映画『デッドプール2』でもお馴染み「第4の壁」は100年後には無くなってしまうのか《考察》

2018.06.09
映画

羽生結弦と同い年だというのに…………

川合裕之

満を持して、映画『デッドプール2』が公開。日本では『名探偵コナン ゼロの執行人』を抜いて、公開週の観客動員ランキングで初登場第1位に躍り出ました。

デッドプール2

今回は「デッドプール」シリーズ最大の特徴でもある「第4の壁」について考えてみましょう。

※本記事は『デッドプール』『デッドプール2』のネタバレはしておりませんので、まだご覧になっていない方も安心してお読みいただけます。

①第4の壁って?

映画や演劇で、登場人物たちが普通は突破できないはずの作中世界と観客の世界との境界を「第4の壁」と呼びます。つまり、映画において「第4の壁」とはスクリーンのこと。

主にメタフィクションの一環として用いられる技法で、画面を通して、映画の作中人物が観客に直接何かを語りかける場合に「第4の壁を超える」「第4の壁を壊す」という言い方をするわけです。

メタフィクションとは、虚構世界(映画の世界や小説の中の世界)と現実世界(私たちが作品を鑑賞している世界)との線引きを越境する手法です。

たとえば、作中人物が観客に直接語りかけるという演出。「デッドプール」シリーズでも、デップーが観客に向かってよく話しかけてくる、あれです。

デッドプール

これは単純にジョークとして笑いを誘うだけではなく、登場人物が自らの世界をフィクションだと自認していたり、あるいは映画と現実がフラットにつながる世界であることを強調して、観客の視座を大きく揺るがす効果があります。

虚構と現実の境が曖昧になるため、かえって虚構が作りものの嘘にしか見えなくなってしまう危険性もあるので、安易には使えない高度なテクニックです。

ウディ・アレン監督のロマンスコメディ『アニー・ホール』やミュージック・ホラーの名作『ロッキー・ホラー・ショー』なども第4の壁を壊していることで有名ですね。

アニー・ホールロッキー・ホラー・ショー

他にも、『T2 トレインスポッティング』もこれに分類されますね(なにもカメラ目線で直接台詞を言うことだけが第4の壁の破壊ではないんですよ!) 。

デッドプールはMARVELやX- MENの世界観、時には映画制作の裏事情まで毒づきながら、第4の壁を破ってくるのが新鮮で痛快です。

②第4の壁はなくなる?

そんな第4の壁ですが、「100年後は無くなってしまうのではないか!?」という声が挙がっています。というのも、近年の最新技術は、虚構と現実の境界線をとっぱらおうとしているからです。

VR(仮想現実)やAR(拡張現実)の技術発展により、映画は「鑑賞」するものから「体感」するものへとフェーズが移行しつつあります。とすれば、現実世界と虚構世界を跨ぐというメタフィクションは無くなっていくのかもしれません。

S・スピルバーグ監督作『レディ・プレイヤー1』では、VRの虚構世界と現実世界の境目が液状化することに対して、ある種の警鐘を鳴らしていましたね。また、名作バック・トゥ・ザ・フューチャー2』では、ARが街中に溢れる近未来が描かれていました。

もし、それが実現すれば、VRやARのキャラクターから直接話しかけられるだけでなく、一緒に会話するのが当たり前なんて時代が訪れるかもしれません。そうなれば「第4の壁の破壊」という技法は、もう通用しなくなるでしょう。

レディ・プレイヤー1

③メタフィクションも無くなる?

第4の壁が無くなってしまうと、メタフィクションが表現できなくなってしまうのか?と想像してしまいますが、その心配はきっとないでしょう。その時代の空気、その時代の技術に合った技法がきっと生まれてくるはず。

メタフィクションのポイントは、現実と非現実が混ざり合うこと。日常と非日常が曖昧になることが最大の面白味です。

もし、技術が進んだ100年後に「デッドプール」がリブート・リメイクされたとしたらーー。

たとえば、VR内のデップーが観客の端末のビックデータを踏まえ、AIを駆使して「え? キミ東京に住んでるの? アメリカじゃなくて?……あ、ってことは字幕?」と突然問いかけてきたり、アクションシーンの最中にIoT(身の周りのあらゆるモノがインターネットにつながる仕組み)端末の情報を利用して、「ストーブの電気、消えて無いけど大丈夫?」と警告してきたり。むしろ、表現の可能性はさらに広がっていくのではないでしょうか?

もしかすると「第4の壁の破壊」はなくなってしまうかもしれませんが、現実と非現実の境界がなくなるという面白さの本質が失われることはないでしょう。

④今後の技術進化に期待!

映像技術の進歩と共に、新たな表現技法が生まれるかもしれない。そんな、映画ファンにとっては楽しみな時代を私たちは生きています。

そうした時代の流れの中で、『デッドプール』そして『デッドプール2』は、時代の技術に則った大変意義のある映画のひとつに間違いありません。人気アメコミのエンタメ作という枠ではおさまりきらない、映画の新たな表現の可能性を考えさせてくれる秀作でもあるのです。

デッドプール2

(C)2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. ALL RIGHTS RESERVED、(C)2015 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved.、(C)2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. ALL RIGHTS RESERVED

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