溝口健二監督おすすめ代表作5選!ゴダールにも影響を与えた日本が誇る巨匠

2018.05.16
映画

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KAWATA

日本の女性映画といえばまず名前があがってくる代表的映画監督であり、海外の映画作家にも多くの影響を与えた溝口健二監督。

5月16日は溝口監督の誕生日ということで、数年前にも海外で復活上映されるなど、未だなお多くの映画ファンを魅了し続けている彼のキャリアや作品について紹介します。

溝口健二監督

(C)KADOKAWA CORPORATION 2018

絵描き少年が映画人になるまで ~生い立ち~

溝口監督は1898年5月16日、現在の東京都文京区である本郷区湯島で生まれました。家族は父、母、姉、そして弟がおり、大工職か屋根屋職人であったとされる父親が戦争の影響で事業に失敗し、家まで差し押さえられると一家は浅草玉姫町へと引っ越します。貧しい暮らしの中、姉は養女に出され芸妓となり、後々家族の家計を支えることになります。

もともと絵を描くことが好きだった溝口少年は、近所の図案屋や模様絵師に弟子入りし、いつしか画家になることを目指すようになります。絵を勉強しながら姉の斡旋により新聞社で働くものの一年余りで退社。

姉の所に居候しながら、友人知人と交流する日々の中で俳優や映画監督と親しくなり、そのつながりから撮影所へも自然と出入りするようになります。そして撮影の手伝いをする中で、人のすすめで撮影所に入所。そこから映画人としてのキャリアをスタートさせていきました。

今日も色褪せない作品の数々

そんな経歴を持つ彼は、生涯で多くの作品を作ったといわれていますが、残念ながら今日観ることができるのは、そのごく一部の作品。

今日彼の作品に触れることができる貴重な作品群の中から、おすすめの作品いくつかを紹介したいと思います。

海外からの評価も高い代表作『雨月物語』

雨月物語

1953年公開の本作には、溝口作品では常連の田中絹代をはじめ、京マチ子、森雅之などそうそうたる俳優陣が出演。同年のヴェネチア国際映画祭銀獅子賞、イタリア批評家賞、そしてエディンバラ映画祭のゴールデン・グローブ賞を受賞。米アカデミー賞では衣装デザインもノミネートされた世界的にも知名度のある作品。

映画の中で2組の夫婦が登場するが、苦難を余儀なくされながらも献身的に夫に尽くし、愛し続ける妻たちの姿が印象的に描かれた名作。

一途な親子愛が美しい感動作『山椒大夫』

山椒大夫

1954年公開の作品で、黒澤明監督の『七人の侍』と共にヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞を受賞した、こちらも代表的な一作。

「安寿と厨子王」の童話で知られる物語(姉と弟の設定を兄と妹に変えるなど溝口流に変わっている部分がある)ですが、人買いに騙されて生き別れとなった母と子どもたちが、辛く耐えがたい暮らしを強いられながらも、互いを思い合いながら生きる様子が哀しくも美しく描かれています。

この作品に影響を受けた映画作家も多く、ラストシーンをジャン=リュック・ゴダールが自作に引用したことは有名な話。

愛を知った男女の強さと覚悟を印象的に描く『近松物語』

近松物語

近松門左衛門が実際に起きた事件を扱ったといわれる浄瑠璃「大経士師昔暦」を原作にした本作が公開されたのは、1954年。

誤解が招いた逃避行の中で、真実の愛に気づいた男女が死を恐れずに想いを貫き通す様が、何とも晴れ晴れしく映し出され、悲劇的展開の中にも一縷の希望を感じさせてくれる一本です。

波乱万丈な女性の一生を強く儚く描いた『西鶴一代女』

西鶴一代女

ヨーロッパでの溝口健二の知名度を一気に上げた本作の公開は、1952年。原作は井原西鶴の浮世草子「好色一代女」。日本国内での興行成績は芳しくなかったものの、ヴェネチア国際映画祭に出品され国際賞を受賞。

さまざまな不運に見舞われ、翻弄され続ける一人の女性の一生を往年の大女優・田中絹代が熱演し、当時スランプ状態に陥っていたといわれていた風評の中、本作により彼女が見事復活を遂げたことでも知られる作品。

また、他にも数本現存しているサイレント映画もおすすめ。無声とはいえ、モノクロでも見ごたえのある俳優の演技とこだわりある映像、シンプルだからこそ心をぐっとつかんではなさない普遍的な軸のあるストーリーは、時代を超えてもまったく色褪せません。

惚れた者の一途さと情動が観客の心をゆらす『滝の白糸』

滝の白糸

泉鏡花の小説「義血侠血」が原作の本作が公開されたのは1933年、溝口監督が35歳の時の作品。

水芸で人気の太夫「滝の白糸」が、愛する青年のために我が身をも顧みず突き進もうとする姿は、演じる入江たか子の気迫と美しさも相まって、観る者にさまざまな感情をわき上がらせる程の威力があります。

海外の映画人にも影響を与えた溝口作品

溝口監督作品は、先程のゴダールをはじめ、フランソワ・トリュフォー、ビクトル・エリセなど海外の映画監督にも多くの影響を与えたことでも知られています。影響を受けた海外の作品の一部がこちら。

ジャン=リュック・ゴダール『軽蔑』(1963年)『気狂いピエロ』(1965年)

軽蔑気狂いピエロ

ヌーヴェルヴァーグの代表格であるゴダールも、溝口作品から大いに影響を受けた人物の一人です。この2作品に共通する、海へとカメラがパンしていくラストシーンは、母と子が再会を果たす『山椒大夫』のラストシーンを彷彿とさせます。

ジャック・リヴェット「修道女」(1966年)

修道女

上映時間12時間40分にも及ぶ超大作『アウト・ワン』でも知られる巨匠である彼も、ゴダールにしかり。アンナ・カリーナ主演の『修道女』は、一人の女性が困難に対峙する物語そのものに類似性を感じる『西鶴一代女』にインスパイアされた作品といわれています。

溝口作品の魅力

溝口作品に触れて浮かんでくるキーワードはやはり、“女性”でしょう。

世界でも、まだまだ女性進出が遅れているといわれている日本。声を上げることもままならなかった時代に、世の中に翻弄されながらも、一人の人間として女性たちが何を求め、守り、闘い、どのような一生を生きたのか。

時代が異なるとはいえ、溝口健二が紡ぐ物語には現代にも通ずる普遍性があるので、作品を観れば観るほど、時代や取り巻く環境、女性、そして人間という生き物について深く考えさせられます。

永く支持され続ける映画は、普遍的なテーマがある。

その真理を証明するかのごとく、時代を超えて人々を魅了し続ける力が溝口健二監督の映画には息づいています。

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