ヒロインの劇的変身に心ときめく!イメチェンしたくなるファッション映画3本

2018.03.28
映画

可愛いと映画とファッションがすき

kyon

映画のファッションを観るうえで、楽しませてくれる要素の1つ「変身」。シーンからシーンへと移り変わる衣装も素敵ですが、それが登場人物の心情に大きく関係しているのがわかると、より一層物語に入り込めますよね。そんな「変身」物語をフィルモグラフィーに持つスターの1人として、オードリー・ヘプバーンが挙げられるのではないでしょうか?

『ローマの休日』で主演女優を務めた彼女は、『麗しのサブリナ』『パリの恋人』『マイ・フェア・レディ』『ティファニーで朝食を』などの作品に出演し、自らの存在を確立させるヒロイン像を生み出しました。そこに添えられた衣装の数々は、映画史においても重要なものばかり。

そしてオードリー・ヘプバーンのスタイルに欠かせないのは、先日訃報が伝えられた高級メゾン「ジバンシィ」の創設者ユベール・ド・ジバンシィの存在でしょう。そこで今回は、オードリー・ヘプバーンとジバンシィの素晴らしいコンビが織りなしたいくつかの作品を取り上げながら、劇中のヒロインの「変身」物語を見ていきたいと思います。

4月は新たな環境を迎える時期。今でもなお愛され続ける映画のヒロインたちにぜひ背中を押してもらいましょう。

自分の捉え方次第で人生はバラ色。『麗しのサブリナ』(1954)

麗しのサブリナ

オードリー・ヘプバーンの出演2作目であり、「サブリナパンツ」の由来にもなったモノクロ映画『麗しのサブリナ』。本作からジバンシィの服が衣装として使用されています。もちろん変身するのはオードリー演じるヒロイン・サブリナですが、実はこの作品を通してオードリー自身が変身した作品でもあります。

というのも、本作で変身するサブリナは、1950年代のアメリカ・ニューヨークの資産家ララビー家お抱えの運転手の娘という役柄。そして彼女が長年想いを寄せるのは、ララビー家の次男でプレイボーイのデイヴィッドで、その身分の差はもちろん、このままではずっと平行線のままの関係として描かれています。そこで彼女では、父親の薦めにより(父親は叶わない恋に悲しむ娘の姿を見たくないゆえに)パリへ留学することになります。

外の世界へ飛び出し成長する女性像とファッションによる変化は重要です。そこで本作の監督ビリー・ワイルダーは、パリに行ったのならきちんとパリ・メイドの衣装を用意しようと紆余曲折し、最終的に辿り着いたのがジバンシィでした。

サブリナ

こうして変身前のサブリナの衣装、変身後の一部の衣装担当をハリウッドの名衣装デザイナー、イーディス・ヘッドが、変身後の最新モードの衣装をジバンシィが担うことになりました。とはいえ、変身前の衣装も可愛いのがオードリー作品の特徴。イーディス・ヘッドは彼女の体型ラインを活かしたジャンパースカートはもちろん、サブリナパンツなどもデザインしています。そして先ほど「変身後の最新モードの衣装はジバンシィが担った」と書きましたが、実はここにオードリーとジバンシィが長い付き合いとなるきっかけがあったのです。

当時のジバンシィはちょうどコレクション時期で、映画の衣装制作まで手が回らない状態だったといいます。そんな状態でも彼が衣装制作を引き受けたのは、ヘプバーンはヘプバーンでも当時すでに大女優だった「キャサリン・ヘプバーン」だと勘違いしていたため。しかし喜んで向かった先にいたのは新人のオードリー・ヘプバーン。最初、ジバンシィがひどく落胆したというのは有名な話です。

そこからジバンシィが多忙なため、衣装制作が厳しいことをオードリーに伝えると、彼女は今あるコレクションの中から自らサブリナの衣装を選んだといいます。そして選んだスタイリングはジバンシィもオードリーへの印象を変えるほど洗練されたもの。もともと従来のハリウッドの美の基準からはみ出していたために何が自分に似合うかを追求してきたオードリーの努力の賜物だともいえます。

