2015年、ドラマシリーズに端を発し、コミック、LIVE、そして映画へと規格外のプロジェクトとして躍進を遂げる「HiGH&LOW」シリーズの最新作『HiGH&LOW THE MOVIE 2 / END OF SKY』(以下、『HiGH&LOW2』)。観客動員数160万人、興行収入21億円を突破した『HiGH&LOW THE MOVIE』の待望の続編となる本作において、新キャストとして発表直後から熱視線を浴びたのが、中村蒼だ。
新作にも続投するAKIRA、TAKAHIRO、登坂広臣、岩田剛典、鈴木伸之ら「EXILE TRIBE」メンバーのほか、窪田正孝、林遣都、山田裕貴など若手実力派俳優がしのぎを削るなか、中村はスカウト集団「DOUBT」のリーダー・林蘭丸の怪演で新境地を見せた。昨年、連続ドラマ「せいせいするほど、愛してる」の“宮さま”役で“火曜日のヒーロー”と異名がつくほどの当たり役となった爽やかイケメンから一転、悪のカリスマで狂気をはらんだ表情は、泣く子も黙る仕上がり。オフスクリーンでは狂人じみた役とは無縁な、菩薩のような笑みを広げる中村に、ヒールを演じた心境を語ってもらった。
――「HiGH&LOW」シリーズに中村さんが参戦という第一報を聞いたとき、驚きで飛びあがりました。
本当に、僕も人生って何が起こるか分からないなあ……って思いました(笑)。お話をいただいて、「HiGH&LOW」の過去作も観て世界観を把握した後、さらに、「林蘭丸」というキャラクターの内容を聞いて、「まさか! え、僕で大丈夫なのかな? 本当にいいんですか?」と思いました。
――蘭丸は、ものすごい悪役でしたね。
もう、はい。皆さんに観てもらうまでは正直、「大丈夫かな?」という、まだ不安な気持ちが残っています。
――どういうふうに役を作っていかれたんですか?
難しかったです。ほかのレギュラーの方々はドラマからやられていて、背景を描きながら今の役にたどり着いていると思うんですけれど、蘭丸はポンと出てくるような人間だったので。お金と力しか信じていないという性格でしたが、僕はそこに人間らしさや、悲しい部分を感じたので、それをヒントにやっていきました。共感なんて全然することのないような人間でしたけど、それではあまりにかわいそうというか……。せっかくやるんだったら、自分ぐらいは蘭丸を好きでいたかったのはありました。
――初日から順調に入っていけましたか?
僕にとっての初日が、本当に、ど頭のシーンだったんです。「いきなりあそこ!?」という感じで(笑)。でも初日に登場シーンをやれたのは、すごく助かりました。
――演じるときは、どのようなことを考えていたんでしょうか?
シーン、シーンによって違うのですが、何百人っていう部下がいる設定なので、常に余裕を持ってお芝居することは意識しました。蘭丸は、抗争シーン以外は割と冷静なんです。お金で人を動かすような人間なので、ある種、すごく賢い面もあるから、お金のやり取りをするときは冷静に、余裕を持ってやる感じでした。争ったりするときは、楽しむかのように、相手を傷めつけるような人間なので、はっちゃけるというか、リミッターを外してやっていった感じです。
――普段の中村さんとは正反対と言っていいですか?
そうですね。全然ひとつも似ていないです。人様を殴ったらいけないって、親から教わってきたので(笑)。
――今回、初の本格的なアクションに挑戦もしました。
最初、大丈夫かなと思いましたけれど、リハーサル期間もきちんとあったので、すごくいい環境で初めてのアクションに挑戦できたかなと思います。アクション監督やスタントの方々が、「こういったほうが蘭丸としての性格が出るんじゃないか」といろいろ細かく考えてくださって。おかげで、アクションシーンは万全で挑めたのではないかと思います。
――実際、やってみての難しさ&面白さはありましたか?
初めてだったので、アクションのことで頭がいっぱいになっちゃっていました。その中で感情を込めたりしないといけなかったので、バランス感覚が難しかったです。
――何か特別な指導はありましたか?
蘭丸は喧嘩というよりは、相手を殺してしまいかねない人物設定だったので、首を絞めるというアクションが、蘭丸としての一番分かりやすい特徴になりました。首を絞めて、余計そういう抗争を楽しんで興奮したりする、というか。力を込めて、本当に倒そうとするというパターンですけど、どれだけ思いっきりやれるかという感じでした。僕の場合は、どうしても「かわいそうだな、痛そうだな」と思ってしまうので、いかにその気持ちを本番のときだけはなくすかっていうのが大変でした。
――殴ったりするアクションが、本当に「当たってしまった」的なことはあり得るんですか?
