舞台作品の醍醐味を味わえる?特異な雰囲気を醸し出す舞台原作の映像化作品3選

2017.10.31
邦画

映画も音楽も本も好き。

みずき

小説や漫画の映画化が多いのは言わずもがなですが、舞台化作品や戯曲の映画化も目立つ昨今。演劇の分野で活躍する劇作家や役者の方々を映画の世界でも目にする機会が増えました。

舞台出身の方は個性が強く、テレビや映画のみで演技を続けてきた方とは雰囲気も異なるように思います。阿部サダヲ宮藤官九郎など、いまではどちらの世界でも人気の大人計画ですが、出始めのときは異質な空気を感じた方も多かったのではないでしょうか。

今回は、舞台作品から映画化に至った作品をご紹介いたします。
コメディ、社会派、SFなどなど。

パコと魔法の絵本(2008)

paco

舞台は奇妙な人ばかりが集まる、とある病院。入院患者の偏屈な大富豪・大貫は、交通事故で両親を失い、後遺症で1日しか記憶がもたない少女・パコと出会う。パコとの出会いで自分の人生を見つめ直す大貫は、彼女にとある提案をする。原作は、後藤ひろひとの舞台作品「MIDSUMMER CAROL ガマ王子 vs ザリガニ魔人」

監督は、中島哲也。近ごろの中島哲也監督は『告白』や『渇き。』など、過激な作品が目立ち、それらに比べれば誰しもが観やすく、万人受けの作品です。個人的には『下妻物語』なども好きなので、笑いに振り切った作品も観たいなと思うこともしばしば。出演は、役所広司アヤカ・ウィルソン妻夫木聡、阿部サダヲなど。

中島哲也監督の代名詞とも言える、極彩色のビジュアルは『嫌われ松子の一生』の流れを汲み、3DのフルCGを用いた映像は非常に鮮やか。パコの持つ飛び出す絵本を思わせる手作り感の溢れる立体的な演出など、ワクワクを絶えさせない美術が素晴らしく、視覚的に愉快な作品です。

本作の特長は、劇中劇を用いた入れ子構造。学芸会的な手作りの舞台を思わせる映像のタッチが印象的で、日本映画界屈指の役者たちがおもしろおかしい衣装をまとう姿もみどころのひとつ。まるで、絵本の世界に迷い込んだように思わせられる、ティム・バートン的とも言えるファンタジックな映像の魅力はもはや折り紙付きでしょう。最新作の公開が待ち遠しい監督のひとりです。

葛城事件(2016)

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葛城清は、美しい妻とのあいだに2人の息子も生まれ、念願のマイホームも建てた。思い描いた理想の家庭を築けるはずだった。しかし、清の想いの強さは、気づかぬうちに家族を抑圧的に支配するようになる。
リストラを家族に言えない長男・保。仕事の続かない次男・稔は、清にそれを責め立てられる日々。そんな生活に妻・伸子の不満は爆発。葛城家は一気に崩壊へと突き進む。原作は、本作の監督・赤堀雅秋の同名舞台作品「葛城事件」

監督は、赤堀雅秋。前作『その夜の侍』も戯曲の映画化です。こちらも本作と同様に衝撃的な内容。赤堀雅秋は、役者の仕事も多く、今月公開の『彼女がその名を知らない鳥たち』にも出演。劇作家の方は自身でも演じられる方は多いですね。出演は、三浦友和南果歩新井浩文若葉竜也田中麗奈など。

実在の事件をモチーフに舞台化、映画化に進んだ強烈な印象を残す本作。新井浩文は舞台と映画のどちらにも出演。配役は異なりますが、弱々しく、覇気を感じられない長男・保の役も見事にハマってます。

三浦友和を中心に役者たちが素晴らしく、狂気をはらんだそれぞれの鬼気迫る演技は見ものです。しかし、彼らの抱える狂気のすべてを異常者のそれと一括りにまとめることにも違和感を覚えます。なぜなら、誰しもが抱える狂気の断片的なものをそこに感じられるから。それは、わたしたちに複雑な感情を抱かせます。

本作の怖さは、普通の家族を描いているところ。既視感を覚える家族像が徐々に歯車を狂わせ、崩壊への末路を辿ります。それは、どんな家庭にでも起こりうることの示唆につながり、わたしたちの生活と地続きだと突きつけるように思わせられます。

内容的にも苦しさを感じますし、観るひとを選ぶ作品ですが、本作を観たあとは事件の報道や、加害者家族への気持ちなどを考えるようになります。役者たちの圧倒的な凄みと物語に衝撃を受ける作品のひとつでしょう。

太陽(2016)

