蒼井優のフィルモグラフィーを辿る。可憐さと妖艶さを兼ね備えたその魅力!

2017.10.30
女優・俳優

映画も音楽も本も好き。

みずき

女優、蒼井優

岩井俊二監督『リリイ・シュシュのすべて』で映画デビュー。当時はあどけなさの残る中学生を演じてましたが、いまでは可憐さと妖艶さを兼ね備えた唯一無二の女優のひとり。自身の成長とともに等身大の女性の役柄を演じることも多く、それらは蒼井優のターニングポイント的な作品にも感じられます。

瑞々しい演技と、岩井俊二特有の映像でその存在を強烈に焼きつけた『花とアリス』。モラトリアムと心身の所在のなさを描いた「自身を探さない」ロードムービー『百万円と苦虫女』。過去にとらわれ、未来を恐れ、現在に価値を見出せないアラサーの女性を映し出した『アズミハルコは行方不明』。

年齢を重ねるごとに増える役柄のバリエーションには驚かされ、直近の出演作は非常に鮮烈。『オーバー・フェンス』のエキセントリックなキャバ嬢や、公開中の『彼女がその名を知らない鳥たち』の嫌な女っぷりはこれまでの彼女の印象とは一線を画すイメージを与えられるでしょう。

今回は、蒼井優の魅力を3つのタームに合わせてご紹介。
彼女のフィルモグラフィーを振り返り、過去作とともに最新作『かの鳥』をお楽しみください。

あどけなさと瑞々しさを湛えた「少女」と「女性」のあいだを捉えた『リリイ・シュシュのすべて』

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子どもから大人へと変わる時分、いわゆる「思春期」と呼ばれるころの作品は役者のフィルモグラフィー的にも重要です。とりわけ、女性に関しては男性よりもその人生における一瞬が刹那的に切り取られ、二度と戻らない期間の尊さ、無垢な美しさと重ねて描かれます

蒼井優の場合、その時分を捉えた作品は『リリイ・シュシュのすべて』と『花とアリス』でしょう。これらはどちらも岩井俊二監督の代表作ですね。なおかつ、岩井俊二作品の両極端なところを描いたもの。『リリイ・シュシュのすべて』では、いじめられる鬱屈の日々を。『花とアリス』は、ラブコメ的な要素を感じられる穏やかな作品です。

「思春期の時分の二度と戻らない期間の尊さ、無垢な美しさを刹那的に描かれる」と書きましたが、蒼井優の演じた、津田詩織はそれを非常に残酷な結末で迎えさせられます。感想はそれぞれなので、嫌悪感を抱く方もいらっしゃるでしょう。しかし、津田は物語上の定められた生涯を懸命に生き抜き、そこに一瞬の美しさが見出されるようにも思えるのです。

観る側を選ぶ作品の代表格のような作品ですが、蒼井優の出自を語るには外せない作品のひとつです。

社会へと踏み出した女性の生き方、等身大の女性の姿を描いた『百万円と苦虫女』

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二十代を迎えた蒼井優の役柄はバリエーションを広げます。大学生、フリーター、摂食障害を持つ患者、コメディエンヌなどの難しい役柄も増え、さまざまな姿を演じ分けます。また、時代物、漫画原作のファンタジーなどを除けば「一般的な」女性の役柄が目立ちます。社会に踏み出したからこその悩みを抱えた女性や、誰もが思う普遍的な感情。同年代からの支持も厚いのはこれらの理由もあるのでしょう。

社会に踏み入れたのにもかかわらず、いまだに残るモラトリアムと先行きの不安。誰しもに覚えのある感覚だと思うのですが、それを見事に描いたのが『百万円と苦虫女』ではないでしょうか。学生から社会に踏み出すまでの不安な時期の焦燥をタナダユキ監督の独特な切り口で描いた本作。蒼井優の単独初主演作品でもあります。

蒼井優の演じる、主人公・鈴子は不遇な女性です。ただ、世の中には鈴子のように人生を上手に運べずにくすぶっているひとは多いと思うのですよね。些細な出来事から職場での空気に馴染めなかったり、他人との関わりが不器用だから恋人はおろか、友だちすらもなかなかできなかったり。
タナダユキ監督は、人生の回り道だったり、立ち止まることなどを描くのが上手な作り手だなと思います(大島優子主演の『ロマンス』もお薦めです)。人生をスムーズに進められるのは快適ですし、猪突猛進に進むのもかっこいい。けれども、困難を打ち砕いたり、それを取り除くのはむずかしい。だからこそ、タナダユキ監督の作品に救われるひとは多いのではないでしょうか。

