『ニワトリ★スター』で映画初出演の紗羅マリー、成田凌とは“汚い部分もぜんぶ分かち合う仲”【ロングインタビュー】

2018.03.23
映画

映画のインタビュー&取材漬けの日々是幸也

赤山恭子

ニワトリ★スター_紗羅マリー

モデルから俳優へと活動の場を拡げ、才気縦横な人物は男女ともに少なくない。これまで、紗羅マリーは「演技とテレビは向いていないので、やりたくないです」と、あえて作品に出演してこなかったが、ひょんな経緯から依頼を受けた『ニワトリ★スター』にて、運命的に銀幕の世界に乗り出すことになった。井浦新と成田凌が初共演した本作は、大麻を密売し日銭を稼ぐどうしようもない草太と楽人が、甘い誘いに乗っかったことから、不測の事態を招くことになる物語。

紗羅マリーが演じたのは、ヤク中のシングルマザーで楽人(成田凌)と縁を持つ知花月海。キャリアを重ねた女優でもひるむかもしれない役どころを、紗羅マリーはひとつひとつのシーンを大事に、試行錯誤の末、役作りを重ねた。結果、「初めての映画だし」と敷居を低くして観ようとする観客を鮮やかに裏切り、ヤクのシーンでは堂々とやり果せ、切ない触れ合いの場面では繊細な演技を見せた。そうしてまたひとり、逸材が映画界に足を踏み入れた。異色のヒロインとしてたたずんだ紗羅マリーに、作品のこと、共演した井浦新や成田凌のことなど、あますところなく語ってもらった。

――映画初出演、おめでとうございます。出演経緯から教えていただけますか?

ありがとうございます。かなた狼監督から直接オファーを受けた、という形になるんですかね? 昔、一度だけ、本当に10分程度、監督に会って挨拶をしたことがあったんです。あれから5~6年たって、いきなりSNS上で連絡がきて(笑)。「月海役に紗羅を使いたいんだけど、どうかな? 電話で話したい」というような内容だった気がします。それで、電話で話をして「あ、やります」と。

――ふたつ返事だったんですね。

そうですね。役柄的にも結構ディープな女なので、「一応事務所の確認はするけど、大丈夫だと思います」みたいな感じでした(笑)。

ニワトリ★スター_紗羅マリー

――「ディープな女」ということは、紗羅さんが演じられた今の月海の形が、説明の時点で、なされたと。

監督には「紗羅は大丈夫って言っているけど、1回読んでほしい」と言われて、もともと電子書籍で出していたものを紙にしていただきました。読んで、やっぱり「やります」と。

――読んだ感想は?

これまで彼が活動していたことや、YouTubeにUPしているものは観ていたので「監督らしいなあ」と思いました。重たい世界観と、病的なものもありながら、かわいいものも詰まっているというか。監督はすごく繊細で、すっごくかわいい人なんです。見た目は怖そうだし、というかもちろん怖いんですけど、その中にあるかわいさが映画の中にも詰まっているので、「らしいなあ」という感じでした。

――監督に「なぜ自分が?」という類のお話はされましたか?

そういえば、何で私を選んだのか、監督とあまり話したことがないです。「目の奥が病んでいるから」とは言われて、「え? うれしくないんですけど」というお話はしましたけど(笑)。

ニワトリ★スター_紗羅マリー

――女優になることは、いずれやりたいことだったんでしょうか?

何でだかはわからないんですけど、若い頃は事務所に「演技とテレビは向いていないので、やりたくないです」と、ずっと伝えていたんです。ただ、子供を産んで30歳になったときに、勝手に自分にボーダーラインをつけていたことがつまらなくなってきて。こんな私でも子供が産めたんだから、何でもできるだろう、じゃないですけど。知らない自分も見てみたいと思っていたときに、ちょうどお話がきたんです。

――タイミングもよかったんですね。30歳になって新しいことを始めるのに恐れは?

恐怖はもちろんあるんですけど、それが楽しいというか。ありきたりな毎日もつまらないし、割と刺激が好きなタイプなので「いいの、みーっけた」みたいな感じですかね。

ニワトリ★スター_紗羅マリー

――ちなみに、井浦新さんとも元々お知り合いだったんでしょうか?

