世界の映画ファンから愛されるポール・トーマス・アンダーソン監督最新作『リコリス・ピザ』は、懐かしさと甘酸っぱさに溢れた70年代青春グラフィティ!

世界中の映画ファンから熱い支持を受けるポール・トーマス・アンダーソン監督の最新作『リコリス・ピザ』が、いよいよ日本でも7月1日から公開となります。

2022年アカデミー賞作品賞、監督賞、脚本賞の主要3部門にノミネートを果たし、世界中の映画賞で絶賛を受けた本作は、1970年代のカリフォルニアが舞台の青春映画。欠点だらけの登場人物たちだからこそ、身近な存在のように愛おしく感じられ、まるで彼らと一緒に青春時代を過ごしたかのような、至福の劇場体験が味わえる人生賛歌の物語です。

2人の大型新人俳優が体現する70年代の瑞々しい恋模様

本作の舞台は、1970年代のハリウッド近郊の町、サンフェルナンド・バレー。男子高校生ゲイリーは、カメラアシスタントのアラナと出会い、恋に落ちます。その後2人は歩み寄りながらも、時にすれ違い、離れたりを繰り返しながらかけがえのない時を過ごしていくのです。映画は、そんな2人の不器用な恋を70年代の音楽や流行物をちりばめ、瑞々しく描いています。

淡い恋模様を体現するのは、2人の新人俳優、アラナ・ハイムクーパー・ホフマン。アラナ・ハイムは、エスティとダニエルの2人の姉とともにバンド「ハイム」で活動しているミュージシャン。2013年にはグラミー賞最優秀新人賞にノミネート、2020年には女性だけのロックバンドとして初めてグラミー賞最優秀アルバム賞にノミネートを果たした、注目の存在です。ミュージックビデオなどで演技の経験はあるものの、本格的な長編映画に挑むのはこれが初めて。彼女は、本作の舞台であるサンフェルナンド・バレー出身であることと、ポール・トーマス・アンダーソン監督がハイムのミュージックビデオを手掛けたこともあり、彼女の才能を以前から知っていたことで、今回の起用に至ったようです。

もう1人の主人公ゲイリーを演じるクーパー・ホフマンは、名優だった故フィリップ・シーモア・ホフマンの実子。以前から映画製作には興味を持っていたそうですが、父とも懇意だったポール・トーマス・アンダーソン監督から脚本が届き、17歳で俳優デビューとなりました。

物語を彩る大物俳優たち

本作の主人公2人は架空の人物ですが、70年代ハリウッドの雰囲気を再現するため実在の人物をモデルにしたキャラクターも多数登場します。いずれも、当時ハリウッド周辺では名の知られた人物ばかりで、そんなキャラクターを大物俳優が演じています。

名優ウィリアム・ホールデンをモデルにしているジャック・ホールデンを演じるのは、ハリウッドを代表する名優ショーン・ペン。重厚な二枚目俳優を演じるために、ショーンはいつもよりも低い声で演技し、引き出しの豊富さを披露しています。そんなジャックと行動をともにする映画監督レックス・ブラウを演じるのは、伝説的なミュージシャン、トム・ウェイツ。レックスのモデルは、マーク・ロブソンサム・ペキンパージョン・ヒューストンなどいくつかの映画監督のパーソナリティを合わせたようなキャラクターです。トム・ウェイツは滅多に映画出演しないと言われていますが、ショーン・ペンと旧知の仲だったことから出演が実現しました。

そして、破天荒な映画プロデューサー、ジョン・ピーターズを演じるのはオスカー俳優ブラッドリー・クーパー。彼が演じたジョンは、サンフェルナンド・バレー出身で、70年代の名作『スター誕生』を製作し、主演のバーブラ・ストライサンドと交際していたことでも有名な人物です。本作では、ウォーターベッドを届けに来たアラナとゲイリーに対して、「俺の恋人は?」などと困った質問を浴びせたり、常軌を逸した行動で周囲を驚かせるなど、強烈な存在感を発揮。ブラッドリー・クーパーの芸達者ぶりを垣間見ることができます。

ちなみに、ブラッドリー・クーパーは2018年に『アリー/ スター誕生』を監督しており、演じたジョン・ピーターズと同じ題材を映画にしたこともあるという縁を持っています。

その他、70年代から2000年代にかけてロサンゼルスで市議会議員を務めた実在の政治家ジョエル・ワックスを、俳優・監督として活躍するベニー・サフディが演じて、物語に深みを与えています。

レコードショップ由来のタイトルが意味するもの

ポール・トーマス・アンダーソン監督は音楽へのこだわりの強い作家として知られていますが、本作はとりわけ音楽との結びつきが強い作品でもあります。タイトルの『リコリス・ピザ』とは、当時南カリフォルニアで展開していた独立系レコード・ショップチェーンのことで、10代のティーンたちがこの店でレコードを買うのが定番だったそう。このレコードショップ自体は作中に登場しませんが、そのショップで当時売られていたであろう音楽が全編に渡って使用されており、映画そのものが『リコリス・ピザ』の音楽世界を体現していると言えるでしょう。

ニーナ・シモンの「July Tree」やドアーズの「Peace Frog」、デヴィッド・ボウイの「Life on Mars?」など、監督自らがキュレーションした曲が作中に使用されており、観客を70年代のカリフォルニアに誘います。そして、オリジナルスコアを手掛けるのは、アンダーソン監督作品の常連、レディオヘッドのジョニー・グリーンウッド。彼の作曲したオリジナル曲「Licorice Pizza」が、優しい旋律でゲイリーとアラナの2人のシーンを美しく盛り上げてくれます。

くっついたり、離れたり。優しく見つめ合う時もあれば傷つけあうときもあるゲイリーとアラナの二人の時間は、振り返ってみれば何もかも良い思い出。失敗も成功もどんちゃん騒ぎもあって、人生はこんなにも美しい。あの時代を生きた人はもちろん、当時を知らない人も、この映画をスクリーンで観れば、あの時代を過ごした気分になり、登場人物たちの人生が気になってしまうでしょう。劇場を後にしてからも心にずっとなつかしさが残り続ける、この夏必見の作品です。

◆『リコリス・ピザ』 information

あらすじ:1970年代、ハリウッド近郊サンフェルナンド・バレーで偶然に出会うカメラマンアシスタントのアラナと子役として活躍する高校生ゲイリー。実在の俳優やプロデューサー、実際の出来事を背景に、意地を張ってすれ違い、それでも恋心を募らせるふたりの恋模様を描き出す。

上映時間:134分
公開日:7月1日(金)全国公開
配給:ビターズエンド、パルコ
公式サイト:https://www.licorice-pizza.jp/
(C)2021 METRO⁻GOLDWYN⁻MAYER PICTURES INC. ALL RIGHTS RESERVED.

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    ざらっとした日常。若すぎて青すぎて息遣いすら暑苦しく感じる若者。段々と年齢を重ねていくのに人生の道が定まらない自分。世間体とか常識とか色々なものを言い訳に踏み出せない彼女が、駆け出すまでの日々を描く。 自然体で人間臭くて魅力的な2人が愛しい。
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  • sasasanosa
    3.9
    PTAが好きって思ってるのでこちらも基本好きだった。日本語ちょいだし感笑えた。 商才ある老け顔ティーンエイジャーのと日々と大人側の世界も恋しくなって、なにやってんだろと頭を抱えるところのギャップが沁みた、、 内容云々というよりその時代ってこんな感じだったのかなをワクワクして見るのが楽しかった
リコリス・ピザ
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