つまり、サブリナの変身物語は、同時にオードリー自身がパリでファッションを通してジバンシィという生涯の友人と出会った、オードリー×ジバンシィの物語が背後に重ねられた作品でもあるのです。そのため本作で起用されたサブリナのパリ帰りの衣装たちは、オードリーが自ら選んだジバンシィ1953年春夏コレクションのもの。こうして観ると、見事に同時代を舞台にした衣装として機能していることがわかります。

注目は、パリで自信を得たサブリナが、ララビー家へ帰還するところ。駅に降り立った彼女に、偶然車で通りかがったデイヴィッドがサブリナだと気付かず思わず声をかけるシーンはクスリとします。そしてこのまま二人の関係が上手く進むかと思えば、事態は弟の政略結婚をもくろむ長男ライナスの登場によって急展開を迎えます。突如ララビー家の男性2人にアプローチされることとなったサブリナの恋の行方にも注目です。

ちなみに、1995年にはリメイク版の『サブリナ』が製作されていますが、こちらは90年代が舞台ということもあり、変身前はデニムジャケットにカーリー・ヘアのヒロイン、変身後もマニッシュなパンツ姿が目立ちます。さらに95年版のサブリナは、なんとパリのファッション誌の編集部で働き始めたことをきっかけに変身。少し『プラダを着た悪魔』(06)を思い出しますね笑。時代の移り変わりが反映された衣装を比較するのにおすすめです。

サブリナ95

まるで動くモード誌。『パリの恋人』(1957)

パリの恋人

監督はミュージカル映画の名作『雨に唄えば』(52)を手がけたスタンリー・ドーネン。『麗しのサブリナ』ではヒロインが変身したことで社会的立場の差を克服していきますが、こちらはとある書店員からファッション・モデルへとまさしく変身していく物語を描いています。

小さな本屋で働くヒロイン・ジョーが、ひょんなことからカメラマンのディックとモード誌の編集長であるマギーにモデルとしてスカウトされるところからはじまります。ディックを演じるのはフレッド・アステアで、冒頭からミュージカル調のスカウトがたまりません。ジョーはファッションに関心はなかったのですが、自身の敬愛する著者に会えるかもしれないという期待からパリ行きを決意します。

パリの恋人

変身前の落ち着いたジャンパースカートのラインは60年代に向かって少しラインがストレートに。そしてパリに到着し、プロのスタッフにヘアメイクやスタイリングを施されたジョーの変身後の姿は、ピンクのマントドレス、グローブにアップヘアからスタート。ここからめくるめく動くモード誌を視覚体験できます。ロケ地はもちろん、小道具からジバンシィデザインの衣装まで贅沢にたくさんのショットで印象を変えていくジョーに、ファッションの魔法を改めて実感するでしょう。

ちなみに、『麗しのサブリナ』でサブリナパンツを披露したオードリーですが、『パリの恋人』ではビートニク・ルックというパンツスタイルを披露しています。ジバンシィの衣装と同じくらい絶妙なバランスでデザインするイーディスの衣装のひとつです。このサブリナ丈のパンツに白のソックス、黒のローファー姿にあのマイケル・ジャクソンがインスパイアされたという逸話も。

注目は、ところどころ当時のアート運動であった「ポップアート」に影響を受けているシーンや、様々なアート作品と連動して撮影しているところ。脇役まで揃えた衣装の采配にうっとり。これもディックのモデルが当時ファッション写真家として全盛期にあったリチャード・アヴェドン、マギーのモデルが「ハーパーズバザー」や「ヴォーグ」で編集長を務めていたダイアナ・ヴリーランドといわれていることもあり、実際に上記のモード雑誌の撮影現場さながらの世界観を映し出しています。『麗しのサブリナ』以上にオードリーのモデルとしての真骨頂を観られる作品です。

