【解説】宇多丸&研究家が解説!85歳レガシー俳優・仲代達矢主演の最新映画2本

2018.01.11
映画

FILMAGA編集部

フィルマーくま

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TOKYO MXの人気バラエティ番組「バラいろダンディ」で、玉袋筋太郎(以下:玉さん)&RHYMESTER 宇多丸(以下:宇多さん)の映画好きコンビが月に一度とっておきの映画を解説するコーナー「水曜バラいろショー」。

2018年一発目、1月のテーマは「仲代達矢映画」。85歳にして現役、世界が認める名優・仲代達矢の魅力をたっぷりと語ったトークの書き起こしをどうぞ。

時代劇研究家・春日太一さんがゲスト解説

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宇多:いつもの我々の雑でテキトーな紹介では年が明けられないということで。スペシャルゲストに時代劇研究家春日太一先生に来ていただきました!

春日:よろしくお願いします。

宇多:なかなか珍しい組み合わせですね。

春日:珍しいですね〜。

玉:いやいや、いつも一緒に呑んでんじゃねぇか!(笑)

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宇多:昨年10月(時代劇映画特集)以来のご出演ということで。

玉:春日さんをお迎えして今回お送りするテーマはこちらでございます!仲代達矢映画!!

宇多:これは(テーマが)デカい! 仲代達矢さんはもう日本映画の歴史! いや、映画界の歴史ですね。世界的な映画の歴史を背負った名優が、80代にしてまだまだ現役バリバリだっていう。

玉:スゴすぎるよね。

宇多:驚くべき俳優さんです。なぜ今回このテーマかと言いますと、昨年出版された春日さんのこちらの書籍でございます「仲代達矢が語る日本映画黄金期 完全版」。

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宇多:こちらの書籍では、春日さんが仲代達矢さんに計15時間に渡って取材を敢行されて、さらに最新の話も入っている。

玉:でも春日先生ね、仲代達矢さんっていったら、もうレジェンドでさ。近づけないと思うよ、普通の人は。それを15時間インタビューって、どんな感じだったの?

春日:とにかく最初お会いする3日くらい前から寝れない状態で(笑)

宇多:そうですよ!

玉:寝れないよ、そりゃ寝れない!

春日:インタビューさせていただいた場所が、仲代達矢さんが主宰されている無名塾という俳優養成所の稽古場なんですよ。このスタジオくらいあるような広い板張りのところで。そうしたら、その稽古場の真ん中に椅子が2つだけ置いてある。

宇多:いわゆる取り調べ式形式!

春日:座って待っていたところに「仲代さん入ります!」って言って、入ってきたときの大きさっていうんですかね。よくマンガとか昔の劇画で、「ドーン!」って文字が書いてあるやつ。もう本当にドーン!っていう文字がうしろに見えました。

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宇多:春日さんだって充分体デカいのに、それよりも大きい。

春日:もうスゴい人が来たなっていう。

玉:今までいろいろな人をインタビューしてると思うんだけど、仲代さんはやっぱり違う!?

春日:大きさが違いますね。ただ、実際お話させていただくと、とても気さくな方で。

宇多:アツいしね。本当に伝えたいことがあるっていう。

春日:そうですね。一切偉ぶることなく、しっかりしゃべっていただきました。

あのスコセッシ監督が自宅を訪問!世界的レガシー仲代達矢の魅力

宇多:とにかく仲代さんの取材をしているということで、春日さんに仲代達矢映画の魅力を語っていただきます。まずは、仲代さんのキャリアを……振り返りきることは不可能なんですけれど。

玉:振り返る必要もないでしょう。

宇多:そもそもだってね、『用心棒』『椿三十郎』『天国と地獄』『影武者』『人間の條件』『切腹』(に出演している)、この時点で世界的なレガシーなわけですよ。

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春日:そうですね。

宇多:その辺のハリウッドスターとか、もうクソみたいなもんなんですよ。

玉:クソ、クソ!

宇多:本当、本当。マジな話。

春日:恐らく現役の役者の中で一番実績があるのは、仲代達矢さんですから。

玉:今の日本で?

春日:いえ、世界全体で! (世界中の)現役の役者の中で言ったら、仲代達矢さんが一番いま実績のある役者さんだと思います。この間もマーティン・スコセッシ監督が仲代さんの家に呼ばれましたからね。

玉:あのスコセッシが!?

