伝説の衝撃作『愛のむきだし』が“最長版”ドラマシリーズで再編成!園子温監督も喜びをむきだし【インタビュー】

世界のディズニーを翔る元映画サイト編集長

鴇田崇

園子温監督の監督23作目の作品にして、その後の監督としての評価を決定づけた代表作『愛のむきだし』が、撮影開始から10年の時を経て“最長版THE TV-SHOW”として、装い新たに登場する。編集初期段階での6時間のバージョンをベースに、全編脚本通りに再構成。未使用シーンを1時間以上復元しただけでなく、全音楽・音響までも再構築し、さらに全編4K化、高精細高解像の鮮やかな映像化を施した。各話30分のテレビ仕様で新たな命を宿した最長版について、園監督にインタビューを行った。

園子温監督

――今回、あの『愛のむきだし』の“最長版”が世に出るということで、2017年に本作が誕生したことについては、率直にどういう心境でしょうか?

実は作った当初、最初の編集は6時間くらいあって、(映画版は)いいシーンが切られてしまっているので、惜しいなとは思っていました。だからいつか、テレビなどで長いドラマ版を自由に作って、全部切らずに流せないかなとは思っていたんです。そういうことを僕が言うと、たいがい通らなかったものですが、今回アスミック・エースの要望で実現したので、すごくうれしかったです。

――“最長版”を拝見したところ、もともと『愛のむきだし』は、そもそもドラマシリーズというフォーマットが合っていたような印象も受けました。

それはたまたまのこと。映画は映画で、そもそもテンポが必要になるので、どうしてもシーンを刈込み、切らざるを得ない。ドラマシリーズの場合は映画のようなテンポは求められないので、そういう意味では新鮮に映っているかもしれないですね。テーマそのものについては、長くしたところで根本的に変わるものでもないですが、キャラクターの造形ですよね。より細かく現れていると思うので、それが長くなってよかった点でしょうね。

愛のむきだし

――具体的なキャラクターとしては、どれになるでしょう?

全員、それぞれによく描けていたと思いますが、特に安藤サクラさんのシーンはエピソードをかなり追加していると思うので、人物像が膨れ上がっているとは思いますね。昨年お亡くなりになった元AV女優の紅音ほたるさんと共演しているシーンなどが復活しています。満島ひかりさんは映画の時にあまりカットしなかった印象がありますが、エピソードやカットが増えると親しみがわく。観る人の共感をより一層誘いますよね。そんな点も、“最長版”は楽しいです。
それと、カットしたことで、ずっとじくじく思っていたセリフやシーンも多かったですね。それが今回復活したことで、救われた。僕自身が救われたってこともとても大きいですね。

愛のむきだし

――なるほど。“最長版”は作品としてだけでなく、園監督自身にとってもプラスなことが多かったという。

編集で大量にカットしていると、意外に楽しくなってきちゃうんですよ。もっと短くできないか、もっとスピード感がある編集はできないかって、テンポを上げることに夢中になり、追究してしまう。僕の中では、映画版ではそういう思いがあったので、どんどん削っちゃったんですよね。だから冷静に考えると必要なシーンもあったので、“最長版”が実現できてよかったです。

――ところで、『愛のむきだし』が世に初めて出た時は、センセーショナルなほど話題になりましたよね。園監督にとって、どういう作品になったのでしょうか?

愛のむきだし』の当時は、僕はまだまだ無名だったので、この一本で勝負を賭けようと思っていました。僕が撮った映画は全部僕にとっては特別で、『愛のむきだし』だけが特別ではないのですが、ただなんとかしてステップをもっと上がっていかなくてはという焦りはあったし、そういう時期でもあった。ただ、それは結果論なんですけどね。結果的に『愛のむきだし』以降は、いろいろと映画を撮れることになったので、そういう意味では特別ですが、出来のいい息子、悪い息子もいるので、どれが特別とは言えないですね。いい大学入ったからって、いい息子とは限らないみたいな。

――これほどの高い評価を得続けている理由は、どこにあったと分析しますか?