そうです。監督を紹介してくれた人と、新くんを紹介してくれた人が同じ人なんですね。もちろん作品を拝見したことはあったんですけど、プライベートの新くんしか知らなかったんです。

――現場でご一緒してみて、俳優・井浦新はいかがでしたか?

格好よかった……!! やっぱり全然プライベートとは違うんだなあ……って。いつもほんわかしているイメージだったんですが、現場では全体を見守る感というか、どしっと構えていてくださって、「何かあれば、言ってくれたらやるよ」というスタンスの方だったので、すごく居心地がよかったです。

――紗羅さんご自身、女優業に挑戦した感想は?

すっごく難しいというか……。正解も不正解もわからなくて、合っているのかもわからないまま進んでいくのが、すごく怖かったです。自分を見直すというか、向き合わないといけないんだなと思って。でも、とっても楽しかったですけど。

――ご自分の姿をスクリーンで観て、どう感じられたのでしょうか?

ダメなところばかりを探してしまって、まだまだ全然冷静に観られていないんです。出ている俳優さんも、ちゃんとした自分の歴史があって、演技も上手な方ばかりなので「私……大丈夫なのかな? 浮いていないのかな? 本当に大丈夫なのかな!?」と、こういう状態(手で目を隠すよう)で観ていましたから(笑)。あと10回は観ないと無理です。

ニワトリ★スター_紗羅マリー

――撮影に入る前、ワークショップもあったようですね。

そうです。成田(凌)くんと私と監督の3人で部屋に入って、そのほかは誰もいない状態で。監督は遠くのほうに座って見ていて、私と成田くんに「向き合って手をつないで、目を見ながら今までの人生を全部話せ」と指示を出したんですね。人に言っていないことも、隠していることも、言えないことも、いいことも、よくないことも、「全部今ふたりで分け合え。自分の一番汚い部分を見せろ」と言われて。だから……、初めて会った人と手をつないで目を見ながら、2時間近くお互い自分の人生を話しました。

――初対面の成田さんに、自分のことを洗いざらいお話することに抵抗はなかったんですか?

空気的に……やらなきゃいけない(笑)。やるしかないな、と。もちろん映画の内容が、演じる側も精神的にとても背負っていかないといけないものがあるので、そのワークショップでお互いの負担を分け合えたというんでしょうか。

――となると、紗羅さんの全てを成田さんは知っていて、成田さんの全てを紗羅さんも知っていると。

知っています(笑)! 親にも言わないようなことも。だから、成田くんとはちょっと不思議な関係ですよね。生まれたときから知っているような……監督も含め、3人で墓場まで持って行きますよ!

ニワトリ★スター_紗羅マリー

――その経験は、やっぱり撮影の中で役に立ちましたか?

そうですね。何がどんな状態になっても、「一番ひどい自分をお互いが知っているから大丈夫」という心強さがあったので、撮影も乗り切れました。絶対に揺るがない安心感というか。本当にずっと後ろから支えられている感覚、「大丈夫」というのがわかる感覚というか、お腹の中にいる感覚みたいなものがありました。

――そのほか、演じる上で紗羅さんが大事にしていたことは何でしたか?

月海という人間にどっぷりハマるときはハマッて、自分の生活に戻るときはちゃんと区切りをつけることは心がけていました。撮影の1カ月半くらいの間、どっぷり浸かってしまうのもいいなと思ったんですが、自分にも子供がいるから、母親にも戻らないといけないし(笑)。どっぷりハマッている状態で子供に会うと、子供もこの世界に入れてしまうことになると思って、そこは本当に気をつけていました。

ニワトリ★スター_紗羅マリー

――私生活で母親であることが、月海をやる上で影響もあったんでしょうか?

もちろん。子供を産んでいなければわからない感覚もあっただろうと思います。私自身、子供がいるとき、いないときで、人間性がまったく違うんです。いないときは、こんな風に感じるとも思っていなかったですし。この役の中で、自分の子供に生かせられたらいいな、とは思いました。自分の息子でさえ、どうしても真正面で向き合えないことがあるんです。どれだけ愛していても。そういうもののお互いの心苦しさや、愛しているし幸せな日常を送っているけど、「この1ミリだけはどうしても分かり合えない」部分があったりするのは、産んでみないとわからなかった。それが入っていたらいいなと思います。

――日常生活と混合しないために、具体的に何か区切りはされていたんですか?

