男同士の友情にドッキュン!おすすめ和製バディ・ムービー7本

腐女子目線で映画をフィーチャーしてみる。

阿刀ゼルダ

1カ月にわたるサッカーワールドカップも、いよいよ佳境ですね。試合そのものもさることながら、アツい男たちのドラマに魅せられた、という人も多いのではないでしょうか?
そんな今の気分にもフィットする映画ということで、今回は、男同士の絆がアツいバディ・ムービーをセレクトしてみました。

ちなみにバディ・ムービーとは、「主人公が二人一組で活躍する映画ジャンル」。定番の刑事もの・探偵ものだけでなく、さまざまなジャンルの作品があります。

帝一の國』(2017)

帝一の國

総理大臣への道は生徒会長から!熱い学園選挙戦

政界に強いコネクションを持つ名門・海帝高校。海帝で生徒会長を務めることは総理大臣への道の第一歩と言われています。
父が果たせなかった夢・総理大臣を目指す赤場帝一(菅田将暉)は、海帝高校1年生。目標に向かってまずは生徒会長当選を果たすべく、幼なじみの榊原光明(志尊淳)を引き連れ、海帝の政界・生徒会に乗り込みます。
ところが、そこには親の代からの宿命のライバル・東郷菊馬(野村周平)が。菊間の妨害に遭い、生徒会長の夢はもろくも砕け散るのか…… 帝一絶体絶命のピンチ!

バディ・ムービー度★★★★★  野心家ヒーロー×女子的女房役の甘口腹黒バディ

政治家志望、高校生にしてすでにいっぱしの腹黒さと策謀家ぶりを発揮する帝一と、彼の隣りでガーリーな笑みを浮かべるサポート役の光明とのバディが人気を博した作品。
可愛い顔に似合わず、自作盗聴器で情報網を張り巡らす、なんてこともやってのける光明は、文字通り政治家の“女房役”ポジション。NHKドラマ『女子的生活』でも女装姿を披露し、「美しすぎる!」と話題騒然だった志尊淳に、光明役はまさにハマリ役です。

それにしても、帝一と光明の一心同体ぶりには目をみはるものが。
何をするにも一緒、休み時間には、
「帝一、おしっこ」
「ああ、僕も行くよ」
と2人で目を見交わして、いそいそと連れションへ。あまりに仲が良すぎて、周囲が「おい、そういうのは2人の時にやってくれよ」とあきれる場面もあるほど。
帝一のガールフレンドですら太刀打ちできない固い絆が、2人の間にはあるんです。
ただ、男子校に甘いムードを振りまきながらも、あくまでもブレることなく野望に向かって邁進し続ける帝一と光明……この2人、学園ドラマ史上最高の甘口腹黒バディと言えるんじゃないでしょうか。

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セトウツミ』(2016)

セトウツミ

菅田将暉と池松壮亮が男子高校生に!

一見全く違うタイプの男子高校生・瀬戸と内海が、毎度川べりの定位置でとりとめのないことをダベる……という、ほぼそれだけの70分。
瀬戸役は『帝一の國』の菅田将暉、内海役に池松壮亮。今日本で最も旬の俳優に数えられる2人の共演作です。

バディ・ムービー度★★★☆☆  何もしない時間のかけがえのなさに気づかせてくれる道草バディ

勉強は苦手ながらスポーツマン、明るくてユーモアもある人気者、にもかかわらず少々ワケありでヒマを持て余している瀬戸と、勉強はできるものの思い切りスカしていて友達を作る気もない内海。
二人合わせて「瀬戸内海(セトウツミ)」な2人が、なぜsか毎日のように放課後を一緒に過ごすことに。
劇中流れる音楽はタンゴ。
男同士で踊ることもあるタンゴは、バディ・ムービーにピッタリ。さすがはバディ・ムービーの達人、大森立嗣監督、選曲も冴えています。

『火花』(17)ではお笑い芸人も演じたコメディ・センスの持ち主、菅田将暉と、『海を感じる時』でサディスティックに女を翻弄する高校生を演じた池松壮亮とが紡ぎ出す、凹凸感のある会話のリズムが独特。
なんでもない会話の中に見え隠れするそれぞれに心の傷に気づかされ、はっとさせられる場面もあります。

何をするでもない時間を一緒に過ごした友人って、後々になって振り返ると、意外に一番心を開ける友人だったということ、ありませんか? この2人もいつか、それに気づく日が来るのかもしれません。
映画を観終わった後には、きっと懐かしい同級生に会いたくなっているはずです。

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まほろ駅前多田便利軒』(2011)

まほろ駅前多田便利軒

便利屋の多田のもとに転がり込んできた男、それは…?

