「映画界のゴッホ」ことエド・ウッドは本当に史上最低の映画監督なのか?

2015.08.06
監督

俺は木こりだいい男よく眠りよく働く

谷越カニ

エド・ウッド。史上最低の映画監督として知られる一方で、クエンティン・タランティーノやティム・バートンなど熱狂的なファンがいるカルト監督です。ティム・バートンはエドの伝記映画『エド・ウッド』を監督し、映画がヒットしたことでエドの知名度が飛躍的に向上しました。

『エド・ウッド』はデビュー作『グレンとグレンダ』、『怪物の花嫁』、そして最も知名度が高く”史上最低の映画”の名を欲しいがままにしている怪作『プラン9・フロム・アウター・スペース』完成までを描いた作品です。

徹底してエド・ウッドの監督としての無能さと映画制作に対する情熱が伝わってくる内容なのですが、エドは本当に史上最低の映画監督だったのでしょうか?本当に最低の監督なら、なぜタランティーノやティム・バートンが魅了されたのでしょうか?上記3本の映画を見ましたので、考えてみたいと思います。

『グレンとグレンダ』女装趣味を認めてもらいたいことがヒシヒシと伝わってくる怪作

デビュー作『グレンとグレンダ』(1953)は1952年に世界で初めて性適合手術を受けた写真家、クリスティーン・ジョーゲンセンをヒントにした作品です。実際にはエド・ウッド自身の女装趣味がテーマになっているのですが…。主演はエド・ウッド自身。

『エド・ウッド』ではエドの憧れのスターで当時すっかり忘れられた俳優になっていたベラ・ルゴシによる迫真の演技と、エドが彼女に女装趣味を認めてもらうシーンのみが登場します。完成フィルムを見た映画会社の偉い人がジョークと勘違いしてバカ笑いするシーンがとても印象的でした。

実際の『グレンとグレンダ』は、女装趣味の男性が自殺した事を機に、そのような男性の心理を知りたくなった警部補が心理学博士から2人の女装趣味男性の物語を聞くという内容で、エド自らが演じたのはそのうちの1人の物語だったんです。

駄作だけど、魅力もあった

この映画には普通の映画では考えられないおかしな点ばかり。伝わってくるのはエドの「俺の女装趣味を認めてもらいたい」という強い思いだけ。しかし、中盤の唐突な「おどろおどろしい心的描写」から連想されるのはエド・ウッドファンであるデヴィット・リンチのデビュー作『イレイザーヘッド』なのです。

『グレンとグレンダ』は制作側の意向により無理やりポルノシーンが挿入されています。それまで退屈なナレーションとベラ・ルゴシの物語と全く関係ない怪演、おもしろみのない会話で構成されたいた映画が、ポルノシーンの開始を機に突然心的描写で語られていく。

女装趣味男性が直面する世間からの圧力、押し付けられる常識に潰されそうな男のシュールな心的描写は、『イレイザーヘッド』の主人公が少女の幻影に導かれて迷い込んだ不気味な世界によく似ています。デヴィッド・リンチが『グレンとグレンダ』を参考に『イレイザーヘッド』を作った可能性は否定できません。

そして『エド・ウッド』の最も有名なシーン(上記画像)の感動をまとったバカバカしさも魅力の一つ。全体的にストーリーテリングは最低で退屈だけど、確かに魅力があります。一部で熱烈に支持されているのも納得、駄作だけど。

『怪物の花嫁』一番まとも。一番退屈。

『エド・ウッド』で2番目に登場する映画。実際には4作目でした。放射能により超人を生み出そうとする博士(ベラ・ルゴシ)を取材する女性記者が囚われの身になってしまう、という内容で、見どころはベラ・ルゴシの演技とタコの資料映像、巨大タコのセットに襲われる博士のがんばりくらい。