宇多:しかもスコセッシから見れば、もう「仲代達矢先生!」でしょ。

春日:まさに!

宇多:スコセッシなんか若造ですよ。

玉:スコセッシが若造!?

宇多:そりゃそうでしょう。

春日:スコセッシが観て育った映画に出ていた人、それが仲代達矢さんですからね。

宇多:そういうことですから。

玉:やっぱり仲代達矢さんの生き様っていうか、俳優としての生き様があるんですかね。

春日:基本的にはスターっていう意識がないんですよね。昔の映画界では、映画会社に監督とやスター俳優が全て専属してたんですけど。それによって、結局、決まった監督と決まった役者としかできなくて。仲代さんにそういう話もあったんですよ。専属すれば生活がラクになるんですよね。

玉:ラクだよ、確かに。

春日:絶えず安定したお金も入るんですけど。でも仲代さんは「それだといろんな作品に出られない」と。「俺は作品を選びたいんだ」と。専属したら会社の仕事しかできなくなるので。だから、あえて生活が苦しくてもフリーの道を選ばれたんですよ。「監督から呼ばれたら俺は出る」って。どんな役でも、この役は面白いと思ったら、小さい役だろうが脇役だろうが出るっていう形で。ですから、ありとあらゆる日本の名監督、名優と共演しているのが、実は仲代達矢さん。

玉:そうだよね。

宇多:その上、無名塾でどんどん若手が出てね。

春日:そうですよね。役所広司さんを筆頭に出ていますから。

「無名塾」とは

俳優・仲代達矢が主宰する俳優養成所。役所広司や益岡徹ら実力俳優を多く輩出しており、「劇団の東大」と称されるほど入塾審査倍率が高いことでも知られる。

玉:普通はやっぱり映画会社と契約しちゃうもんね。安定しているわけだから。

春日:でも仲代さんは、今に至るまで、仕事を(自分で)選ぶ道を進んだということですね。

宇多:そんな仲代さんの新たな魅力が詰まった、近年の新作があるんですよ。だから、今すぐこの番組を見るのやめてTSUTAYAさんに(レンタルしに)行った方がいいですよ(笑)

玉:観てください!お願いします。

宇多:最新作2作品! まずはこちらの作品です。

正気か認知症か『海辺のリア』

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宇多:『海辺のリア』。小林政広監督と3度目のタッグということですかね。2017年公開の作品です。仲代達矢さん演じる主人公・桑畑兆吉は、かつて映画界・演劇界で活躍した大スター。だから、ある意味で仲代さんご自身と重なる役柄。しかし、今や認知症の疑いがあり、娘夫婦に老人ホームに追い込まれることになってしまう。そして、その施設を脱走し、あてもなく海辺を歩き出すと。

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玉:すごいよね! 80代で、画角に入ってのあのチカラが。

春日:阿部寛さんと親子役なんですけど、阿部寛さんと並んでも仲代さんが大きく見えるくらいの迫力がある。この映画がすごいのは、仲代さんってこれまで監督のいかなる要求にも応える、あるいは、さっき言ったように、いろんな監督からオファーが来ることが喜びの人だったんです。でも、小林政広監督だけは、仲代さんに出てほしいということで、仲代さんに向けて脚本を書いている人なんですね。

宇多:当て書きというか。

春日:そうなんです。だから、それがたぶん仲代さんもすごく嬉しくて出演している部分もある。だから『海辺のリア』に関してもすごく難しかったということで。84歳にして新境地の役をやっていて。

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宇多:仲代さんご本人は、認知症からはまだまだほど遠いね。

春日:しかも、これが難しいのは、認知症かどうなのかわからないギリギリの演技なんですよ。

宇多:そうか、しっかりもしているわけだ。

春日:最後まで、実はわからない終わり方をするんです。この辺の微妙なやり方が、演技の中でも演じている。

宇多:おかしくなっちゃったのかと思いきや、ときどき正気に返ったりとか、そういうところがね。

春日:そうなんですよ。これもまさに映画の内容自体が『』とか『リア王』そのままですから。

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宇多:それも、やっぱり重なるようになっているという。

春日:そうなんですよ。このテクニックも凄いですよ。

玉:たまんねぇな〜。

宇多:続きまして、春日さんに紹介していただくのは、こちらの作品です。どうぞ!

玉:これがいいんだ、また!