香りを使っていました。「月海ってどんな匂いなんだろう?」と思って。私自身、香水がすごく好きなんです。匂いはいつもつけているんですけど、月海のことを考えたときに、片親で、子供を育てていて、お金がなくて、夜のお仕事をしていて。だから、そんなに高いものは買えないし、かと言って、お客にいい顔をできるようなタイプじゃないから、貢物もないし。

――(笑)、確かに。

ということは、彼女が買えるお店はドン・キホーテ!と思って、ドン・キホーテに行ったんです。ブランドコーナーがあるんですけど、そこで売っている香水だと子供にくさいので、ボディクリームを買いました。YSLのベビードールのボディクリームを買って。それを塗ることで月海になって、取ると紗羅マリーに戻る、というのを繰り返しやっていました。

ニワトリ★スター_紗羅マリー

――誰にアドバイスを受けたわけでもなく、ご自分で役作りをやられたんですよね? すごく熱心に行動されたんですね。

そうなんですかね? なんか、やる術もわからないというか。演技も、やってみて違えば監督が「違う、もっとこうして」という指示があるはずだと思っていたんです。あと、完全に月海になるために、今から6キロ痩せていました。監督から「ヤク中なので痩せてほしい」という話があって、やるか、やらないかの時点でダイエットを始めたんです。とにかく、食べなかったですね。すぐに痩せたんですけど、途中で監督から「これ以上は……」とストップがかかって、「もうちょっといけるのにな……」って、ちょっと不満に(笑)。

ニワトリ★スター_紗羅マリー

――(笑)。最初の登場のシーンは、まさにヤクのさなかだったんですが、あのシーンはかなり大変だったのでは?

もう、はい。私はもちろん薬物中毒でもないですし、周りにもそういう人はいないので、インターネットでいろいろ調べたり、「こういうものらしい」といった話を聞いて勉強しました。勉強していくうちに、いつもポケーッとするようになっちゃって。そのとき、ちょうど歯医者に通っていたんですけど、ある日、まったく麻酔が効かなくなっちゃったんです。先生に「こんなに麻酔が効かないのは、ヤク中くらいだ!」と言われて(笑)。

――なんと(笑)!

「あれ、私もしかしたら脳内ヤク中!?」と思って。先生に「実は今度こういう映画に出ることになって、ヤク中なんです」と言ったら「やばいねー! 脳内がそうなっちゃってるんだよ!」と言われて。だからヤク中だったみたいです(笑)。

――ケミカルなしの、ヤク中ですね(笑)。

何も入れていない、妄想ヤク中ですよ(笑)。

ニワトリ★スター_紗羅マリー

――そこまで追い込むほど役作りをされたということですよね。あのシーンは観ていても胸がえぐられるようでしたが、やはり難しかったですか?

一番難しかったです。月海の感情が……クスリをやりたいけどやってはいけないし、子供に大きい声を出してしまい、暴力と変わらないことをして傷つけてしまう……でも吸いたい、吸っちゃいけない、とごっちゃになっていて。プチンと切れたときに人間ってどうなるんだろう……となった感情は、本当にすごく難しかったです。

――実際に演技をしているときは、どんな感覚なんでしょうか?

80%が勝手に、あとの20%は考えて、やっていました。やりすぎてしまうと嘘になってしまうし、やらなさすぎると伝わらないし……とか考えながら「うわーっ」となっていました。

――そのシーンが終わったら、体重も戻して、また次に進む、という感じだったんですかね。

月海自身の後半の物語に入っていくときに、体重を増やすために、今度は一気に食べないといけなかったんです。と同時に、成田くんは体重を減らさないといけなくて、本当にちょうど同じタイミングで入れ違いだったんです(笑)。これは面白いと思って、成田くんに「喫茶店、行こ♪」と誘って、私はナポリタンとかクリームソーダとかを食べているんですけど、成田くんは食べられないから、ひとりでボーッとしていて(笑)。「落ちるわ~~」と言っていましたね(笑)。

――成田さんとは、オフカメラではカップル感よりも本当によいバディ感というか。

それができるくらい、お互い頼るところは頼って、支えるところは支え合っていました。はじめにあれだけ話したので、いい意味で、もうそんなに話すこともなくて、そうだなあ……。実家に帰っても、わざわざ親や兄弟と一生懸命話さないのと一緒というか、話さなくても自然でいられる空気でした。うん、成田くんは空気(笑)。そんな感じでした。

ニワトリ★スター_紗羅マリー

――そんな成田さん演じる楽人と月海は愛を紡ぎますよね。紗羅さんはふたりの愛をどう感じていましたか?