『怪物の花嫁』の撮影中、モーターがないので動かない巨大タコのセットを自分で動かしながら襲われる演技をするベラ・ルゴシのシーンは『エド・ウッド』の見どころのひとつ。実際にはその頃のベラに大暴れするような体力はなく、別人が演じているんですけどね。

この映画は名優ベラ・ルゴシが主演している上に脇役の演技がなかなか良いので、取り上げる3作の中ではもっとも「まとも」です。巨漢レスラートー・ジョンソンは演技がヘタ、だからこそニブい怪物をしっかり演じられているし、「世界征服を企む博士の助手が無能ってどうよ」という点以外に突っ込みどころはあまりないんです。

そのせいで、ただでさえ物語がつまらない映画なのに、突っ込みどころが少ないせいで映画を楽しむ手段はゼロと言っても過言ではないほど退屈な映画になってしまっているんです。他のエド・ウッド映画にはある強烈なデタラメさがない。普通につまらない映画です。

まともが故につまらないなんて皮肉な話です。エドには映画作家としての才能が全くなかったということがよく分かる映画です。

『プラン9・フロム・アウタースペース』伝説の突っ込みどころ満載映画

エド・ウッドの名が世に知れ渡るきっかけになった怪作!映画製作を志す人間が作ったとは思えないほどデタラメで、強烈な印象が残る映画です。次から次へと出てくる突っ込みどころに反応し続けているうちにトランス状態に入り、面白いと思ってしまう人がいるというキワモノ。

エド・ウッドは『プラン9』を自身の最高傑作と信じて疑いませんでした。『エド・ウッド』ではスポンサーに口を出されることに憤ったエドが酒場で憧れの映画監督オーソン・ウェルズと出会い、「他人の夢を撮ってどうなる? 夢の為なら戦え」という金言を受け映画を完成させる過程が感動的に描かれています。撮影風景は突っ込みどころだらけだけど。

実際の『プラン9』も突っ込みどころだらけ。物語はとても退屈で、表現技法もメチャクチャなので普通の映画を観るスタンスでは絶対に楽しめません。ストーリーを追って観ると眠くなりますから、この映画は線ではなく点で見る必要があるのです。

大体の突っ込みどころは『エド・ウッド』でも描かれていますし、ここでは書き尽くせないほど突っ込みどころばかりなので『エド・ウッド』をぜひ観ていただきたい。

簡単に言うと、さっきまで昼だったのに突然夜になる、マイクの影が写り込むNGシーンを使っている、どう見ても墓がダンボールでできている、ベラ・ルゴシが交通事故に会う時の悲鳴がダサい等です。

とにかく規格外な映画です。強烈な映画です。『エド・ウッド』を観たあとで観るとより楽しめますが、エドが意図していたものとは別の面白さなのがなんとも言えません。これを傑作だと思っていたなんて、よほど世間と感覚がずれた人だったのでしょう。

なぜエド・ウッドは史上最低の映画監督と呼ばれるようになったのか

エド・ウッドを擁護する人がよく言うのは、「エド・ウッドよりも酷い映画監督は沢山いるし、彼の映画よりも酷い映画は沢山ある」ということです。

この言葉は正しいと私は思いますし、現にIMDb(インターネット・ムービー・データベース)の最低映画リスト100にエド・ウッド映画は1本もランクインしていません。

『プラン9』は確かにひどいけど、観て不快になる人はあまりいないのではないでしょうか。デタラメすぎて逆に面白くなってきてしまうし、「なにかすごいものを観てしまった」という気持ちになりますから。これは貴重な映画体験ですよ。一方で観ると不快になるほどつまらない映画は確かに存在します。

では、なぜエド・ウッドは史上最低の映画監督と呼ばれるようになったのか?それは『プラン9・フロム・アウタースペース』が深夜テレビの映画枠で繰り返し放送されたからです。

