絵を描くって大変だ!わずか30分の上映に5年半をかけたアニメーション作品『木を植えた男』

アニメの風通しがもっと良くなりますように

ネジムラ89

すごく、根本的な話なのですが、アニメーションを作るって大変ですよね

アニメーションといえば、最近はデジタル化により作業の簡略化もできるようになってきましたが、いまだに登場人物を少し動かすために何十枚、何百枚もの絵を用いている作品が多数存在する手法です。

ゴッホ~最期の手紙~

そんな作品の例が2017年11月3日より公開のゴッホ~最期の手紙~です。油絵を用いてアニメーション制作を行っているというのだからビックリです。日常でこそ見る機会の限られている油絵ですが、そんな絵が動き出すさまは、「ドラえもん」や「クレヨンしんちゃん」といったTVアニメ作品や人気の高いジブリのアニメ作品とはまた違った感触が得られる作品であることは間違いないでしょう。この映画を作るために作られた油絵の数はなんと6万枚以上と言うのだからこれまた恐ろしい話です。

さて、その6万枚の絵も油絵師が複数人で制作したものなのですが、かつて、2万枚を超える作画作業の大半を一人でこなした恐るべきアニメーション作家がいたのはご存知でしょうか。今回はそんなアニメーション作家と、その人の作品を紹介します。

アニメーション作家、フレデリック・バック

2万枚を超える作画作業をこなしたアニメーション作家、それがフレデリック・バックです。世界的に著名なアニメーション作家の方で、惜しくも2013年に亡くなられてしまいました。そんなフレデリック・バックの手によって生まれた代表的な作品といえるのが、30分ほどの中編アニメーション木を植えた男です。

木を植えた男

木を植えた男はもともと、1953年にフランスの作家ジャン・ジオノが書いた短編小説です。この小説を原作に、フレデリック・バックは監督、脚本そしてその作画作業のほとんどを務め、1987年に公開されました。2017年でなんと30周年を迎える作品です。

木を植えた男はそんな30年以上前の作品でありながら、作品の古さを感じさせません。色鉛筆で描いたスケッチ風のアニメーションは、流行とは別の普遍的な美しさを感じさせてくれます。

失明しても止めないアニメーション制作

この木を植えた男の完成には5年半もの月日がかかっています。それもそのはず、前述した2万枚の作画作業とは、この木を植えた男というアニメーション1つの完成にかかった枚数だからです。5年半もの時をかけて、たった一人でそれだけの数の作画をこなすのは、よっぽどの根気がないと不可能でしょう。

しかも、さらに驚くべき逸話が木を植えた男の制作過程にはあります。フレデリック・バックはこのアニメーション制作の過程で、スプレーが目に入ってしまうアクシデントに見舞われ、右目を失明してしまいました。ですが、そんな状態でありながらもフレデリック・バックはアニメーション制作を止めることはありませんでした。残る左目のみを駆使して、制作を続けついに木を植えた男を完成させるに至ったのです。木を植えた男はまさにフレデリック・バックのアニメーションにかける情熱が注がれた作品と言えます。

どうしても「アニメ」というとTVアニメ作品だったり、キャラクター作品がピックアップされがちですが、これらの作品を観れば、アニメーションにはこんな広がりを持った作品もあるんだ、という発見ができるはずです。『ゴッホ~最期の手紙~』木を植えた男などで、絵が動くということへの感動を改めて感じてみるのはいかがでしょうか。

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  • イッソン
    4.8
    1988年に池袋西武スタジオ200で観た作品。まずその絵にビックリした。画家でいえば印象派、モネやルノワールを感じさせる空気感のある光と動き、それまで見たことのない作風だった。 この物語はひたすらに根気強くあきらめない男の奇蹟の達成である。 フレデリック・バックはこの映画のレーザーディスク発売に合わせて来日、池袋のスタジオ200にやってきた。 派手なところのない人の良さそうな初老の男。かけていたメガネが片方だけグレーに曇っていた。それは絵の描きすぎによって片目を失明した結果だった。 作画についての解説を読むと、日本のアニメーションが1秒に8枚の絵を描くところ、バックさんは12枚の絵を描いたそうだ。しかもひとりで! 圧倒的な手の速さと、線と色を同時に描くことのできるプリズマカラーの利点を生かした、という話。 実際に展示で原画を近くで見た感想は、色鉛筆で一発で薄いシートに描いていた。それは「つや消しセル」で修正はなし、迷いなく線を引いている。これほどの画力を支える下地は、若い頃からおびただしいデッサンをしていた経験によるもの。と推測できる。実際にはイラストレーターとして書籍のイラストレーションから出発したという。 アニメーターの鬼!のようなバックさんだが、木を植えた男のように、柔らかで少しも肩ひじ張ったところのない人柄だった。 やはり、作るものにその人らしさが自然と出るのだろうと思う。
  • 青の他人
    -
    プロヴァンス,廃村,テント,泉涸れ,羊飼い,30頭羊,石造り家,スープ,パイプ,木炭運び,ブナの木,1915年,事業中止,水音,1947年没
  • ni
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    わからない単語もあったが画のおかげで助かった
  • shxtpie
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    「ジャン・ジオノの原作に感銘を受けたバックが、5年半の歳月をかけ、2万枚におよぶ作画作業の大半を一人でこなして作り上げた代表作。アカデミー 短編アニメーション部門受賞」。『フレデリック・バック作品集』を見ていって、ようやくたどりついた『木を植えた男』。名作の誉高く、それに値する素晴らしさである。動く印象派、命を吹きこまれた点描画、ぐるぐると回るカメラ、荒れ地と対比された、命の蠢きに満ちた森。バックのストイックなアニメーションは、そのまま木を植えた男の植樹に重なる。二度の戦争の描写が挟まれるものの、これまでのバックの作品のような単純な文明批判はなく(原作があるためか、ひじょうに簡素で削ぎ落とされたストーリー)、けれども、それゆえに、神話めいた、めくるめく神秘性にあふれている。なによりも、上の繰り返しになるが、荒れ地にどんぐりをひとつひとつ植えていった男の「手」の仕事は、そのままバックが「手」で描くアニメーションと相同であることの感動といったらない。 DVDの映像特典のインタビューで、バックは「木は象徴的な問題です。人生の諸問題を表している。問題に直面すると逃げる人もいます。その一方で、問題に取り組み、解決を図る人もいる。問題に取り組む精神こそが、豊かな果実をもたらすものなのです。そうした精神が、異なる者同士の紛争を解決し、よりよい世界を作るのです」と語っている。
  • AKIRA
    -
    名作だ。なんて美しい物語だろう。 誰に評価されるわけでもなく、不屈の精神で長い時間をかけて成し遂げた善良なその男の姿に感動した。 これぞ表面的なものじゃない、本質的な社会貢献だろう。そんな手垢がつきまくった"社会貢献"という言葉すら霞んでしまうほどだ。
木を植えた男
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