エマ・ワトソン主演『ザ・サークル』監督が考えるSNSのご作法「自分のスマホを神のように扱っていないか」【ロングインタビュー】

2017.11.09
インタビュー

映画のインタビュー&取材漬けの日々是幸也

赤山恭子

今や手放せなくなった携帯、スマートフォン、そこから派生したSNSという文化。SNSがビジネスを大きく支配するようになった側面も持つ2017年、まさに未来への警鐘を鳴らす映画『ザ・サークル』が誕生した。世界 No.1のシェアを誇る超巨大SNS企業「サークル」に採用されたメイは、カリスマ経営者ベイリーの差し金で、自分の生活を「シェア」し、やがて有名になっていく。「シェア」という名の身の切り売りは、やがてメイ自身や、彼女の周りの人間を思いもよらない破綻の道へと向かわせる。実在するすぐそこにある、かもしれないこの物語は、決して他人事ではない。

一瞬で1,000万人超のフォロワーを獲得し、アイドル的人気となるメイ役を、まさに適任というべきか、皮肉にもというべきか、ハリウッドのメインストリームに立ち、全世界から注目を浴び続けているエマ・ワトソンが演じる。とかく常に人の目にさらされているエマ、そしてトム・ハンクスが出演することについて、ジェームズ・ポンソルト監督は「すごくインスピレーションを受けた」と演出のヒントを得たと語った。いまだ法律やルールが定まらないSNSに対して、大きな問題提起をした本作について、ジェームズ監督に直撃した。

ザ・サークル

――デイブ・エガーズによる同名原作が基になっていますが、ビジュアル化する上で何を大切にされたんでしょうか?

原作の中でも、素晴らしい筆致で世界観が表現されていました。特にメイが勤める「サークル」は、大学のキャンパスのようであり、ユートピアのようで、ちょっとカルト的でもあり……、本当に誘惑的な感じがして、「『サークル』で生活したくなる!」というような鮮烈な場所として描かれていました。「これって、もしかして理想郷なのかな?」みたいなね。それをビジュアル化することに、すごくワクワクしました。

特に考えたのは、メイの元へすごい情報量のメールやSNSのメッセージが押し寄せるところ。あれはSNSをやっている全員が感じたことがあると思うんですけど、「全部に答えなきゃ」と思い始めてしまうと、ものすごく疲弊してしまいますよね。原作を読んだときに、その感じをすごく受けたので、映画化するにあたってきちんと表現したいなと。どうやったら視覚化できるかを、実はすごく考えました。

――そこで、メッセージが映画の画面に広がるような演出をされたんですか?

そうです。メイの場合、仕事柄、とにかくなるべく早くレスポンスをしないといけない。そこで思いついたのが、メッセージがポップアートのようにポンポン出てくるものだった。あそこにはバーッと英語が並んでいるようでいて、実は英語じゃないメッセージもあって、全部が読めないようにデザインされているんです。つまり、全部に目が通せないくらいの量が一気にやってきているというのを表現するために、ああいう見せ方を実はしています。

ザ・サークル

――「サークル」の建物や社内の雰囲気も、かなり細かくこだわり抜いたんでしょうか?

元々、原作の会社の雰囲気が主なインスピレーションにはなっていますね。実際、僕の友達も大手のIT関係で働いているので、行ったこともあるし、プロダクションデザイナーとともにいろいろなIT関係企業に足を運んで、どんなエネルギーが感じられるのか、皆が幸せそうなのか、うるさいのか、静かなのか、色調が白黒なのか、カラフルなのかとか、たくさん研究しました。建築に関しては、これから作られる建築のリサーチをして、10~20年後の建築を参考にして作ったんです。

先ほど「理想郷」と言いましたけど、面白いのがね、スイスでも日本でも北カリフォルニアでも、人が思う理想郷って、実は同じような姿をしているんですよ。すごくオープンで、ガラスを多く使って、自然というものが本当に共生しているような雰囲気を作り上げたものが、そうなんです。当然そういう場所にいれば、自分が去りがたくなる、つまり、もっと仕事場にいたくなる。冷たくて形式ばった建物の場所よりも、温かくていいなと誘われる場所にしたほうがいいんじゃないか、と考えながら形作っていきましたね。

