何気ない日常が、最も美しい。ジム・ジャームッシュ監督最新作『パターソン』に絶賛の声

2017.08.17
特集

FILMAGA編集部

フィルマーくま

時代の寵児としてアメリカのインデペンデント・シーンを牽引し、長年にわたり映画ファンの賞賛と敬意を集め続ける巨匠、ジム・ジャームッシュ監督。彼の新作『パターソン』は、カンヌ国際映画祭をはじめとする国際的な映画祭で数々の賞を獲得、”今年のベスト・フィルム!”、“ジャームッシュ監督の集大成的な作品だ”と絶賛の声が上がっています。

人々の日常が淡々と繰り返されるシンプルかつミニマムな構成の中で描かれる本作が、なぜそれほどまで人々の心を掴んで離さないのか。先日行われたFilmarks試写会のレビューと共に紹介していきます。

パターソン

 

バス運転手・パターソンが過ごす1週間。妻と愛犬、町の人々によって紡がれる【繰り返す日常】はいつもどこか新鮮で愛おしい

主人公パターソンは、アメリカ・ニュージャージー州のパターソン市でバスの運転手として働き、同時に詩人として毎日詩を書く物静かな男性です。
朝は決まった時間に目覚め、バスに乗り、仕事の合間に大好きな詩を綴り、帰宅後は妻と一緒に夕食をとります。その後、愛犬の散歩ついでに近所のバーでビールを1杯飲み、家に帰って妻の隣で眠りにつくという暮らしをしています。

本作はそんなパターソンの“月曜日”から始まる7日間を描いた物語。
日々少しずつ変わる景色や、乗客の会話、目に留まった小さな出来事からインスピレーションを得て、詩を書くパターソン。
彼の周りには、夢にひたむきで快活な妻ローラ、少しそりの合わない愛犬マーヴィンが寄り添い、ぼやいてばかりの同僚やバーで出逢う人々との交流も日常を彩ります。
物語が進むにつれて、だんだんとパターソンの目線で彼の生きる世界を愛し、何気なくもキラキラ輝く日常に胸がときめく自分に気がつくはず。

パターソン

◾️登場人物それぞれが血が通っているように感じられるし、いちいち可愛い。見終わって、とにかく誰かに優しくしたくて仕方ない気分になった。誰でも良いから優しくしたい。(_akiko_t_さん)
◾️観る人の感性やその日の状態や気分によって、作品から伝わってくるメッセージが全く変わる映画。そんな印象を受けました。とてもリアルな人物描写で、彼らの世界にすーっと入り込めます。意識していないとつい見逃してしまうような日常の些細な出来事の中にこそ、人生の美しさや儚さが溢れている。この作品を通して映画の良さを改めて実感しました。時間を置いて何度も観たい、そんな映画。(east8さん)
◾️何もかもが美しくて愛おしい作品でした。平凡な日常、主人公パターソンの感性や詩、ランチボックス、部屋に掛けられた絵、全てがもうツボ過ぎて。そして、愛犬がとにかく可愛い!劇場公開始まったらまた観に行こうと思います。(nievesさん)

今最も旬な俳優、アダム・ドライバーと魅力溢れる役者達。あの日本人俳優も

パターソンを演じるアダム・ドライバーは、近年『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名も無き男の歌』、『スターウォーズ/フォースの覚醒』、『沈黙ーサイレンスー』など、名匠の作品で重要な役柄を演じ、これからの活躍に注目が集まる俳優。
本作では静かな佇まいの中に、繊細さと信念を併せ持つキャラクターを見事に演じています。

パターソンの妻ローラ役には『彼女が消えた浜辺』で脚光を浴びたゴルシフテ・ファラハニ。彼女のオリエンタルな美しさとキュートな魅力溢れる本作での演技は、男性のみならず女性をも虜にしてしまいます。

そして二人の愛犬マーヴィンを演じるのは、今は亡きネリー(劇中では雄犬役だが実際は雌犬)。パルム・ドッグ賞(カンヌ国際映画祭で最も優れた演技をした犬に送られる賞)を受賞した素晴らしい演技に注目です。

