歯を大切にしてますか?ある意味「歯」が主役の映画18本

映画マニアと呼ばないで

夏りょうこ

6月4日は虫歯の日。

歯医者に行ったことがない人はあまりいないと思うが、歯医者が大好きという人もあまりいないと思う。
虫歯はイヤ。治療も痛そう。だけど治療してもらえないのは困るから、歯医者さんがいてくれて本当によかった。

映画の中でも、個性的な歯医者さんや歯にまつわるシーンが多く登場する。そこで今回は、虫歯の日にちなんて「歯」が印象的な映画を18本ご紹介しよう。

嫌われ松子の一生(2006)

無駄に輝く白い歯

嫌われ松子の一生

仕事を失って家出をした松子の悲劇的人生をファンタジーのように描く。

松子が転落してしまう原因は男運のなさだ。不倫、金銭トラブル、暴力とお決まりのコースをたどり、あれよという間に刑務所へ。しかし本人は浅はかだけど一生懸命なだけに、不幸続きが喜劇のよう。彼女の悲惨な人生は花や小鳥が舞い踊るミュージカルで彩られ、想定外の現実に泣き崩れる姿もコミカルだ。

教師時代の松子が憧れていたのが、嫌味なまでにさわやかな笑顔の同僚。暗闇から歯をキラキラさせながら登場し、事あるごとに白い歯を輝かせるその彼を演じたのが谷原章介である。こんな少女漫画みたいな男にのぼせあがるところが、松子の松子たるゆえん。彼女のその後の人生を思うと、その歯のまぶしさは希望の光のようだ。

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サム・サッカー(2005)

歯医者に任せて

サム・サッカー

高校生になっても親指しゃぶりをしている主人公が、歯医者の治療を受けて改善はするものの今度は新たな問題が起きる。

治療といっても催眠術である。つまり、親指しゃぶりの原因が精神的なものに起因するという考えに基づいているわけだが、その催眠療法を歯医者がやるってとこがヘンだろう。確かに親指しゃぶりをやめない限り歯並びはなかなか改善されないのだろうが、そこまで歯医者が面倒を見てくれるなんて……。

主人公はいかにもナイーヴな青年で、今から13年も前の映画なのに今でも十分通用するテーマだと思う。人間はみな多かれ少なかれ病んでいる。しかしその方向性には個人差があり、彼は「親指しゃぶり」という目に見える形でそれをアピールしているだけだ。でも親は心配だね。

奇妙な歯医者を演じるのはあのキアヌ・リーヴス。アクション系ハリウッド映画でしかキアヌを知らない方は、ぜひこの作品を。実はこういうミニ・シアター作品でこそ彼のよさが発揮されている。

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ハンナ(2011)

イライラしながら歯磨きしちゃダメ

ハンナ

父親に殺しのテクニックを教え込まれて育った少女と、彼女を追うCIA捜査官との追走劇。

16歳の美少女が無駄のない動きで冷酷に強敵を倒していくと聞けば、さぞやスタイリッシュなアクションなのだろうと興味をそそられる。しかも彼女を執念深く追うのが透明感のある美貌の持ち主ケイト・ブランシェット。こちらも仕事上かなりのスゴ腕だろうから、この2人の闘いがみどころだ。

その捜査官が電動ハブラシで歯を磨くシーンがある。最初は普通に磨いていた。それがしばらく経つと乱暴な手つきになり、力任せにぐいぐいと擦って歯ぐきから出血。それでも磨き続ける彼女の目つきが氷のようで、思い通りに獲物を確保できないことへの苛立ちが表れている。どうしてもヒロインに感情移入してしまうので彼女が悪役みたいになってしまうのが、残念。

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ダーク・フェアリー(2010)

歯が欲しい

ダーク・フェアリー

古い屋敷で暮らす少女が、地下室から聞こえてくる声に導かれて扉を開けてしまう。するとそこには、恐ろしい魔物が住んでいた。

西洋には、抜けた乳歯を枕の下に入れておくと寝ている間に妖精が来てその歯を盗み、代わりにコインを置いていくという言い伝えがあるそうだが、その妖精がこの魔物である。イメージと違ってかなり邪悪。歯が好物なだけに、見た目もちょっと歯の形に似ているような気がする。

妖精たちが欲しいのは歯。ほかのホラー映画に比べると「なんだ歯くらい」と思うかもしれないが、自然に抜けた歯を奪われるのならともかく、彼らは自分たちの食料として歯を抜きにかかってくるのだから必死だ。これはかなり怖い。

