『散歩する侵略者』が描く“未知の”侵略…大切な人が侵略者に体を奪われた、そのとき妻はー

2017.09.01
特集

FILMAGA編集部

フィルマーくま

岸辺の旅』で第68回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門監督賞を受賞。国内外で常に注目を集め、日本を代表する映画監督の一人である黒沢清監督。
今回彼が挑んだのは、劇作家・前川知大率いる劇団イキウメの人気舞台「散歩する侵略者」の映画化です。

行方不明だった夫が「侵略者」に乗っ取られて帰ってきたという大胆なアイデアをもとに、人々が気がつかないところで少しずつ、確実に蝕まれていく日常を描いており、平行する2つのストーリーが次第に交わり、誰もが驚く衝撃の展開を迎えます。『散歩する侵略者』はまもなく9月9日(土)公開。

今回は公開に先駆け、先日行われた試写会で映画『散歩する侵略者』を一足早く観賞したFilmarksユーザーによるレビューとあわせ、そのみどころをご紹介していきます。

散歩する侵略者

 

“目には見えない侵略”…侵略者が奪うのは、人間の○○。

みなさんは侵略映画と聞いて、どんな作品を想像するでしょうか?
世界的に有名な『インデペンデンス・デイ』や『クローバーフィールド/HAKAISHA』、『エイリアン』など、地球外生命体(宇宙人)による地球への侵略をテーマにした映画は決して珍しくはありません。

散歩する侵略者』も大きなテーマとしては侵略者による地球の侵略の過程が描かれていますが、いわゆる“地球侵略映画”とはまったく異なる作品に仕上がっています。
本作で人々の日常の中に紛れ込んだ「侵略者」が地球侵略のために必要としているのは、人間たちの「概念」。それらは目に見えず、形として捕らえることは出来ません。
そして人々の頭の中にある様々な事柄に対する「概念」は、それぞれまったく異なるものでもあります。

物語の中には侵略者によって概念を奪われる様々な人々が登場します。
誰の中にも漠然と、しかし確実に存在する「家族」「仕事」「所有」「自分」「愛」など、自らの行動や生き方の指針となる「概念」を喪失すると人間はどうなるのか……。
「侵略」により「概念」を失った人々が迎える結末は……? あなたの中にある「侵略映画」のイメージを軽く飛び越え、強く記憶に残る作品となるでしょう。

散歩する侵略者

■作品自体には深いものがあって、人間は「概念」に囚われすぎていることがよくわかった。し、すごく考えさせられるストーリーだった。一つ一つのシーンに感動する点がたくさんつまってた!(chikakoabeさん)
■現代人の「概念」と「言葉」についてとても考えさせられました。鳴海の「もう時間残ってないじゃん」のセリフが見たあとじんわり残りました。気づいたときには、もうそれはなくなり始めてることって意外と多いですよね。前川知大さんの作品は「太陽」のときに初見だったのですが(そのときも原作未読でした)、いつも人間の根っこのところをファンタジーに表現するのがとても上手いなと思っています。今後の作品も楽しみです。(rnrn9ykmkさん)
■作品の世界観はごく普通なのに何かが異様で、でも絶対誰もが考えた事のある侵略の様は壮絶。普通の、ごく普通の日常です。普通というものが存外脆いんだなと感じました。SFだからですかね。この作品をなんと形容していいやらわかりません。宇宙人には持っていなくて人間にだけあるものを大事にしたいなあと思いました。(zaizenpさん)

