桜田 通さん、ネトフリでなに観てますか?『バード・ボックス』『ザ・ミスト』「アメリカン・マーダー: 一家殺害事件の実録」

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Netflix Japan編集部


著名人の方々にネトフリでお気に入り作品を訊く連載シリーズ。
Netflixシリーズ『今際の国のアリス』(2020)のニラギ役、『全裸監督』シーズン2(2021)のケンちゃん役で話題の俳優・桜田 通さんが登場。「NetflixでホラーやSFをよく観る」という桜田さんがハマった作品は、『バード・ボックス』『ザ・ミスト』「アメリカン・マーダー: 一家殺害事件の実録」です。(ネトフリ編集部)

桜田 通

俳優。1991年12月7日生まれ、東京都出身。2006年に舞台「テニスの王子様」の主役に最年少で抜擢される。2008年に映画『劇場版さらば仮面ライダー電王 ファイナル・カウントダウン』にて映画初主演。その後、映画『BECK』(2010)『orange-オレンジ』(2015)、ドラマ『クズの本懐』(2017)『コーヒー&バニラ』(2019)などに出演。Netflixシリーズ『今際の国のアリス』(2020)のニラギ役、『全裸監督』シーズン2(2021)のケンちゃん役が話題に。
公式サイト/公式Twitter@s__dori/公式Instagram@dorisakurada

ありえない世界だからこそ興味深い『バード・ボックス

バード・ボックス』は、目を開いてなにかを見てしまうと“それ”に襲われてしまう、現実とは違う世界の出来事を描いた作品です。いわゆる怪物、クリーチャーみたいなものが存在している世界ですね。ちゃんとこの世界観を否定せずに観ることによって、ありえない世界の話を描いていながらも、主人公とかが持っている悩みや社会的な問題はわかるなって思う部分があります。単純にハラハラドキドキしたいっていうだけでも面白いけど、自分と照らし合わせて観るのもいいと思います。

多くの伏線が張られている作品なので、最後まで引き込まれて面白いんです。「なるほどね、主人公たちはこういう答えを出して、こういうところに最後たどり着くんだな」と、僕はわかりやすいと思いました。観た後は疲れるんですけど嫌な疲れではなく、絶望のなかにも、ちょっと希望みたいなものが見受けられる作品なので。

この作品にハマった理由としては、わかりやすさのなかにモチーフがしっかりあることです。「ここはもしかしたら現実世界のあそこの話なのかな、これはこういうものを前にしてんのかな」みたいな要素が多く含まれていて。現実世界のメッセージ性みたいなものがたくさん含まれているから、僕はそこがすごく好きでしたね。

いくつか印象に残っているシーンがあります。主人公と生き残っている人たちが、家に逃げ込んだ後、食糧が尽きてしまうからスーパーマーケットに行こうっていうシーンがあるんですよね。その家にある車の窓を全部黒く覆って、カーナビだけを頼りに行くんですけど、向かっている途中でなにかが近づいているから、カーナビの音がピピピピピって鳴ってるんじゃないかみたいなシーンがあって。あれは息するのを忘れるほど怖かったですね。

僕は今までそんなシチュエーションの作品を観たことがなくて。“見てはいけない”という世界観の設定が面白いのに、その設定をより面白くしたシチュエーションだと思います。こんなのをよく思い浮かんだなと、非常に印象に残っています。

あと、主人公には回想では子供が1人しかいなかったのに、現実世界では子供が2人いるんですよ。その理由が明らかになるのが感動的なシーンだったので、胸をグッと掴まれました。ありえない世界の話ではあるけど、ほかにも人間同士の友情や愛情が苦しいくらいに表現されているシーンが多くあって、彼らの気持ちが心に届きました。

『今際の国のアリス』のあそこまでの殺し合いのゲームは現実にはもちろんないにしても、形を変えてどこかに存在している世界だと僕は思っています。登場人物の気持ちや抱えている葛藤みたいなものがリアルで、現実に生きる自分たちと繋がる部分がすごくあったんですよね。

もしもニラギが『バード・ボックス』の世界にいたら…結構生き残ると思います。たぶんライトサイドの人間ではなくて、主人公に対して悪影響を与えるような存在な気がします。僕がニラギだったら、たぶん目をつぶるか目隠しして、弱い人の後頭部に拳銃を突きつけて、その人を目の代わりにしながら歩くと思いますね。…あ、違うよ。見たふりして、いろんな人を殺すんですね、きっと。ニラギだったですよ、僕じゃないですよ。僕じゃないですよ、ニラギだったらですよ(笑)。

未知なる世界にトリップできる『ザ・ミスト

謎の霧(ミスト)が、最初は山から街に降りてくるんです。そのミストのなかに入ると幻聴が聞こえたり、恐ろしい気配を感じたりするんですよね。そして、9割命を落としてしまうんです。なにかに襲われるとか、自殺してしまうとか。なにかそれがまったくわからない世界線から始まります。観ている僕たちもそうだし、登場人物も全く同じ気持ちです。原因不明のミストだから、ドアを開ければ入ってきちゃうんですよ。だから常に建物のなかにいなきゃいけないっていう、非常に絶望的で、とんでもない恐怖が描かれている作品ですね。

10年以上前の映画版の『ミスト』が、僕は非常に好きだったんですよね。僕は同じ作品を何回も観ないんですけど、映画版の『ミスト』に関しては、2、3回は観ているかな。当時、僕はあんな絶望的なオチは観たことも聞いたこともなかったです。それをNetflixシリーズ『ザ・ミスト』として制作するなら観るしかないんですよ。今の映像技術でまた観られたので感動しましたね。