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キャスト・アウェイ(2000)

無人島でも歯磨きを

キャスト・アウェイ

無人島に流れ着いた男性のサバイバル生活を描く。

ほとんどトム・ハンクスしか出てこないので、1人芝居を観ているようである。彼は一緒に流れ着いた積荷を利用して生き延びようとするのだが、スケート靴の刃をナイフに、ビデオテープをロープに、ドレスのレース部分を網にするなど参考になりそうなサバイバル・アイディアが満載。顔を描いたボールに名前をつけて話しかける姿が泣かせる。

食べることに必死で歯磨きのことは忘れていたのだろう。あるとき虫歯が痛み出し、とうとう耐えられなくなった彼はその虫歯を自分で抜こうとする。それも原始的な方法で。これは痛い。痛いけど他に方法がないので究極の選択だ。無人島でも歯は大切に。

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キセキ あの日のソビト(2017)

夢との折り合い

キセキ

メンバー全員が歯科医という人気音楽グループGReeeeNの結成にいたるまでと、代表曲「キセキ」の誕生秘話。

こんな父権的な父親が平成の世にまだいるのかと驚くが、とにかく「医者になれ」「音楽はくだらない」の一点張りで暴力まで振るう厳格さ。しかし、その強い圧力があればこその音楽への渇望である。歯科大の学生時代に結成され、内緒で音楽活動をするために顔出しNGとなったGReeeeN。本当にやりたいことは何かと葛藤する若者の姿を描いた青春映画だ。

これがただのアイドル映画みたいになっていないのは、主人公の兄の存在があるからだろう。父親と衝突してまであきらめなかったプロのミュージシャンになる夢。それがギリギリのところでダメになって失意のドン底にいた彼は、弟の才能に気づいてGReeeeNのプロデューサーになる。表舞台に立てなくても音楽が好き。それが痛いほど伝わってくるいい話だ。

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ファイニング・ニモ(2003)

ニモの行き先は

ニモ

母親の命と引き換えに誕生し、そのせいで父親から超過保護に育てられたニモの冒険と自立を描く。

生命誕生の奇跡と魚の視点というそれまでのアニメにはなかったテーマが新鮮で、大人にもウケて大ヒット。実写ではできないことだから、そういう意味ではアニメの正しいあり方である。ダイバーに捉えられたニモの行き先は、歯科医院の水槽のなか。一体そこからどうやって海に帰ることができるのか、その脱出劇が最大のクライマックスだ。

舞台が歯科医院だけに、歯に矯正器具を装着している女の子が登場する。その無邪気な傍若無人ぶりがあまりにも強烈なので、同世代の観客がビビリあがったらしい。そういえば『トイ・ストーリー』でもこういうキャラがいたな。絶対に助かると思っていてもハラハラドキドキしてしまう。その手腕が憎らしい。

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スリー・ビルボード(2017)

歯医者相手でもひるまない

スリー・ビルボード

娘を無残に殺された母親が出した3枚の広告版が波紋を呼び、事態は思わぬ方向へとなだれこんでいく。

彼女に攻撃される署長が特に悪いわけではないということがわかると、観客は複雑な気持ちになる。彼は住民から信頼されている警察官で、決して捜査に手を抜いているのではない。それでも親としてはどうしようもない苛立ちが込み上げてきて、ついに過激な手段に訴えたのである。どちらの立場も心情も理解できるだけに、一筋縄ではいかない話だ。

署長を支持する住民たちに囲まれて四面楚歌に陥った母親。勤務先でも嫌がらせを受けたり息子がいじめられたりして、もう大変である。ある日歯の治療中に歯医者から脅迫まがいの言葉を浴びせかけられ、激昂して反撃に出る。そこまでしなくてもと思うかもしれないが、彼女にとってこれは戦争なのだ。泣き寝入りして黙っちゃいないよ。悔いがあればこその強さ。哀しさ。観るのを迷っている方は絶対観てほしい傑作。

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スペル(2009)

入れ歯が飛ぶ

スペル

女性銀行員が仕事上のトラブルで顧客の恨みを買い、そのせいで謎の呪縛にかかってしまう。

ここまで入れ歯を小道具にしている映画は、ほかにないのではないか。監督の才能を感じる一作である。ヒロインは誠実に対応しようとするのだがうまくいかず、その年老いたお客から逆恨みのような形で呪われてしまう。それがまた土着的な呪いなのでリアルだ。

