イタリア人作家ミレーナ・アグスのベストセラー小説「祖母の手帖」を元にし、第69回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品、フランスのアカデミー賞と言われるセザール賞では主要8部門にノミネートされたフランス映画『愛を綴る女』が10月7日(土)より公開されます。
「闘いと狂おしいまでの愛への賛美」(ELLE)や「情熱的な欲望が奏でる美しい旋律」(Le Figaro)など海外メディアでも絶賛されるほど、愛を求め生きた女性の17年間の物語。
ひと足先に鑑賞したFilmarksユーザーのレビューとともに、そのみどころをご紹介します。
愛とは何なのか考えてみたくなる…最後の最後まで見逃せない作品
1950年代、南仏プロヴァンス地方の小さな村で両親と妹と暮らしていたガブリエル(マリオン・コティヤール)は愛に飢え、最愛の男性との結婚を熱望していたものの、地元の教師への恋に破れて自暴自棄に。
そんな彼女を「狂っている」と疎む両親から病院に行くか結婚するか選択を迫られ、親が決めたスペイン人労働者のジョゼ(アレックス・ブレンデミュール)と結婚。
「絶対に愛さない」と誓い合うものの、妊娠、そして流産してしまうガブリエル。その原因が彼女の腎臓結石とわかり、アルプス山麓の療養所で6週間の温泉治療へ。
気が進まない治療生活だったはずが、そこでガブリエルは帰還兵のアンドレ・ソヴァージュ(ルイ・ガレル)と出会ってしまい……。
ひとりの女性の少女時代から結婚、夫がいながらの恋愛、そして出産・子育てまでの17年間を描き、そして最後にようやく真実の愛を知るというストーリー。ただ愛欲におぼれた女性を表現しているだけではない衝撃的な作品です。そして観終わったあと、「愛とは何か」自分の経験と照らし合わせながら考えてみたくなる奥深い映画でもあります。
■美しいだけのマリオン・コティヤールだけでなく、ひたすら夫の愛が素晴らしいと感じた。また切なさとチャイコフスキーが合いすぎていてさらに切なくなった。(5rilakkumaさん)
■真っ直ぐな愛情それだけを起点として生きることはどれだけ尊いことだろう。こんなにも誠実な愛を注げる人がこの世界に存在することを他人ながら幸福に思う。と同時に、そういった対象がひとりひとりに本来は用意されているものだと信じたい。(YUI-Sさん)
■悲しく、そして壮大。愛って、家族って、こころって、そんな簡単なことじゃなかった。これが愛だ、解るか?と問われた気分。(nicomaryさん)
■幻覚と幻聴か。はたまた現実だったのか。恋愛ミステリーのような映画。フランス映画の静かに流れる雰囲気に対して苦手意識はあったけれど、この作品はあっという間にストーリー展開をし、最後には驚かされる結末でした。(maru1125さん)
ヒロインの姿を見れば、信念を貫き通す勇気が湧いてくるかも!?
愛について考えさせられるだけでなく、特に女性にとっては生きづらい世の中を乗り越える力を与えてくれる作品にもなるかもしれません。
愛がないとはいえジョゼという夫がいながらも、療養所で出会ったソヴァージュに想いを捧げるガブリエル。彼と離れてしまった後も、彼女は必死に手紙を綴り続けます。
愛がなければ生きていけないと言わんばかりに、ガブリエルが想い人へ情熱的になってしまうのは、その背景に人と違うと異端児扱いされ、親から十分に愛情を注がれてこなかったことも一因としてあるのでしょう。
しかし彼女は、たとえ他人に狂気に満ちていると思われようと自分が求めている愛を手に入れるために本能の赴くまま生きる女性です。
一方、さまざまな社会的なしがらみや他人の目線を気にして、愛はもちろんほかの事柄もつい打算的な選択をしてしまう現代女性は少なくないのではないでしょうか。でも何の計算もなく、愛へ真摯に向き合うガブリエルの姿を見れば、信念を貫き通す勇気が湧いてくるかもしれません。
■愛と狂気の境目があやふや。ガブリエルを愛に生きる女と見るか、狂った女と見るか。私は、ただひたすら愛を求め続けたように思えたから、ガブリエルの正直な言動に嫌悪感は抱かなかった。(nakanipiさん)
