【ネタバレ解説】大ヒット韓国ドラマ『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』ヨンウが閃く時、なぜクジラがジャンプする?続編の情報は?徹底考察

映画があるから、頑張れる

イシガミナオミ

韓国の新興ケーブルチャンネルENAで、初回0.9%だった視聴率が最終話では17.5%を記録するなど、“奇跡のドラマ”として社会現象化した『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』。

Netflix Japanでも連日「今日のTV番組TOP10」にランクインするなど、多くの人に愛されているドラマシリーズです。

『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』は、自閉スペクトラム症の新人弁護士ウ・ヨンウが事件や訴訟を華麗におさめていく様子を描いた、痛快でハートフルな法廷ドラマ。

特徴的な回文の自己紹介「逆から読んでもウ・ヨンウ。キツツキ トマト スイス 子猫 南……」や、回転ドアを上手く通り抜けられずに何度も練習する様子など、不思議な行動の数々に周囲の人間は眉をひそめますが、ヨンウの“法律を愛する”純粋さに触れ、だんだんと彼女の主張に耳を傾けていきます。ヨンウが色んな人を巻き込みながらも一人前の弁護士として成長していくストーリーに、ほっこりと癒やされる人も多いのではないでしょうか。

今回は少し斜めからの視点で、ヨンウの自己紹介と同じぐらい“お約束”となっている、ヨンウが裁判の争点を閃く時に注目。ヨンウの頭の中でなぜクジラやイルカがジャンプするのかを徹底考察していきます。

ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』(2022)あらすじ

ソウル大学のロースクールを主席で卒業し、司法試験はほぼ満点で合格、そして韓国初・自閉スペクトラム症の弁護士となったウ・ヨンウ(パク・ウンビン)。ヨンウは、大手法律事務所「ハンバダ」に入社し、新人弁護士として先輩のチョン・ミョンシク(カン・ギヨン)、同僚のチェ・スヨン(ハ・ユンギョン)、クォン・ミヌ(チュ・ジョンヒョク)、訟務チーム職員のイ・ジュノ(カン・テオ)らとともに、右往左往しながらも13の訴訟に挑んでいく。

※一話毎の詳しいあらすじは、本文最後にあります。
※以下、『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』のネタバレを含みます。

ヨンウの“クジラ愛”の理由とは?

自閉スペクトラム症の人には、“強いこだわり”があるといわれています。例えば、日本でもリメイクされた自閉症でサヴァン症候群の青年医師を描いたドラマ『グッド・ドクター』のパク・シオンは三角形のおにぎりしか食べず、ドラマ『サイコだけど大丈夫』の主人公ムン・ガンテの自閉スペクトラム症の兄、ムン・サンテも、絵本作家のコ・ムニョンを偏愛する姿が描かれています。

ヨンウも例に漏れず、キンパ(海苔巻)を偏食し、頭の中は法律とクジラのことでいっぱいです。ではなぜ、ヨンウはクジラが好きなのでしょうか。

第1話で、病院で父(チョン・ベス)と医師が話している時、5歳のヨンウは呼びかけに反応せず、クジラのモビールから目を離そうとしません。この頃から、ヨンウはクジラに興味があると予想できます。

しかし、第3話で再びヨンウの幼少期が回想された際には、自宅にはクジラのぬいぐるみやグッズが見てとれません。自分から「クジラが好きだ」と父へ伝えられなかったとも考えられますが、第1話でヨンウは会話ができると判明しているため、5歳時点でのクジラへの愛着がまだ生まれていないのではないかと推察します。

では、ヨンウがクジラの虜になったのはいつだったのでしょうか? それは、第6話で描かれた祖母とのエピソードにヒントがありました。

ヨンウは父子家庭で、母は死亡したと教えられていました。しかし、祖母から「母は生きている、お前を捨てた」といった真実を聞かされ、それがヨンウの大きな心の傷となったのです。

ヨンウは第6話で、同僚弁護士のスヨンに「クジラの母は自分の命が危険にさらされても、子供を見捨てない」「もし私がクジラだったら、母親に捨てられなかった?」と語っていました。

“母に捨てられた”という祖母の言葉がトリガーとなり、クジラ特有の強い母性に惹かれ、クジラへの愛着が深くなったと考えられるのではないでしょうか。それを思うと、場の空気を読まずクジラトークを繰り広げるヨンウが、いじらしくも見えるのです。

ヨンウが閃く時、なぜクジラがジャンプする?