――ああ……全世界共通なんですね。メイが「サークル」にハマッた気持ちがわかるようです。

(笑)。僕にだって、あそこで仕事をしたい気持ちはよくわかるよ(笑)。だって、大人になってからも自分のケアをしてくれて、食事も全部出してくれて、必要なものには全部答えてくれる、そして遊びもあるような場所を提供されたら、童心に戻れもするし、魅力的に感じるでしょう。それは皆、一緒だと思うんですよね。

そのあたりのことって、もしかしたらSNSとテクノロジーのメタファーにもなっているかもしれないです。いかにそういったものが、僕らを子供化する力を持っているかっていう意味で。いいところももちろんあるんだけど、SNSやテクノロジーは、我々人間の怒れる子供みたいなものを呼び醒ます効果もあるのかもしれないですよね。

ザ・サークル

――メイを演じたエマ・ワトソン、ダークな一面も持つ上司役のトム・ハンクスの演技は非常に対照的でした。演出を手掛けていかがでしたか?

僕は「ハリー・ポッター」シリーズを何度も観ていて、以前からエマは素晴らしい役者さんだと思っていましたし、トムの場合は子供のときから大好きな役者さんのひとり。ふたりとも素晴らしい出演作を重ねてきていて、役柄にすごく思慮深いアプローチをするんです。自分の演じるキャラクターに、知的な選択をしながら演じるタイプだと思います。

あと、エマもトムも、とにかくひとりの人物として素敵な方なんです。誰からも愛される役者さんでもある、という感じでしょうか。今回、僕は彼らの話になるべく耳を傾けるようにしました。なぜなら、何と言っても、ふたりとも常に見られているわけじゃないですか。自分がさらされていることを、ものすごく誰よりも……、おそらく僕の知りうる誰よりも経験してきているので、むしろ彼らに話を聞きたいと思ったわけです。

――「さらされている」ことに関しては、どのようなお話をされたんですか?

そうだね~……(熟考)。とにかく皆が見ている中で生活することに対して、すごくユニークな感受性を持っているんですよ。例えば、友達とただ外食をして、食事を楽しむだけだとしても、その場で自分の言うことや行動が見られていることを意識せざるを得ないというか。それが自然になってしまっているということなんです。

普通、そういうことが続いてしまうと、もしかしたら人は身を隠したい、人の目に触れないところに行きたい、と思うだろうけど、ふたりは決して隠れたり、回避しようということをしません。彼らを素敵だと思うのは、むしろ自分のセレブリティとしてのステイタスをよいことのために使っているところ。悪いことを書かれたとしても、ふたりとも左右されないんです。その姿には、すごくインスピレーションを受けました。とても勇敢だと思いますしね。特にエマの場合、国連でスピーチをしたり、SNSでも自分の政治的な意見すら、忌憚なく発信し続けていますから。

――となると、当たり前の話かもしれませんが、SNSは使用する当人によって、かなり立ち位置が変わってくるもの、という認識なんですね?

僕はSNSとテクノロジーは、その人物の延長線上にあるものだと思っています。つまり、使うことによって最高の自分と最低の自分すら、表現することができる。ある種、SNSは我々のメガホンで、自分の声を拡声する作用も持っているんです。とはいえ、僕はアンチテクノロジーではありません。確かに1日中テクノロジーを使うこと=ネットを見たり、ゲームをやったりすることはハマりがちだし、僕もテレビをすごく観ていたほうだけど……、問題は使い方です。

――ジェームズ監督は、SNSの一番いい使い方は、どんなものだと思っていますか?

