クドカン脚本の映画をもっと楽しむための「3つの法則」

2018.06.29
映画

映画は気持ちよく生きるためのヒント

hikari

テレビドラマや映画で脚本を手がけたというと、注目を集めたり、ヒットしたりすることが多い人気脚本家が「クドカン」こと宮藤官九郎

彼が脚本を担当した作品は、独特な世界観やリズムを持っていて、それゆえに人々の心をつかんでいる気がします。そして作品を観ていくと、ある3つの特徴のようなものが見えてきました。

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ちなみに、このたび2年ぶりに脚本を手がけた映画『パンク侍、斬られて候』が6月30日(金)より公開されます。そこで今回は、クドカンが脚本を担当した映画作品を味わうための3つの法則を紹介したいと思います。

宮藤官九郎という人物

松尾スズキ主宰の劇団「大人計画」所属。劇団の作・演出を手がけながら、バラエティの構成作家としても活動。

1999年、テレビドラマ『コワイ童話』の「親ゆび姫」で初めて単独で脚本を手がけ、翌年には『池袋ウエストゲートパーク』で初の連続ドラマの脚本、2001年は『GO』で初の映画脚本を担当します。

ちなみに、『GO』では日本アカデミー賞最優秀脚本賞を、2003年の『ピンポン』、2007年の『舞妓Haaaan!!!』で優秀脚本賞という受賞歴もあります。

その後、2005年の『真夜中の弥次さん喜多さん』、『少年メリケンサック』、『中学生円山』、『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』では脚本だけでなく監督も担当。

脚本、監督業のほかにも、俳優として自身が手がけているもの以外への作品に出演したり、ロックバンド「グループ魂」のメンバーとして音楽活動をしたりするなど、クリエイティブに活躍の場を広げています。

法則その1:時間軸の使い方が巧み

クドカン脚本の特徴のひとつが時間。時系列順に追っているように見えて、ミステリーの伏線を回収するときのような、絶好のタイミングで過去の話が登場するなど、時間軸の使い方が絶妙なんです。

GO(2001)

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在日韓国人の高校生・杉原(窪塚洋介)が、日本で生まれたのに在日であることを意識せざるを得ない日々への葛藤を抱きながらも、偶然出会ったちょっと不思議な女子・桜井(柴咲コウ)との甘酸っぱい恋愛を描いた作品。

杉原が朝鮮学校から日本の高校に入学した経緯や桜井がなぜ杉原を知ることになったのか、そのきっかけの部分の時系列。ここが物語のスパイスになるような時間のずらし方をしているので、必見です!

「木更津キャッツアイ」シリーズ

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人気だったテレビドラマの後日譚を描いた映画作品。『日本シリーズ』と『ワールドシリーズ』の2作が公開されました。余命半年を宣告された主人公・ぶっさん(岡田准一)が、地元・木更津を舞台に、身のまわりで起こるちょっとだけ厄介な出来事を仲間たちと解決に近づけていくストーリー。

ぶっさんの趣味である「草野球」になぞらえ、ぶっさんたちの“表”の出来事と、その“裏”で起こっていた出来事をオチとして描くのが特徴。“表”の出来事が起こっている一方で、パラレルな“裏”の出来事を大胆にさかのぼって描いていく手法が魅力の作品です。

謝罪の王様(2013)

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謝罪師として生きる黒島譲(阿部サダヲ)の元へ依頼された「謝罪」の案件を解決に導くまで、ケースごとに描いていくストーリー。

あらゆる謝罪のテクニックを駆使していくという一見ギャグみたいな物語ですが、登場人物それぞれに関連性があり、すぐにはそれがわからないように作っているのがうまい! 時間軸のずれ方が絶妙なので、すべて繋がったときの快感ったらもう……!と思える作品です。

ほかにも……

ピンポン(2002)

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ペコ(窪塚洋介)とスマイル(井浦新)を中心に、卓球へ情熱をかける高校生たちを描いた青春映画。この作品も、中盤の出来事を冒頭に持ってきていたり、過去(幼少期)の映像がはさまったり、時系列順に話が進まないシーンが多々登場します。

カムイ外伝(2009)

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抜け忍となって追われる身であるカムイ(松山ケンイチ)が、ひょんなことから出会った半兵衛の住む島へたどり着くものの、そこにはカムイを仕留めそこねた抜け忍・スガルがいて……というストーリー。そこまで時間軸のずれはないものの、主人公のバックグラウンドが重要なこともあり、時折、過去への振り返りが混ざるのが特徴。

法則2:現実離れした設定のリアルさ

現実にはありえない設定なのですが、それなのにリアルに感じてしまう物語に仕立てあげるのがうまいのも特徴です。

「ゼブラーマン」シリーズ

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ゼブラーマン』、その続編の『ゼブラーマン ゼブラシティの逆襲』からなる「ゼブラーマン」シリーズ。冴えない小学校の教員・市川(哀川翔)が、昔の特撮ヒーロー・ゼブラーマンに憧れて、変身アイテムまで自作していたのが、地球外生命体を倒す本当のヒーローになってしまうストーリー。

ヒーローものなので設定そのものが現実にはありえないのですが、ミシンでセブラーマンの服を縫っていたり、着て外出するのを恥ずかしがっていたりするのを見て、リアリティを感じてしまった作品です。

真夜中の弥次さん喜多さん(2005)

妻を殺してしまい、恋人である喜多さん(中村七之助)とお伊勢さんを目指して江戸を飛び出した弥次さん(長瀬智也)の珍道中を描いていく物語。

喜多さんが重度のヤク中ということもあり、出てくるシーンがこれは現実なのかそれとも幻想なのかわからなくなるようなものばかり。だけど生きることの儚さというものが、妙にリアルに胸に突き刺さってくる作品です。

TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ(2016)

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うっかり修学旅行のバス事故で死んでしまった高校生の大助(神木隆之介)が、好きな子へ想いを告げられないままだったことを後悔して、現世に戻ろうと地獄で奮闘する物語。

まず、地獄って設定からしてありえないのですが、地獄にいるキラーK(長瀬智也)が、実は大助と生前知り合いだったり、大助が地獄にいるうちに寿命が来て死んだ同級生(だから大助よりだいぶ年取ってる)と再会したり。そんなシーンがあると地獄という場が意外とリアリティあるように見えてくるんですよね。

ほかにも……

アイデン&ティティ(2003)

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バンドでメジャーデビューしたものの、バンドムーブが終わり、鳴かず飛ばずで葛藤する主人公・中島(峯田和伸)を描いた作品。原作もそうなのですが、中島だけに見えるボブ・ディランが登場。ディランは中島の幻想なのに、時代や大人たちに流され、ロックな心を忘れそうになる中島への言葉が現実味あふれています。

69 sixty nine(2004)

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村上龍の自伝的小説を原作にした作品。1969年の佐世保を舞台に、学生運動もどきのことをしたり、女子と戯れてみたり……といった高校生たちの青春を描いた映画です。主人公のケン(妻夫木聡)が、憧れのマドンナ(太田莉菜)を脳内で可憐に登場させるなど、女子を妄想するシーンが登場。でも先生など大人の存在で急に現実に引き戻されちゃうんですよね。

中学生円山(2013)

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突如団地に引っ越してきたシングルファーザー・下井(草彅剛)のミステリアスな雰囲気に惹かれて、妄想を爆発させる中学生・円山(平岡拓真)の姿を描いていく映画。最初のうちは妄想話だと笑っていられるのだけど、下井が来てから団地周辺で起こった事件の真相がわかるにつれゾクッとしてくるお話です。

法則3:とにかくギャグ

ストーリー自体、最後まで観ればホロッとくるものだとしても、登場人物の設定がユニークだったり、セリフにギャグを入れたりすることが多いのも、クドカン脚本ならではの味です。

舞妓Haaaan!!!(2007)

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修学旅行で舞妓さんに惚れてから、ずっと舞妓遊びをすることに憧れ、京都転勤を機に舞妓遊びの念願叶えようとする鬼塚(阿部サダヲ)の奮闘を描く物語。

熱狂的に舞妓が好き!ってところからして個性的すぎますが、それに合わせて東京時代の彼女が、舞妓修行をしに京都へ行く暴挙に出たり、舞妓遊びが大好きな野球選手・内藤と張り合って、彼が俳優、ボクサー、ラーメン屋、市長と転職するのに合わせて鬼塚も挑戦してみたり……。笑える要素満載です。

なくもんか(2009)

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かたや商店街のハムカツ屋を営む裕太(阿部サダヲ)、かたや芸人として活躍する祐介(瑛太)。生き別れた兄弟がひょんなことから再会し、絆を深めていく物語。

最後のほうなんか結構ホロッとくるのに、セリフはギャグ多め。おかしいくらい明るい裕太のことを妻・徹子(竹内結子)が「ジャンプ漫画ですか?」と例え、サングラスをかけた祐介を観てタモリと勘違いし、徹子の母が「毎度おなじみ流浪の番組」(「タモリ倶楽部」のアレです)と言い出すし。ま、そこがおもしろいんですけどね。

「土竜の唄」シリーズ

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熱くてバカでちょっと問題児だった警察官の玲二(生田斗真)が、麻薬のルートを握るため潜入捜査官としてヤクザの組に潜入し、数々の試練を乗り越えていく物語。

設定だけ聞くとハードボイルドなのに、素っ裸で下半身に紙一枚つけている状態で車に縛り付けられ、そのまま走行されたり、盃の皿をむしゃむしゃ食べたり(当然口から血が出る)……。玲二の身に起きる偶然、もしくは必然の出来事が、ただただ笑えます! そして玲二の運(悪運?)の強さもまた笑ってしまう作品です。

ほかにも……

ドラッグストア・ガール(2004)

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失恋で自暴自棄になって降り立った見知らぬ駅に新しくオープンするドラッグストアでバイトすることになった大学生の大林(田中麗奈)。そんな彼女に惚れた商店街のおじさんたちが、大林と仲良くしたいがために彼女がやっていたスポーツ・ラクロスをはじめる話。おじさんたちが中学生みたいにはしゃいでる姿がかなりコミカル。

鈍獣(2009)

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小説家の凸川(浅野忠信)の同級生・江田(北村一輝)と岡本(ユースケ・サンタマリア)。自分たちの過去の悪事を凸川が小説のネタにしていたと知り、彼を殺そうとする物語。でも殺しても殺しても、鈍感で(!?)絶対に死なない凸川。とにかくそんな彼の鈍すぎるところがおもしろい! けど、ちょっと怖い(笑)お話です。

少年メリケンサック(2009)

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偶然動画サイトで見つけたバンドをメジャーデビューさせようと思ったレコード会社社員のかんな(宮崎あおい)。彼らを訪ねたら、それはもう25年以上も前の動画だとわかり……という物語。もう田舎に引っ込んでいるメンバーから牛のフンを顔面に投げつけられるシーンなど、ギャグなシーン盛りだくさんです。

次回作はどうなる?

クドカンが脚本を手がけた最新作『パンク侍、斬られて候』は、町田康原作の作品です。原作自体がハチャメチャで、ギャグ要素もあれば、キャッチコピーにもある通り「ハッタリ」の連続! それをクドカンがどう料理してくれるのか……。今回紹介した3つの法則を頭に入れながら観てみると、より楽しめるかも!

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