今年で6回目!「インディアン・フィルム・フェスティバル・ジャパン」を知っているか?〜おすすめ作品〜

Why So Serious ?

侍功夫

今年で6回目となるインド映画祭「インディアン・フィルム・フェスティバル・ジャパン(IFFJ)」。今回は東京・ヒューマントラストシネマ渋谷と大阪のシネ・リーブル梅田の2会場で開催され、東京は10月6日(金)、大阪は10月7日(土)よりスタート。約3週間に渡り、日替わりで16本もの選りすぐりのインド映画作品が上映される。

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もちろん、何をおいても全作品鑑賞をオススメするワケだが、誘惑の多い大都市での開催で、ついウッカリ街にしけこんでノッピキならない夜を過ごし、映画どころではなくなってしまう人も多いと思う。

そこで、上映作の中からオススメの作品を紹介しようと思う。ラグジュアリでアーバンな都会の夜にもよく似合うインド映画で、夜の後悔も洗い流してはいかがだろうか?

その前に…… 

今、なぜインド映画なのか?

多くの映画好きにとっては、むしろ「なぜまだインド映画を観ていないのか?」と、問いたいところである。

ジャッキー・チェンの新作『カンフー・ヨガ』はインド映画スタイルを取り入れ、ミュージカルシーンでは『恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム』のファラー・カーン監督をコレオグラファー(通常「振り付け師」と訳すが、この場合はミュージカル場面の構成と演出も兼ねているだろう)に迎えている。

テレビドラマ「クワンティコ/FBIアカデミーの真実」の主演プリヤンカー・チョープラー。『トリプルX: 再起動』のヒロイン役、ディーピカー・パードゥコーン。共にインド、ヒンディー語映画界のトップスターである。つまり、ハリウッドの最前線がインド映画に注目している証左だと言えるだろう。また、日本以外のアジア圏一帯ではインド映画の新作が公開され、ヒットを飛ばしている。

つまり、日本以外の全世界がインド映画の高い娯楽性に注目しているというワケだ。これらのことは、今一番面白い映画はインド映画であるという証左である。

『スルターン』

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今回のIFFJ全作品の中でも個人的にイチオシが『スルターン』だ。

主演は『ダバング 大胆不敵』のサルマーン・カーン。ヒロインには『命ある限り』『pk』で日本デビュー済み、ファニーフェイスなアヌーシュカ・シャルマ

惚れた相手のためにアマチュア・レスリングを始めるとメキメキ頭角を現し代表選手に登りつめるも、慢心から全てを失う男スルターンの贖罪と再生の物語。八角形の金網に囲まれたリングで決死の対決をするMMA(ミックスド・マーシャル・アーツ)を題材に「ロッキー」シリーズ全作と『ラ・ラ・ランド』を足しっぱなしで割らないような急転直下怒涛の展開をし続け、歌って踊って燃える展開する本作は、老若男女誰しも涙を搾り取られること必須の傑作である。

『心 君がくれた歌』

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なんと言っても“インドの至宝”アイシュワリヤー・ラーイと、今ノリに乗ってるアヌーシュカ・シャルマのダブルヒロインに目を奪われる。2人に翻弄されるのは、傑作『バルフィ!人生に唄えば』のランビール・カプール

このキャスティング、日本の俳優で例えるなら、西島秀俊石原さとみ長澤まさみと恋愛を繰り広げる。と、想像したそのイメージにゴージャス感を500倍増ししたくらいがちょうど良いだろう。

特にアイシュワリヤーの表情の高貴さは「これぞ映画!」と宣言してしまいたいほど。アヌーシュカも豊かな感情のアヒル口で隣のお姉さん的親しみ易い魅力を溢れさせている。この2大女優の魅力だけでも120億万分の価値がある。

『僕の可愛いビンドゥ』

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ペーパーバックのホラー小説家がスランプに陥る。編集者の勧めからラブストーリーを書き始めるのだが、当然自分の過去の恋愛と向き合うことになる。

本作では過去のインド映画の傑作が多く引用されているところからも解るが「記憶」の物語となっており、いわゆるシネフィル的な作品と言えるだろう。古いインド映画の傑作群をはじめ、ハリウッド映画などの引用やオマージュは、やはり映画的な快感に溢れている。

また本作は主人公の恋愛相手、幼馴染の“ビンドゥ”を演じるパリニーティ・チョープラーのコロコロ変わる表情も見所だ。ハッキリした目鼻立ちのインド美人が笑い、泣き、怒り、憂いる様子は眼福である。

『ラマン・ラーガヴ 2.0 ~神と悪魔~』

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「歌って踊る」「明るく楽しい」「ときめきのロマンス」というイメージが強いインド映画。IFFJでもそんなインド映画らしいインド映画が上映されるが、中には暗く陰惨な作品もある。『ラマン・ラーガヴ 2.0 ~神と悪魔~』もそんな恐ろしいインド映画であり、壮絶な深淵を抱えた傑作になっている。

1960年代インドに実在した連続殺人鬼ラマン・ラーガヴが、今の時代に暗躍していたら……という「過去の殺人鬼のアップ・トゥ・デイトなヴァージョンアップ」というのがタイトル「2.0」の意味。

手当たり次第に人を殺していくラーガブと、彼を追うことでタガを外していく刑事。という設定でゾワッと来た人は必見。そのタイプの作品を煮しめて濾して蒸留したような、澄んだ真っ黒な傑作となっている。

インド映画を観よう!