『プラン9』はあまりのつまらなさに買い手がつかず、テレビ局が安く買い叩いて深夜枠の穴埋めとして連投したんです。それを見た視聴者が「なんだかとてもつまらない映画が放送されている」と騒ぎ、1980年に「ゴールデンターキー賞」という本で歴代最低映画として紹介されたことがきっかけで「史上最低の映画監督」として知られるようになってしまいました。

生まれるのが早すぎた「映画界のゴッホ」

生前は1本も評価されることなくこの世を去り、死語評価された(?)ことからエドは「映画界のゴッホ」と呼ばれることがあります。エドはあふれんばかりの創作意欲だけで映画を作っていました。ハリウッドの商業映画にはない「俺はこういうことがやりたいんだ!手に余ってるけど!」という情熱。ファンはその情熱にやられてしまったのです。

でも、タランティーノやティム・バートンのように熱烈に支持するファンもいます。エドがあと10年遅く生まれていたら、彼の人生は大きく変わっていたかもしれません。「史上最低の映画監督」はあくまで愛称。実際には「映画オタクに愛された、早すぎた映画監督」と言えるのではないでしょうか。

ちなみに、かの珍作『死霊の盆踊り』(1965)はエド・ウッドの監督作品ではありません。エドは脚本を書いただけです。半裸のねーちゃんが踊ってるだけのクソ映画に脚本があるなんて信じがたいですが。

