アニメーション映画界に新しい監督が誕生【 loundraw監督インタビュー】

アニメの海を漂う

yuka

絵を見て“眩しい” と思ったことはありますか?

ほこりが雪のように光る体育館、冬の日差しに照らされた薄氷。自分の中の懐かしい風景とともに、思わず目を細めてしまうような光がそこにありました。イラストレーター・loundrawの作品です。

デジタル世代の新たな才能<loundraw>

10代にして商業デビュー、「君の膵臓を食べたい」「君は月夜に光り輝く」原作小説装画、アニメーション映画『ジョゼと虎と魚たち』コンセプトデザインなど映画ファンにも知られる作品に多く関わっています。TVアニメ『月がきれい』キャラクター原案やコミカライズ、CM、小説など活動の幅は多岐にわたります。

大学の卒業制作では架空の映画予告「劇場版アニメ『夢が覚めるまで』予告編」を自主制作します。その完成度もさることながら、雨宮天下野紘といった有名声優の起用、BUMP OF CHIKENの楽曲を使っていることでも話題になりました。監督・脚本・構成・キャラクターデザイン・原画・動画・背景・撮影を担当し、ほぼ一人で制作した衝撃作です。

注目すべきは表現に対する考え方で「夜明けより前の君へ」公式図録(2017)ではこのように語っていました。

イラストの仕事をするようになりましたが、その中で絵を描くことが自分の中で”手段”のようになっていきました。感情を表現することが第一でしたので、その手段は音楽や作曲でもよかったというような……。自分が描かなくても、自分の思いが正しく伝わるなら、それもひとつの表現方法じゃないかと

こうして監督やディレクター業も視野に入れ、卒業制作に着手したそうです。実際にイラスト以外の多くの表現手法を持っていることがloundrawさんの魅力でもあります。

そんなloundrawさんに、ご自身と初監督映画『サマーゴースト』についてお聞きしました。

アニメーション映画への挑戦

――作品を作り終えた現在の気持ちをお聞かせください。

やっとできたなと言うのが率直な気持ちかなと思っています。アニメーションをつくってみたいというのを上京してくる前に思って、それから卒業制作をつくって短いCMをやらせていただいて、ようやく映画という形のところまできたので、そういう意味ではやっと作ることができたなと。今回で見えてきた課題というのもありますので、もっと頑張らないとと思いました。

――本作でも光の表現が特徴的だと感じました。こだわった部分やアニメーションとなることで苦労した点があればお聞きしたいです。

演出として光を入れたところです。イラストだと明るい絵を1枚の画として求められることが多く、映画となったときに物語のテーマを含めて色々な光の使い方、むしろ暗く描くことも必要だなと思っていたので、その瞬間の色とか光の量とか差し込み方で、景色も含めてキャラクターの心情を描くことにこだわりました。

構図だったり色だったり、設計図の部分で、キャラクターの動き以外の形で状況を説明するといいますか、一枚のフレームで「何が起きていて、どう言う距離感で」とかそういったものを描くって言うことはイラストを描いてきたからこその考え方かなと思いました。セリフや構図に納めることでより自然に見せることを意識しました。

イラストレーターだからこそと思いますが、自分の中の決めのフレームは1フレームしかなく、そこからキャラクターが動くのが苦労しました。

――映画作りでチャレンジしたことは?

「色」だと思っています。キャラクターのシーンごとの色の作り方をイラストの手法に寄せています。カットごとに軸となる色を決めてから、その空間の色に対してのキャラの色を一括管理するために、レイヤーを細かく分けて微調整をしやすくして、基本的に全て数値で色の管理をしていました。その数値があればどのモブキャラも一律同じ効果があって、さらにそれをカットの中で微調整していきました。ロジカルに自分の思い描いた色にキャラクターと空間が馴染んでいくところは、他のスタジオの方に聞くと「あまりやらないね。」と言われましたね。

場面場面の色が一律の効果としてあって、それが全員に適用される作り方をしていました。CMの時から同じアプローチをしていまして、手法のルーツはイラスト描くときの作り方でした。この方法ができるとイメージがしやすく、管理がしやすいなと思い撮影の方と相談しながら進めました。

――作品作りを終えて得たものはなんですか?

映画を作るということはイラストレーターとは立ち位置が大きく変わって、あえて言い換えるとクリエイターからアーティストになることだなと。単純に絵が良いだけでなくそこに何を込めているかということにフォーカスされることだと思うので、「自分が何をしていきたいのか、何を伝えたいのか」を考える機会がすごく増えて、それは自分にとって大きな成長だったなと思います。

映画『サマーゴースト

ネットを通じて知り合った高校生、友也・あおい・涼。自身が望む人生へ踏み出せない”友也”。居場所を見つけられない”あおい”。輝く未来が突然閉ざされた”涼”。彼等にはそれぞれ、”サマーゴースト”に会わなくてはならない理由があった。

――なぜ長編 第1作目に「死」というテーマを選んだのでしょうか。

裏を返せば「どうして生きていくんだろう」という。そもそも自分はなんでこの仕事をしているんだろうとすごく考えた部分があって、人生の選択を真剣に描くというか、生きていくことのゴールにある死は避けられないものだと思ったので、それを中心に据えました。みなさんが見て面白いと思えるものが作れたら1作目としてはすごく良いチャレンジになるかなと思いました。

――脚本はどのように進められましたか?