いい使い方はたくさんあるんじゃないかな、と思います。Twitterの初期の頃、国連メディアでは届かぬ声を学生たちがあげることをTwitterを通してできた。そして危機にさらされているとき、SNSは大活躍しますしね。あとは、単純に愛する人と距離が遠いとしても、常に連絡が取れるとか。そういう意味では、非常に民主的ですよね。例えば、東京にいる友達にほかの国から航空券を買ってまで会いには来られないけど、ネットでつながれる。僕も、実は妻とはFacebookで出会ったんだ(笑)。それもいいところかもしれないですね。

――とてもいいですね(笑)。逆に、気をつけていることがあれば教えてください。

僕自身は、本人を前にして言えないことは、ネットで言わないようにしています。やはりアカウンタビリティの責任みたいなものは、常に意識をして使わないといけないんじゃないかなと。実際に、誰かとネット上で交流するにしても、その人と対面で会ったらどう振る舞うのかと同じくらいの愛情や思いやり、良識を持つべきだし。人は自分が無名でネットの顔のない人間になったとき、冷酷なことを言えてしまうじゃないですか。それぞれの人が自分の境界線みたいな一線を見極めて、自分なりのバランスを見つけていくしかないのかなと思います。忘れちゃいけないのは、リアルライフがうまくいっているかどうか、ということ。ネットやSNSは副次的なもので、メインにくるべきものではない。そういうことを意識して使うことなのかな?実際の人間関係の代わりにはならないんだから。

――日本でもSNSが盛んになっていて、今のお話は非常に耳が痛い内容でもあります。映画で描かれていたような世界が、すぐそこに迫っているような危機さえ感じました。

映画の中では、プライバシーと監視社会というものに軸を置こうと決めました。私たちの住んでいる社会が監視社会だと言うのならば、皮肉なのは、SNSは僕たちが政府に押しつけられたものではなく、僕らひとりひとりが自分から「いいよね」と受け入れてしまったものであるということ。アプリやカメラなど、自分たちが便利だからと言って、自分の情報を皆さんが個々にどんどん明け渡していって、今この状況になっている。我々が完全に招いて、自分が奴隷になってしまっているわけなんです。こういう(自身のスマホを取り出す)デバイスは、安く簡単に手に入れることができるし、僕らは自分のスマホを賛美し、神のように扱っている。手放せなくなってしまっているわけです。それにより、僕らは見られもするし、記録もされるし、映像だって撮ることができるわけで。見えない檻に自分たちを閉じ込めてしまったのではないか、という気持ちもあるんですよね。私たちの場合は、自分たちが自らの意思でこの世界を作り上げてしまった。その中で、何とかして生きていかなければいけないんですよね。

ザ・サークル

――本作には、大企業による独占やSNSの脅威、いきすぎたシェアやプライバシーがなくなっていくこと、透明化とは何かということまで、問題が多岐に渡っています。一番伝えたかったメッセージを挙げれば、何になりますか?

やはり映画の物語が描く未来図であり、実際の社会ももしかしたらそっちに向かってしまっているのかもしれない、ということです。監視社会の中にいる人間は、果たして自由だと言えるんでしょうか? 自由意志を持っていると言えるのかどうかが、大きな問いかけだと思うんです。もちろん「サークル」の人たちは「いやいや、人に見られているからこそ最高の自分が出せるじゃないか」ときっと言うとは思いますが、さて、日本の皆さんはどう思いますか?(インタビュー・文:赤山恭子)

映画『ザ・サークル』は11月10日(金)より、TOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国ロードショー。

ザ・サークル
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  • saaaki
    3.0
    トムハンクスにつられて観たけど出番ちょいちょいじゃないか。 ちょっと宗教染みた会社の話しに現代的にSNSを付け加えた感じに思えた。 エマワトソンは文句なしに可愛かった!
  • さき
    3.4
    カレン・ギランに見惚れてました それにしても日本版の予告編、ポスター共に酷すぎる
  • Kaito
    3.0
    テクノロジーは進歩しても、人の考え方が追いつかない現実の怖さを描いた佳作でした。トム•ハンクスが笑顔のゲス野郎をノリノリで演じていて最高です。
  • ぴら
    3.0
    最後は気持ちよかったけどむず痒さが残るし現代への警告的なアレならもう少しやり方があったはず…過剰表現… エマワトソンの表情がひたすら読みづらかった 演技の問題なのか脚本の問題なのか気になる なにより気になるのが日本での映画ポスターのキャッチコピーがあまりにもしっくりこない 本当に映画を見て作ったのか 疑問
  • ゆくぬ
    4.0
    展開は面白い しかしオチがよくわからないが現在進行形の問題を扱うという点では良いのかもしれない
「ザ・サークル」
のレビュー(2360件)