実在する建築物、大自然が生み出す圧倒的な説得力。世界遺産とともに描かれる映画3本!

映画も音楽も本も好き。

丸山瑞生

フルCGで生み出される映像も素晴らしいですが、実写にしか出せない魅力も強いですよね。
今回は、実在の世界遺産で撮影が行われた作品を3本ご紹介します。

13の世界遺産で撮影が行われた『落下の王国』の美しさ

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1915年のロサンゼルス。無声映画のスタントマン・ロイは、撮影中に半身不随の大怪我を負う。挙げ句の果てに主演俳優に恋人を奪われ、自暴自棄に陥っていた。そんなとき、入院中の病室に現れたのは、ルーマニアからの移民の少女・アレクサンドリア。彼女もオレンジの収穫中の怪我で骨を折り、ロイと同じ病院に入院中だった。ロイは動けない自分に代わり、自殺のための薬をアレクサンドリアに飲ませようと思いつき、彼女に作り話を聞かせる。少女を操るための他愛ない寓話は、少女に希望を与え、ロイ自身をも救う壮大な物語へと広がる。

監督は、ターセム・シン。代表作は『ザ・セル』や『インモータルズ -神々の戦い-』。前者では牛の輪切りのアート作品、後者ではゴージャスなギリシャ神話の神々たちなど、どれも特有の美意識で貫かれた徹底的なこだわりが感じられます。衣装、美術、ロケーションなどから視覚的な力で物語に強度を持たせているからでしょう。もちろん、作り込まれた物語が素晴らしいのは大前提で。

落下の王国』は、構想26年。24か国以上のロケーション、13の世界遺産で撮影が行われ、製作には4年の期間が費やされました。本作に関しては、一目でわかる実在するものの強さが圧倒的な魅力でしょう。プラハ歴史地区の街並み、カンボジアのアンコール・ワット、インドのファテープル・シークリーなど、実在の世界遺産だからこその説得力。空想の物語に真実味を帯びさせるには、これ以上の手段はないでしょう。

世界遺産
プラハ歴史地区

世界遺産
アンコール・ワット

また、これは個人的な好みの話なのですが、寓話や空想が現実に作用を及ぼす物語に惹かれます。たとえば、ギレルモ・デル・トロ監督『パンズ・ラビリンス』。スペインの内戦後を舞台に惨たらしいほどのレジスタンスの掃討と、幻想の世界への逃避を重ねる薄幸の少女・オフェリアを描いた作品です。もうひとつは、ティム・バートン監督『ビッグ・フィッシュ』。こちらは、父親と息子の和解の物語。父親のほら話に含まれた真実を知った息子と、若かりし父親の過去を幻想的に綴る作品。現実と回想のパートが絶妙なバランスで描かれます。

これらの作品が素晴らしいのは、人間の想像力が作中の物語そのものや、それぞれの人生に影響を及ぼしているところだと思うのですよね。それは、わたしたちが映画を観るときの感覚にも近いのではないでしょうか。人間の想像力から生み出された映画に触れ、思考や感情を知り、得る。どれもがわたしたちに変化を与える想像力の根源的な強さを味わえる作品かと思います。

砂漠を舞台に描かれる『アラビアのロレンス』の壮大なスケール

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第一次大戦中のアラブ、イギリス人のトーマス・E・ロレンスはエジプトに送り込まれる。彼は任地のカイロで、砂漠の侵略を企てるトルコ軍に立ち向かうアラブ民族をまとめ上げ、幾多のゲリラ戦の成功を収めた。しかし、あるときからアラブ人同士の争いが起こるようになり、ロレンスも次第に孤立へと向かう。景色の美しさ、分かり合えないアラブ人たち。そして、主人公・ロレンスの冒険と苦悩を壮大なスケールで描く。

監督は、デヴィッド・リーン。代表作は『戦場にかける橋』や『ドクトル・ジバゴ』。スティーヴン・スピルバーグ、マーティン・スコセッシなどの次世代の映画監督に多大な影響を与えた名監督のひとり。長期間の海外ロケ、巨額の資金の投資、異常とも言える完璧主義だったデヴィッド・リーンですが、そんな人物だからこそ、本作や『ドクトル・ジバゴ』などの大作を生み出せたのだと思います。

また、デヴィッド・リーンと同様に実写の撮影にこだわる、クリストファー・ノーランは、『ダークナイト』の撮影でIMAXカメラを使用したときに「デヴィッド・リーンが砂漠の中で65ミリのカメラを抱えられたなら、ぼくたちにこれが使いこなせないわけはない」と語ったとか。脈々と受け継がれるリーンの意志を感じさせます。