■理性のふっとんだ様やそれに反したたまに妹との会話に見せる笑顔や、最後ジョゼを見つめる目の優しさとか、マリオン・コティヤールの凄まじい繊細な表現力を見せつけられました。(otsukamizukiさん)
■主人公・ガブリエルの激し過ぎる愛が苦しくて切ない。追い求める愛と静かに見守る愛。冒頭の場面から繋がる思いがけない結末に驚きました。(marks0701さん)
繊細で複雑なキャラクターを演じきった実力派俳優たちのおかげで奥深い作品に
激情的であり、所作の一つひとつに官能的な雰囲気をまとうヒロイン・ガブリエルを演じたのは、『エディット・ピアフ〜愛の賛歌』でアカデミー賞主演女優賞を受賞したマリオン・コティヤール。
そして、高い感受性と儚さゆえに魅力を放つ帰還兵アンドレ・ソヴァージュは、フランス映画界で絶大な人気のあるルイ・ガレルが、情熱的なガブリエルとは逆に静かに彼女を見守る夫・ジョゼをヨーロッパ映画界で近年頭角を現しているアレックス・ブレンデミュールが演じました。
どのキャラクターも繊細で複雑な感情を持つ難役。でも実力ある主要キャストのおかげで、喜怒哀楽や緩急に満ちた物語がさらに趣深いものになっています。
ちなみに監督は、『愛と哀しみのボレロ』などで女優として活躍したニコール・ガルシア。役者としての経験があった彼女だったからこそ、ここまで演技に魅せられる作品ができあがったのだとも考えられます。
■マリオン・コティヤールの演技に引き込まれました。フランス映画が苦手な方でも嫌いじゃない内容だと思う。ファッションと音楽が個人的にはとても好みでした。(acconeさん)
■全編を通してガブリエルの湧き上がる愛と怒りの心の動きに引き込まれました。マリオン・コティヤールが素晴らしかったです。(ariitakuさん)
ラベンダー畑に穏やかでさわやかな海…プロヴァンス地方の絶景や劇中曲にも注目!
南仏のプロヴァンス地方が舞台のこの作品。自然あふれる絶景ばかりで、畑一面に広がるラベンダーの鮮やかな紫色や、穏やかで透明度の高いさわやかな海など、映し出された景色を楽しむのもおすすめ。
ほかにも劇中で流れるチャイコフスキー<四季>の「舟歌」も必聴です。その味わいある楽曲を堪能するだけでなく、ガブリエルとソヴァージュをつなぐキーとなる曲なので、物語をさらに深く読み解きたいのであれば、この音楽が流れるシーンをお見逃しなく。
■細やかで繊細な映像、音、すてきな風景。いつもあまり好んで観ないフランス映画だけど、なかなかよかったです。(norimakihawaiさん)
■久し振りに観たフランス映画。一筋縄ではないストーリーライン。でも好きだな、こんな感じ。陰影が綺麗でそこも良かった。こういう映画こそ映画館に足を運んで欲しいと思った。(sara12moonさん)
■全編を通じて映し出される情感たっぷりの風景や音楽も美しかったです。とても良い作品でした。(riot009さん)
◆映画『愛を綴る女』 information
あらすじ:南仏の小さな村に暮らす若く美しいガブリエル。最愛の男性との結婚を熱望しながらも、地元の教師との一方的な恋に破れ、不本意ながら両親の決めた正直者で情の深いスペイン人労働者ジョゼの妻となる。「あなたを絶対愛さない」「俺も愛していない」。そう誓いあったにもかかわらず、日々、近づいては離れる官能的な夫婦の営み。そんなとき、流産の原因が腎臓結石と診断され、アルプスの山麓の療養所で温泉治療することになる。そこで、インドシナ戦争で負傷した「帰還兵」アンドレ・ソヴァージュと運命的な出逢いを果たす。それは彼女が綴る清冽な愛の物語の始まりとなるのだった――。
上映時間:120分
10月7日(土)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー!
公式サイト:http://aiotsuzuru.com/
配給:アルバトロス・フィルム
(C)(2016) Les Productions du Trésor – Studiocanal – France 3 Cinéma – Lunanime – Pauline’s Angel – My Unity Production
※2021年9月8日時点のVOD配信情報です。