SFホラーの金字塔「エイリアン」シリーズを徹底解剖!その知られざる誕生秘話とは

2018.01.11
映画

ヒットガールに蹴られたい

竹島ルイ

SFホラーの金字塔として確固たる地位を築いている「エイリアン」。「スター・ウォーズ」にも匹敵する人気SFシリーズといえるだろう。

エイリアン

この人気シリーズはどのようにして誕生したのか? どんな経緯を経て現在まで製作が続いているのか? 本稿では、筆者の超個人的な意見も交えつつ、「エイリアン」シリーズを徹底解剖していこう。

『エイリアン』誕生秘話

そもそもエイリアン』の原型は、ダン・オバノンという一人のクリエイターによって生み出された。彼はジョージ・ルーカス、ロバート・ゼメキス、ロン・ハワードら著名な監督を数多く輩出している南カリフォルニア大学で映画を学び、ジョン・カーペンターと組んでSF映画の傑作ダーク・スター』を手がけた筋金入りのSFオタク。彼はこの作品で脚本、特殊効果、編集、出演と八面六臂の活躍を見せ、“才能のあるオタクぶり”を十二分に発揮する。

ダークスター

『ダーク・スター』の成功に気を良くした彼は、「本格的なSFホラー映画を撮りたい!」という次なる野望を成就すべく、『Memory』と名付けられたプロットを執筆する。未知の惑星からの信号をキャッチした宇宙船がその星に降り立ち、調査してみるとそこには恐ろしい生物がいて……というあらすじは『エイリアン』そのものだが、まだ“恐ろしい生物”がどのようなものなのかを具体的に決められず、作業は難航していた。

そんな最中、フランク・ハーバートのSF小説「デューン」の映画化を目論んでいた映画監督のアレハンドロ・ホドロフスキーから、「特殊効果をやってみない?」という依頼がオバノンの元に舞い込む。喜び勇んでパリに出向いたものの、ホドロフスキーは平気で「この映画、10時間くらいの上映時間にしたいんだよねー」、「サルバドール・ダリに出演して欲しいんだよねー」、「悪役はオーソン・ウェルズがいいんだよねー」とプロデューサーの顔が青くなるようなことを平然と言ってのける超芸術家気質フィルムメーカーだったので、当然のごとく資金難に陥り、製作は中止となってしまう(このあたりの経緯は、ドキュメンタリー映画『ホドロフスキーのDUNE』に詳しいので、興味のある方はドーゾ)。

ホドロフスキーのDUNE

無一文となり打ちひしがれてアメリカに戻ってきたオバノンは『Memory』の執筆を再開し、完成した脚本は製作会社のブランディワイン・プロダクションズに買い取られることになる。実はブランディワイン・プロダクションズの設立者の一人は、『ウォリアーズ』や『ストリート・オブ・ファイヤー』など男臭いアクション・ムービーを得意とする映画監督のウォルター・ヒル。脚本家でもあった彼は買い取ったシナリオの手直しに取り組み、少しずつ現在の『エイリアン』のストーリーに仕上げていった(宇宙船の乗組員に女性クルーを加えたのは、ウォルター・ヒルといわれている)。

ウォリアーズ

監督もウォルター・ヒルが務めるという話が持ち上がったものの、男気アクション系の彼にSFホラーはお門違いと自覚していたのか、それを辞退。代わって白羽の矢が立ったのが、当時コマーシャルの世界で注目を集めていた気鋭の映像作家リドリー・スコットだった。

筆者の個人的意見で恐縮だが、リドリー・スコットはストロングポイントとウィークポイントが極端に混在している映画作家だ(クリストファー・ノーランも同様だが)。ビジュアリストとしての才能は誰しもが認めるところだが、ストーリーテラーとしては欠陥だらけ。一本調子で抑揚がないために語り口は鈍重だし、全体的に説明不足なのでお話がよく分からない。そんなリドリー先生にとって最も適切な題材は、ズバリ「お話がシンプルな映画」。ストーリーに起伏がないなら、それが逆にメリットに成り得るホラー映画がいいハズ。『エイリアン』はまさに「リドリー・スコット向き題材」なのである。彼を監督に起用したのは、まさに慧眼だったのだ!

もう一人、この作品の成功に大きく寄与したのが、エイリアンの造型デザインを担当したH・R・ギーガー。スイス生まれのこの変態アーティストは、クリーチャー創造にあたって「およそ考えつく、ありとあらゆる気持ち悪いもの」をコラージュしまくり、世にもおぞましい怪物を創り出した。ダン・オバノン、ウォルター・ヒル、リドリー・スコット、H・R・ギーガー……。トップ・クリエイター達による知恵と努力によって、『エイリアン』は映画史にその名を刻む大傑作になったのである。

エイリアン

傑作の『2』、迷走の『3』、混沌の『4』

『エイリアン』の大ヒットを受け、続編の計画はすぐに始動した。『エイリアン2』を任せられる若い才能を探していたプロデューサー達が目をつけたのが、『ターミネーター』でその才能を世に知らしめたジェームズ・キャメロン。彼は『エイリアン』の世界観にベトナム戦争のイメージを重ね合わせ、偉大なる第1作に勝るとも劣らない傑作を世に放った。

2作目の成功の要因は、原題の『ALIENS』というタイトルに集約されている。『エイリアン2』とは文字通り、雨後のタケノコのごとくエイリアンがやたら出てきて、やたらマシンガンが乱射され、やたらモノが爆発するという、空前の物量作戦が投入されたアクション映画。ホラー調の前作から大胆なシフトチェンジを計った、「パート2をつくらせたら世界一」のジェームズ・キャメロンのしたたかな計算が伺える