『アラビアのロレンス』に登場の世界遺産は、モロッコのアイト・ベン・ハッドゥ。モロッコの都市、ワルザザート近郊の集落です。赤茶色の外壁は砂漠では一層映え、夕日を浴びるその姿には神々しさも感じられます。『アラビアのロレンス』以外でも『ソドムとゴモラ』や『グラディエーター』などの作品で撮影が行われました。映画の撮影における世界遺産の定番的なスポットと言えるかもしれませんね。

世界遺産
アイト・ベン・ハッドゥ

こちらのアイト・ベン・ハッドゥはもちろんですが、本作では砂漠が非常に美しく描かれます。広大な砂漠を魅力的に描き、人間が米つぶほどの長ロングショットのスケール感には誰もがため息を漏らすでしょう。

大自然を縦横無尽に跳び回る!『キング・コング:髑髏島の巨神』

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外界から閉ざされた伝説上の島、髑髏島。調査遠征隊は地質調査を名目に髑髏島に踏み込むが、特務研究機関モナークの一員・ランダの本来の目的は巨大生物の発見だった。島内に足を踏み入れた隊員たちは、あちこちに散らばる骸骨や我々の常識を超えた生物たちと遭遇する。巨大なコングやクモ、バッファロー。そして、スカル・クローラーと呼ばれる獰猛な爬虫類。果たして、隊員たちは髑髏島を無事に出ることができるのか。1933年に製作された特撮映画の古典『キング・コング』を筆頭に、コングの起源を描いたアドベンチャー大作。

監督は、ジョーダン・ヴォート=ロバーツ。監督作は少ないのですが、昨年にも彼の作品『キングス・オブ・サマー』が公開。こちらは2013年製作。本作とは毛色の異なる、彼のデビュー作です。次作も楽しみですね。脚本は、ダン・ギルロイ。偶然の共通項なのですが、既出の『落下の王国』の脚本も彼でした。ダン・ギルロイの名を知らしめたのは『ナイトクローラー』でしょうか。こちらは彼の監督デビュー作で、ジェイク・ギレンホールの鬼気迫る演技が素晴らしい痛快な一本。

巨大生物が暴れ回るアクション映画はそれ自体が主役ですし、主要なキャストですら駆け出しの役者の起用が多いかなと思うのですが、本作はそのイメージを覆すキャスティング。トム・ヒドルストン、ブリー・ラーソン、ジョン・グッドマンなどなど。そして、髑髏島のどの生き物よりもコングの宿敵とも言える軍人を演じた、サミュエル・L・ジャクソン。「キング・コング VS サミュエル」とでも言わんばかりの展開にも注目。

キング・コングと聞いたときに、美女を握りしめ、そびえ立つ摩天楼に登る姿を思い浮かべる方も多いでしょう。しかし、本作の舞台は南太平洋の未知の島。大自然を縦横無尽に駆け回る躍動感に溢れたコングの姿は、これまでの作品とは異なる印象を与えます。ハワイ、オーストラリア、ベトナムで撮影が行われ、豊かな自然と特殊な環境の世界観は非常にファンタジックです。

とりわけ、ベトナムの世界遺産、ハロン湾の景色は圧巻。本作では、コングの戦うシーンのほとんどが水辺で、周囲を巨大な岩と生い茂る木々に囲まれたロケーションは、これまでの「キング・コング」シリーズとは異なる点でしょう。コングのかっこよさはもちろんですが、ちっぽけな人間たちがどうあがいても自然の脅威には勝てないという事実に説得力を持たせる、大自然の強さと魅力を見せつけられる作品です

世界遺産
ハロン湾

さいごに

近ごろは街並みですらCGで作り込む作品も多いかと思います。それは素人目にはわからないほどに精巧で、作られたものだと気づかないこともあります。しかし、実在の建築物や雄大な自然を映画で見たときは、意外と気づきますし、映像の迫力、説得力が違うなと思います。美しさにも息を呑むでしょう。どれも非常に美しく、お薦めの作品です。

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  • pon
    3.8
    映画館で見てみたい インドの階段井戸 素敵な作品
  • ちゅいむへちょ
    5.0
    ᴵᴹᴾᴿᴱ᥉᥉ᴵᴼᴺ ⁗ お薦めする映画は絶対これ スペクタクルな映像と ロマンティックな物語 ⁗ 好きな映画の特徴を3つ言ってみる𓃟ﻌﻌﻌ ♡ #アメリカーナエキゾティカ! #アメリカーナエキゾティカ!! #アメリカーナエキゾティカ!!!
  • merotan
    3.5
    少年少女のこころにダイレクトアタックな作品。 こんなのいいなぁ。
  • Ojigi
    3.7
    とにかく映像が美しくて、それだけで引き込まれる。何箇所で撮影したんだろうか。架空の物語のパートはほぼ外。引きになった時にスケールの大きさに圧倒される。衣装を含め、独特の世界観を持った作品。ファンタジーと現実の交錯が見事。
  • びりーけん
    3.8
    こーゆーのが映像美って言うんでしょうね
「落下の王国」
のレビュー(5292件)