トム・フォード監督7年ぶりの新作、3つの世界が交錯する美しき愛と復讐の物語『ノクターナル・アニマルズ』

2017.10.27
特集

FILMAGA編集部

フィルマーくま

デビュー作『シングルマン』で世界各国から賞賛を浴びたトム・フォード監督の最新作ノクターナル・アニマルズが、11月3日(金・祝)より全国公開となります。 

ノクターナル・アニマルズ

 

アートギャラリーのオーナー・スーザン(エイミー・アダムス)は、夫とともに経済的には恵まれながらも、心は満たされない生活を送っていた。ある日、20年前に離婚した元夫・エドワード(ジェイク・ギレンホール)から、彼が書いた小説「夜の獣たち(ノクターナル・アニマルズ)」が届く。スーザンのかつてのあだ名が冠されたその小説は非常に暴力的な内容だった。 

エドワードの精神的な弱さをなじり、彼の才能を信じず、冷酷な方法で現在の夫に乗り換えたスーザン。しかし、彼女は小説を読むことでその非凡な才能を見出し、エドワードとの再会を望むようになる。なぜ、エドワードは小説を送ってきたのか。それは、いまだに残る愛なのか。それとも、彼女への復讐なのかーー。 

前作の『シングルマン』から、実に7年ぶりの本作は、劇中小説、現在、過去の3つの世界が絡み合う、複雑な構成の物語です。しかし、流麗に行き交うそれぞれの世界の境界線は物語への没入とともに溶け出し、すべてが混ざり合います。幻想と現実が混濁した果てに訪れるクライマックス。心にざわめきと美しさの余韻を残す、本作の魅力をご紹介いたします。

衣装、美術、建築、小道具へのこだわり。細部にも宿る、トム・フォードの美学。

トム・フォードの作品には随所に彼の美学が宿ります。まず、画面の隅々にまで行き届いた緻密な計算と、寸分の狂いすらも許さない完璧な構図。前作『シングルマン』では、机上の俯瞰ショットが幾度か映し出されますが、何気ない物の配置にすら美しさを感じられます。 

本作ノクターナル・アニマルズでは、それらの映像的なこだわりに加え、トム・フォードの審美眼が冴え渡る、衣装、美術品、小道具の数々が登場します。登場する現代アートはどれも強烈な印象を焼きつけ、衣装は人物たちの背景を物語ります。美しい衣装や、アートを作品に取り込むのは簡単ですが、トム・フォードはそれらにしっかりと意味を込めているので、一切の無駄がない。最前線でファッションデザインを手掛けてきたトム・フォードの真骨頂と言えるでしょう。

ノクターナル・アニマルズ

■これは本当に期待以上過ぎた。トム・フォードは業界人の作ったお洒落映画だと食わず嫌いされてる感があるけど、観ない人は損してるってくらい私には刺さった。映画の良いところが沢山詰まった映画愛に溢れた映画で、オマージュに頼らず真摯に映画と向きあってて、人間の本質に迫った良作だった。(ajoongdanceさん)
■ファッション界のトップでありながら映画まで手をつけられる監督トム・フォードが妬ましい。観て、みんな妬むべき。(ogataryuugoさん)
■いろいろと絶賛の言葉を考えたけど、そういうわかりやすい飾りがまったく似合わない、堅固でストイックな作品。脚本、画づくり、完全無欠のキャスティング等々からトム・フォードの映画愛とセンスをひしひしと感じた。(EWdG8さん)
■冒頭から衝撃の連続で現実と劇中話、過去が巧みに交差する非凡な作品でした。エイミー・アダムス演じるアートギャラリーオーナーの生きる世界は美しさの裏側に有る醜さを浮き彫りにしてかなり空虚。対して小説のシーンはより生々しくリアル。目を覆いたく成る様な残酷な場面程狂気を孕み美しく撮るトム・フォード監督。‪アート気質と云うよりも職人的な完璧さを隅々まで追求して居るのが感じられま‬した。スリリングな映画に華を添える叙情的な音楽も良く、ジェイク・ギレンホールの壮絶な演技には只々圧倒されるばかりでした。(nielsenhoriutiさん)
■ちょっとドギツイ色使い、ファッション、ビジュアル、TOM FORDらしさなのか?翌日も頭から離れない後に残るサスペンス。(yokomuraiさん)

瞳が映し出す憂いと儚さ。エイミー・アダムス、ジェイク・ギレンホールの名演が素晴らしい。

メッセージ』の好演も記憶に新しい、エイミー・アダムス。本作での彼女が演じるスーザンはエドワードに送られた小説を読んでいるシーンが多く、大げさなジェスチャーや言葉には頼れません。静的な演技が大半で、エイミー・アダムスの繊細な表現を際立たせます。また、スーザンの衣装は重層的で、本を読み進めるうちに変化してゆく心の機微を見事に表します。 