豪華俳優陣が集結! それぞれが挑んだ新境地と彼らの熱演がもたらした美しきマリアージュ

主人公・加瀬鳴海役には、映画、ドラマ、ミュージカルと日々躍進をみせ、日本のエンターテインメントシーンには欠かせない存在となった長澤まさみ。夫に起こった「異変」に気がつき、翻弄されながらも状況に立ち向かう妻という難役に挑んでいます。
夫・加瀬真治役には唯一無二の独特な存在感と演技力を魅せる松田龍平。人間の身体を乗っ取った侵略者というこれまでにない設定を見事に演じています。
一方、町で発生した一家惨殺事件を追う中で、偶然侵略者に出逢い、彼らと行動を共にする事になったジャーナリスト・桜井役に長谷川博己。実力派俳優として様々な作品に引っ張りだこの彼が魅せる、これまでの出演作を超える熱演は鳥肌ものです。
桜井と行動する侵略者・天野役には、今年6本の映画作品に出演している今期待の若手俳優・高杉真宙。そして侵略者・立花あきら役には、『くちびるに歌を』や「真田丸」など話題作に出演する同じく若手注目女優の恒松祐里。見た目は高校生ながらも中身は侵略者という複雑な役柄をそれぞれ好演しています。

本作で主要キャストを務める5人はいずれも黒沢監督作品初出演、かつ映画初共演というフレッシュなキャスティング。
さらには前田敦子満島真之介光石研東出昌大小泉今日子笹野高史など、豪華すぎるオールスターキャストが魅せる演技が絶妙に作用し合う本作。
サスペンス、アクション、コメディ、そしてラブストーリーとジャンルを超えて、誰も観たことがない娯楽映画としての新境地を体感できる作品となっています。

散歩する侵略者

■特記すべきは。長谷川博己が自分の役をすごく楽しんでフルスウィングしてるのがわかって見てて面白かったこと。バッキバキのアクションこなす恒松祐里もいい味出してたこと。そして松田龍平はこういう役は本当にハマること。(alice_さん)
■出演者は松田龍平だけでなく、宇宙人役の若い2人が本当に宇宙人ぽくてとても良かった!!特に天野くんの目が狂ってる感じが◎(ritzchanさん)
■とにかくキャスティングがピタリとはまっていて松田龍平の宇宙人っぷりは最高。概念を奪ってだんだん人間らしくなっていく真治の目つきの変化に脱帽。そして安定の長谷川博己。この人はどんな役でも魅力的なキャラクターに仕上げてきて我々を楽しませてくれる。(kumi23561025さん)
■長澤まさみの演技が光ってたな。そりゃイライラするのも当たり前なんだけど、その怒り方がとてもリアルでよかった。語尾の強さとか、物の渡し方とか、表情とか歩き方とか、もうすごいリアル。こんなにも日常的な怒り、意外と映画で見ることができたのは初めてかもしれない。個人的には自分の母親と父親のやり取りを思い出した(笑)でも結構そういう人多いんじゃないかな。それくらいリアル。(akny1124さん)

あなたにとって本当に大切なものとはー「侵略」によってたどり着いた愛の形

目には見えない形で忍び寄り、当たり前の日常を突然壊してしまう「侵略」。

黒沢清監督が「日本のどこかの、どこでもない町」をイメージして描き上げた本作は、フィクションのようでいて、信じられないことが突然起こる時代だからこそ、実際に私達が生きる現実とどこかリンクしているように感じます。
その日まで夫だと思っていた男から「自分は侵略者だ」と告げられた妻がとった行動、そして二人が迎える結末……。

本作を通して、あなたが大切にする「概念」があなた自身にどう作用しているのか。そしてあなたの周りの大切な人々とどう作用しあっているのか。そんな普段なかなか着目する事のないテーマに目をむけ、考えてみるのもいいかもしれません。

散歩する侵略者

■さすが!前川知大さん原作!何も考えないと意味不明な作品になってしまうけど、深く考えると意味が見えてくる作品。"愛"の力はすごいとしみじみした。(a.o1103さん)
■めちゃめちゃ面白かったです。黒沢節炸裂でした。黒沢清が恋愛映画を撮るとこうなるんだなぁと。泣きました。いい夫婦。旦那さんの元の性格も見たかった。夫婦ってどちらかの愛があれば死ぬまで一緒にいられるんだね。(n2ynanaさん)
■人間は「概念」に縛られ生きているということを改めて考えさせられた。人間は愛が無ければ何も感じなくなるというのは本当によく理解できる。黒沢監督らしい愛の映画だった。(kumi1987さん)

