体を暴こうと彼女をあの手この手と試し、その行為は次第にエスカレートする。オーストリア製のサイコ映画。

監督は、セヴェリン・フィアラ。共同監督には「パラダイス」三部作のウルリヒ・ザイドル監督の妻で、同シリーズの脚本にも参加のヴェロニカ・フランツ

近ごろ、低予算でもクオリティの高いホラーが多いですね。予算が少ない分、アイディアのおもしろさが秀逸だったり。『イット・フォローズ』も低予算のホラーですが、こちらも発想が素晴らしい。

美しいロケーションで描かれる戦慄のホラー

メインビジュアルも非常に印象的なこちらの作品。頭部を包帯で巻かれた女性の顔を這う、誰もが忌み嫌うあの昆虫。これだけでも苦手な要素を感じる方は多いでしょう。

しかし、本作は映像が非常に美しい双子の兄弟と母親が暮らす家屋もミニマルな造りで現代的なビジュアル。その家を取り囲む森、トウモロコシの畑、大きな池。植物の鮮やかな緑色が印象に残ります

これらの美しい映像と相まって描かれるのは、どこか歪な日常の風景。物語の展開とともに、違和感を覚える描写が増え、双子と母親の食い違いが徐々に露わになります。それと同時に、最初はヒステリックに見えた母親と、その挙動に怯えた姿を見せていた双子の立場が逆転。母親が「本物の母親」かどうかを試す、双子の行動は恐ろしいものへ。

正直なところ、結末が目新しいかと言われれば、そうとは言えません。しかし、物語がはらんでいる切なさや、舞台となる森のロケーション。そこで巻き起こる恐ろしい出来事。『グッドナイト・マミー』を構成するこれらの要素が稀有なホラー映画に仕上げているのだと思います。

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顔のない眼

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若く美しい娘、クリスチアヌ。彼女は交通事故で顔面に火傷を負い、凄惨な形相になってしまった。父は高名な医者のジェネシュ博士。博士は娘の顔を治すために、クリスチアヌと同じ背格好の女性を誘拐する。そして、顔面の皮膚を切り取り、倫理に反した移植手術に手を染めるのだった。狂気の博士と、彼を取り巻く人々に巻き起こる出来事を描いた、フランス製のホラー映画。

監督は、ジョルジュ・フランジュ。日本で封切られた彼の作品は『顔のない眼』のみのため、日本での知名度が低いのも当たり前なのですが、フランスの映画界では最重要人物のひとりです。フランジュが取り組んだ「シネマテーク・フランセーズ」は、フランスの私立文化施設で、4万本以上の映画作品と、映画に関する資料、物品を所有。フランソワ・トリュフォージャン=リュック・ゴダールなどの著名な監督たちもここで出会ったとのことです。

モノクロで映し出される独特な美意識

顔のない眼』は、フランスらしいお洒落なビジュアルと、グロテスクな描写が奇妙なバランスで成り立っています。

まず、それぞれのファッションがかっこいいですし、かわいらしい。とりわけ、クリスチアヌの着ている丈が長めのドレスは特徴的です。クリスチアヌを演じた、エディット・スコブも手足が細長く、非常な華奢な体型で、そのドレスがよく似合う。凄惨な顔面を覆い隠すマスクも、人間っぽさを残したリアルなもので、人工物らしさが妙に美しいです

反面、皮膚を切り取る手術のシーンは半世紀以上も昔の作品だからと侮れない出来。おそらく、当時はこれほどにグロテスクな映像をはっきりと映し出したものは少なかったと思うのですよね。皮膚を切り取った筋繊維の顔面も映りますし、いまよりも技術的に劣っているところはあるとも思うのですが、鮮烈なイメージを与えるシーンは多いです。

病院や外科手術を取り扱ったホラーは、現在ではありふれた題材のひとつですが、本作はそういった題材を用いたホラーの始祖的な映画らしいです。それを思うと、ホラーのジャンルに与えた功績は大きいですね。非日常なホラーの世界を、わたしたちの日常にあり、なおかつ、得体の知れない恐怖を抱かせる病院という場所をかけ合わせた始まりの作品。ぜひ、お楽しみください。