本作のジェイク・ギレンホールは、スーザンの元夫・エドワードと劇中小説の主人公・トニーの二役を演じます。これが非常に効果的で、現実と劇中小説の垣根が取り払われスーザン同様にエドワードとトニーを観客も混同してゆきます。この二役を身振りや口ぶりの些細な変化で演じ分ける、彼の演技は素晴らしいの一言。 

本を読むシーンの中に静かだけれども渦巻いていく感情を見せたエイミー・アダムス。対して二役を通じて、暴力性と繊細さの両面を見せたジェイク・ギレンホール。「静」と「動」の対比がなされています。『メッセージ』での衝撃的な結末を静かに受け入れたときのエイミーの表情。と『ナイトクローラー』での狂気を孕んだジェイクの視線。本作でも主演のふたりは、どちらも瞳での演技が非常に印象的です。

ノクターナル・アニマルズ

また、劇中小説で重要な役割を担うアーロン・テイラー=ジョンソンにも注目。ヲタク少年がヒーローに大変身する「キック・アス」シリーズや、10代のジョン・レノンを演じた『ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ』など、これまでも様々なジャンルのキャラクターを演じ分けてきたアーロンですが、本作ではこれまでと一線を画する、新たな役どころに挑戦。ジェイク演じる劇中小説の主人公トニーを暴力的に追い詰める男レイを演じました。その狂気に満ちた演技でゴールデングローブ賞助演男優賞を受賞しています。

ノクターナル・アニマルズ

■文句の付け所一切なし。名だたる賞を受賞するなど、高評価の理由は納得。圧巻の演技を楽しめて大満足。怖かったけど!(emxlvさん)
■本作も、トムフォードの映画監督としての手腕を確信させられる仕上がりとなっていた。俳優陣は主役から脇役に至るまで、実力派の名俳優ばかり。ここだけでも、彼の完璧主義を貫く姿勢を感じることができる。(arata0707さん)
■俳優たちもさすがの安定した演技。それにしてもあの気持ち悪いサイコパス男が『ノーウェアボーイ』でジョン・レノンを初々しく演じた彼だったとは…俳優ってすごい。(lulepozoさん)

現在と過去、劇中の小説が混ざり合う。すべてが幻想にも現実にも思える物語。

3つの世界が絡み合うノクターナル・アニマルズですが、現在と過去の現実シーケンスと、劇中小説の想像シーケンスでは雰囲気はガラッと変わり、ふたつの作品を同時に味わったように感じられます。前者は、LAの上流社会を舞台にデヴィッド・フィンチャーにも通ずる、硬質な映像で描く現在と、雪のちらつくNYでのソフトフォーカスを多用した過去。後者は泥臭く、土煙が渦巻くテキサスの荒れ地。正反対の土地を舞台に、実在感のない現実と、リアルなふたつの世界とふたつの時間軸は滑らかな交錯を繰り返します。 

それらの世界を交錯させながら「捨てた愛」と「失った愛」をめぐる、元夫婦のメロドラマが展開。20年の時を経たふたりの愛のゆくえをたどる極上のミステリーが描かれます。 

「何者であれ 罰を受けずに逃がすものか」 

これは予告編の最後に語られる、エドワードの台詞です。 
物語がクライマックスに近づくほどに、スーザンの小説への没入も高まり、エドワードとの再会と、淡い期待を芽生えさせます。しかし、彼の胸中はわからない。かつての自身のあだ名が冠された、暴力的な内容の小説に込められた意図とは。そこにはスーザンへの罰と、復讐を込めたのか。それともまだ失っていない愛を込めたのか。ぜひ、その正体を劇場で確かめてください。 

◆映画『ノクターナル・アニマルズ』information

ノクターナル・アニマルズ

あらすじ:スーザンは夫とともに経済的には恵まれながらも心は満たされない生活を送っていた。 ある週末、20年前に離婚した元夫のエドワードから、彼が書いた小説「夜の獣たち(ノクターナル・アニマルズ)」が送られてくる。彼女に捧げられたその小説は暴力的で衝撃的な内容だった。才能のなさや精神的弱さを軽蔑していたはずの元夫の送ってきた小説の中に、それまで触れたことのない非凡な才能を読み取り、再会を望むようになるスーザン。 彼はなぜ小説を送ってきたのか。それはまだ残る愛なのか、それとも復讐なのか――。

上映時間:116分
<11月3日(金・祝)よりTOHOシネマズシャンテほか全国ロードショー>
公式サイト:http://www.nocturnalanimals.jp/
配給:ビターズ・エンド/パルコ
(C)Universal Pictures

