吸う人も吸わない人もしびれちゃう!タバコが印象的な映画23本

2018.05.31
映画

映画マニアと呼ばないで

夏りょうこ

tabacco

5月31日は世界禁煙デー
「世界禁煙デー」とはその名のとおり、禁煙を推進するために世界保健機関(WHO)が制定した記念日だ。

街中を見渡しても「分煙」や「禁煙」などの張り紙が目に付き、禁煙が当たり前のようになってきた現代、映画のなかでもタバコを吸うシーンがめっきり少なくなってきた。
ちょっと昔の邦画で、タバコをスパスパ吸いながらオフィスで仕事をしているシーンなどを観ると、若い世代はビックリするそうで……。

ヘタすると、SFかファンタジーか時代劇みたいに見えたりするかもね。

まあそんな現実はともかく、小道具としてのタバコは映画の演出に欠かせない。だって、タバコをくわえて渋い顔をする仕草は、やっぱりかっこいいじゃない。
せめてスクリーンの中だけでも、しびれるようなタバコのシーンを観たい。そう思いませんか?

というわけで今回は、タバコが印象的に使われている映画23本をご紹介しよう。

スモーク(1995)

タバコ屋のオヤジが語る

スモーク

ブルックリンの街角にある小さなタバコ屋を舞台に、店の主人とそこに集まる人々の人間模様を淡々と描いた映画。登場人物たちの人生が織り交ぜられたいわば群像劇だが、そこに真実と嘘が絶妙にブレンドされているところがうまい。

タバコ屋の主人を演じているのは、くわえタバコが似合うハーヴェイ・カイテル。親指と人差し指でタバコをはさむ持ち方が、酸いも甘いも噛みわけた大人の男性という感じで包容力がありそうだ。

定点観測のように同じ時間同じ場所で写真を撮り続けている彼が言う。毎日同じように見えても、必ずどこか微妙に違うところがあるんだ。では、その写真に写っていたものは? 季節が冬ではないのにクリスマス映画として人気が高いのは、終盤で語られるエピソードのせい。

コーヒー&シガレッツ(2003)

それが命取り

コーヒー&シガレッツ

監督が18年間撮り溜めてきたという、コーヒーとタバコをテーマにしたオムニバス映画。有名な俳優やミュージシャン、コメディアンなどが実名で次々と登場し、とりとめもなく飲む、吸う、しゃべる。ワクワクする。

各短編にはソソられるようなタイトルがついていて、たまに同じセリフが出てきたりする。少人数でだらだらと続くたわいもない会話が、いかにもありそう。まるでドキュメンタリーのようだ。

有名ミュージシャンのイギー・ポップとトム・ウェイツが登場するところでは、2人は禁煙中なのにテーブルには忘れ物のタバコが……さて、どのような会話劇が始まるのかな。医者を兼業している設定のトム・ウェイツが「音楽と医学には共通点がある」と力説する下りは、監督の信条が込められているのか妙な説得力があった。

劇場版 MOZU(2015)

これでもかと吸う

MOZU

人気TVドラマシリーズの劇場版。原作は逢坂剛のハードボイルド小説で、同時テロを捜査する公安警察官が追い続けた黒幕“ダルマ”がついに登場し、松阪桃李と池松壮亮がすさまじい死闘を繰り広げるシーンが話題となった。

TV版と比べると有名俳優が増え、海外ロケも敢行してスケールアップ。アクションも激しくなって出血量も多い。長谷川博己の悪役テンションも突き抜けており、気合いの入り方が違う。でもこれで全ての謎がスッキリ解けたのかどうか、誰か教えて。

主演の西島秀俊が、相変わらずタバコをよく吸う。何か話そうとする前にいちいちタバコに火をつけるので、ひょっとしたら吸わないとしゃべれない体質なのではと心配になった。仲間の香川照之とホッと一息スモーキングタイムは、近頃あまりお目にかかれなくなった男臭いシーン。とにかくみんなよく吸うので、禁煙中に観ると危険な映画だろう。

タバコイ ~タバコで始まる恋物語~(2012)

