【実写では叶わない映像体験】人々を魅了するアニメーション作品5選

映画と現実を行ったり来たり

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昨年8月に公開され、その美しいアニメーション表現が人々を虜にしたトム・ムーア監督のソング・オブ・ザ・シー 海のうた』。

過去の記事でもトム・ムーア監督が描くアイルランドの海、精霊と人間の美しい物語の魅力をご紹介しました。

そして今年、トム・ムーア監督作『ブレンダンとケルズの秘密』が、満を持して日本公開となります!

ブレンダン
(C)Les Amateurs, Vivi Film, Cartoon Saloon

本作は『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』以前の2009年に製作され、アイルランドの大自然に暮らすケルト人の文化、太陽や大地に宿る神々と人々との交わりや自然一体化思想を色濃く表現した作品となっています。

予告編からも分かるように、場面ごとに施されたケルト文化特有の美しい装飾的な描画や音楽は『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』同様、美しい絵本の中に迷い込んだような、不思議で心地よい癒しの時間をもたらしてくれることでしょう。

今回は、『ブレンダンとケルズの秘密』の日本公開に合わせ、独特の世界観で人々を魅了する少々変わり種のアニメ映画を紹介します。

これぞファンタスティック!なアニメーション。観れば観るほどクセになる『ファンタスティック・プラネット』

今から40年以上前に制作されたフランス、チェコ合作の『ファンタスティック・プラネット

宇宙のどこかの星で進んだ科学を操る巨大な人型宇宙人ドラーグ族と、彼らから虫けらのように虐げられている地球人によく似た人類オム族を描いた物語です。

ファンタスティックプラネット

奇才と言われたルネ・ラルー監督が生み出した、初期ネーデンランド期の宗教絵画を思わせる世界観と摩訶不思議な生き物、建物や機械の数々。

衣装や背景の細部まで描き込まれた1シーン1シーンは、カルト的な恐ろしさもありながらずっと眺めていたくなるような絶妙な美しさも感じられます。

地球上の人間の在り方に対して、問題提起をするような哲学的ストーリーも見所です。

その独特すぎる世界感にただただ圧倒され、一度観たら忘れられない作品となるでしょう。

美しい映像と音楽。一緒に歌って踊りだしたくなる『キリクと魔女』

1998年に製作された、フランス・ベルギー・ルクセンブルグの映画『キリクと魔女』。

物語の舞台はアフリカ。自らの意思で生まれたキリクという赤ん坊が、魔女の魔力で支配された村を救うべく冒険をするというストーリーで、公開当時フランスでは130万人を超える動員を記録。数々の国際的な映画賞を受賞しました。

キリク

この作品の見所は何と言っても鮮やかな色使い、切り絵を組み合わせたような他にはない映像。そしてリズミカルで印象的な音楽は思わず一緒に踊りだしたくなるほどです。

平面の組み合わせでありながらも、スクリーンの奥まで引き込まれるような画面、キリクや可愛い動物たちのどこかコミカルな動き、ストーリーを盛り上げるアフリカンミュージック。

それらが繊細に絡み合うことで、ストーリーに込められた人間の本質についてのメッセージを、大人から子供まで感じ取ることができる作品となっています。

日本アニメにはない動き!? 画面全体が躍動し語りかける『ベルヴィル・ランデブー』

2002年にフランス、ベルギー、カナダで製作された作品。孫息子を愛するおばあちゃんが彼のために疾走する『ベルヴィル・ランデブー』。

ベルヴィル

人物や背景などに用いられるアニメーションならではのデフォルメがとても印象的な本作。

台詞はさほど多くないものの、キャラクター達のコミカルな動きや表情が物語をぐいぐいひっぱっており、終始小気味良い音楽がだんだんとクセになって来るはず。

80分と短めの作品なので、2010年製作の『イリュージョニスト』(こちらも80分)も合わせて観賞することで、シルバン・ショメ監督の世界観にどっぷりと浸ってみてもいいかもしれません。

ウェス・アンダーソン節をアニメで楽しむ! 『ファンタスティック Mr.FOX

こちらは『ダージリン急行』や『グランド・ブダペスト・ホテル』など、近年日本でも多くのファンを持つアカデミー賞監督、ウェス・アンダーソンが2009年に手がけた、アメリカ、イギリス合作のストップモーションアニメーションです。

Mr Fox

いわゆるアニメーションでは一般的な、平面に描かれた画をコマ送りする技法とは異なり、ストップモーションアニメーションでは、静止している人形を1コマ毎にカメラで撮影し、あたかも動いているように見せるアニメーション技法。CG技術が進歩したことで近年ではあまり見られなくなってきました。

アニメーション作品になってもウェス・アンダーソンらしい構図やテンポ、優しいトーンの配色やキャラクター(ウェス作品には常連の豪華すぎる声優陣! )の絶妙な掛け合いは健在!!

