【Filmarksの人に聞いてみた Vol.6】編集部が「号泣した」映画って?絶対泣ける映画をきいてみた。

Filmarksを運営する社員に、映画やドラマ、アニメに関する「偏愛」やオススメを聞いてみる企画。第6回目は、編集部の2人がオススメする「泣ける映画」をご紹介。号泣必須のヒューマンドラマから、胸が張り裂けるようなラブストーリーまで、それぞれ3本ずつピックアップしてお届けします。

今回のFilmarksの人

FILMAGA編集長・遠藤(左):原稿に追われて絶望を感じる時に号泣してリセットすることが多い(泣いても原稿は終わらないが、絶望からは抜け出せる!!!)

FILMAGA編集部・堤(右):ストレスの吐口として、泣ける映画とジャンクフードで定期的に心をリセットしている。(洋画の観過ぎかもしれない……。)

編集部 堤セレクトの泣ける映画

:私がオススメする泣ける映画は、『マグノリアの花たち/スティール・マグノリア』と『ジャック』、そして『すばらしき世界』の3本です。

そのシスターフッドは友情を超える
マグノリアの花たち/スティール・マグノリア

:以前【Filmarksの人に聞いてみた vol.3】でも挙げた作品なのですが、私の中で泣きたい時に見る映画上位にランクインしている作品です。80年代アメリカ・ルイジアナ州の田舎町で、美容院を営むトルービィの店に集まる女性たちの日常と母娘の愛を描いた群像劇なのですが、忙しなく繰り広げられる会話劇がテンポ良く笑いを誘う反面、重要なシーンでは“画”にフォーカスを置く緩急のつけ方が素晴らしくて。

私が何度見ても号泣してしまうのは、終盤のとあるシーンなのですが、サリー・フィールド演じる母親の演技が本当に凄まじく……。冷静に話しているうちに、どうしようもない悲しみがコントロール出来ない程の怒りになって湧き上がり、ワーッと爆発してしまうのですが、そんな彼女を救ったのは、美容院に集う仲間の意外な一言で。初めて観た時は不意をつかれて、思わず笑ってしまいました。友情と呼ぶより、まさに胸が熱くなるシスターフッドという言葉がピッタリな作品です。凄く泣けるけど、鑑賞後は晴れた気持ちになれるオススメの「泣ける映画」1本目です。

遠藤:『フットルース』のハーバード・ロス監督作なんですね。ジュリア・ロバーツが若い!

:そうなんですよ。キャストと制作陣の豪華さに驚きますよね……! ジュリア・ロバーツは今作でゴールデングローブ助演女優賞を獲得した他、アカデミー賞にもノミネートされたりと、ターニングポイントになった作品だと思います。『プリティ・ウーマン』以前のジュリア・ロバーツのフレッシュさや、名優たちの若い頃の姿を観ているだけで幸せな気持ちになれますよ……。

特に、“40年間ずっと不機嫌”なウィザーを演じるシャーリー・マクレーンの役どころは、他作品では味わえない絶妙なコミカルさと愛おしさが爆発しているので、個性豊かな登場人物にも注目してほしいです!

コッポラが亡き息子に捧げた名作『ジャック

:続いてオススメするのは、フランシス・フォード・コッポラ監督作『ジャック』です。人の4倍の速さで成長する病気をもって生まれてきたジャックが、学校に通い始めたことをきっかけに成長していくヒューマンドラマなのですが、ロビン・ウィリアムズ主演で舞台が小学校ということもあり、割とコメディチックでハートフルなムードが漂いますが、話の本筋としてはかなり切ないです。

見た目は大人で心は10歳の少年がぶつかる壁は、当たり前ですが、健常な10歳には起きえない事の連続です。周りの人に支えられながら「人生とは何か」を自分なりに見つけていくジャック、そしてジャックに影響されて成長していく周りの人たち、それぞれの想いに感動して、笑って泣ける映画だと思うので、是非観ていただきたいです。

遠藤:フランシス・フォード・コッポラ作品にこういったイメージがないので驚きました。ジャックの成長を見守る大人たちのほうに、グッと感情移入しちゃいそうです。

:イメージないですよね。どうしても『ゴッドファーザー』とか『アウトサイダー』の作風を想像してしまうのですが、この作品は、彼の若くして亡くなった息子に捧げた1作であり、ジャックを通して命を見つめた作品でもあると思うんです……。

遠藤:なるほど……。そういった背景があったんですね。そう思うと、また見方も変わってきそうです。

:ジャックは学校に通い始めた時点で、身体的には40歳なんですよね。でも、恐ろしいくらいにピュアな目をしているんですよ。表情や動きを見ても、ああ10歳だなと思う。むしろ、社会から切り離されて育ってきたので、もっと幼いような振る舞いをします。こんな難しい役どころは、ロビン・ウィリアムズ以外では想像できないほどの怪演です。是非、そこもお楽しみいただけると……!