クリムゾン・ピーク

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主人公は幽霊が見える女性、イーディス。彼女は、10歳のときに死んだはずの母親の霊を見たことから、幽霊が見えるようになった。父親の謎の死をきっかけにトーマスという男と交流を深めるイーディス。やがて、結婚することになったふたりは、トーマスの姉・ルシールとともに“クリムゾン・ピーク”の屋敷で暮らすようになる。ある日、イーディスの目の前に現れた深紅の亡霊はこう言った。「クリムゾン・ピークに気をつけろ」と。

監督は、ギレルモ・デル・トロ。代表作は『デビルズ・バックボーン』や『パンズ・ラビリンス』。日本の怪獣映画への敬愛を感じる『パシフィック・リム』など。題材に選ぶのはファンタジーが多いので、ビジュアルにこだわるのは当たり前なのですが、隅々まで行き届いた美術にはいつも驚かされます。本作はその到達点とも言える作品でしょう。

主人公のイーディスを演じるのは、ミア・ワシコウスカ。彼女の名前を広めたのは『アリス・イン・ワンダーランド』。彼女がヒロインを務める『嗤う分身』など、妖艶な美しさが魅力的だなと思います。トーマスを演じるのは「マイティ・ソー」シリーズのロキでお馴染み、トム・ヒドルストン。トーマスの姉・ルシールには『ゼロ・ダーク・サーティ』のジェシカ・チャステイン。みなさん、ゴシックのファッションが似合うので、そこにも注目を。

映画美術のリアリティの追求と美しさ

物語の舞台となる屋敷はCGに頼らず、セットを建造したとのこと。
セットだけでも6か月を要したその造りは圧巻の一言。

これが物語に説得力を持たせる要因の最たるところですよね。実写にこだわる監督は多いですが、デル・トロ監督のそこにかける気合いも凄まじいなと思います。細部にまでリアリティを持たせてこそのフィクションなのでしょう

また、デル・トロ監督の作品はファンタジーが多いと前項で述べましたが、単純な空想を描いた作品とは一線を画しています。その理由のひとつは、ファンタジーの世界観にものすごく現実的な要素を放り込むから。たとえば『パンズ・ラビリンス』ではスペインの内戦を作品に組み込み、現実からの逃避に耽る少女の物語に深みを与えています。フィクションながらも、そこに圧倒的なリアリティを感じられるのが、デル・トロ監督の作品の特徴です。

では、『クリムゾン・ピーク』に組み込まれたリアリティとは。それは、幽霊の描き方にあると思います。一般的なホラー作品の幽霊の役割は怖がらせることですよね。ただ、本作ではそこにいるのが当たり前というか、幽霊が実在するということに重きを置いている描き方に見えます。物語の本筋もメロドラマっぽいですし、愛憎の物語にも思えます。異色のホラーをご堪能ください。

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  • 百福
    4
    ホラーファンタジー大好き。この雰囲気最高。衣装も素敵。ストーリーも面白かった。幽霊は実在する。
  • -
    2023.12.2
  • P太郎
    5
    やっぱりホラー映画たるもの、美しくなくてはならないと思う。 その点こちらはセットから衣装、登場人物の髪型、幽霊たちの造形、演出の全てが美しかった。 見終えた後に特典映像を見たらやっぱり監督もそこ拘ってたよね!って嬉しかった。 あとトム・ヒドルストンには黒髪が似合う。
  • -
    急にドアップの蟻と蝶が出てきてビビった トムヒって声がいいよね、だから吹き替えの人の声もすごく良い。
  • ホイ
    3.3
    話の展開は驚きのないものだったけど、お屋敷やお衣装が素敵すぎて目の保養でした。 それにしても幽霊さん警告の仕方怖すぎて笑った
クリムゾン・ピーク
のレビュー(17218件)