その洗練されたセンス溢れる1シーン1シーンにうっとりすること間違いありません。

ウェス・アンダーソンと言えば、次回作がもっとも期待される監督の1人としても有名ですが、なんと彼の次回作は2018年に公開の、日本を舞台としたストップモーションアニメーション。

その名も『犬ヶ島』。

黒澤明監督宮崎駿監督を尊敬し、日本が大好きだというウェス監督がどのような新作を創り上げるのか今からとても楽しみですね。

国境と言語を超えて支持されたアニメーション『父を探して』

2013年に製作された『父を探して』はブラジルの新鋭、アレ・アブレル監督による作品で、全世界40以上の映画賞を受賞、アカデミー賞長編アニメーション部門にもノミネートされました。

舞台はブラジル。都市へ出稼ぎに出た父親を捜しに出かけた小さな子供が様々な人々や環境に出会い成長していくストーリーです。

父を探して

全編を通して台詞は一切ありません。極限まで削ぎ落とされたシンプルな線で描かれるキャラクターと水彩絵の具をちりばめたようなカラフルな色彩が拡がる画面、さらに笛や打楽器の印象的な音で紡がれていくストーリーは世界共通で誰が観ても理解でき、言語を超えて通じ合うアニメーションのすばらしさを体感できる作品となっています。

描かれているのは小さな主人公目線で広がっていくカラフルでリズミカルな美しい世界ですが、良く見るとそこにはブラジルだけでなく、今世界が共通で抱える高度成長による急速なシステム化、貧富の差、自然破壊などへの問題提起も込められていたりと、大人が観ても深く共感出来る内容となっています。

台詞がないからこそ、観賞者それぞれの受け取り方の幅が拡がるのもこの作品の魅力なのではないでしょうか。

アニメーション挿絵

このように、世界的に有名なディズニーやジブリとはまた違う個性溢れる魅力的な作品が世界各国で生み出されています。

今回紹介した作品だけでなく、いろいろな国、監督特有のアニメの表現を楽しんで、お気に入りの作品を探してみるのもいいかもしれません。

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  • TatsuyaEndo
    3.7
    絵本と幻想と神話の世界?ってな感じ
  • Okanori
    3.5
    紋様がそもそも持つ力の話 装飾家の仕事の意味…についてはここ最近興味を持っているデザイナー達の事を考えていた テレビで見るにはやっぱりもったいない、スクリーンで没入してこそ、の作品だと思ったのでいつかチャンスを待つ
  • ゆうさく
    5.0
    ここまで切れ味鋭く物語を着地させた作品は他にあまり無いと思う。 『友情を育み、努力して成長し、究極の赦しを与える希望の存在となり未来を進むための別れ(と一瞬の邂逅)を迎える…』 殆ど物語の全てを備えていると言っても過言ではない。何より圧巻なのはそれを80分にも満たない上映時間で成し遂げていること。適切な省略と驚異的な飛躍が濃密な情報の提示を破綻なく成立させている。 記号的な描線だからこそ質感がより真に迫る形で伝わる。羽の柔らかさ、森の冷たい空気、インクの匂いに火の熱さ。 神秘性と愛らしさの両立。いわゆるとっつきやすい"キャラ"としての魅力と決して理解の及ばない超越的存在としての凄み。
  • inoue
    -
    2019.10.11 アイルランドの国宝である「ケルトの書」を完成させた人々の物語。 特筆すべきは不思議なアニメーション表現。平面と立体の混ざったようなレイアウトと幾何学的なケルト文様が独特の世界観を生み出してる。自然描写も綺麗。 邦題がイマイチ。
  • Elie
    -
    以前、偶然にも映画館で「ソング・オブ・ザ・シー 海のうた」を見てから、この作品が入ってきたのを知って気になっていました。それよりも線の描く形が図形っぽくて、森の木々や足場や飛び散る模様には自然界の法則に則ったかたちがいっぱいありそうな幾何学模様でした。 それでもやっぱり質感が素晴らしくて、羽根をほぐすとかはもちろんですが、強い光とか、淡く仄かな光とか、邪悪な影とか、ちょっとつかみどころのないものの質感、描きわけがすごい!あとパンガの表情。ちょっとの線の入れ方でこんなにも豊かになるんだなぁ〜と、線がシンプルなだけにそういうのが際立って、見惚れてしまいます。 壁の内側の人工物はやはり直線で、森には曲線やさりげない法則で枝分かれするかたちがあって、書を生み出す工房はその両方があって、色の感じもそれぞれの世界でした。「ソング・オブ・ザ・シー」でもそうだったのですが、画面いっぱい、どの場面も隅から隅まで大好きで、瞬きするのがもったいないくらいです。 物語は、両作品とも神話ベースなためか、若干ふわっとした部分もあるのですが、本作のがよりふんわりかなぁという印象です。海のうたのほうがカタルシスがあった気がします。主人公が自分にとっての未踏の世界へ踏み込む冒険の場面は、どちらもすごくわくわくする!
「ブレンダンとケルズの秘密」
のレビュー(1006件)