吸わなきゃわかりません

タバコイ

お笑い芸人の又吉直樹が主演。吸うと相手の本音が吹き出しのように見えてしまう魔法のタバコを手に入れ、恋愛や出世がトントン拍子に……つまりコメディ映画である。

建前の裏には本音があるもので、その隠れた本音を見破ってしまって幸せなんだろうか。まあそれは置いといて、又吉に心を読まれていることも知らないで上司も恋人もコロリ。という漫画みたいな話なので、あまり深く考えないでおくべし。

主人公は自分に自信がないから、このタバコが手放せない。恋人の言うことが本音かどうか気になってしょうがないのである。そして事態は意外な展開へ。女の怖さをじわじわと感じるなあ。2人ともお幸せに。

花咲くころ(2018)

1本のタバコ

花咲くころ

ソ連からジョージアが独立した直後の1992年春を舞台に、2人の少女の友情と成長を描いた映画。貧しいながらも青春を楽しんでいた2人だったが、ヒロインの親友が少年から弾丸入りの拳銃をプレゼントされたことから、思わぬ方向へと波紋が広がっていく。

父権と男尊女卑がまだ色濃く残っている土地柄のようなので、略奪婚みたいなことが起きるのだが、親友が好きでもない男と力づくで結婚させられたことに不満を抱いた主人公が、結婚式で男のダンスを披露するシーンは圧巻だ。

かといって、女性たちがひたすら耐え忍んでいるというわけでもない。親に隠れてタバコを吸う姉は、あるときどうしてもタバコが欲しくて、母が大事にしまっておいた父のタバコを盗んでしまう。それはたった1本のタバコ。父はどこにいるのか。女性の視点から自分たちを取り巻く世界を描いた佳作。

blank13(2017)

父が遺したもの

blank13

俳優・斎藤工による監督映画で、実話を基にしたという家族の物語。借金に追われ、「タバコを買いに行ってくる」と言ってそのまま失踪した父が、13年後に余命3ヶ月の状態で見つかる。妻。長男。次男。父(夫)に対するそれぞれの思いが言葉少なに描かれ、観終わったあとに温かいものがじんわり残る。

借金の厳しい取り立て。突然女手一つで子供を育てなくてはならなくなった妻。体を酷使して働く母を見ている子供。笑顔を封印した高橋一生が、父親との楽しかった思い出とどうしても許せない気持ちの間で揺れ動く姿を寡黙に演じてよし。

前半は正直つらいシーンが多い。ところが後半になると雰囲気はガラリと変わり、クスクス笑いが起きるほど和やかに。その転換がうまい。タバコを買いに行ったはずの父は、タバコを残していった。葬儀の日、妻は1人でそのタバコに火をつける。大人にしかわからない深い深いシーン。

勝手にしやがれ(1960)

チェスターは嫌いだ

勝手にしやがれ

原案がフランソワ・トリュフォー。クロード・シャブロルが監修を務め、ジャン=リュック・ゴダールが監督・脚本を担当した贅沢な映画。ヌーベルバーグの記念碑的作品であり、それまでの映画の作法を壊してしまった実験映画といわれている。

車を盗み、警察官を殺してしまった主人公が、パリで美しい娘と出会う。やがて2人の逃避行が始まるのだが……彼はフランス人。彼女はアメリカ人。彼はパリから出たい。彼女はパリで仕事をしたい。言葉も立場も違う2人に訪れるラストが衝撃的だ。

主人公はタバコを離さず、崇拝するハンフリー・ボガードのタバコの吸い方を真似したりする。チェスターフィールド(アメリカの銘柄)が嫌いで、マッチでなかなか火をつけられない彼女に「恐れているものがあるからだ」と言う。洒落てるね。モノクロのせいか、タバコの煙が光に反射して美しい。

グロリア(1980)

年季が入ってます

グロリア

ヤクザから命を狙われた男の息子を預かった主人公が、命をかけてその子を守り抜く物語。リュック・ベッソン監督『レオン』の元ネタだと言われ、のちにシャロン・ストーン主演でリメイクもされた名作である。