もちろん顔とかには当たらないですけど、お腹とかは(ちょっと当たる)。ただ、そういうのは、本当に皆さん、プロの方々なんで。
――おお、当たっても大丈夫なんですね。
所詮、僕のパンチなんて(笑)、蹴りも、効かないぐらい鍛えあげられた方々がやってくださったので、すごく信頼関係がありました。全力でやれる環境を作ってくださったおかげで、思い切ってやれました。
――深紅のコートが印象的で、かなり重そうな感じがするんですけれど、体の動きは大変ではなかったですか?
あれは重かったです! 肩が凝りそうなぐらい重くて。でも、コートだったので、動いたら自分の動きを大きく見せてくれるようになって、助かりました。でも、真っ赤で……最後まで全然着慣れなかったですけれど、あのコート(笑)。
――蘭丸を経て、役者としての幅が広がった印象はありますか?
どうですかね? 一応、何とか乗り越えられたという気持ちはあります。こういう役に対する、今までの自分で勝手に作っていた壁みたいなものは、なくなったかなとは思います。
――すごくストレートに聞きますが、楽しかったですか?
はい、楽しかったです。今回アーティストの方々とお芝居をして思ったのは、皆さん、すごく明るいんです。根明っていうか。例えば、同年代の役者だけの作品だと、最初は探り合いというか割と人見知りの人達が多いから、静かなところからスタートしていって、少しずつほぐれていって仲良くなる、みたいなパターンが多いんです。けど、『HiGH&LOW2』の皆さんは仲良くなるというか、醸し出している雰囲気がすごく明るくて。やっぱり何千人、何万人っていう人の前で歌ったり、踊ったり、パフォーマンスをされている方々は、こういうオーラを出すんだなって思いました。
――新しい人種に出会えた、という感じでしょうか?
そうですね。なかなかアーティストの方々とお芝居をする機会がなかったので。挨拶ひとつで、そういうのが分かるんですよ。こっちも自然とパワーを貰えるぐらい明るいオーラを放たれていたので、現場はすごく楽しかったです。
――中でも、仲良くなった方はいますか?
黒木(啓司)さん。あとはNAOTOさんや(関口)メンディーさんのチームと僕は繋がっている設定だったので、その方々とお話をすることはありました。メンディーさんは、僕と同い年だったんです。普段は年下キャラみたいで、皆さんからすごく可愛がられている感じがあって。楽屋では穏やかだし、楽しい感じでした。やっぱり醸し出すオーラとかは、いいなあって。ご一緒していて楽しいですし、自分もそういう人間になれたらなと思います。……まぁ、なれないでしょうけど(笑)。
――俳優として刺激を受けた部分があったんですね。
歌ったり踊ったりもできるけれど、お芝居も皆さんが真剣にやっていて。もちろん真剣にお芝居をやることについては、僕も同じくらい熱量を持ってやりますけれど、歌って踊ったりはできないですし……強敵ですよね。そんなお芝居もすごい真剣にやられたら、困ってしまう。
――困ってしまう(笑)。
NAOTOさんと台本読みをやったんです。僕は台本読みの段階ではまだ全然固まっていないまま行ったりするんですけれど、NAOTOさんはもう役が完成されて参加していました。準備もばっちりやっていたりして、やっぱりストイックというイメージは今回、役者をやることに対しても通じるんだなって思いました。
――となると、完成作を観るのがますます楽しみですね。(※取材日時点で未完成)
そうですね。
――「すごい楽しみ」ではないんですか?
『HiGH&LOW2』に限らず、僕は、自分の作品を観るのはあまり得意ではなくて。もちろん観るんですけど。
――客観的に観られないということですね。
完成した作品を皆で観る試写があるじゃないですか? 皆で観ていると、手に汗を握っちゃって、緊張して余計視界が狭くなるような感じがするんです。DVDをもらって家でひとりで観たいなって(笑)。家のほうがじっくり「こうなったんだな」、「やりたいことが伝わっているな」と冷静に観られるので。
――今回お話を聞いていて、中村さんは全然ガツガツされていない印象なのですが、野心みたいなものを実は持っていたりしますか?
野心のような気持ちよりも、「いい作品に出たい」という気持ちが大きいかもしれません。『HiGH&LOW2』のように、「僕がやれるのかな、大丈夫かな? やったことがないし、どうしよう」という、やったことがないような作品にも、ちゃんと挑戦したいという気持ちがあります。比較的チャレンジした役のほうが、皆さんからのリアクションが大きかったりするんです。それは俳優として、すごく嬉しいことなので。(取材・文:赤山恭子/撮影:市川沙希)
映画『HiGH&LOW THE MOVIE 2 / END OF SKY』は8月19日より全国ロードショー。
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