◆映画『散歩する侵略者』 information

散歩する侵略者

数日間の行方不明の後、不仲だった夫がまるで別人のようになって帰ってきた。急に穏やかで優しくなった夫に戸惑う加瀬鳴海(長澤まさみ)。夫・加瀬真治(松田龍平)は毎日散歩に出かけて行く。一体何をしているのか…?同じ頃、町では一家惨殺事件が発生し、奇妙な現象が頻発する。ジャーナリストの桜井(長谷川博己)は取材中に一人、ある事実に気づく。やがて町は急速に不穏な世界へと姿を変え、事態は思わぬ方向へと動く。「地球を侵略しに来た」— 真治から衝撃の告白を受ける鳴海。混乱に巻き込まれていく桜井。当たり前の日常がある日突然、様相を変える。些細な出来事が、想像もしない展開へ。彼らが見たものとは、そしてたどり着く結末とは?

上映時間:129分
<2017年9月9日(土)全国ロードショー>
公式サイト:http://sanpo-movie.jp/
配給:松竹=日活
(C)2017『散歩する侵略者』製作委員会

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  • 日本刀
    3.0
    後半に進むにつれ懐かしい黒沢映画って感じがして楽しめたけど物足りなさもある。東出との対峙シーンのどちらが宇宙人かわからない感じが良かった。
  • ベルサイユ製麺
    4.2
    散歩する怪しい侵略者の隣人を撃て!! 冒頭の、何処と無く嫌なバランスで建つ一軒家から、もう黒沢節の、予兆の予兆に絡め取られてしまいます。ロケーションと光の加減だけで黒沢世界は突然立ち現れる。ああ、嫌な事が始まるんだろうなぁ、嬉しいなぁ。 血濡れの室内。返り血を浴びた姿のまま、よろめきながら国道を歩く女子高生…。横転するトラック。いつもの黒沢作品以上にストレートな惨劇の図。なのに劇伴はまるでコメディの導入の様に呑気に響きます。 我々の社会の中に、いつのまにか“自称”宇宙人が数人紛れ込んでいて、彼等は元々そこに居た人間のガワだけを借りて内部を乗っ取っています。彼等は人間としては生まれたてみたいな物なので、他の人間から社会通念というか“概念”を吸い取って“人間的”に成長します。彼等の目的は、シンプルに“侵略”。人間を知り、より効果的な侵略のプランを探るのが、彼等、地球に降りてきた宇宙人の役目です。 …なんだ、ただのホントの話か。そうだと思っていたよー。宇宙人は地球の事を効率的に知るための“ガイド”と言われる人間を定め、タッグを組みます。行動に支障が出るのでガイドから“概念”を奪わない様にしています。ナルホドー。それは知らなかった。実際、概念を吸い取られた人々は、程度にも依りますが、まるで白痴の様であったりして。そうなると自分も結構“概念”吸い取られているのではないかしら? …ホントに不安になってきたのでこのノリは辞めます。 概念吸い取りのアイディアが本当に面白い。“仕事”を吸い取ると幼児化する、とかまでなら想像の域ですが、所有を意味する“××の××”の、“の”を吸い取られた青年(満島慎太郎)のチャクラがパッカーンと開いちゃった雰囲気は「いるいる」って感じだし、実社会で見かける何かが過剰な人は、反面何かが根本的欠落している人でもあるように思えてきました。 物語は2組のユニットの描写の積み重ねで進行します。先ず女子高生の立花(恒松祐里)とその男友達の天野(高杉真宙)の2人の“宇宙人”と、その“ガイド”のジャーナリスト桜井(長谷川博己)の3人組。概念抜き放題、邪魔者消し放題の宇宙人達の雑念の無いピュアな振る舞いの前に、桜井の正義感のなんと薄っぺらく見える事か。彼等が主に縦糸として物語を引っ張って行きます。