なりゆきとはいえ、一度頼まれたことはやり遂げる。無口で行動力があり、タバコを吸うときには2本の指をピシッと立てる。そんな女を男前に演じたジーナ・ローランズは、見た目はコワモテのオバサン風だが実は母性あふれるいい女。

しかしどうも彼女の判断力が的確すぎると思っていたら、実はカタギではなかったという……だからこその頼もしさ。最初は反発していた少年もいつしか彼女を慕うようになるのだが、信頼関係がありつつもベタベタしていないところがハードボイルドだ。

SF サムライ・フィクション(1998)

キセルもいいね

SF

時代劇としては異色のキャスティング&スタイリッシュな映像なのは、MV出身の監督・中野裕之だから。何しろ凄腕の剣士(悪役)が布袋寅泰である。ほかにも藤井フミヤ・尚之兄弟が出ていたり。でも、その違和感を吹き飛ばすようなエンターテインメント作品なのである。

奪われた宝刀の贋作を造って事件をもみ消そうとする藩に反発した若侍が、犯人を追う。吹越満がその血気盛んな若者を演じ、正義感に燃える役柄が最近あまりお目にかかれないだけに新鮮だ。

時代劇には色っぽい姐さんが出てくるのが定番だが、ここではヤクザの親分を演じる夏木マリがキセルの煙をゆっくり吐きながらアップで登場。バックにはキャッチーなJPopが流れ、モノクロなのに色を感じるシーンである。そういえば時代劇でも最近喫煙シーンをあまり見なくなったような……気のせいかな。

ブロークン・アロー(1996)

どっかヘンよね?

ブロークン・アロー

簡単にいうと、アメリカ空軍のパイロット2人が演習中に核弾頭を奪い合う話。つまり同僚が敵と味方になってしまう映画で、奪う側にいるのがジョン・トラボルタだ。ストーリーは2人のボクシング練習試合から始まるのだが、試合後トラボルタがロッカールームでおもむろにタバコを吸うシーンに注目。

何ていったらよいのか、何かがヘンなのだ。タバコをはさんだ指の反り具合いや、タバコを口元にもっていくときの間合いや角度とか、そういうちょっとしたしぐさが。そこに演出的意図があるのかは知らないが、彼のキャラクターを表現しているようで目が離せない。

もともとトラボルタ自身が漂わせている滑稽さと、大ゲサとも受け取れるタバコの吸い方が見事にマッチ。いや~、ここだけ何度観ても楽しめるわ。トラボルタは悪役をするとセクシーになるのが不思議でね。喫煙シーン、もうちょっとあったら面白かったな。

天使の涙(1996)

食事と一緒に

天使の涙

光と音がキラキラと交差する夜の香港を舞台に、若者たちの恋模様を描いた映画。殺し屋。エージェント。失恋娘。金髪娘。口のきけない男。この5人が微妙な接点を持ちながらストーリーが展開していく。

この監督の作品は喫煙シーンが多いのが有名で、ここでもやはりみんな何かあるごとに(何もなくても)よくタバコを吸う。なかには演出的にあまり意味がなさそうなシーンもあるが、殺し屋のエージェントが麺をすする合間にタバコを吸うシーンは忘れられない。

彼女の目は虚ろで抜け殻のよう。そのやさぐれ感はどこから? 実は彼女は恋を失ったばかり。それも普通の失い方ではない。美しい顔がわざと醜く撮られているのは、彼女の心象風景なのか。夜明けに滑走するバイク。彼女はほんの少し新しい空気を吸う。

ナイト・オン・ザ・プラネット(1991)

ガンガン吸います

ナイト・オン・ザ・プラネット

ロサンゼルス、ニューヨーク、パリ、ローマ、ヘルシンキを舞台に、同じ時刻に走るタクシーで起きる人間模様を描いた作品。登場人物はタクシー運転手と乗客のみというユニークなスタイルのオムニバス映画である。

夜のロサンゼルスで、若い女性がガムを膨らませながらタクシーを運転している。演じるのはウィノナ・ライダー。彼女はガムをクチャクチャさせながら、ひっきりなしにタバコを吸い続ける。交互にガムとタバコ。それはうっとりするほど切れ目がない。