私、元々「愛」という言葉は好きではないんです。だって、すごく自由自在に形を変えていきやがるので(笑)。その場、その場で使える簡単な言葉だなと思ってしまっていました。だけど、生まれてから死ぬまでの間、ひとつの変わらない形の愛を貫き通す男の人に、私はこの映画で初めて出会った。この映画だけの私(月海)ではなく、日常的な私にも、「いるんだな」という意味で、とても影響がありました。形を変えないのって、一番難しいことでしょう。好き、嫌いで分けちゃったほうが、とても明確に気持ちがわかるから。すごくストレートに、拳銃のように真っすぐ飛んでいく人がいるんだと思うと、すごく心が楽になりました。

ニワトリ★スター_紗羅マリー

――本作は、R15+指定ではありますが、お子さんが年齢に達したら観てほしいですか?

観てほしいですね! この映画自体のことも観てほしいし、「ママ、こんなに身体張っていたんだよ!」というのも観てほしい(笑)。何てったって、妄想ヤク中ですから。(インタビュー・文:赤山恭子、写真:You Ishii/紗羅マリーヘアメイク:足立真利子、スタイリスト:松居瑠里 )

映画『ニワトリ★スター』は現在公開中。

ニワトリ★スター
(C)映画『ニワトリ★スター』製作委員会

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  • ソニー
    1.9
    見所は、成田凌とLiLiCoのセックスシーン、津田寛治と久しぶりの鳥肌実。 そんだけ。 井浦新の関西弁はわざとなのか下手すぎるし、年齢的に無理があったかな。 関西弁の話せる役者は他にもいるような気がするけど。 最初のテンションで、ずっといって欲しかった。 後半はなにあれ。 原作がそうなんだから、しかたないんだろうけど。 117
  • JunHosokawa
    3.6
    面白い。
  • たいき
    4.5
    やっとみれた!!井浦新はやはり流石の演技力って思った!成田凌目当てで見たけど成田凌もかなり演技がうまいっていうか素なのか?成田凌の演技力にも脱帽😳さらに好きになった!! 中盤らへんからちょっと退屈したけど後半は双方の演技力に涙😢自然と涙が出てしまった笑あとエンディングの後にある後日談の感じ好き笑
  • sinsin
    3.1
    麻薬に濡れ場に下ネタにバイオレンスに性に愛に友情にSF。 いや構成要素多すぎだろ!でも正直こういうの見てみたかった! 途中途中に挟まれるアニメ描写等の独特な表現には製作者の熱い気持ちが読み取れる。小説中のカオスな世界観がこうして映像に収められている映画は割と好きなんだよなぁ。 監督自身が書かれた同名小説を自ら映画化した作品ということで、どのようなものかと思ったが、全ての要素を盛り込みながら、ちゃんと1つのストーリーに帰結させるかなた狼氏・製作陣の制作意欲には脱帽です。 それと主演の2人は凄く良かった!成田凌の演技幅の広さと井浦新の安定感。この2人であってこその映画だった。そして何より津田寛治が最高だったな。 しかし今映画のMVPは何と言っても「神の男」鳥肌実だろう。あの狂気は中々出せるものじゃないと思う。度肝を抜かれた。 いや〜観れて良かったな〜
  • taka
    2.9
    最近の邦画で最後までクズで救いのない物がけっこう多かったんでこれもそれ系かなと何となく観賞❗️ 何これ後半からの展開ずるくない?少し泣けたんやけど(笑) 成田さんのソフトモヒカンに赤髪、タトゥーは似合ってたし半端者の売人としては良かったかな、でも津田さんのやくざっぷりに鳥肌さんの気狂いっぷりはなかなか圧巻で見応え充分でした❗️ この二人を見る映画でした。 まぁでも狂気的にもお涙頂戴的にも普通の映画でした。
「ニワトリ★スター」
のレビュー(711件)