個人的には立花を演じた恒松祐里さんの佇まいにKOされました。後半の、まるで装苑のストリート系スタイリングみたいな着こなしには震えます。進んで概念を差し出したい…。 そして“ガイド”鳴海(長澤まさみ)と“宇宙人”真治(松田龍平)の夫婦のパート。愛が壊れかけていた夫婦が、まるで赤ちゃんの様になってしまった真治を支える形で新しい関係性を築いていく展開は、非常に示唆に富んでいると思います。…漠然と。 物語の進行はさておき、彼等のやりとりをずっと観ていたいような気持ちでした。途中で神父(東出昌大)と真治が“愛”について話し合うシーンが有り、一瞬で脳が沸騰しましたとさ…。 終盤、(外でえらいことが起こってて)光が明滅する磨りガラスの前で鳴海と真治が話し込むショットがあり、これがもう完全に“アンヌとダン”に見えました。このシーンに限らず、ウルトラセブンテイストは節々に感じ取れます。“愛”です。 勿論、黒沢映画のお約束の“車中のシーン”。映画館の、スクリーンの中の、密室の、中のスクリーン。殊更“映画”を強く意識させられる描写です。何故だか今作ではいつもよりオプティミスティックに感じられました。というか、ここに関わらず、今作はやたらに明るい。ラストなんて嫌になるほど希望的です。原作に由来する部分もあると思うのですが、それにしても恐らくは普段より予算も大きく話題性も有る今作で、黒沢清監督はいつもより力むどころか、抜群の脱力をして見せている印象です。 ピンク系・ホラー系の出自の為に黒沢監督作品を敬遠している方もいるかと思いますが、今作は個人的には誰でも気楽に楽しめる、間口の広いエンターテイメント的な作品だと思います。勿論何度でも違った視点で楽しめる深さも有ります。控えめに言って傑作!…け、傑作って何…?ぺたん…。
  • iD
    3.8
    「人間から"家族・所有・仕事・愛"...等といった概念を奪って、人間について学習していく宇宙人」...という設定だけで、もはやどう料理しても面白いに決まってるじゃんと感じた。実際の内容はまぁそこそこだった。 これって分類としてはコメディに当たるのかな?随所に来るシュールなギャグが本当に笑えた。(主に松田龍平絡みの) 物語のラストに、ナルミが「愛」という概念を奪われて藻抜けの殻になってしまう展開。てっきり物語の道中で出会った教会の神父さんが「愛は減ることがない」的なことを言っていたので、奪われても変化が起きないものかと思っていたらこの展開。自分の解釈不足なのか、何だか釈然としなかった。 一つもっと期待したかった点としては、概念を奪われた人が、大体物語に深く絡んで来る人以外は藻抜けの殻状態になってしまうのは惜しいなと感じた。"家族"や"所有"、"仕事"を奪われた3人のように、もっと「なるほど、◯◯を奪われると人ってこうなるのね!笑」と頷けるような解を次々と見せて欲しい所だった。 何はともあれ「思考実験」的な面白さが抜群の映画でした!
  • Aircon
    3.6
    概念を奪うタイプの宇宙人で、 例えば所有の意味での「の」を奪ったり、 奪われた人はその概念を失うので、 思考実験的なおもしろさがあった。 ツッコミどころとか都合良いところは多い脚本だけど、 発想はおもしろかった。 盗ったらどう変わるとか、 盗られたらどう変わるとか、 もうちょっと変化に説得力あってもいいと思った。 変化がシンプルすぎるというか。
  • lincoln
    3.0
    低予算なのかわざとそうしてるのかわからないけど映像が安っぽい。元は舞台劇ということを聞いてなんか納得
「散歩する侵略者」
のレビュー(8740件)