ウディ・アレン。
82歳になった彼がオスカー女優、ケイト・ウィンスレットを主演に迎え、いつの時代にも共通する男と女の【人生への葛藤】【恋と欲望】【嘘と裏切り】をテーマに見事に描きあげた『女と男の観覧車』。人々の深層心理に問いかける、大注目の野心作が6月23日(土)にいよいよ公開!
ウディ・アレンが幼少期を過ごし、心の故郷ともいえる50年代アメリカの、レトロでカラフルなコニーアイランドを最新の映像技術によって完璧に再現! 美しい光をまとった映像と共に繰り広げられる人間模様、そしてたどり着く結末は観るものを不思議な余韻で包み込みます。
一足先に鑑賞したFilmarksユーザーの試写会後のレビューには、様々な視点から作品の魅力が語られています。その声と共に、本作の見どころをご紹介します。
名匠ウディ・アレンの手腕に脱帽!男と女の“心ざわめく”リアルな人生模様とは?
『アニー・ホール』、『ミッドナイト・イン・パリ』『ブルージャスミン』など、アカデミー賞ノミネート最多回数を誇り、ハリウッドの有名俳優、女優たちが作品への出演を熱望する、名匠ウディ・アレン。
彼の作品はスクリーンの向こう側の人物たちが本当に存在し、その場で会話しているのを実際に見ているのではないか、と錯覚を覚えるほどのリアリティで描かれ、ブラックユーモアを含むウィットに富んだ会話劇も見どころの一つです。
特に、『ミッドナイト・イン・パリ』では1920年の芸術家が集まる黄金時代のパリ、『カフェ・ソサエティ』では1930年代の華やかな映画の都ハリウッドへと、私たちをスクリーンの向こう側へタイムトリップさせました。
本作では1950年代、ニューヨーク、コニーアイランドを舞台に、そこに生きる人々、男と女の人生模様を夢のような美しい世界観と共に描き出しています。夢見がちな若い男、あくなき理想を追い求める中年女性と彼女の旦那。彼らのやり取りは目を覆いたくなるような痛々しさがありながらも、誰もが心のどこかで共感や切なさを覚えてしまうでしょう。
原題にもなっている「Wonder Wheel」=「観覧車」には、一見煌びやかで幸せな印象ながらも、同じ場所をまわり続けるしかない寂しさ、ウディ・アレンならではの人生に対するシニカルな視点でのメッセージが込められています。
本作が語る【時代を超えても変わることのない人生の不条理】は、80歳を超えた今も第一線で人間模様を描き続けるウディ・アレンだからこそ描ききれたことといえるでしょう。軽快な音楽や、思わず吹き出してしまう台詞回しと共に、あなた自身の深層を旅するような特別な体験ができるはずです。
- ■ウディ・アレンの人物描写はさすが。実在しそうな人たちのありそうな行動が連なって、劇的になってる(KExitさん)
- ■いい感じにやさぐれたケイト・ウィンスレットがなんとも魅力的。「悲劇こそ喜劇」な展開で、久々にウディ・アレンの世界を満喫しました。82歳にしてこの現代に通じるポップなセンスの良さはなんなんだろう(ジジョさん)
- ■特に女の人には、良い教訓になり、自分の生き方を見直せる良い映画だと思うので、是非観て欲しい。あと、衣装と舞台はとても素敵(luiさん)
- ■観覧車に乗ると、普段は見れない景色が見えるけど、その瞬間はあっという間で、気付けば地上に降ろされてる。降りた後は幸せな気分でふわふわと歩くけど、結局はどこにも行けてはいなかったことに気付く。ウディおじさんが、恋愛ってそんな感じだよね?と言っているようでやられたなーと思った。決して派手な映画ではないけれど、じわじわと染み込む様に身体に入ってくる、味わい深い作品(kappa7さん)
- ■普段アクションしか見ないからかこういったジト〜と迫ってくる作品は新鮮で主張や着地もしっかり決まっていたので非常に楽しめました。ウディ・アレンは初めての鑑賞なんですがさすが巨匠。圧巻とはこのこと(わかまつさん)
ケイト・ウィンスレットが魅せた“新境地”と彼女の風格を讃えた共演者たち