さらに本作では、日本を代表する俳優でありカンヌの常連・永瀬正敏ジム・ジャームッシュの呼びかけに応え、パターソン市を訪れた日本人の詩人役で出演しています。27年前のジム・ジャームッシュ作品『ミステリー・トレイン』を彷彿させる、作品の中でも印象深い役柄を演じています。

パターソン

◾️アダム・ドライバーが素晴らしかった。演技しかり醸し出す雰囲気までもがビタッとハマってました。(BEAT88さん)
◾️最高でございました。ジャームッシュ作品として最高なんですけども、今回アダム・ドライバーのハマりっぷりももう一つの魅力ではないだろうか。彼の演技力が確かなのはもちろん、もうパターソンがそこにいるようにしかみえない。最初は「カンヌっぽいよなぁ」と思ってましたが、アダム・ドライバーにぐいぐい引き込まれ、彼の一挙手一投足から目が離せなくなっていた。(alpicoskさん)
◾️アダム・ドライバーってスターウォーズでしか見たことなくて、クセのあるルックスだなって思ってたけどパターソンの体育会系の体つきしてるのに感情の起伏があまりなく穏やかでやさしくてポエマーっていうキャラクターがとても良くハマってて好きになってしまった。パターソンの、たまにポロっと出ちゃう素がとても可愛い。(zanpanさん)
■最後に出てくる永瀬さんの存在感が凄まじく素敵でした。(apcs24さん)
■28年振り!に出演の永瀬正敏氏の印象的な役柄も、昔からジム・ジャームッシュの作品を楽しんできたファンには嬉しい限りですね。彼の出演した場面は、本当に良いシーンで感慨深く、心に残りました…(koken28さん)

時代が彼に追いついた? 独自のスタンスを貫く巨匠、ジム・ジャームッシュ4年ぶりの最新作に世界中から絶賛の声

ジム・ジャームッシュ監督にとって『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』以来4年ぶりとなる本作でも、その名を世に知らしめた『ストレンジャー・ザン・パラダイス』や『ダウン・バイ・ロー』のように、どこにでもいる人々の何気ない出来事を監督独自の視点で切り取る唯一無二の作風は健在。さらに『ブロークン・フラワーズ』や『コーヒー&シガレッツ』など、日々の出来事に潜む美しさやユーモアを拾い上げ、そこに価値を見いだす眼差しは本作でより一層、研ぎ澄ませれました。

劇中、繰り返しスクリーンに映し出される朝の夫婦を映した俯瞰映像やドライバー直筆の詩の一節、バスのフロントガラスに映る光、夜の町並みなど、ジャームッシュ監督ならではのセンス溢れる描写表現にも注目です。

これまでのジャームッシュ作品の良さをぎゅっと詰め込み昇華させたような本作。
日々の出来事を丁寧に楽しむパターソンの視点や思考は、繰り返す毎日に疲れ気味の人に束の間の癒しと安らぎ、物質ではなく精神の豊かさを求める時代へシフトしつつある“今”を生きるためのヒントを与えてくれるでしょう。

きっと観賞後は清々しい気分で、あなたの日常を今よりもっと楽しむ事が出来るはずです。

パターソン

◾️緩いテンポだが飽きさせず、見た後に和んだ。ジム・ジャームッシュこそ真の詩人。(Rocksoff1さん)
◾️ため息ばかり出ちゃいます。気持ちがよく素晴らしい。朝と昼と夜と。毎日は繰り返す。でも1日も同じものはなく
どれもいとおしいものばかり。町並みも人も犬も、流れかたがすみずみとしていて気持ちいい。いとおしすぎて涙が出そうになりますね。ジムジャームッシュ、ありがとう!(bleublancrougeさん)
◾️日常を詩のように綴ってみたら毎日はこんなにも愛おしくてキラキラと輝いてる!こんなに日々の生活が幸せに見える作品がかつてあったかな。やっぱりジム・ジャームッシュは何気ない会話を詩的に演出する天才。ドラマチックはすぐそこにある。(fujikatuさん)

◆映画『パターソン』 information

パターソン

上映時間:118分

2017年8月26日(土)全国ロードショー
公式サイト:http://paterson-movie.com/
配給:ロングライド
(C)2016 Inkjet Inc. All Rights Reserved.