ライダーが頬を汚して耳にタバコをはさんでいる姿は、当時アイドルだったイメージを打ち破いた。しかし、逆にこれがかわいいのなんの。自分の仕事に誇りを持つ姿も清々しく、セレブなお客様との対比が面白い。第1話にふさわしいキャッチーなお話である。

マッチポイント(2005)

タバコはゲームの始まり

マッチポイント

ニューヨークを舞台に映画を撮り続けてきたウディ・アレンが、初めてロンドンを舞台にした本格的サスペンス。野心家の男が上層階級の妻とセクシーな愛人との間で揺れ動くと聞けばフツーの不倫モノのように思えるが、そこはアレン。一筋縄ではいかない結末なのであった。

お色気ムンムンのスカーレット・ヨハンソンが主人公と出会うシーンが、これから起こる出来事が確実に悲劇的展開になりそうでドキドキ。何しろ相手は恋人の友人なのだ。ヨハンソンの真っ白なドレスがまぶしく、危険な香りにむせそうになる。

誘惑したのは男の方。彼はゲームのスタートを切るかのように、ヨハンソンのタバコに火をつける。上目遣いに彼を見つめるヨハンソン。そしてスリリングな会話が終わって彼が立ち去ると、ヨハンソンの鼻から一気に煙が……やるなあ。ここをぜひ見逃さないように。

太陽に灼かれて(1994)

少しずつゆっくりと

太陽にやかれて

スターリン大粛清時代のソ連が舞台だと聞くと胸が締めつけられるような気持ちになるものだが、この映画では田舎でひと夏を過ごす家族の姿を描くことによって、歴史の悲惨なひとコマを浮き彫りにする。

ある夜、10年ぶりに昔の恋人が戻ってきた。しかし、彼を迎える彼女はすでにロシア革命の英雄と結婚して幼い娘がいた。突然の訪問にとまどいつつも、懐かしい愛を思い出す日々。その2人をじっと見守る夫。何もわからず無邪気に遊ぶ少女。彼の目的は一体?

穏やかで平和だった夏のバカンスに、じわじわと迫る暗い影が切ない。そう。恐怖ではなく切ないのだ。突然姿を現した彼は全てが終わると服のままバスタブに浸かり、タバコを吸う。時間はゆっくりと流れ、タバコが短くなっても吸い続けている彼は、そこで何をしているのか。続編『戦火のナージャ』(10)『遥かなる勝利へ』(11)と合わせて観たいロシア映画の傑作。

エル・マリアッチ(1992)

この火のつけ方ときたら

エル・マリアッチ

メキシコの小さな町に流れてきたマリアッチ(歌手)が殺し屋に間違えられ、脱獄犯の復讐劇に巻き込まれるという映画。無名の監督が低予算で製作したにも関わらず、そのあまりの面白さゆえにハリウッドに呼ばれ、アントニオ・バンデラス主演で続編『デスペラード』が完成した。

さっきまで甘いメロディを奏でていたギターがいきなり銃となり、両手で握った二丁マシンガンをジョウロで水をやるように動かして敵を倒す。この荒削りで泥臭いエンターテイメント。お金をかけなくても度肝を抜くような映画は作れる。

悪のボスが、タバコを吸うときに部下のほっぺでマッチをする。彼はスベスベの白いモチ肌。このシーンがたびたび登場するのだが、そのたびに「イテッ!」とほっぺを押さえるモチ肌部下がこの映画のバカバカしさを象徴していて、サイコー!

海の上のピアニスト(1998)

もっと熱くして

海の上のピアニスト

豪華客船内で生まれてすぐ置き去りにされ、そのまま一生地上に降りることのなかったピアニストの人生。実に荒唐無稽な話だが、ひょっとして本当にあったことかもしれないと思わせてくれる。そういうところが、感動作たるゆえんである。

なにせ船生まれ船育ちなので、海が荒れて船が揺れまくってもフロアをグルグル廻るピアノに座って弾き続けられる男。船酔い知らず。彼の奇跡のような音楽は評判を呼び、あるとき有名なジャズ・ピアニストがピアノ演奏決闘を申し込んでくる。

火をつけたタバコをピアノの端に置き、その灰が落ちないように繊細な演奏をする挑戦者。それに対抗する主人公は、超絶技巧で鍵盤を弾き、その摩擦で熱くなったピアノの弦でタバコに火をつけるという奇怪な技を披露。こんなに負けず嫌いで自信家なのに、恋愛には臆病すぎる彼。みなさんは彼の生き方をどう思う?