着飾ることをやめた先に見つけた“本物”。『ティファニーで朝食を』(1961)

ティファニーで朝食を

主題歌「ムーン・リバー」が流れる中、タクシーから降り立つリトルブラックドレスの女性、ニューヨーク5番街にあるティファニー本店のウィンドウでクロワッサンにコーヒーを一口。はじまりからその世界に引き込まれる『ティファニーで朝食を』のヒロイン・ホリーは、サブリナやジョーとは違いすでに変身済みの状態で登場します。本作で描かれる彼女の変身はまさに着飾ること。ホリーは数々の男性の援助によって生計を立てている立場ゆえ、彼女にとって着飾る行為は鎧を纏うようなものだともいえます。

ティファニーで朝食を

(高級)娼婦としての役柄をオードリーの持つ上品な雰囲気によってチャーミングに演じているのもポイントです。さて、そんなホリーの住むアパートにやってきたのは作家のポール。彼もまた既婚の女性に援助をしてもらう立場であったことから、ホリーとポールは友人の立場として親睦を深めていきます。

『ティファニーで朝食を』で映し出されるファッションは、女性の変身する過程でもあります。ホリーのパトロンのひとりであるサリー・トマトとの毎週の面会に対するホリーの台詞にリトルブラックドレス、ハット、さらにサングラスをかけて向かう場面は、彼女がファッションの効果を自覚的に纏っていることが観て取れます。そのいわゆる鎧的なファッションから解放されるのは、自身の部屋の中。兵役中の兄と再び暮らすという密やかな夢を抱きながら、猫とともに過ごしている空間から、外界を含め彼女の過程を見守っていたのがポールです。

兄を養うためにお金持ちと結婚しようとするホリーに対して周りが見ているのはその外側だけ、それゆえに彼女はほとんどの男性たちのことを「ネズミ」と称しています。その一方で外側を見ている男性たちにとっても、彼女はその立場を含め「にせもの」であると思っています。ジョージ・ペパード演じるポールは、そんな話を聞きながらも彼女を側で支え、ときに優しく、ときに厳しく彼女に愛情を注ぎます。

つまりこの作品のひとつの軸として挙げられるのは、ホリーとポールが“本物”としてお互いを見つけ合う物語かもしれません。

“本物”に辿り着くまでの2人の時間を描いた作品として観ると、彼女の着飾る行為や一旦着飾ることをやめる場面などが、彼女の心情とリンクしてぐっと引き込まれます。本作のホリーの衣装もジバンシィ。おそらくジバンシィの手がけた衣装の中で最も有名な衣装たちだといえるでしょう。今でもオードリー演じるホリーのリトルブラックドレスにアップヘア、長いキセルは、映画ヒロインのアイコン的存在ですよね。

アイコン的な衣装の他にも、ホリーがパジャマとして着ていたシャツや、ポールとデートに出かけたときのオレンジ色のコートにファー帽子、婚約者ホセといるときに着ていたピンクのワンピースにピンクのコート姿……どれもホリーという女性を形づくっています。

ラストの展開は、この着飾る・着飾らないの先にある演出がほどこされています。大人になればなるほど物語が深みを増していく作品、もし懐かしくなった方や観たくなった方がいればぜひ観てみて下さい。

いかがでしたか?

今観てもなおそのファッションにおける「変身」に心を掴まれるオードリー×ジバンシィ作品たち。これはアメリカのハリウッド女優とフランスのオートクチュール・デザイナーが綺麗に結びついた例として有名ですが、他にも衣装が素敵な作品はたくさんあるかと思います。ぜひ皆さんの中にずっと残るような衣装を纏うヒロインやヒーロー、作品を見つけられますように。

(C)1954 by Paramount Pictures Corporation. All Rights Reserved.、(C)1956 by Paramount Pictures Corporation. All Rights Reserved.、(C)​1961 by Paramount Pictures Corporation and Jurow-Shepherd Productions. All Rights Reserved.

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