どうしてこういう作品が好きなのかというと、『バード・ボックス』もそうですが、僕は未知の世界だったり、自分のなかで知らない恐怖みたいなものを知るのが好きなんですよね。なにか全く違う世界にトリップできるというのがすごく好きなので、僕が作品を観るときの条件のひとつになっています。

ザ・ミスト』は、ショッピングモールと教会のシーンが結構長く描かれています。人間の力ではどうしても抗えない大いなるなにかがあって、それと人間がどう共存していくのか、選択をどうするのかっていうものがちゃんと作品のなかに見え隠れしています。そういう世界の人たちだからこその選択と、僕だったらこうするだろうという選択を比べたり。いろんな人間の価値観が見られるので、だから僕はこういう作品が好きなんだと思います。

こういう作品には、なんでわざわざそういうことするのって人が現れるんですよ。自らしっかりフラグを回収しにいってくれる方々がいらっしゃる。刑事ドラマでいうところの「こんなとこで寝てられるか。俺は2階に行って先に寝かしてもらうぜ」って行ったら、犯人に殺されてしまうお約束。それを買って出てくれる人たちって、なぜか観てる側からするとちょっといけ好かない人なんですよね。『ザ・ミスト』でも主人公が「今は外に出ない方がいいよ」って言ってるのに、「こんなところに居たくないわ」って主人公に悪態ついて、ショッピングモールから出たら、もう10秒15秒くらいで…。なにかが起こると思っていましたよ。案の定大変なことになっちゃって。恐ろしいシーンです。

僕は主人公目線で物語を観ているからですが、明らかに外に出たらヤバいってわかりやすく観せてくれるシーンが多々あるので、僕はなるべく信頼できる人たちと徒党を組んで、絶対に外には出ないですね。こういう作品を見過ぎて予備知識があるので、「ここ絶対なにか来るじゃん」とか読めてしまって。こういう世界には入れない、邪魔な人ですね、僕(笑)。

一方、いい意味で予想を裏切られたシーンもあります。最初に亡くなる人って、ミストのなかに潜んでいる恐怖というものから直接的な要因があって死んでしまうのではなくて、ミストに追い詰められた人が錯乱して人を殺してしまうんだっていう。そこに僕はリアリティを感じてすごく印象に残りました。

(『今際の国のアリス』の)二ラギならミストは食らわないと思います。これがまた『ザ・ミスト』の面白いところなんですけど。なぜか生きながらえることができる人たちが出てくるんですよ、不思議なことに。その条件がわかりやすく描かれているわけではないんですけど、二ラギだったらその条件に当てはまってる気がするな。まあ、そこでも二ラギは正義の人にはならないかなと思います、悲しいことに。

実録映像だけで制作されたドキュメンタリー「アメリカン・マーダー: 一家殺害事件の実録

普段、殺人事件や痛ましい事件のニュースを見たとき、事件の状況と犯人の動機をニュースキャスターさんが話しているのを聞いて「なんでこんなことが起きてしまうんだろう」と思うことはあるんですけど、当事者じゃないので正直どこか現実とリンクしていないと思ってしまう感覚があります。僕が出ている芝居でも、人を殺してしまうようなシーンがあるけど、実際の事件を基にして作っていても結局は作り物なんです。

アメリカン・マーダー: 一家殺害事件の実録」は、2018年に実際に起きてしまった事件なんですけど。4人家族で、奥さんと子供2人が行方不明になったから、旦那さんが捜索願を出して。実際の防犯カメラとか、隣人に聞き込みに行っている映像とかが使われていて。非常に生々しいとかそういうものじゃなくもう生の作品です。この作品のすごいところは、本当に実際の犯人が映っているし、行方不明になる前の親子の映像が使われていたりするから、よりリアルに感情が入ってきてしまうんですよ。

これは楽しめる作品でも、面白い作品でも、簡単に人にすすめられる作品でもありません。僕も観ていてすごくつらい気持ちになりました。ただ僕にとって深く心に刻まれた部分があって、目を背けてはいけない側面も描いています。

とくに印象に残っているのが、実際のFacebookとかSNSの投稿の画面ですね。奥さんが結構SNSを多用している方だったんですよ。だからこそ失踪したときに、SNSが止まったりするわけじゃないですか。みんなそんなつもりがあって使ってないけど、いざ事件に巻き込まれてしまうと、それすらもちょっとした材料になってしまうというか。現代ならではのそういう要素なのか、怖いなって思いましたね。

あと、最後に犯人がしっかりと出てきて、自供するシーンがあるんですよね。取調室のシーンなんですけど。これまで僕も作品で犯人役をやったことがあるし、いろんな作品で犯人の自供のシーンを観てきたんですけど、本当の映像は観たことがなかったんですよね。この作品の犯人の自供のシーンを観て、すごく胸が痛くなるし。何も言えないって、このことだなっていう感じですね。

また犯人の動機が非常に悲しいんですよね。殺人を犯してしまうってことは許されないことなんですけど、ただそこに普段のニュースでは描ききれない犯人の動機とか、本当に苦しんでいる姿を見ると、同情だって言われるかもしれないですけど、犯人もどうにかして救うことができなかったのかなって思ってしまうんです。

こうやって僕が話している間にも、世の中のどこかで犯罪に手を染めてしまう人たちがいて事件が起きてしまっているかもしれないと思うと、そこから目を背けてはいけないですよね。そこから自分の生き方を見つめ直して、自分の周りの人や環境も大切にしていこうという問題提起みたいなものは浮かびます。それが僕のなかでこの作品の唯一の学びだったり、今後に活かせることなのかなと思っています。

しかし、非常にショッキングな作品なので、視聴するかはご自身で考えて観ていただけたらいいなと思います。

転載元:Netflix note

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