シン・シティ(2005)

映画でしか観られないカッコよさ

シン・シティ

フランク・ミラーのコミック「シン・シティ」を映画化。悪徳と欲望が渦巻く罪の街シン・シティを舞台に、3つのエピソードが相互に関連しながら進んでいく。クエンティン・タランティーノが特別ゲスト監督として参加しているので、どのシーンを撮ったのかをチェックするのも楽しい。

コミック原作の映画は多々あれど、この作品では原作のコマと映像のショットを同じ構図にしているシーンがあり、マンガをそのまま映像で観ているような感覚に陥るのが大きな特徴だ。基本はモノクロだが、たまにピンポイントでカラーになるのが超カッコイイ。

たとえば、パーティを抜け出した女に男が近づいてくる。男は彼女の孤独に寄り添うように語りかけ、タバコを勧めて火をつける。その瞬間彼女の瞳がぼっとグリーンに染まるシーンは、映画ならではの演出だろう。しびれるわ~。しかしその後の展開で凍りつく……油断のならない映画である。

グラン・トリノ(2008)

粋で哀しいトリック

グランド・トリノ

孤独で頑固な元軍人が隣で暮らすモン族の姉弟と交流を深めていき、彼らの未来を守るためにある決断をする物語。監督としても偉大な業績を残しているクリント・イーストウッドが、この作品で俳優を引退すると宣言して世界を驚かせた。

グラン・トリノとはフォードの車種のこと。そのフォードの自動車工だったことを誇りにしている主人公は、偏屈さゆえに周りから疎まれていた。そんな彼が人の温かさによって静かに変わっていく様子に胸が詰まる。俳優最後の役に選んだだけあり、イーストウッドにピッタリだ。

暴力の連鎖を断ち切り、親しくなった隣人の子供たちを救うために彼は密かに計画を立てる。新調したスーツ姿でタバコをくわえ、ギャング一味の家の前に立った彼は、銃を取り出すような仕草をして上着のポケットに手を入れ……涙なくして語れない良質な感動作。

プラトーン(1986)

ねっとり吸わせます

プラトーン

ベトナム帰還兵であるオリバー・ストーンが体験に基づいて描いたベトナム戦争映画。プラトーンとは小隊の意味で、その小さな社会で対立する「善」と「悪」に巻き込まれた若い兵士が、地獄のような戦場でどこまで良心を貫くことができるのかについて葛藤する。

とにかく無法地帯なのである。身内同士でも殺しあうような何でもありの世界。そこが怖い。苛酷な環境が人間を追い込んでしまうのだろうか。敵とだけ戦っていればよかったそれまで戦争映画と決定的に違うのはそこで、「あなたならどうする?」という疑問を観客に突きつけた。

兵士たちはタバコもマリファナもよく吸うが、小道具として使用されたマールボロは当時製造の桜色パッケージにしてあるという。主人公が上官から銃砲身越しに口移しで煙を送られるシーンは、汗ばんだ肌とあいまってねっとり。強烈に印象に残る名シーンだ。 

獄門島(1977)

辞書を使って

獄門島

横溝正史の有名な推理小説を映画化。「金田一耕助シリーズ」の一つで、孤島で起きた三姉妹連続殺人事件を描く。俳句を用いた見立て殺人が有名。これまで何度か映画化され、テレビドラマにもなった人気作品である。

島を去る金田一耕助が、不幸な身の上のヒロインに「一緒に島を出て東京へ行かないか」と声をかけたのはプロポーズではないかという解釈もあるらしいが、好意を寄せていたことは確か。人間関係ドロドロの沼に咲く白蓮のような女性が好みなのかな。