といっても、そのお客もなかなかの人物で、受付にあるお菓子をドッサリとカバンに入れたりして異様な雰囲気がある。車内の壮絶バトルでは、入れ歯が飛び出すわ歯のない口で噛みつくわで、ホラーなのに笑いを誘う。ちなみにヒロインはホチキスで応酬。本当に彼女は災難だ。見た目で人を判断してはいけないとはいえ……ねえ。

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チャーリーとチョコレート工場(2005)

歯がピカピカなわけ

チャーリーとチョコレート工場

世界中で大人気のウォンカ製チョコレート。ある日そのチョコレートに入っている5枚のチケットを当てた者だけが秘密工場の見学ができ、しかもそのうち1人には副賞があるという発表があって大騒動となる。

ウォンカは実業家として成功はしているが、実は孤独な男。歯医者の親から厳しく育てられた過去を持つ。実際彼の歯は不自然なほど完璧で、そんな彼が歯に悪そうな甘いチョコレートを作っているのはなぜだろう。そこに父親との確執や葛藤が見え隠れする。

チョコレートを作っているところを見てみたい。子供ならそんな夢を抱いたことがあるはず。その夢が目の前に繰り広げられるのがこの映画だ。さすがティム・バートン。めくるめくファンタジー(毒あり)に大人もワクワクすること間違いなし。

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マラソンマン(1976)

その拷問はやめて

マラソンマン

マラソンを愛する平凡な大学生が、兄の謎の死をきっかけに何者かに命を狙われてしまう。

事の発端は、元ナチス党員とユダヤ人による交通事故である。で、本当に何も知らない主人公が複雑な事件に巻き込まれてしまい、味方だと信じていたものが実は敵で……という定番の展開となるのだが、欲にとりつかれた人間の情けない姿を鋭く突きつけてくる傑作だ。

拷問がね。歯をえぐるわけですよ。神経ギリギリまで。最初は虫歯で、次は健康な歯……2回も見せないで。生爪をはがされるのとどっちが痛いかな。いくら歯をぐりぐりされても知らないものは知らないんだから、拷問され損だ。悪党は自業自得で自滅するという結末が虚しい。

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踊る大捜査線 THE MOVIE 湾岸署史上最悪の3日間!(1998)

意外性の演出として

踊る大捜査線

河川で水死体が発見され、司法解剖の結果、胃の中から熊のぬいぐるみが発見される。

人気TVドラマ「踊る大捜査線」シリーズの劇場版。今ではそんなに驚かないかもしれないが、当時はあの元スーパーアイドル小泉今日子がサイコパスな役を演じたということで、衝撃が走った。

彼女が熊のぬいぐるみを手に持ち、歯列矯正器具を見せて不気味に笑う登場シーン。こんな風に歯の矯正器具はキャラの異常性を表現する小道具として使われることがある。まあ、あくまでも見た目の演出なのだが、この映画の場合それを小泉今日子がやったということに意味があるわけで。

『踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』(2003)でも、犯人役の岡村隆史がドラキュラのような鋭い八重歯をむき出しにして噛みついていたっけ。口を開けるまではわからない歯というパーツ。個性の表現としてはなかなか使い勝手がよい。

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リトル・ショップ・オブ・ホラーズ(1986)

歯科医の素質とは

リトルショップ

花屋の店員シーモアが買ってきた奇妙な植物。それを店先に飾ったところ興味をひかれた人々が押しかけて店は大繁盛するが、実はその植物には恐ろしい秘密があった。

ブロードウェイで大ヒットしたミュージカルの映画化。ホラーだけどかなり楽しい。何しろその植物がしゃべるわ踊るわで、恐ろしい存在なのにカワイイのである。主人公は気弱なダメ男なのだが、愛する女性のために勇気をふりしぼって闘う。やっぱり男は追い詰められないと。

その彼女がつきあっている彼がDV男で、歯医者なのである。しかも子供の頃からサドで、それを見抜いた親の助言に従い歯医者になったという。現実にいたらイヤだが「歯医者は天職」と嬉しそうに歌って踊る姿が笑え、ブラック・コメディの要素も合わせもつ傑作。

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エバースマイル、ニュージャーニー(1989)

虫歯菌と闘う男

エバースマイル

虫歯撲滅を掲げて辺境の地を巡回する歯科医と、道中で出会った娘との恋を描く。

アルゼンチンのパタゴニアを1人バイクで走る歯科医。彼は村で歯の治療をしたり(無料)、学校やお祭りで講習会を開いては「歯の正しい磨き方」を熱心に唱える伝道師だ。しかし今まで歯の治療を受けたことがない村民は彼を怖がって近づこうとせず、そんな報われなさに落胆する姿がコミカルに描かれる。