「最高峰の演技力を誇る女優でないと成立しない」という監督の要望に見事に答えたのは、世界的大ヒット作『タイタニック』でスターの座を獲得し、オスカーに7度ノミネート、『愛を読むひと』で見事同賞主演女優賞を獲得、ウディ・アレン監督作品には初出演のケイト・ウィンスレット。
平凡な毎日に失望し、非現実的な恋と未来を夢見るというかなりこじらせ気味の中年女性ジニーを熱演しています。自らを悲劇のヒロインかのようにみせる台詞のような言葉や身振り、現実から目を背け夢や理想にすがってしまうジニーの姿は、第三者から見ると痛々しく感じてしまうかもしれません。
しかし、大げさな嘆きやヒステリックな行動も、当の本人は大真面目であり、自らどんどん危機的状況に陥っていく様をみていると、不思議と嫌悪感を通り越し、思わず笑ってしまいます。客観的になり、笑ってしまうだけでなく、彼女が演じるジニーの姿が自分と重なり、ヒヤリとする女性も少なくないでしょう。
本作に決死の覚悟で挑んだと語るケイト・ウィンスレット。少々(かなり?)イタめのジニーの姿に嫌悪感を感じながらも、心のどこかで共感してしまう…。当の本人でさえ理解できない“繊細で、複雑で、難解な”女性の心情の揺らぎを情感豊かに演じ上げました。
ジニーと不倫関係に陥る若きライフガードのミッキーを演じたジャスティン・ティンバーレイク。こちらもウディ・アレン監督作品初出演、俳優のみならず、ミュージシャンとしても活躍、世界中を魅了しています。
偉大な脚本家を夢? ??るロマンチストの青年が、心に闇を抱える年上の女性を無邪気に翻弄し、刹那的な恋を楽しむ様子を熱演しています。
ジニーに振り回される夫のハンプティには、脚本家、ミュージシャンとしても活躍する、『ゴーストライター』のジム・ベルーシ。普段はやさしく、家族想い。仕事にも真面目に取り組みながらも、ここぞというときに頼りなく、女性が最もがっかりする発言や態度をさらっと取ってしまうジニー。彼の言動に呆れ、失笑しながらも、どこか人ごとに思えない男性もいるのではないでしょうか。
ハンプティの前妻との娘、愛らしくセクシーなキャロライナには、今回ウディ・アレンに大抜擢された新鋭、『マレフィセント』のジュノー・テンプル。
文句無しの美貌と豊満な体型、愛らしい表情。言葉にせずともジニーとは対極に存在するのだと誰もが感じる女性を魅力的に演じています。
才能豊かな俳優たちが、ケイト・ウィンスレットの一世一代の演技に匹敵する熱演を魅せています。
- ■不倫ものには違いないのですが、そのあまりの滑稽さに笑ってしまうような感じ(実際笑いが起こってました笑)。テンポも良くてどんどん進んでいきます。 ケイト・ウィンスレットの、痛いおばちゃんの演じっぷりが最高です!(ウメさん)
- ■ジム・ベルーシ、そしてケイト・ウィンスレットの演技と肉体から発せられるやさぐれ感がなんと良いことか。人生とは観覧車の様に頂点に立ってもまた同じ場所に戻ってくる。その繰り返しか(カサヴェテスさん)
- ■ケイト・ウィンスレットが独り言の様な長い台詞で、自分の心の内を呟くシーンが、舞台演劇のモノローグを観ているようで印象的でした。とても切ないストーリーを人工的な色彩の美しい映像が盛り上げます(tomoboopさん)
- ■女の嫉妬、ドロドロを覗き見ているような映画でした。女の醜い部分を凝縮した感じなのですが、色彩や音楽が哀愁漂う感じですが鮮やかなのでドロドロし過ぎず中和されていました。後半から目が離せなくなります(SIさん)
- ■根底にはブラックコメディというより、グレーなユーモアあるコメディを感じたくらい、取り繕えないほどの迫力ある壊れっぷりを見せてくれたケイト・ウィンスレットの爆演は舞台を見ているようでした。因果応報の果て、あちらこちらに余韻を残して終わるのもお見事!(きゃもさん)
完璧に再現された50年代のアイランドビーチ。当時の空気が鮮やかに蘇る。