タバコの吸殻が証拠となるシーンがある。そのタバコは辞書を破って作った巻きタバコで、それを作る道具も登場。また、物不足だった戦後には辞書のあまり使わないページを紙巻き用に使ったそうで、吸殻に爪楊枝を刺している「シケモク」が混じっているのも時代を感じさせて興味深い。

トゥルー・ロマンス(1993)

ものすごい緊張感のなかで

トゥルー・ロマンス

ひょんなことからマフィアに追われてしまうカップルの逃避行。バイオレンス・アクション満載だがロマンス的要素もちりばめられており、観終わったあとは意外にも爽快な気分になるロード・ムービーである。

コミック・ショップに勤めている主人公が千葉真一の大ファンという設定は、脚本を担当したクエンティン・タランティーノが自分を投影させているから。彼が恋に落ちる相手は、豹柄の下着が似合うキュートなぴちぴち娘。本当にキスがピーチ味のようだ。

彼が実家に立ち寄ったせいで、父親が危険な目に遭ってしまう。問い詰めるボスをクリストファー・ウォーケン、父親をデニス・ホッパーが演じ、凄みのある2人の役者が演技対決。ものすごい緊張感である。タバコを吸いながら延々と相手を侮辱する父親の姿が、ワケありでものすごく哀しい。

孤狼の血(2018)

そういうところがいけんのじゃ

孤狼の血

1988年暴力団対策法成立前の広島で起きた金融会社社員失踪事件。ベテラン刑事と新米刑事が捜査を進めていくうち、背後に暴力団同士の抗争がからんでいることが見えてくる。「警察小説×『仁義なき戦い』」と評され、東映実録路線の影響を強く受けている娯楽作。

泥臭くて骨太。平成の世にこんな映画を観られるとは、何だか泣けてくる。暴力団の事情に通じ、捜査のためならどんな手でも使うベテラン刑事を役所広司が演じて、これ以上望めないほど素晴らしい。暴力的で常軌を逸していてもどこかチャーミングで憎めないのは、天性の才能だと思う。

彼に振り回される松阪桃李がいかにも真っ直ぐな若者で、真実を知った後半の変容ぶりがみどころ。役所広司が忘れていったハイライトに火をつけるとき、彼は孤狼の血を受け継いだのだろうか。その後の彼を描いた続編も、白石和彌監督でぜひ映画化を!

マレーナ(2000年)

すべてを見守る

マレーナ

第二次世界大戦のシチリア島を舞台に、戦争に翻弄される1人の美しい女性をじっと見守る少年の姿を描く。“イタリアの宝石”と呼ばれる美貌のモニカ・ベルッチなくしては成り立たない映画で、生活のために仕方なく娼婦へと転落していく様子が身につまされる。

少年は12歳の頃から彼女が好きだ。街ですれ違えば目で追い、部屋にいるところをそっと覗き見したりする。女神のように崇め、憧れているのだ。しかし彼ができるのは、彼女を見守ることだけ。おそらく彼女は少年の存在に気がついていない。

どうにもならなくなった彼女が、ある日長い黒髪を金髪に染めてパーマをかけ、短いスカートをはいて広場に現れる。タバコを吸おうとすると大勢の男たちから一斉に火を差し出され、タバコを持つ手が震える彼女。これからの人生を暗示する残酷で象徴的なシーンだ。幸せになってほしい。

いかがでしたか?

タバコを吸う人も吸わない人も、映画を観ていて「カッコイイ」「色っぽい」「使い方がうまい」なんて思うタバコのシーンがあるはず。

スクリーンで眺めるだけなら、受動喫煙も気にしなくていい。

映画の中のタバコをもっと楽しみましょう!

(イラスト/泉川マクフライ http://izumikawamacfly.com

【あわせて読みたい】
 【独創的】一度観たら忘れられない!?一風変わった映画まとめ
 探偵はBARに…そんなにいない!リアル店主が選ぶBARが印象に残る映画たち
 『マイ・インターン』デニーロみたいになってみたい!頼られるシニアが光る映画6選

記事をシェア

公式アカウントをフォロー

  • RSS