乙一さんとご挨拶させていただいた時に、「花火をすると死者に会える」というアイデアをだして、そこから乙一さんがプロットを3案ぐらい考えてくださって、その中で『サマーゴースト』の原型になるプロットがありました。また、そのうちの1案が姉妹小説になっています。

乙一さんから脚本の一稿をいただいたたらまずそれを1週間ほどでVコン(ビデオコンテ)にしました。いただいたテキストのセリフをみてから、映像にするならこう調整したいなど、絵一枚で説明できるからこそセリフをカットしたり、文字として面白いものと、映像として面白いもののベストを探るということを乙一さんも面白いと言ってくださったので楽しく進めることができました。

――主人公・友也は大学進学と絵を描くことで揺れる高校生でした。loundrawさん自身の受験生時代が影響してしているのでしょうか?

友也について自分の部分を出して面白いものになるのであれば、なるべく入れたいなと思っていたので、友也というキャラクターに自分を重ねている部分も大きいです。ですが、単純に受験期の話だけでなく大学に入ってからも「イラストレーターになるかならないか」「就職するかしないか」というお話でもあるので、高校だけでなくずっと人生の選択において「これをするのが一般的で」でも「こっちがしたくて」ということは誰しもあるのかなと思いました。

――キャラクターについて、実写的に表現されていると感じました。声優さんにはどのような演技を求めましたか?

一貫してなるべく抜いた演技、自然な演技をしていただきたいという話をさせていただきました。キャストの方々もラジオなどを聞いて決め、その人の地の声に一番近い感じがいいなと思っていたので、そのようにお願いしました。音響の木村さんもその意図を組んで下さって、座ってアフレコすることをしましたね。

毎回すごくアフレコ時間が長くてご迷惑をおかけしているんですけれど…(笑)何テイクも撮らせていただいたり、句読点ごとに切って繋いだりしています。映画は体験だと思うので、一本使うところもあるし、リズムとしてのベストをとることもあって、区切り方は細かいほうだと思います。

精度の高いVコンに僕の声でセリフ、劇伴やBGMのタイミングからカット尺がわかるような情報などが入っているので、それをベースにアレンジしていきました。音が絵を説明する要素もあるので、ふたつを含めたベストの設計図を提示して進めました。

――本作『サマーゴースト』では映画公開前に「幽霊と花火」展や11/26に発売される姉妹小説「一ノ瀬ユウナが浮いている」、となりのヤングジャンプでのコミカライズなど一つの題材をいろんな視点で見られるようになっています。これから鑑賞する方にはどのように楽しんでほしいですか?

学生の子から「どうしたらloundrawさんのようなお仕事ができますか」といった相談をされたりすることがあって、自分がしてきたこと、していくことに責任があるなと思っています。単純に映画を楽しんで欲しいという面もありますし、一つの集大成というか、loundrawはこうやって一歩ずつ進んでいるんだなというようなことも含めて楽しんでいただけたら幸いです。

――『サマーゴースト』を作り終えて次になにか作りたいものや挑戦したいことはありますか。

機会をいただけるのであれば、今回の経験含めてより長尺で映像をつくることができたらいいなと思っているのですが、正直この作品を作っている途中の時期で次作りたいと思っていたものと、完成し終わってそれを今作りたいと思っているかと言われるとそうではなかったりするので、まずは『サマーゴースト』という自分の個人的な部分を出ている作品が世の中からどう評価をされるのか、今は観てくださるみなさんの反応を待ちたいと思います。どきどきですね。

――最後に映画ファンに向けてお願いします。

1作目ということで拙い部分もあったりするんですけれど、前に進むということがすごく大事だなぁと映画を完成させることですごく思ったので、この映画を観た方の中に映画自体から、物語だけでなく「サマーゴースト」が世に出たということを含めて、勇気が与えられたらいいなと思います。

映画『サマーゴースト』公式:https://summerghost.jp/
FLAT STUDIO 公式:https://flatstudio.jp/

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  • しょー
    4.8
    40分でこの内容は凄すぎる。 多分60分あったら泣いてたな。 loundrawさんの絵が元々好きだったから今回の作品見れて幸せだった😭 島崎さんもでてるし、、、 次回作もあればいいな〜 悩んでる人はぜひ見てほしい!
  • 雪ネコ
    3.5
    たった40分に詰め込まれてる よくここまでまとめたなと思う。 さすが乙一さん。 生と死はかけ離れたものじゃない。 死んでしまった人が常に心にいるように。 寄り添ってるんだなぁと思える映画だった。 いやぁ、短いけどいい映画だったね。
  • 4.2
    終始イラストを見ているようだった。loundrawさんの絵が好きな人は見に行った方がいい。彼のイラストの画面の色合いと人物の描き方が何より好きで、それがあの空気感のまま40分間動いてるってだけでかなり満足感があった。 わたしは動きのカクカク感もそんなに気にならなかったし、内容も40分という時間を思えば濃く、しっかりしてたと思う。 スーツケースの中身、どう映すんだろうと気になってたのだけど、やっぱりああ描くしかないのかなあとちょっと残念だった。 綺麗なとこだけ見るのはずるくないか、難しいのはわかるけど これからの作品が楽しみ!
  • 7676
    4.5
    短い時間でよくまとまってたと思う。心情を吐露するところがほとんどないから色んな考え方が出来るようになってるかな。曲も自然に入ってくるし映像が綺麗で作画の乱れもほぼない。主人公のcvこばちあとても合ってた。キャスティングもよい。 気になったのはスーツケースがその後どうなったのか。あとカフェでピザが皿ごと消えたこと。
サマーゴースト
のレビュー(417件)