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  • cacao
    3.0
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  • Naoka
    3.4
    ベラおじいちゃんが可愛すぎました…。 そこそこ面白かったけど、2時間もいらないなー。
  • にゃんぷー
    3.3
    愛すべきダメダメ達。 オーソンウェルズの件が全て。 白黒にする必要性はあまり感じなかった。
  • しんのすけ
    4.0
    史上最低の映画監督にして史上最高の映画ファンのエドウッドに惚れました。
  • ダニー
    -
    記録
  • 4.5
    ジョニーデップの口半開きで感嘆する素振りが超泣ける。
  • トコイ
    4.0
    再現度高い。 ベラルゴシ、、、 泣ける。 エドウッド映画を 涙なしには見れなくなる
  • サンチャイルド
    4.4
    好きで居続ける事は、才能なんだと励まされる。
  • junya
    1.0
    つまらなかった
  • やーもん
    3.7
    素直に面白かったです。 市民ケーンにて監督、脚本、主演までこなしたオーソンウェルズに憧れた史上最低の映画監督エドウッドの半生を描いた今作。 この作品で描かれているのは彼のデビュー作である「グレンとグレンダ」から彼の自称史上最高傑作「プラン9(以下略)」の彼の映画製作について。 この映画でここがすごいとかこのシーンが良かったとかは特にありませんでしたが、全体的に面白い。 エドウッドは才能がなかったとかではなく、オーソンウェルズの真似事をしたかったただの映画好き。 そんな彼の映画製作ごっこを哀れみながら、小馬鹿にしながら見て楽しむのがこの映画かなぁと。
  • にゃん
    3.5
    記録
  • つこさん
    3.7
    きろく
  • はやしひろこ
    -
    ■過去に見た作品としてマーク(再観賞時にレビュー予定)
  • 3.0
    見たけどそんなに面白いとは思わなかった記憶。
  • Demakase
    2.8
    この映画、 映画にたいしてすごい情熱があるにもかかわらず、作品は最低ということを 描きたいんだと思うんだが、 正直、作中のエドウッドを見ると、 映画への情熱があるようには見えない。 そりゃそんな意識で作ってたらそうなるよと。
  • そう
    3.7
    この映画を観てエドウッドがどんな監督だったのかよくわかりました。 ベラルゴシ、ヴァンパイラなど知れてよかったです
  • TJ
    4.0
    もう低予算を笑ったりしないよ。 悲しい。
  • Roygbiv
    -
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  • SIZU
    -
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  • -
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  • もんた
    3.8
    ジョニデ以上に周りのチョイ役の人たちが良い!ティムのエド愛がひたすら伝わってくる。
  • ライン
    3.7
    史上最低の映画監督と言われた、エド•ウッドの映画。 モノクロな感じがなんともおしゃれな映画です。 エド•ウッドの才能は恵まれなかったけれども、映画に対する熱意だけは誰にも負けないエド•ウッド。脚本がたとえ自分のプライバシースレスレなところを明かすことになっても映画は作る。そんな映画への愛を持った生き様は本当にすごいと思います。 しかし、この映画でやはり注目なのは、エド•ウッドとべラ•ルゴシの関係。 歳をとり、配給会社の社長や世間からは落ち目だと言われるルゴシでしたが、彼をまだまだ演技ができる、大スター、永遠のスターだとルゴシへの愛を語るエド•ウッド。そんな彼にファンを超えた愛を感じたルゴシは彼の作る映画で喜んで演技をする。これがもう、たまらないんですよね。 エド•ウッドの作品がヒットしなかったのに、ルゴシは出してくれるならと全力で演技に取りかかる。 そんな映画への執念を持ち続けたエド•ウッドとベラ•ルゴシ、この2人の関係性に着目しながら観ていただきたい1本です!もちろんそれ以外にも魅力はたくさんあります!
  • gomaeda
    4.2
    面白い‼️ いい映画
  • ic
    3.2
    始まりと終わりでティム・バートンの映画だと気付かされる。 実際の人物とよくここまで似た人たちを集めたなと調べてみると思う。 映画の話だけでは彼のことはまだわからない部分もあるけれど、エド・ウッドは商業映画としては運がついていなかったかもしれないけれど、人に会うタイミングはこの映画だけみてもとても幸運をもっているように思う。
  • みさキチ
    3.6
    ジョニー・デップのメイク無し、白黒のオシャレな演出も相まって、映画を作る楽しさみたいなのを感じた。 オープニングの怪しい感じに惹き込まれた。
  • GGYamsaki
    4.0
    エド・ウッド作品を観よう観ようと思いながら、先にティム・バートンによる伝記を鑑賞。 映画作りへの情熱だけで、行き当たりばったりで後世に残る迷作を作り続けたエド・ウッド役にジョニー・デップがどハマりでした。ベラ・ルゴシとエド・ウッドの交流は感動しましたね…これを機に「プラン9 フロム アウタースペース」観てみようと思います。
  • よしだ
    4.8
    才能が無くても自分の意思へ忠実に生きるエドウッド自体もおかしみと愛しさを感じるけれど、それ以上に一度栄光を浴びながら落ちぶれるベラルゴシが悲しい。けどエドとの交流が、このうらぶれた老人の癒しになってたんだろうなあと思うとホロリと泣ける。 この映画を見てからエドの映画を見るとまた違った愛しさを感じるようになります。
  • pachi
    3.6
    『史上最低の映画監督』と呼ばれたエド・ウッドの半生を、『チャーリーとチョコレート工場』などで有名なティム・バートン監督が敬意をもって映画化。アメリカでの公開が1994年の少し前の映画です。 ..... 映画監督として全く実績もセンスもないエドは、色んな人に酷評されながらも、未来のビッグヒットを目指し、これ以上なく前向きに情熱的に映画仕事に取り組んでいく。そして最大の自信作『プラン9・フロム・アウタースペース』の撮影をすることに、、、 ..... 事実、エドの映画は、 彼の没後、安価で権利が売られたこともあり、深夜枠でのTVで繰り返し放映され、それがキッカケでマニア的なファン?が増えて再評価されることになったそう。 その1980年代には『歴代最低映画』という賞を受賞したらしい。 それでも、情熱的に映画と向き合って来た結果、注目を浴びたことは努力の賜物、すごい偉業だと思う。 ..... 最後に、ビル・マーレイのこの役柄はこの映画でしかみれない気がするw 違和感しかないw それだけでも十分に楽しめる!
  • mochiz
    4.0
    デップのなかでベストかも!
「エド・ウッド」
のレビュー(2324件)