すごく、根本的な話なのですが、アニメーションを作るって大変ですよね。
アニメーションといえば、最近はデジタル化により作業の簡略化もできるようになってきましたが、いまだに登場人物を少し動かすために何十枚、何百枚もの絵を用いている作品が多数存在する手法です。
そんな作品の例が2017年11月3日より公開の『ゴッホ~最期の手紙~』です。油絵を用いてアニメーション制作を行っているというのだからビックリです。日常でこそ見る機会の限られている油絵ですが、そんな絵が動き出すさまは、「ドラえもん」や「クレヨンしんちゃん」といったTVアニメ作品や人気の高いジブリのアニメ作品とはまた違った感触が得られる作品であることは間違いないでしょう。この映画を作るために作られた油絵の数はなんと6万枚以上と言うのだからこれまた恐ろしい話です。
さて、その6万枚の絵も油絵師が複数人で制作したものなのですが、かつて、2万枚を超える作画作業の大半を一人でこなした恐るべきアニメーション作家がいたのはご存知でしょうか。今回はそんなアニメーション作家と、その人の作品を紹介します。
アニメーション作家、フレデリック・バック
2万枚を超える作画作業をこなしたアニメーション作家、それがフレデリック・バックです。世界的に著名なアニメーション作家の方で、惜しくも2013年に亡くなられてしまいました。そんなフレデリック・バックの手によって生まれた代表的な作品といえるのが、30分ほどの中編アニメーション『木を植えた男』です。
『木を植えた男』はもともと、1953年にフランスの作家ジャン・ジオノが書いた短編小説です。この小説を原作に、フレデリック・バックは監督、脚本そしてその作画作業のほとんどを務め、1987年に公開されました。2017年でなんと30周年を迎える作品です。
『木を植えた男』はそんな30年以上前の作品でありながら、作品の古さを感じさせません。色鉛筆で描いたスケッチ風のアニメーションは、流行とは別の普遍的な美しさを感じさせてくれます。
失明しても止めないアニメーション制作
この『木を植えた男』の完成には5年半もの月日がかかっています。それもそのはず、前述した2万枚の作画作業とは、この『木を植えた男』というアニメーション1つの完成にかかった枚数だからです。5年半もの時をかけて、たった一人でそれだけの数の作画をこなすのは、よっぽどの根気がないと不可能でしょう。
しかも、さらに驚くべき逸話が『木を植えた男』の制作過程にはあります。フレデリック・バックはこのアニメーション制作の過程で、スプレーが目に入ってしまうアクシデントに見舞われ、右目を失明してしまいました。ですが、そんな状態でありながらもフレデリック・バックはアニメーション制作を止めることはありませんでした。残る左目のみを駆使して、制作を続けついに『木を植えた男』を完成させるに至ったのです。『木を植えた男』はまさにフレデリック・バックのアニメーションにかける情熱が注がれた作品と言えます。
どうしても「アニメ」というとTVアニメ作品だったり、キャラクター作品がピックアップされがちですが、これらの作品を観れば、アニメーションにはこんな広がりを持った作品もあるんだ、という発見ができるはずです。『ゴッホ~最期の手紙~』や『木を植えた男』などで、絵が動くということへの感動を改めて感じてみるのはいかがでしょうか。
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