目を細めれば美しい、不条理な『すばらしき世界

:最後にオススメするのは、西川美和監督の『すばらしき世界』です。実在の男性をモデルに書かれた小説「身分帳」を原作としたヒューマン・ドラマで、人生の大半を刑務所で過ごしてきた元殺人犯の三上が、出所し真っ当に生きていこうと試行錯誤するのですが、どうにもうまくいかず……。まさに人生の不条理さを浮き彫りにした作品です。

遠藤:すごくいい映画でしたよね。“根はいい人”と言うだけではなく、きちんと凶暴性が描かれているところにもグッときました。

:わかります。そこが本当にリアルで、きちんと描かれているんですよね。いくら主人公に感情移入しても、やっぱり庇いきれない部分もある。それでも周りの人間が手を差し伸べるのは、彼の“正義”が、色んな物差しを捨ててしまえば、正しい気がするからなのかな。目を細めれば視界が不明瞭になるように、余計なものを見ないようにしながら私たちは生きているのかもしれません。

本来、成長の過程で身につけるはずの倫理観を、幼少期の環境などにより持つことができなかった三上は、「白」と「黒」しか正義の持ち合わせがないまま大人になって、出所して娑婆に揉まれることでグレーに染まっていくんですよね。ネタバレになるので詳細は控えますが、ラストは結果的に彼なりの正義を貫けたんじゃないかと思います。

本当に涙が止まらなくなるかもしれませんが、観終わったあとにかなり考えさせられる「泣ける映画」かと思うので、皆さん是非、観てFilmarksにレビュー投稿をしてください!

編集部 遠藤セレクトの泣ける映画

遠藤:私がオススメする泣ける映画は、『7番房の奇跡』と『余命10年』、そして『百円の恋』の3本です。「泣ける」にフォーカスして自分と重ねられるような邦画を中心にセレクトしてみました!

父と娘の愛が起こした奇跡『7番房の奇跡

遠藤:自分史上1番泣いた&オススメした人も全員号泣の映画『7番房の奇跡』。父を献身的に支えるしっかり者の娘・イェスンの小学校入学を心待ちにしていた知的年齢が6歳の父・ヨングが突然、身に覚えのない罪で逮捕され、死刑判決を受けてしまう。彼が収監された7番房の仲間たちは、なんとかして彼を娘と過ごせるようにと奮闘するが……。というあらすじで、とても悲しい作品です。作品はフィクションですが、実際に韓国で起きた冤罪事件がモチーフになっています。

届かない想いや真実が悲しい反面、彼らを取り巻く登場人物の温かさや、イェスンが子供ながらに奮闘する姿に涙が止まらなくなります。邦画だったらもう少しハッピーエンドに寄せてくれそう……と思うシーンも容赦なく絶望へと展開していくので、悲しみが深いです。本当に思いっきり泣きたい! って気分の時には必ずオススメしています。泣き疲れてしまうかもしれませんが……(笑)。

:韓国映画って実話モチーフの良作が本当に多いですよね。実際に起きた悲しみをなぞっているから、感情にダイレクトに伝わってくるのかもしれませんね。

遠藤:そうですね。『殺人の追憶』『タクシー運転手 約束は海を越えて』など、韓国には実話をベースにした良作がたくさんあるのですが、やはり実際の事件を取材して得たリアルな状況を反映してるからこそ、切実な展開になるのかも。父親役のリュ・スンリョンを始めとする役者陣の演技も振り切れていてすごいです。リュ・スンリョンが出演している『エクストリーム・ジョブ』では笑える最高の役を演じているので、セットで観るのもオススメです。泣いて笑ってスッキリすると思います!