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  • AzumiSuzuki
    4.0
    ある男性の日常を切り取っていく淡々とした作品であるが、その毎日に同じ日は一度もなく、毎日が特別であることを教えてくれる。変わらずそこに在るものに対する愛おしさを、再確認できる。
  • netfilms
    4.3
     ニュージャージー州パターソン市で、バスの運転手をしているパターソン(アダム・ドライバー)。彼の1日は定刻に起きるところから始まる。キングサイズのベッドに枕を二つ並べ、いつも傍らには彼の妻のローラ(ゴルシフテ・ファラハニ)が眠る。テーブルに置いた時計で時刻を確認するのが彼の癖で、1人寂しく朝食のシリアルをゆっくり口に運ぶ。夫婦はまだ子供がおらず、妻は自由気ままに創作活動に励んでいる。バスの運転手の仕事というのは、定刻通りに目的地に着いて、また新たなお客様を乗せなければならない。常にオンタイムが要求される仕事で、彼の毎日は淡々とした日常を刻んで行く。だが同じような日常でも、一度たりとも同じ出来事は起こらない。キングサイズのベッドの上、背中合わせに眠ることもあれば、相手の呼吸を感じながら目覚める朝もある。妻のローラがパターソンよりも早く目覚める朝もある。淡々とした日常は反復しているように見えて、そこに僅かに見られる差異をしっかりと浮き上がらせる。パターソン市に住む市井の人々のなんて事ない1週間は、『ストレンジャー・ザン・パラダイス』で病気になった叔母の家から従妹のエヴァ(エスター・バリント)がやって来た10日間や、『ミステリー・トレイン』でジュン(永瀬正敏)とミツコ(工藤夕貴)がメンフィスに滞在した数日間と決定的に違う限定された時間に過ぎない。  旅行者たちは普段は決して立ち寄らない異空間・異文化をカルチャー・ショックを持ちながら受け止め、時間を消化して行く。一方でバスの運転手であるパターソンの日常は例えば双子の子供が生まれたりするかもしれないが、これから定年退職を迎えるまで、未来永劫変わらない。その時間の流れはグレートフォールズの滝の流れが絶対に逆流しないことに似ている。パターソンはその不可逆な時間の流れを書き留めようと秘密のノートに詩を綴る。午前中、脳内で何度も推敲した言葉を彼はランチの後にノートに記す。バスの乗客の何気ない会話、ブルドッグの散歩の帰りに一杯だけ呑むBARで次々に起こる出来事、そして心落ち着けるマイホームでの妻とのやりとり、壁にかけられた額縁の微妙な違い。パターソンは決して饒舌ではないが、彼の表情は何よりも豊穣に言葉を綴る。妻にねだられたアコースティック・ギター、移民の妻の手作りのスウィーツのイマイチな味に男は癇癪を起こすことなく、ただ妻の言葉にじっくりと耳を傾ける。ウィリアム・ジャクソン・ハーパーやバリー・シャバカ、メソッド・マンなど登場人物たちのクローズ・アップと豊穣な語り口がいちいち素晴らしい。思えばジャームッシュの作家性は『パーマネント・バケーション』の頃から本当にブレない。ストーリー・テラーではなく、映像詩を紡ぐジャームッシュ独特の無常感、複雑な構造をスピーディーに矢継ぎ早に繰り返す昨今のジェットコースターのような映画とは対照的な、シンプルで拍子抜けするような朴訥とした物語を味わう傑作の誕生である。
  • あまにょ
    4.1
    この映画大好き。毎日同じようで、同じじゃない。なんでもない平凡な日々の中にも、新しい出来事や小さな変化がある。そんな日々がきっと幸せなのかな〜。あと、犬のマーヴィンが可愛い。
  • guchiyamaaka
    4.4
    人力の四打ちのようなささやかな日々の繰り返し、少し浮遊した目線であるバスの運転席に運ばれるちょっとのwonderを集めては昇華させそれはまるで刻み込むように画面に打たれる 詩。カルチャーの申し子のようなジャームッシュによる原点回帰かつ最新型のビートニクスであった。個人的には最高傑作。 日常を芸術に昇華させてきた彼がその芸術を日常にそっと還したかのように謳っていたのは、あらゆる芸術よりも人々の生の営みこそが最も尊いということ。疲弊した主人公の前に現れた永瀬正敏の存在も良かった。
「パターソン」
のレビュー(9432件)