ウ・ヨンウ弁護士は、担当する民事・刑事事件の裁判中、何度も壁にぶち当たります。しかし、天性の記憶力と斬新な発想で「これだ!」という争点を見つけ、相手側の主張を気持ちよく論破していきます。

ヨンウが閃く時にクジラやイルカがジャンプする演出は、この作品の見せ場。『ドクターX』の大門未知子が「私、失敗しないので」と言うぐらいシンボリックな、視聴者にとって待望のシーンとなっています。しかし筆者は、ヨンウがクジラやイルカが好きだから、という単純な理由で作られた演出ではないと推察します。

昨年公開した映画『僕が跳びはねる理由』は、自閉症作家の東田直樹さん原作のドキュメンタリー作品。自閉症者とその家族のインタビューから、自閉症の人たちの感覚を映像化した作品です。

作中では、自閉症者が跳びはねる理由を「悲しいことやうれしいことが起こると、雷に打たれたように体が動かなくなる。でも、跳びはねれば体に縛られた縄を振りほどくことができる」と語っています。彼らは、悲しい時やうれしい時、感情が洪水のように湧きあがってきますが、それを口に出して上手く表現できないため、苦しさを感じるのだそうです。

第1話で父がトラブルに巻き込まれた際、ヨンウは刑法・傷害罪の内容を暗唱し周囲を驚かせます。ヨンウが話せない子どもだと絶望していた父は大喜びし、その姿を見てヨンウもうれしくなったのか、自宅のトランポリンで跳びはねながら刑法事例集をすらすらと読みあげます。

大人になったヨンウもまた、事件の争点を見つけるとうれしさが頂点に達し、本来は跳びはねたくなっているのかもしれません。その感覚を投影したのが、クジラやイルカがジャンプする姿なのではないかと考えます。

また、ヨンウの脳内でジャンプするクジラやイルカは、毎回種が違うことにも注目です。ヨンウほどの天才であれば、なんとなく知っている種類を挙げているだけではなく、それぞれに理由があるのではないでしょうか。

例えば、第3話で兄への傷害致死罪に問われた自閉スペクトラム症の青年を弁護しますが、その青年に事件当夜について質問をするとパニック状態になり、「死ぬ やめろ」という言葉を繰り返し叫びます。その青年の姿を見た時、ヨンウの脳内でハンドウイルカがジャンプしました。

ハンドウイルカは、弱っている生物がいるとその種に関わらず助けるという行動をとるのだそうです。青年が繰り返す「死ぬ やめろ」という言葉から、自殺しようとした兄を止めに入ったのではないか、とヨンウは気づきます。

実は第3話に限らず、ストーリーとクジラ類の生態がシンクロしている回がいくつかあります。ヨンウの発想の源がクジラ特有の生態だと考えると、クジラやイルカがジャンプしている映像を、軽く見過ごすのは非常に惜しいのです。

続編はどうなる?

制作会社であるASTORYのCEOイ・サンベク氏は、「皆様の愛とサポートに感謝します」といったコメントと共に、シーズン2の放送は2024年を目標にしていると発表しました。キャストや制作陣のスケジュール調整の関係から、正式な詳細のリリースはまだ先になる模様です。

ENA’s hit drama series “Extraordinary Attorney Woo,” which comes to an end on Aug. 18, will return for a second season.
Astory, the production company behind the series said it plans to produce the second season of the drama series “thanks to the love and support from the viewers.”
Lee Sang-baek, the head of the company told Edaily, a local news outlet on Wednesday that the company hopes to air season 2 in 2024, however, “adjusting the schedule with the cast and the production staff in order to make it happen is not easy.”

(出典: The Korea JoongAng Daily より一部抜粋)

世界中でのヒットを受け、シーズン2の制作も予定されている『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』。何度でも見返して、筆者もシーズン2をファンの皆様と一緒に待ち焦がれようと思います。

ウ・ヨンウ弁護士は天才肌1話ごとのあらすじ

<第1話>「おかしな弁護士ウ・ヨンウ」

大手弁護士事務所「ハンバダ」へ初出勤の日を迎えたウ・ヨンウ。チームの同僚や疑い深い上司と緊張の初対面。出勤後まもなくして、老夫婦の間で起こった暴行事件を担当することになったが、依頼人の老婆は、ヨンウのかつての知り合いだった。

<第2話>「脱げたウエディングドレス」

結婚式で目を疑うようなアクシデントが起こった。新婦の父は憤慨し、ホテル側の責任だとして高額の慰謝料を要求する。結婚は破断となるが、新婦は悲しみに暮れることもなくどこか上の空で……。