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    4.1
    初っぱなオープニングクレジットから凄い&スタイリッシュな映像に驚く。赤のカーテンの前で巨漢中年女性が花火を持って笑顔の裸体ダンス ゲロゲロ でも怖い物見たさで見てしまう。この感覚 デイビッド・リンチの「ブルーベルベット」のよう。 ダンスは「ツインピークス」の小人オジサンの赤のカーテン前の踊りを彷彿。会議室の円卓。丸い部屋 こッこれは「2001年」ディスカバリー号感、キューブリックも蘇る。 壮大な荒野の夕日の映った雲のカットなんかがキューブリックやリンチ風・・・兎に角映像がいい。パンフレットにはクローネンバーグの様ってかかれてましたが、僕にはリンチとキューブリックだ~ さて素晴らしいのは映像だけではない。このストーリー。スーザンに元夫の売れない小説家エドワードが「ノクターナル・アニマルズ」(夜行性動物)って題名の小説を送りつける。スーザンの昔の渾名がノクターナル・アニマルズだ。そしてスーザンに捧ぐとある。渾名を題名とした小説の劇中劇が始まる。 劇中劇は悲惨な物語だ。トニーは妻と娘と夜中のドライブ中に男3人乗った車から嫌がらせ、エスカレートしていき男達は逆上、妻と娘をさらわれる。・・・パンフレットではこれほど背面が美しい女性死体は見たことがないとの解説。もしやとの想像があたってしまう。美しいが見ていられない。 気弱い男だったトニーは警部補と妻と娘を殺した凶悪犯を追う。その姿は粛々と感動を呼ぶ。映画見ている側にも感じるのだから当然スーザンも心打たれただろう。 しかし何故20年後の今この小説を元妻に?スーザンの反応を楽しんでる?過去のスーザンへの復讐?この物語、劇中劇、現在、過去と3つのドラマが交差、エドワードとトニーは同一人物が配役。この現在と被る対比構成も面白い。劇中劇では主要登場人物の多くが死すが、現実の世界では?亡くなった子がいるではないか。エドワードの子はエドワードの過去の小説の様にそしてこ陽の目を見ることが出来なかった。 この映画を見た人の解釈は人それぞれ。その人分の物語が存在するのだろう。そんな演出、ニクイ。トム・フォード お気に入りの監督となりました。
  • masa
    4.0
    171111
  • ちゃんゆき
    3.6
    初のトムフォード作品鑑賞。 初っ端から映像美に衝撃を受けました。失礼を承知で言いますが、あんなに醜いのに美しい。まさにこれがアートだな、と思わされます。 お話は現実世界と小説世界、そして過去の世界が交互に合わさったものです。どれがどの時代かわからない、とか時系列トリックがあるわけではありませんが、ラストにはっきりとこの映画のテーマがわかってきます。 ギャラリーの美しい世界、荒野の厳しい世界。その対比が印象的です。 レイを演じる俳優さんの狂気っぷりにあっぱれでした。
  • chika
    3.6
    誰もが経験したことのある後悔を壮大にしたようなお話。 こんな元カレ嫌だけど、元カレの気持ちもわかる。 こんな元カノも嫌だけど、人間臭くていいと思う。
  • なお
    4.0
    生々しく暴力的なお話 私こういうタイプの映画、大好物なんです🤤 序盤のシーンは衝撃的で何かのオマージュなのかな?見たことあるようなないような…煌びやかさの中にも吐きそうな衝撃を覚える。 夫とうまくいっていない主人公。 そんな彼女の元に元夫から彼が書いたという一冊の本が届く。 これは元妻への未練故に送ったのか… 彼女は彼の本を読むうちに彼と過ごした過去を思い出す。 悪い思い出は消え去り いい思い出だけが残っている。 好きだった人の思い出なんてそんなもんなのかな? 上流社会 vs テキサスの田舎者 という構造も面白かった。 トムフォードは明らかに上流社会の人間なのに、上流社会への皮肉が全編に渡り感じられる。 美術もこんなんええか?とさえ受け取れる皮肉というか変なものばかり。 そして元旦那の書いた本は衝撃的でドキドキが止まらない。 現実、過去、本の内容 3つの話が交差する。 トムフォードはファションが本業なはずなのに 映画的に凄いことをサラッとやってのけてるように感じる。 全ては生まれ持ったセンスなのか? 思い描いている事をカタチに出来る人なのか? 映画の事を沢山学んだ人間でさえ、トムフォードの様には撮れないだろうな。 恵まれた才能、 そしてセンス、 彼が影響を受けたであろう作品 そして才能のある若手独特のギラギラした感じが画面全体に溢れていた。 以下ネタバレあり 説明も少なく 最後のオチも意地悪な感じだが、 彼なりの上流社会への皮肉や復讐なのだろう。 女が男に復讐する映画はたまにあるが 逆のパターンは意外と見ない気がするので、それも良かった。 トムフォード恐るべし。 ファションか映画どちらかの才能を私に下さいm(_ _)m
「ノクターナル・アニマルズ」
のレビュー(1960件)