とはいえ、歯の痛みは耐えられないもの。たとえ冷酷なギャングのボスであっても歯痛を訴えて泣く。啓蒙運動に奔走する歯科医をダニエル・デイ・ルイスが演じ、強すぎる使命感と現実のギャップに悩む姿がステキ。純粋な彼が大人の事情と折り合いをつけることができるのか、そこが見ものだ。

隣のヒットマン(2000)

オレは歯医者だ

隣のヒットマン

ある歯科医の隣に殺し屋が引っ越してきたことから、それぞれの欲望による殺しの連鎖が巻き起こる。

マフィアに追われている殺し屋を密告して賞金がほしい。その金をこっそり奪いたい。夫を殺して保険金がほしい。とまあ、裏切りと欲望が渦巻きすぎてグチャグチャになっている状況で愛をどこまで信じられるのか。敵と味方がコロコロ変わるミステリーだが、コメディなので気楽にどうぞ。

歯医者である主人公は、最初の頃は周りからいいように操られる無力な男だったが、ここぞというときに大活躍。そういうトリック作りがあったかと、そこで彼のキャラが歯医者に設定されている理由がわかる。ブルース・ウィリスってどんな役をしても浅はかに見えないのが不思議。

ジョーズ(1975)

歯を見ただけでも

ジョーズ

アメリカ東海岸で人間を襲う人食いザメと、それに立ち向う人たちの闘いを描く。

監督の名を世界に知らしめた超有名作品だが、この監督の映画としては子供が殺されてしまうシーンがあるのが珍しい。利益のために海岸を封鎖しようとしない有力者たちのせいで被害が拡散してしまうという展開が、今でもありそうな大人の事情で、ただのパニック映画とはいえなさそう。

反対派を説得するために犯人が大型サメだという証拠が必要となり、一度は船底に刺さっていた大きな歯を発見して採取するものの、それをうっかり海に落としてしまう。その巨大な歯を見ただけでもサメの大きさが推測できて恐怖を感じるという演出が、うまい。そしてついに姿を現したサメの口から見えた歯は、想像よりもすごかった。ジョーズといえば歯。

野獣死すべし(1980)

こけた頬の秘密

野獣死すべし

普段は物静かで頭脳明晰の大学院生が、裏の生活では心に巣食う深い闇を解き放ち、ついには完全犯罪を計画する。

表と裏の顔が極端に乖離している主人公。世間では秀才で誠実だと思われている彼は、実は強靭な身体能力を持ち、射撃の名手でもあった。女に対しても冷酷で、行き場のない憎悪と怒りを抱えた孤独な男だ。この役を演じた松田優作は10kg以上減量し、頬がこけてみえるように奥歯を4本抜いた。

針金のような細い体に虚ろな表情。その役作りは監督が望んだものではなかったので激怒されたそうだが、結果的にはスクリーンに強烈な印象を残し、この作品は歴史に残る傑作となった。しなやかで細い手足が野生動物のよう(でも体温は低そう)。乾いたジャズのメロディ。やるせない気持ちが残るが決して不愉快ではないのは、松田優作の力が大きい。

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レ・ミゼラブル(2012)

歯を売る人たち

レ・ミゼラブル

貧しさからパンを盗んでしまい、長い間投獄されていた男の波乱に満ちた生涯を描く。

もともと世界各国の舞台でロングラン上映されていた人気ミュージカルで、映画化されても大ヒット。ヒュー・ジャックマンたちキャストが吹替えなしで歌い、しかもそれがあとから録音されたものではないというのも、臨場感が出ていてよかった。

貧しい娼婦役を演じたアン・ハサウェイが幼い娘を育てるために髪を売り、今度は奥歯を2本抜いて売る。当時貧乏人の歯は金持ちの入れ歯として使われたからだそうだが、原作ではそれが前歯らしく、もし原作に即していたら彼女の悲惨さがより増したに違いない。ハリウッド女優が丸刈り頭をさらけ出しただけでも大変なことなのでそこまでは望んではいけないが、ちょっと想像してしまう。

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いかがでしたか?

役柄によって歯の状態を変えたり、歯をトリックに使ったり、登場人物の階級や生活を歯で表したり。

歯は口ほどにものを言う。

こんな風に「歯」に注目して映画を観るのもなかなか楽しい。

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