エイリアン2

1作目、2作目の成功を受けて企画された『エイリアン3』は、紆余曲折の連続だった。まずシナリオがいつまでたっても決まらない。最初にシナリオを担当したのは、「ニューロマンサー」の著者として知られるSF作家ウィリアム・ギブスン。それを『ヒッチャー』の脚本で知られるエリック・レッドが書き直し、それをさらに『心の地図』の監督で知られるヴィンセント・ウォードが書き直し、それをさらにジョン・ファサノが書き直し、それをさらにグレッグ・プレスが書き直し……(以下省略)。何人ものシナリオライターによる改稿が永遠と繰り返された挙句、最終的にまとめたのは業を煮やしたウォルター・ヒルだった。

決定稿がなかなか上がってこない混乱状態の撮影現場に、映画監督として招聘されたのが、まだ20代だったデヴィッド・フィンチャー。後に『セブン』、『ファイト・クラブ』、『ゴーン・ガール』といった傑作を撮ることになるトップ・ディレクターだが、当時はこれが劇場用長編映画の第1作となるド新人。そんな彼に相次ぐスタジオのトラブルを収束させられる訳もなく、主演のシガニー・ウィーバーにはキレられたりして、デビュー作は辛い出航となってしまった。

実際、出来上がった作品も酷評されてしまう。『エイリアン』はリドリー・スコットによるリアリズム描写に徹したホラー映画、『エイリアン2』はジェームズ・キャメロンによるハードエッジなアクション映画だったが、『エイリアン3』はまさかの宗教路線。かつて凶悪犯だった囚人達が収監されている流刑惑星にエイリアンが現れるが、囚人達は厳格な戒律な元に暮らしており、武器・火薬もない状態だった……というストーリー展開はひたすら暗くて重い(筆者的にはそれほどの失敗作とは思えないのだが)。

エイリアン3

その5年後に作られた『エイリアン4』は、さらに混迷を深めた。最初は、『トレインスポッティング』や『スラムドッグ$ミリオネア』を手掛けた映画監督ダニー・ボイルに話が持ちかけられたのだが、最終的にメガホンを握ることになったのは『アメリ』で世界的な巨匠となるジャン=ピエール・ジュネ。『アメリ』の監督と聞くと、ポップでキュートなお伽話が守備範囲と勘違いされてしまいそうだが、元々彼は『デリカテッセン』や『ロスト・チルドレン』など、グチョグチョなグロテスク描写を臆面もなくスクリーンに描き出してきた人物。

気がつけば『エイリアン4』も、人体が破壊されるわ、臓物は飛び出るわと、シリーズを通して最もグロテスクな作品に仕上がってしまった。コアな映画ファンはともかく一般の映画ファンからは敬遠されてしまい、偉大なる「エイリアン」シリーズはいささか不本意な形で終焉を迎えることになる。

エイリアン4

スピンオフ作品を経て、エピソード0へ

『3』と『4』が批評的・興行的に成功しなかったことで「エイリアン」シリーズは完結を迎えるのだが、意外な形で復活を遂げる。同名のコミック作品を原案にしたスピンオフ作品『エイリアンVS. プレデター』が2004年に公開されたのだ。

エイリアン対プレデター

前年に『フレディVSジェイソン』が公開されていたから、「凶悪モンスターによる夢のコラボ」は当時の流行だったのだろう。2006年にはスピンオフ・シリーズ第二弾『AVP2 エイリアンズVS. プレデター』も製作されたが、両作ともB級映画感は拭えず、エイリアンの復活は不完全燃焼に終わってしまう。

しかし2012年、第1作の『エイリアン』から30年以上の時を経て『プロメテウス』が公開される。当時は「エイリアン」シリーズであることがほとんど宣伝されなかったのだが、本作は正統な『エイリアン』エピソード0。しかも第一作を手掛けたリドリー・スコットが監督に復帰登板! 『エイリアン』は前日譚としてリブートされたのだ。

プロメテウス

だがこの作品は、いささか困った問題も抱えている。“プロメテウス”とは、ギリシア神話に登場する神であり、天界の火を人類に与えた存在のこと。「我々は一体どこから来たのか?」という人類誕生の起源が映画の主題になっており、哲学的なモチーフをはらんでいる。単純な『エイリアン』の前日譚ではないだけに、リドリー・スコットのストーリーテリング力不足が露呈してしまっているのだ。

理解不能シーンの連続に、観客の脳内はクエスチョンマークだらけ。アンドロイドのデヴィッドは、どうしてあんなにXXXのことを熟知しているの? デヴィッドが謎のXXXをホロウェイにXXXさせた理由は? 置き去りにされた2人組はなぜXXX化したの? メレディスは本当にXXXだったの?……etc(ネタバレ回避のためXXXばっかりになっております。スミマセン)。全編ツッコミどころ満載なのだ!

圧倒的求心力のある映像と、意味不明&説明不足のストーリーテリング。ある意味でこれこそがリドリー・スコット流。前日譚シリーズ第二弾である『エイリアン:コヴェナント』に続き、次回作が『エイリアン アウェイクニング(原題)』であることがアナウンスされているが、果たしてどのような作品に仕上がるのか?

これからの『エイリアン』シリーズに期待いたしましょう!!

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