試写会でマスクが水没した『余命10年

遠藤:続いてオススメするのは、2022年公開の映画『余命10年』です。20歳で不治の病にかかり余命10年と分かった茉莉(小松菜奈)を主人公に、思い出の数だけ失われていく時間を描くラブストーリーです。編集部は試写会で一足先に公開作品を鑑賞させてもらう機会が多いのですが、仕事の場なのでいつも感動しても泣かないようにしていて……(笑)。小坂流加さんの原作も“切なすぎる恋愛小説”と話題だったので、少し警戒していたのですが、マスクが水没するほど泣きました(笑)。あんなに鼻をすする音で包まれる試写会は珍しいなと思い、印象に残っています。

:確かに試写会は気を張るので、抑えきれないほど泣くのは珍しいですよね(笑)。

遠藤:主人公の茉莉と関わる「恋人」「親友」「家族」それぞれの視点があるので、どこかしらに感情移入してしまうと思います。ラブストーリーですが、個人的には編集の仕事をする「親友」や、余命について理解していても納得ができない「家族」の胸の内が垣間見えるシーンは涙が止まらなかったです。

:最初から「誰かが死ぬ」って分かる恋愛映画は少し苦手意識があるのですが、様々な視点から感情移入できるのは凄くいいですね。

遠藤:わかります(笑)。私も最初は少し身構えましたが、悲哀に振り切った演出ではなく、四季の美しさや楽しさを色濃く描いていたりと、「生きる」ことの喜びが伝わるようなシーンも多く、主人公と同じように、命に限りがあることを忘れてしまう瞬間もたくさんありました。命の儚さにフォーカスするよりも、主人公を包むたくさんの愛に涙するというイメージが近いかもしれません。小松菜奈さんと坂口健太郎さん×自然のビジュアルの強さにも大いに癒されました。

私は犬を飼っているのですが、犬の寿命も平均10年〜なので、なぜか愛犬との残りの時間を意識してしまったりもして(笑)。10年の短さと深さを実感した作品でした。必ずティッシュを用意して観てください!

悲しい展開はないのに泣ける『百円の恋

遠藤:最後にオススメするのは『百円の恋』です。前述した作品のようにドラマティックで悲しい展開はないのに、何故か心を掴まれて涙が出る体験をした作品です。32歳で実家に引きこもり、自堕落な生活を送る一子(安藤サクラ)が一人暮らしを初め、夜な夜な買い食いをしていた百円ショップで深夜労働にありつき、そこで出会ったボクサー・狩野(新井浩史)と距離を縮め、何かが変わり始める……。特に泣かせようとする物語ではないのに、胸が熱くなって泣けます。

:確かに、泣ける映画というより、勇気がもらえる印象でした。どの辺が泣けるポイントですか?

遠藤:本作で第39回日本アカデミー賞など、多くの主演女優賞を受賞した安藤サクラさんの演技が凄まじいです。撮影期間が2週間ほどの作品なのですが、冒頭のだらしない一子からボクシングに打ち込むようになるまでを短期間で演じていることで、プロとしてのただならぬ気迫を感じます。実際に努力しているからこそ説得力があって、様々な変化に向かっていく主人公の気持ちが痛いほど伝わって……。感動するってこういうことなんだなと、思いもよらぬ作品で実感しました。

:ボロボロになりながらも立ち上がる姿は、本当に胸が熱くなりますよね。キラキラするようなドラマティックさがなくても、リアルだからこそダイレクトに胸に刺さってくるのかも。

遠藤:あと、心に問題を抱えた店員たちが集まる深夜の百円ショップで関わる人たちの底辺っぷりも潔くて(笑)、狩野となんとなく一緒に生活していくチープさなども、リアルな“百円の恋”感にクスっと笑えたりもして。2014年の年末に公開された作品だと思うのですが、当時に年内最後の映画として鑑賞して、「あ〜ズタボロになったけど、今年も頑張ったな〜」と思ったことを鮮明に覚えています(笑)。悲しい気持ちにならず、ホロっと泣ける作品だと思います。

:まさに思い出の映画……! いい意味で安さが心地の良く、寄り添ってくれるような作品なんですね。

遠藤:週末の夜更かしタイムに堕落セット(深夜のお菓子とお酒)と共に観たいです(笑)。今はVODで手軽に映画を観ることができますが、DVDを手元に置いておきたいような大切な1本です。大切な作品をコレクションしておくのってなんか良いですよね。既にそういう作品がある方はもちろん、そこまで思い入れのある作品がまだないという方にも是非観ていただきたいです!

【Filmarksの人に聞いてみた】連載

※2022年10月15日時点での情報です。

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