あらゆる映画のジャンルが、『愛のむきだし』の一本の中に入っていると思います。青春映画にホラー映画にアクション映画、ミステリー映画の要素まで。すべての要素が総合的に一本の作品に入っているので、まさに映画のるつぼ。メルトダウン化している映画なので、観客の感情を振り回し興奮させていく、そういうところがいいのかなと思っています。

愛のむきだし

――今回のインタビューを掲載する「Filmarks」は、かなりディープな映画好きが集まるアプリですが、そのユーザーに向けてメッセージをいただけますか?

最初の『愛のむきだし』はそうとう前に観られていると思うので、今回の“最長版”は新鮮な気持ちで楽しめると思います。映像も高精細、高解像化して、驚くほどに鮮やかになった。新作を観るような気分で観てほしいですね。

あと『愛のむきだし』の前の作品で埋もれてしまっていますけど、『紀子の食卓』っていう吉高由里子さんの映画作品があります。当時小規模に公開されて不遇の作品ではありますが、僕はある意味で『愛のむきだし』以前に全力で頑張っている作品だと思っていて、『紀子の食卓』がなければ『愛のむきだし』はなかったと思うくらい、僕の中ではひとつのステップになっている作品なんです。『紀子の食卓』を撮った時に、自分が女性を描くほうが得意だって気づいたんですよ。それを初めて知った上で、その思いとともに『愛のむきだし』に突入していきました。ぜひ合わせて観てほしい作品ですね。(取材・文・撮影:鴇田崇)

園子温監督

「愛のむきだし 最長版 THE TV-SHOW」は8月23日(水)より、TSUTAYAにてリリース開始。

愛のむきだし

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    3.0
    記録
  • 大可大
    4.0
    愛のむきだし、タイトル素晴らしい。 信仰に変態(愛)でなんとかなるもんじゃ。 宮台真司の説教ちゃんと聞いてみたい。笑
  • ぴのきもん
    -
    大学生の時、みて、いろいろ考えた映画
  • 全力
    4.3
    00年代、セカイ系、ラノベ初期、エヴァ考察、雑誌ファウスト、この辺好きなやつ悪いこと言わないから観ろ!! 前半は真面目な前フリ30分からのエロバカパート!! 非凡だけど辛気くさい主人公が捻れた青春を送ってる中で光が射す話。 満島ひかりにパンチラさせて!主人公にとってはそれが女神で。最高のボーイミーツガール!! そして後半~クライマックスは、信仰と愛。 某少佐の言うところの、君らの神の正気は一体どこの誰が保障してくれるのだね?って話。 こちらも前半に比べだいぶヘビーだけど良い。 映画の内容はGOING STEADYやサンボマスターに通ずるところもあるけど、音楽のゆらゆら帝国がめちゃくちゃ気持ちいい。 これは反則。かっこよさ過ぎ。 でも欠点はとにかく長い。 90分を越える映画はすべて駄作みたいなこと誰か昔言ってませんでしたっけ?(誰か教えてください。。。) そこまで過激派な意見は持ってないですが、見終わったあとの感想がボヤけてしまうんだよな。散りばめられた感想をまとめられなくなって何を思えばいいか分からなくなる。 そんで、無理にまとめちゃうと謎のカーチェイスや血ブシュー含め、園子温の良いところも悪いところもすべてつまった作品だったなぁになっちゃいがち。 それでもやはり、この映画を人に勧めたくなるのは、ごちゃごちゃした世界のなかで全てが壊れてもいいから、僕はあの娘が好きなんだ!!みたいな青臭さを観て欲しいんです。
  • tacorin
    3.6
     邦画では珍しい宗教問題を正面からテーマにした映画。そういう意味では遠藤周作原作の沈黙などと比べられるかも知れない。原罪意識と親子愛を結びつける構成も日本人らしい。  ただ、映画としての完成度は低いと感じた。新進の俳優だった満島ひかり、安藤サクラ、西島隆弘の好演は広く知られているし、その通りだと思う。その一方で演出の工夫は少なく、4時間の長編は必要ないと感じた。
「愛のむきだし」
のレビュー(34728件)