本作はタナダユキ監督が描く人生の小休止と、蒼井優の年齢がぴたりとハマる作品。人生に漠然と不安を抱く若者にお薦めの作品です。

蒼井優の新たな側面を引き出した傑作『彼女がその名を知らない鳥たち』

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三十代を迎えた蒼井優の演じる役柄はどれもおもしろい。『アズミハルコは行方不明』の安曇春子は、前述の『百万円と苦虫女』の鈴子と地続きのキャラクターにも思え、それが蒼井優自身の成長とも重なります。『オーバー・フェンス』の聡のキャラクターもこれまでの蒼井優のパブリックイメージからはかけ離れた過剰な役柄。しかし、この流れがあってこその『かの鳥』かなとも思います。

鬼才・白石和彌監督は本作の主要人物を演じる役者たちのそれぞれにこれまでのイメージを覆す役柄を担わせてますが、もっとも印象をぶち壊しているのは、十和子を演じる蒼井優でしょう。
自堕落、ぶっきらぼうな言葉遣い、同居人・陣治を演じる阿部サダヲを蔑む視線など、間違いなく、彼女のフィルムグラフィーでも最悪な女性を演じています。岩井俊二作品からの彼女の出自を思えば、こんな女性を演じる役者になるとは誰も思わなかったでしょう。

「共感度0%、不快度100%」がキャッチコピーの本作を魅力的に仕上げられたのは物語の力強さはもちろんですが、キャストの魅力もとても大きいと思います。ぜひ、劇場でこれまでとは異なる蒼井優の新たな側面をご覧ください。

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  • さら
    4.0
    どれだけ人を好きで愛してても、相手にその愛が伝わるのって難しい事なんだろうと思いました。陣治の顔がとても黒かったです。
  • ひーちゃん
    4.3
    どうしてこんな愛憎劇で始まったのに、純愛モノに変化したのか、真逆のはずなのに... 蒼井優も相変わらず、見た目と裏腹の役をさせられてたんだけど、最後のセリフを聞いて優ちゃんで良かったな〜と思いました。 でも、あの野外プレイのあとの大阪城ドーンは「は??大阪人舐めてんの?」と思った。あのカットは本当に意味が何かあったとしても、悪意でしかとれない。
  • 伊緒
    5.0
    とてもとても良かったです。 自分の中で消化できたらレビューを書こうと温めていたのですが…これがなかなか難しくて。 愚行録のように、とても愚かしい人達がたくさん出てくるのですが、嫌な気持ちにしかならない左記作と違って、この作品はとても美しい。決して万人受けするような作品ではないし、嫌な気持ちにも勿論なるんだけれど、この作品を好きだと感じることの出来た自分が、とても嬉しい。ちなみに愚行録も大好きなのですが。 「愛し方は人それぞれ。」そんなことは分かってはいるけれど、理解出来ないであろうものをそれでも理解したいと願うような、あの時のあの人の気持ちに寄り添いたいと思うような、だけどやっぱり思い至ることが出来なくて哀しくなるような、それすらも尊くて美しく思えるような、そんな作品でした。でもきっと理解しなくていいような愛もあるのだと思います。 大阪弁がとてもリアルで、すんなり見ることが出来ました。「ちょいちょい」の使い方とかね。役者陣も関西弁のイントネーションが一番演じる上で難しかったのだとか。 鳥は幸せの象徴。どこに鳥がいるのか、もう一度そんな視点で見てみたい。
  • hiro53
    4.2
    よくできていた。登場人物のエキセントリックさも理解の範囲内、ストーリーも。それにしても、関西弁て、難しいねんな、と。
  • まさ
    3.7
    原作未読で鑑賞。 展開が素晴らしい。どうしょうもない男と女を描きつつ、ミステリアスなスパイスが絶妙に効いている。蒼井優も阿部サダヲも素晴らしいが、特に阿部サダヲの演技が素晴らしい。 最後は、愛とは何か、本当に愛すこととは何かが、自分に突き付けられた。
「彼女がその名を知らない鳥たち」
のレビュー(3377件)