<第3話>「ペンスでいきます」

2人の兄弟に関する悲しい事件が発生。依頼人の青年は、重度の自閉スペクトラム症で意思疎通が難しいことを知ったヨンウは、ある方法にチャレンジ。事件の核心に迫るにつれて、当事者一家をめぐるつらい真実が明かされていく。

<第4話>「3兄弟の対立」

ヨンウの親友トン・グラミは、父親が多額の借金を背負う羽目になっていると知る。そこでヨンウに相談し、ヨンウ、グラミ、ヨンウ父の3人は、誓約書の内容を確認するためにグラミの実家に向かった。

<第5話>「ドタバタVS腹黒策士」

ATMメーカー2社の間で起こった実用新案権関連の訴訟をミヌと共同で担当することになったヨンウ。しかし、ミヌはヨンウに対してライバル意識がメラメラ。ヨンウに冷たくしていることを知ったジュノは、バスケットボールのツーメン練習中にミヌに仕返しをする。

<第6話>「私がクジラだったら…」

強盗傷害罪に問われている脱北者の女性。彼女と娘を何とか再会させたいと、スヨンはこの裁判に肩入れをしている。熱くなりすぎているスヨンを抑えるため、ヨンウに合流命令が下った。2人で力をあわせて、4年の刑期を短縮するためにあらゆる手段を検討する。

<第7話>「ソドク洞物語Ⅰ」

村を横断する高速道路の建設を阻止するため、ソドク洞の住民たちが集団訴訟を起こす。この訴訟をめぐり、法律事務所ハンバダは最大のライバル、法律事務所テサンと法廷で闘うことになる。

<第8話>「ソドク洞物語Ⅱ」

法律事務所テサンの巧みな戦略により、不利な立場に立たされるハンバダ。一方、ヨンウはソドク洞の御神木の榎の下で、テサン代表のテ・スミから思いもよらない誘いを受ける。

<第9話>「笛吹き男」

自分は「子供解放軍の総司令官だ」と主張する“おならブー”という変わった名前のパン・グポンが、略取誘拐の容疑で逮捕される。「自分より変な人でパン・グポンといると楽しい」と喜ぶヨンウに、ジュノはヤキモチをやく。

<第10話>「手をつなぐのはまた今度」

知的障がいのある女性に性的暴行を働いたとして、ある青年が起訴される。ヨンウは自分の環境と重ね、青年と知的障がいの女性は本当に愛し合っていたと信じたいと弁護を引き受けるのだが——。

<第11話>「お塩君、胡椒ちゃん、しょうゆ弁護士」

とある夫婦がハンバダに相談にやって来た。高額な宝くじの賞金をめぐる問題を抱えているという。ヨンウは2人のために親身になって働くのだが、弁護士として難しい立場に。しかし、ジュノと協力して秘策で切り抜けようと奮闘する。

<第12話>「ヨウスコウカワイルカ」

不当解雇の訴訟を担当するヨンウは、大手ゆえのハンバダの汚い一面を知ってしまう。ヨンウは弁護士としてジレンマを抱える中、相手側の人権弁護士リュ・スクジェ弁護士の言葉に心打たれる。

<第13話>「済州島の青い夜Ⅰ」

寺を参拝するかどうかに関わらず全ての人に観覧料を請求していると、済州島・ファンジ寺が訴えられる。チョン・ミョンソクチーム一行は、済州島へ出向くのだった。出張に合わせて、ジュノは姉夫婦にヨンウを紹介するのだが……。

<第14話>「済州島の青い夜Ⅱ」

ミョンソク弁護士が裁判中に倒れ、救急搬送された。係争中だがハンバダの弁護士チームは、ミョンソクが好きだというククス屋「幸福ククス」の社長を捜し始める。一方ヨンウは、裁判でも恋愛でも壁にぶつかってしまう。

<第15話>「聞いてないこと、頼んでないこと」

大手通販サイトに関する訴訟を担当することになったヨンウ。ミョンソクが不在のため、新しい上司とチームを組むことになるが彼との関係に悩む。そんなヨンウに、低姿勢な態度で接し、同僚を頼るようにとミョンソクはアドバイスをするのだった。

<第16話>「風変わりだけど」

裁判の行方を左右する決定的な証拠となる“ある人”がヨンウを訪ねてくるが、ヨンウは激しく動揺する。真実を明らかにして社会正義を実現するか、依頼人の利益を優先すべきか。再び弁護士のジレンマに悩むヨンウだが、ジュノとの関係も大きく変化していき……。

※2022年9月23日時点での情報です。

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