上記したオススメ作品の他にも、インドの国民的スポーツであるクリケットの実在するスター選手を描いた作品。ハリウッドも顔負けな刑事バディ・アクション作品。「音」をテーマとしたアンサンブル的オムニバス作品。もちろん、目に星がキラキラと輝くようなロマンス映画と、多様なインド映画が用意されている。

なお、渋谷では連日21時前後が最後の上映回となっている。終映は23時ごろ。眠らない夜の街に繰り出す前のひと時。世界随一を誇る娯楽の殿堂インド発のインド映画に触れてみてはいかがだろうか?

【インディアン・フィルム・フェスティバル・ジャパン詳細】
東京 10月6日(金)〜27日(金)/大阪 10月7日(土)〜27日(金)
http://www.indianfilmfestivaljapan.com/

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  • なくいら
    4
    私、あんまりスポ根映画を好んで観ないので、これは後回しにしていたんだけど、ようやく観た! 完全に、サルマンがアヌシュカにレスリングを教える話だと思ってたら全然全くびっくりするほど違っていた笑 過去の栄光はすっかり消え失せた、中年スルタン。 自分自身と、もう一度戦うことを決意する。 ご都合主義??いいじゃないの!! これがエンタメ映画よ!! ものすごく純粋でお調子者なスルタン、可愛くて好き。時々真顔ですごいこと言うのも『おいおい』って許せる。 不満といえば、最後の試合、普通に横で見ててやれよ、って思っちゃって。
  • ezu
    3.9
    スルタンという1人の男の成功と挫折を描いたスポーツドラマでした。 情緒的なサルマン兄貴も勇ましいアヌシュカーさんも良かった。私はコーチ役ランディープさんの応援したいけど見ていられないという表情にノックアウトされました。 前半…から終盤くらいまでスルタンにお前自分のことばっかりじゃないかー!と詰め寄りたい気持ちがあったんですが、その都度アールファがちゃんと諭してくれるし、全体通して愛する人の尊敬を得たい、という話なんだなと解釈して楽しく見ました。 なんとありがたいことに日本語字幕付きDVDが出ている。
  • どろんこノリー
    3
    【記録用】
  • safi
    4.5
    これぞ!王道! インドエンターテイメント! という映画 笑いあり恋愛ありスポ根あり涙あり! ダンガルとよく比較されることが多い映画だが、個人的にはインド映画としての完成度はこちらのほうがいいかなあ…と思ったり! なんてったってダンスがあるから! 勢いがありながらも丁寧な伏線回収もあり非常に楽しめる映画。 見たらげんきになること間違いなし!
  • くりふ
    4.5
    【身体的にはミスキャストだが…燃える!泣ける!】 IFFJ2017の上映にて。かつて頂点を極めた落ちぶれ中年レスラーの、再起を巡る物語。 今更、サルマーン・カーン50代のムキムキボディを見たいとも思わず、相手役アヌシュカー・シャルマーもレスラー役らしいがどうせ、英雄サルマーンの弟子筋な添え物だろう、と思っていたら…いいや二人の立場は逆!と知り、俄然興味が湧いたので行ってきました。 いやー、笑った燃えた泣いた! いい映画じゃないですか! 定番展開ながら、ボリウッド直球娯楽作としては今年一番かも。…今年も大して、数見ていないけれど。 まず悪かったところ。サルマーン演じるスルターンが何故落ちぶれたのか?と回想に入ってゆく導入ですが、その過去では30歳前という設定。 …いやいや無理過ぎでしょ! どうみても膨れたオッサンだよ。こういう時こそCGメイクでフォローすべき。前半はこれが最大の欠点。 一方、アールファー役アヌシュカーは、レスラーらしい身体作りは全くしていないらしく、コッチも説得力が薄くて…。これら身体的違和感に慣れるまでが大変でした(笑)。 あと、スポーツアクションとしての流れからだと、歌と踊りがちょっと邪魔な箇所あり。ボリウッド本道だから仕方ないのかもだけど。 が、それらに目を瞑ればほぼ、文句なし! 一番感心し共感したのは、アールファーの人生を、女性差別と闘う物語として描いているところ。彼女は何故、わざわざレスラーとなり、頂点を目指すのか? 表向きはスルターンの成功と挫折、再起の物語ですが、負けぬ強さでアールファーのフェミな物語が最後まで脈打ち、本作を掛け算で面白くしています。 インドの家庭では、未だ女の子を望まぬ風潮が強く、胎児が女とわかると堕ろしてしまう、というケースもあるそうですね。そういう社会背景をすんなり取り込む手裁き、やっぱりインドの娯楽映画は巧いと思う。本作、ラストでもちゃんとメッセージを送っています。 インドの古式レスリング(相撲に近いらしい)から、現代らしくイベント化された異種格闘技への変遷も興味深いし、何よりレスリングを、敵との勝負というより、自分自身との闘いと位置付けたのが心地よかった。 燃えます泣けます、この終盤戦! エンドロール後には、客席からは拍手も起こっていました。 サルマーンは、こういう形で弱さを演じるのは珍しいようですね。現代編になってからは、枯れマッチョなジョージ・クルーニーに見えたりもしましたが、さすがの存在感でした。 漢らしきアヌシュカーはそうそうこれぞ彼女!と文句なしの嵌り役でしたが、花嫁姿や幻想シーンでの姫姿もあって、ちゃんと美しくもありましたね。 <2017.10.14記>
スルターン
のレビュー(99件)