ただの不倫劇よりもゾクッ!?『阿修羅のごとく』の人間模様から学ぶ女のうまい生き方

映画は気持ちよく生きるためのヒント

hikari

近ごろ、ゴシップにせよドラマにせよ映画にせよ、不倫劇がブーム。きっとその良し悪しよりも「この人たちどうなっちゃうんだろう?」という人間模様に興味津々な人が多い気がしています。でもトラブルが起こったらもっとゾクッとする人間関係になるのは夫婦よりも兄弟・姉妹や親子関係のような……。そんな描写を的確に描いている映画として思い出したのが『阿修羅のごとく』。でもじっくり観てみると、ここから女のうまい生き方が学べるように思えるんです。

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密かに妬み合う四姉妹の物語

父親が不倫していると三女が言い出したことをきっかけにはじまる父、母、そして四姉妹とそれぞれの家族模様を描いたのが本作。しかし、どうも私には四姉妹それぞれが密かに抱えていたお互いに対する妬みや嫉みが浮き彫りになっていく物語のようにも見えるわけです。

ちなみに四姉妹とは、したたかな未亡人である長女・綱子(大竹しのぶ)に、主婦でしっかり者に見えるのがアダとなる次女・巻子(黒木瞳)、真面目すぎる三女・滝子(深津絵里)に、男になびきすぎる四女・咲子(深田恭子)。

それぞれキャラクターが違うがゆえに起こる妬みですが、そこには女の駆け引きがあるようで……。

面と向かっていがみ合わない!

物語が進むと、ある人物が「自分の結婚式に姉妹の中でひとり呼びたくない人がいる」と父、母に告白するシーンが。あからさまに姉妹の確執がうかがえる場面。ただ、ここにうまい女の駆け引きが隠されています。それが「本人に面と向かって言わない」こと。

別のシーンでも、姉妹の不倫現場に遭遇してもあえて罵倒しなかったり、「○○ちゃんには秘密」と言ってある姉妹同士で相談し合ったり、嫉妬や妬んでいる相手を直接刺激するようなことは避けているんです。

どんなに憎くても相手の感情を荒立てないことが上手な人間関係の築き方なのかも。

悪事は知らん顔して泳がせる!?

不倫についても昨今のものとはひと味違う描写が。大抵、夫や父の不倫・浮気がわかればそれを見逃さない表現が多いもの。この物語のスタートも父の不倫からはじまり、しかも三女・滝子は興信所まで使って証拠を押さえようと奔走していました。

しかし、ある人物だけはすべてをわかっても、知らないふりをしていたのです。映画の合間合間で、その不倫への憎しみが垣間見えるのですが、決して表にその感情を出すことはありません。

悔しさ、憎さ……そういった負の感情こそ、思い切ってぶちまけたほうがスッキリする、そう感じる人も少なくないと思いますし、私も共感できます。

でもこの作品を観ていて、知らぬ存ぜぬを貫くことで、本当は知っていたことが相手や周りにわかったとき、かえってその怒りがどれほど強いものだったか強調することができます。それに加えて、あえて波風を立てない一枚上手な女の生き方だとも思えたのです。

女の幸せなんて一瞬だったり、意外なところにあったりするもの?

『阿修羅のごとく』は、もともと向田邦子が脚本を手掛け、1979年と1980年にNHKで放送されたドラマで、それを原作として森田芳光監督が映画化したもの。

ちなみに映画冒頭で阿修羅の意味としてこのような文章が流れます。

インド民間信仰上の魔族。外には仁義礼智信を掲げるかに見えるが、内には猜疑心が強く、日常争いを好み、たがいに事実を曲げ、またいつわって他人の悪口を言いあう。怒りの生命の象徴。争いの絶えない世界とされる。

その意味に違わず四人姉妹を通して、映画では阿修羅な瞬間が幾度も登場。その一方で今見てきたように女のちょっとズルくてうまい生き方を描いていると思うのですが、それだけでなく女の幸せとは何なのかも語っている気がしているんです。

例えば、夫が仕事で大成功して結婚って幸せなものと思っていたのにそのあと落とし穴が待ち受けていたり、結婚なんて縁遠いし男にも興味がないと思っていたのに、いざ恋人ができると思いの外その生活が幸せなものだと感じていたり。

女の幸せなんて一瞬だったり、思ってもいないところに転がっていたりする。そんなことも向田邦子は言いたかったのではないかなと。勝手な深読みですが。気になった人はぜひ観てみてください。

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  • 4.0
    TVドラマのレビュー 《ドラマ》の方に登録できないので 初放送時にも見て、15年ぐらい前にも続けて見たことがあるが堪能した。 今の感覚からすると語り口がちょっともっさりしてるが、それも味である。 元日にTBSの《下町ロケット》全部見たが、展開がスピーディでナレーションの入れ方も上手く、良くも悪くも今時のTVドラマ。でも音楽の付け方がホント今風でダサい。 《阿修羅の如く》もあのトルコの軍楽『ジェッテン・デディン』をテーマに使ったのは素晴らしいが、でも劇中でちょっと鳴らし過ぎ。音楽は使い過ぎない方がずっと効果的だと思うのだが。 向田邦子は意地が悪い=人間の見方が辛辣だ。そこが面白い。 役者がみんないい。佐分利信のような大俳優はもちろん、いしだあゆみなんか大女優の片鱗がこの頃からうかがわれる。 宇崎竜童、岸部一徳も俳優として駆け出しの頃だろうがいい味だ。 八千草薫、加藤治子、三條美紀等、中年の女優達がすごくいい。特に八千草薫と加藤治子の上二人の姉妹の皮肉、当てこすりの応酬なんか笑える。 いしだあゆみは第1部と第2部終盤(結婚)までホント嫌な女。見ていて痛々しいのだが、ある夜、アイライン、付けまつ毛、ちょっと濃いメイクした時の美しさたるや壮絶。 八千草薫も美しいなぁ!こんな女房がいたら浮気なんかしないだろ、普通。 前回みた時は八千草薫の夫役が I の緒形拳から II の露口茂に変わったのが不満だったが、今回は露口茂の方がずっといい、と感じた。緒形拳はゴリラ演技でマッチョ過ぎる。露口の方が洗練されていて優男でずっといい。緒形拳のあの演技では妻を裏切って当然だが、露口だとどっちつかずで、白黒つけないのでずっと余韻がある。 しかし女の猜疑心は果てしがない。 向田邦子って男の目で女を見てたんじゃないかな。 原作、読み返してみようかな? あの頃、1979、80年は「浮気」と言ってたが、21世紀には「不倫」なんですと。
  • キコノイヌ
    3.5
    女は阿修羅だよなぁ、、、 4姉妹のなかで 父親の存在は絶対的な男性。 いい女いい妻いい母親であるべきなのは 何よりも自分のためだ。 ふりでもいい。 嫉妬も嫌悪感も妬みも 姉妹だからこそ。 きれいごとでは済みませんが、 大事な事を知っている、女達はしたたかに 幸せでいるのだ。
  • ざらめ
    3.2
    阿修羅の音楽テーマソング?がとりあえず良い。仲代達矢がマイケルケインにしかみえない。 桃井かおりと大竹しのぶの夢の共演キャットファイトも感動した。女は阿修羅だなぁ。これドラマだったのか。そっちもみたいな。
  • こみまま
    3.5
    記録
  • くらげ
    3.3
    これが正しい、とか、これも一つの道だみたいの寒気した。古臭い
「阿修羅のごとく」
のレビュー(1242件)