再び時代劇へ!『果し合い』

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宇多:こちら、2015年に放映された、スカパーと時代劇専門チャンネルによるオリジナル作品『果し合い』。仲代達矢さんにとっては久しぶりの時代劇に主演! これ自体がもう事件ですけどね。仲代さんが演じた佐之助の役は、「部屋住み」という家族に疎まれている厄介者。そんな下級武士・佐之助が、唯一の理解者である美也の窮地を救うために、身を捨てる覚悟で刀を手にするが…という。藤沢周平さん原作、時代劇の魅力が存分に詰まった作品です。

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玉:やっぱり時代劇って言ったら仲代さん!っていう気持ちもあるんですけども。あの年齢で、また(時代劇に)帰ってくるっていうのがね。

春日:しかも主役で、ですからね。

玉:主役で、でしょ。

春日:僕は、この作品は京都で撮ったんですけど、クランクインからクランクアップまで、僕はずっと仲代達也さんに張り付きで。

玉:ベタ付きだっていうんだから。

春日:制作の過程を取材をさせていただいて。

宇多:現場の仲代さんはどうなんですか?

玉:どうなの? ピリピリするの?

春日:全くしてないですね。とにかく穏やかな感じで。けっこう合間合間でも冗談飛ばしたりとか。

宇多:じゃあ周りをちゃんとリラックスさせるように?

春日:そうでしたね。

監督の要望に応えるプロフェッショナル

春日:特に仲代さんの注目ポイントというのは、これなんですけども。仲代さんの役者人生そのものなんですけど「困難な状況になればなるほど輝きを増す」というのがありまして。

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春日:実は、『果し合い』のときもそうなんですけど、このとき実は仲代さん喘息(ぜんそく)を患っていて、もう発作が出てる状態だったんですよね。しかも、最後に立ち回りがあるんですけど。その立ち回りのシーンの日は、朝から刀の練習のシーンをまず先に撮って、それで夜に立ち回りなんですよ。喘息やりながら、気温30度の京都でずっと刀を振って、それで一旦撮影所に戻って、2時間だけ休んで、夜中の3時まで今度立ち回りの撮影をやるんですよ。もう体を使いまくり、刀振りまくりなんですけど。そういう状態になればなるほど燃える。

玉:燃えてくる!

宇多:鬼気迫る感じが出てくる。

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春日:あと、そういう状況になっても絶対文句を言わないんですよ。昔からそうなんですけど、「監督から言われたことに対してちゃんと応えるのが役者の仕事である」というのがあって。その準備をしていくのが、役者のプロフェッショナルだという意識なんですよね。

宇多:「こんなキツいのできないよ」とか(言わない)。

春日:昔から、とんでもないことを仲代さんはやってきてるんですよ。例えば若い頃『人間の條件』という映画のラストシーンだと、バタッと倒れたところに雪が降ってきて、雪に埋もれるまでずっと撮られ続けて。本当に凍死しかけたっていうのがある。

玉:それ、ガンバルマンだよ! 大変だぜ、先生。

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春日:そういう仲代さんが、80歳を過ぎてもなお、体を張った撮影をやっていたという。戦争を経験した人間だからこそ語れることがあって、残しておかないとという意識が今すごく強いので。

玉:舞台もやってるでしょ。

春日:今、九州で公演回っていますから。

玉:元気でしょ。

春日:ものすごいですよ。

玉:春日先生といつも酒呑んでるんでしょ。

春日:お酒強いんですよ、また。今年も忘年会行かせていただきましたけども、僕のほうが先につぶれる。仲代さんに「春日くん、今日はちょっと進みが遅いね」みたいなことを言われながら(笑)

宇多:はい、これからもできる限り春日さんにも仲代さんのお話をいっぱい伺っていきたいし、トークしていただきたいということで。

春日:どんどん新しい作品が出てきますから。

宇多:今回春紹介させていただいた2作品は、現在TSUTAYAさんで先行リリースされております。よくわかってる、TSUTAYAさん!

春日:さすが!

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宇多:ぜひぜひ、皆さんご覧くださいませ。春日さん、本日はありがとうございました。

春日:ありがとうございました!

宇多・玉:以上、「水曜バラいろショー」でした!

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オトナの夜のワイドショー!「バラいろダンディ」番組公式サイト

(月〜金曜日 21:00〜21:55放送)

※記事向けに一部のトーク内容を補足・割愛しています。

水曜バラいろショー過去放送分 書き起こし

 

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