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21世紀の初頭、ウイルスの蔓延により、人類はふたつの階層に分かれていた。ひとつは、若々しい肉体と高度な知能を引き換えに太陽の光を浴びることができない新人類「ノクス」。もうひとつは、ノクスの管理下で貧しく生きる旧人類「キュリオ」。ふたつの人類の対立を通し、生きることの意味を問いかける物語。原作は、劇団イキウメの同名舞台作品「太陽」

監督は、入江悠。代表作は『SR サイタマノラッパー』など。レンタルが始まったばかりの『22年目の告白 私が殺人犯です』も記憶に新しいですね。12月には、新作『ビジランテ』も公開。『太陽』の出演は、神木隆之介門脇麦古川雄輝など。

舞台の強みは、最低限の装置を用いて観客の想像力に委ねられるところでしょう。たとえば、重ねた木箱の上に立ち、そこを煙突の上と言えば、観る側にはそう見せられる強さがある。『太陽』は、そういった舞台らしさを感じられる作品です。

海外の大作SF作品に観慣れたわたしたちは、邦画のSF作品に満足感を抱けないところがあるかと思います。やはり、映像の質だったり、迫力が見劣りしてしまうのは正直な感想でしょう。ただ、『太陽』の優れたところは、前述の舞台らしさでそれを見事に補っている点。

本作では、二極化の進んだ未来が描かれ、どちらも絶妙に近未来の日本を思わせます。ひとつは、日本の行き詰まった未来にも感じられる辺ぴな農村。自然の美しさと、ダムの人工的な無機質さが印象的です。もうひとつは、発展を遂げた未来。ただし、どちらもディストピアに感じられて、それは日本の未来への警鐘にも受け取れます。

長回しの多用も非常に舞台的です。日光に晒される森繁を救い出す場面や、村人たちの暴動など、緊迫感の溢れるシーンをまざまざと見せつけられます。とりわけ、前者はショッキングな展開と、不協和音にも似たサイレンの効果が素晴らしい。映画から舞台らしさを感じられる、稀有な作品。お薦めです。

さいごに

ご紹介の作品はどれも舞台の要素を持ち合わせた映画化作品。
ぜひ、舞台の映像化作品からしか味わえない醍醐味をご堪能ください。

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  • MAKO
    4.0
    これは舞台版があって、それは大阪の池田小の事件を元に作られたそうです。今回の『葛城事件』は、池田小、秋葉原事件等を元に作られたフィクションだそうです。 全体的に画面が薄暗く、登場人物の心を映しているかのようでした。 父親は家族の為にマイホームを建て、これから先も幸せが続くと信じていたはず。庭にみかんの木を植えて。 それなのに、いつの間にか家族は壊れていく。 食卓には母親の料理は並ばず、いつもコンビニ弁当。 家族って、ただ揃っているだけでは家族じゃないんだと気付かされました。相手への思いやりや愛情を注がなければ家族にならない。 当たり前なのに、それが希薄な家族ってリアルにあるんだろうな。 葛城清(三浦友和)は、家さえあれば家族であると思っていたのだろうか。昔の家族写真を見ている清がなんともいえなかった。 ラストは切なくなりました。 三浦友和の演技は圧巻でした。こんなに上手い俳優なんだと思いました。 南さんも、新井さんもはまっていました。 重い映画でしたが観て良かったです。 ※2016年当時の感想
  • DSPEC
    3.6
    記録
  • bobotch
    3.5
    理想の家族を築こうという思いが、逆に家族を抑圧してしまい、気付いた時には修復できない状態に… 事件化してないだけで、こういう家族というのは結構ありそう。 俳優陣の演技が良いがために、余計に重い雰囲気が出ていて、良い意味でもう一度見ようとは思えない。 予告編のキャッチである【家族という地獄】が、まさにこの映画を端的に表現している。
  • Otun
    4.2
    劇団シャンプーハットは大好きな劇団です。 今作の舞台公開当時、新井浩文が初舞台?とかで全くチケットが取れなかった。 今作の映画公開当時も結果スルー。 んで、今さらの初見。 赤堀雅秋作『葛城事件』。 人の、実感の物語だと思った。 その人の感じる実感こそ、その人にとっての生きると言うこと。 社会的に正しそうなことや世間への体裁とかではなく、他者からの理解でなく。 そうでしか、いられない。いられなかった人々の物語。 違いの物語。 そうゆう意味で、上手く生きられない人へのスポットライトの様な。無論、讃歌ではなく。 掴もうと、掴もうと、きっと掴んだはずの、その筈の果てにあった景色。 そして後に残る、残ってしまう、滑稽笑。 作中。 不意に差し込まれた回想での新居へ引っ越しシーン。 象徴、ミカンの苗。 希望に包まれた家族の姿が突き刺さる。
  • 福井康之
    4.0
    もう2度と観ることはないな。 そう思うほど、気分悪くなる映画だ。 ということはハマってもーてたってこと? 獄中結婚した人がよくわかんない。
「葛城事件」
のレビュー(5198件)