最新の撮影技術、美術、衣装、視覚効果技術により、50年代のコニーアイランドが完璧に再現された本作。コニーアイランドは、ブルックリンの南端に位置する半島で、遊園地とビーチで知られ、夏には多くの観光客が集まるリゾート地。ウディ・アレン自身が幼少時代に幾度も訪れたことがあるという思い出深い場所で、過去の作品『アニー・ホール』や『ラジオ・デイズ』でも登場。彼にとっての、“心の故郷”が集大成といえる本作を飾りました。
撮影監督には『地獄の黙示録』などで、3度アカデミー賞を受賞した映画界の至宝ヴィットリオ・ストラーロ。ノーマン・ロックウェルの絵画からインスパイアを受けたという、光と影、暖色と寒色のコントラストを効かせた美しい映像が、日常や人物に潜む危険を暗に匂わせ、言葉では語られない登場人物たちの心のざわめきや深層心理を表現しているかのよう。
『ブルージャスミン』を始め30本のアレン作品を支えてきた美術のサント・ロカスト。現在も実際に在るコニーアイランドを50年代のレトロポップに、開くと誰もが息をのむ魅惑の宝石箱のような世界に生まれ変わらせました。
古いファッション雑誌から抜け出してきたかのような人々。普段着さえもエレガントなこの時代の衣装を集めたのは『ブルージャスミン』のスージー・ベンジンガー。デザインのみならず、素材や補正具を工夫し、50年代のスタイルを完璧に再現しています。
視覚効果の技術で当時のままスクリーンに蘇った遊園地のアトラクションや建物、看板、木、ビーチの景色、海や空。綿密に計算された音の効果や誇りっぽい空気感なども相まって、その時代に生きた人々の息づかいが聞こえてくるかのような映像美にも是非注目して欲しい本作。
同じ場所で回り続ける美しい観覧車に人生を重ね合わせたウディ・アレン。
82歳の名匠が夢のように美しい映像と共に私たちに投げかけた、“答えのない問い”に想いを馳せてみてはいかがでしょうか。
- ■美しい映像も印象的だった。カラフルな遊園地、にぎやかな海水浴場、50年代アメリカのキッチュな服装、一見すると明るい音と光に彩られた世界がひどく空虚に見えてくるのは、それだけ主人公に感情移入してしまったということなのかもしれない(ミーーさん)
- ■50年代の時代設定との事で、服装だったり髪型だったりレトロで可愛かった。音楽も遊園地の景色も色使いもよかった!(榮利アンさん)
- ■俯瞰してみるとこのおばさんほんと、、 って思うけれど、 あれ、これは自分ではないか?と 思い当たる節がいくつも出てきて 反省する事も多かった。 想像とは違ったドロっとした 内容でしたが、そこに人間あるある のような笑いがちりばめられ バランスが良かったです。 そして、色と光の綺麗さ。 人間の汚さを綺麗に映し出していました(ぴのこさん)
- ■照明の色の使い分けが素晴らしい。主人公たちの感情に合わせて窓から入る光の色が変わっていくのが、幻想的でした。端的に言えば、この作品はタイトル通りの“観覧車”のような映画でした。作品が終わる頃には、観覧車が1周してしまっているような気分になる映画でした(たくすけさん)
◆映画『女と男の観覧車』 information
あらすじ:主人公のジニー(ケイト・ウィンスレット)は、元女優で、今はコニーアイランドの遊園地にあるレストランで、ウェイトレスとして働いている。再婚同士で結ばれた、回転木馬の操縦係を務める夫のハンプティ(ジム・ベルーシ)、そして自身の連れ子と観覧車の見える部屋で暮らしている。実は彼女は夫に隠れて、海岸で監視員のアルバイトをしているミッキー(ジャスティン・ティンバーレイク)と付き合っていた。平凡な毎日に失望していたジニーは、脚本家を目指すミッキーとの未来に夢を見ていた。だが、ギャングと駆け落ちして音信不通になっていたハンプティの娘キャロライナ(ジュノー・テンプル)が現れたことから、すべてが狂い始める──。
上映時間:101分
6月23日(土)、丸の内ピカデリー、新宿ピカデリーほか全国公開
配給:ロングライド
公式サイト:http://longride.jp/kanransya-movie/
photo by Jessica Miglio (C) 2017 GRAVIER PRODUCTIONS, INC.
※2021年6月9日時点のVOD配信情報です。