TSUTAYAを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社グループが主催する、映像クリエイターと作品企画の発掘プログラム「TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM」(以下、TCP)。中江和仁監督『嘘を愛する女』を輩出したことでも知られる本プログラムで、2017年、全268の企画を勝ち抜き、審査員特別賞を受賞した『水上のフライト(仮)』土橋章宏さんにお話を伺いました。
――土橋さんのようなキャリアをお持ちの方が、応募されること自体に驚きでした。
そうですか?(笑) 脚本のキャリアはありますけれど、監督としては今年始めたばかりで初心者レベルだったので、僕はむしろ初心者として挑戦した感じでした。結果、ギリギリの特別賞だったので、ホントうれしいです。
――本作は下半身麻痺の少女がカヌーでパラリンピック出場を目指す物語です。モデルの方がいらっしゃるとか?
僕、もともと釣りが好きなんですけれど、ある時釣りをしていたらモデルとなっている瀬立モニカさんが、カヌーに乗って水上をバーッと通りかかったんです。「ん、なんか邪魔だな、なんだ?なんだ?」と思って(笑)。調べたら、すごい人だったんですよね。仲立ちしてくれる方にお願いしてインタビューをしてみたら、すごく面白い話がいっぱい聞けて。
――思い立って即取材されたんですか?
そうですね。やっぱり好奇心が強くないと、作家って駄目だと思うんです。新しいものに、とりあえず飛びつくとか、ちょっとでも変わったことがあったら聞いて、シナリオのネタにしてみようと思います。その一環で、今回もバッと聞いて、これは面白いと思うところがありましたし、東京オリンピックも控えているタイムリーさもありました。何より、モデルの彼女がすごく面白い子なんです。「私はこれで億万長者になるんです」とか言っていたからね(笑)。自分の中での「障がい者」のイメージや価値観の転がりがあって、これは映画にしたいと思ったんです。それがきっかけでしたね。
――具体的に今、すでに準備されていらっしゃるものはありますか?
やはりカヌーなので、スポーツのすごい映像を撮ってみたいです。海外のスポーツものは、そこに命をかけるぐらいの勢いでやっているんですよ。GoProとかVRを使って「おお!カヌーってすげぇんだ!」というのを撮ることが、ひとつの構想です。あと、「障がい者は可哀想」より「カッコイイ」というイメージがテーマなので、観ている方の価値観が変わればというのが、すごく伝えたいところと言いますか。新しい考え方を提案できたらと思います。
彼女はカヌーの練習を江東区でやっているんですけれど、いろいろなところから助力が来ていまして、地域で活動に取り組んでおられる方がいるので、そこから波及させたいですし。クラウドファンディングとかも使って、オリンピック、パラリンピックを共に盛り上げていきたいです。
――しつこいようですが、日本アカデミー賞最優秀脚本賞(映画『超高速!参勤交代』)も受賞した脚本家の土橋さんが、なぜ監督にもチャレンジされたのでしょうか?
いわば、シナリオの練習のためです。基本的に脚本は映像になったとき、7割、自分(のイメージ)と合ってればいいな、ぐらいなんです。ダメなときは5割ぐらいしか反映されていないときもあるし、いいときは役者さんがいろいろやってくれて脚本を超えている、という嬉しいときもあるんですけれど。だから脚本は最終段階ではなくて、一番最初に突っ込んでいく先発隊のようなもの。やっぱり最終段階の工程がどうなっているのかをすごく知りたくて。カット割りや演出などの全体を知ってこそ、脚本という一部がきちんとできるようになるんじゃないかと思ったんです。まずは自分の書いたものを、伝言ゲームみたいにならずに、うまく映像に起こせたらという思いがありました。
――やはり、そこにも好奇心があり、行動力も紐づいていますね。
役者の修行もしようかな、って思っているんですよ。結局、演出をつけるときは、役者のことも知らないといけないので、まぁ全部やらなきゃなって思っているんですけれど(笑)。できるだけ時間を作ってチャレンジはしたいです。出られるほどじゃなくても、「役者とは何か」が分かれば、また脚本に活かせると思っています。すごい方はいっぱいいらっしゃいますし、自分で「これだ」と納得できるのは、なかなか死ぬまでできないと言いますから。生涯、勉強していきたいですね。
(インタビュー・文:赤山恭子、写真:編集部)
■TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM 公式サイト
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