特別オシャレな街でもないが田舎でもない、わりと中途半端な街「まほろ」の駅前で便利屋を営む多田(瑛太)のもとに、中学時代の同級生・仰天春彦(松田龍平)が突然転がり込んできます。
中学時代、仰天の小指に重傷を負わせたことに今も負い目を感じている多田は、「一晩だけ」という約束で仰天を泊めてやりますが、案の定仰天は居座り続けることに……仕方なく仰天にも便利屋を手伝わせる多田。
2人の共同生活は果たして……?
原作は三浦しをん、監督は『セトウツミ』と同じく大森立嗣。続編『まほろ駅前番外地』(テレビドラマ)・『まほろ駅前狂騒曲』と3作のシリーズです。

バディ・ムービー度★★★★☆ 小指のキズが「絆」の、くされ縁同級生コンビ

多田が仰天に負わせた傷がある意味2人を結びつける絆にもなっている、傷口コンビ。こういうのって、傷を負わせた側にとっても負った側にとっても、忘れられない相手ですよね。
家族を失った喪失感を抱え、誰かの役に立ちたいという思いを抱き続ける多田に、世話の焼ける自由人・仰天は、意外にうってつけの相棒でもあります。

BL好きを自称する三浦しをん原作だけあって、ほんのり匂い系の要素も。
「あなたが噛んだ♪ 小指が痛い♪」(「小指の想い出」)と仰天が鼻歌を歌い始めた途端、多田がムキになって「噛んでないっ!」と過剰反応する場面など……そんなドキッとさせられるようなやりとりも、ふんわり似合ってしまう2人です。

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孤狼の血』(2018)

孤狼の血

刑事かアウトローか?男たちのダークで熱い戦い

舞台は暴力団抗争が相次ぐ昭和末期の広島・呉原市(地名は架空)。県警本部から所轄のマル暴担当に異動になった日岡(松坂桃李)は、暴力団顔負けに危ない刑事・大上(役所広司)の下につくことになります。
そんなある日、暴力団のフロント企業で従業員が行方不明になる事件が発生し、日岡は、大上のあきらかに違法な捜査手法を目の当たりにすることに。
大上のやり方に反発を感じる日岡。実は彼には大上に隠している極秘任務があり……
原作は柚月裕子の同名小説、監督は『彼女がその名を知らない鳥たち』などで知られる白石和彌

バディ・ムービー度★★★★★  昭和的男臭さムンムンの正統派バディ

刑事ものはバディ・ムービーの王道。しかも、「あぶない刑事」シリーズや「相棒」シリーズなどアクション系バディ・ムービーの人気シリーズを送り出してきた東映の作品ということで、これは今回はずせない作品です。
役所広司と松坂桃李というと正統派二枚目コンビですが、32歳という年齢差に加え、叩き上げ派とキャリア派、暴力団の世界に深入りしすぎたダーティな刑事と正義感に萌える若手刑事という対照的なキャラ付けもあって、2人の間の軋轢や張りつめた空気もこのバディのみどころ。
昭和の任侠映画へのオマージュをふんだんに取り入れた映像の中で、敢えて濁流に呑まれていく大上の刑事魂、次第に大上の「怒り」に共感し、大上と同じ匂いを纏っていく日岡の変化が、鮮烈に描かれていきます。
早くも続編の製作が決定。

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「探偵はBARにいる」シリーズ

探偵はBARにいる

地方色と個性派揃いのキャラたちが魅力の探偵もの

こちらも東映のバディ・ムービー。現在シリーズ3作目まで製作されています。
大泉洋演じる主人公「俺」は、札幌のススキノで事務所を営む探偵。
事務所といっても、名刺には「ケラー・オオハタ」なるバーの電話番号が……つまり、「探偵はバーにいる」というわけです。
なぜか車が運転できない「俺」が、運転手として雇っているのが、北大農学部で助手として働く高田(松田龍平)。
「俺」と高田のコンビが、毎回依頼をきっかけに事件に巻き込まれ、右往左往しながらも、事件を解決に導きます。

主演2人だけでなく、探偵の情報網として登場する桐原組若頭(松重豊)や北海道日報記者(田口トモロヲ)、ゲイバーの面々など、隅々まで濃いキャラで固められていて、一度観るとまた彼らに会いたくなること請け合い。
北海道ならではのトピックスやB級グルメも魅力です。

バディ・ムービー度★★★☆☆  熱血探偵と昼行燈の凸凹コンビ

キレのいい演技でコメディでもシリアスドラマでも変幻自在に存在感を見せつける大泉洋と、常時昼行燈のようでいて、冴えを見せる役柄を演じたら当世随一の松田龍平とのコンビ。これで面白くないわけがありません。
多分この2人なら常時一緒に行動していても、異色凸凹コンビの魅力をたっぷり楽しませてくれると思いますが、本作では大泉洋中心、松田龍平は、ポイントとなる場面のみに登場しては緩いムードを醸し出す関係性。
松田龍平の出番が少ない分バディ・ムービー度は落としていますが、それでもバディとしての存在感は十分。
松田龍平扮する高田のポンコツすぎる愛車もいいアクセントになっています。

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ピンポン』(2002)

ピンポン

松本大洋の人気漫画実写化

天才的な卓球の素質を持ちながらも部活をサボり続けるペコこと星野裕(窪塚洋介)と、ペコの影響で卓球を始め、コーチに将来を嘱望されているものの、勝つための卓球に興味が持てないスマイルこと月本誠(井浦新)。
スマイルはいつも、ペコを待っている……そういう存在感の少年。
ペコとスマイル・2人の絆と、卓球に全高校生活を賭けた強豪校の面々の、勝つことへの執念、負けても続いていく人生を描いた青春映画です。

『鉄コン筋クリート』など、独特の世界観の中で男のドラマを描き続ける松本大洋の人気コミックスを原作に、宮藤官九郎が脚本を担当。

バディ・ムービー度★★★★★  かたや卓球の星、かたや星を見守る月になった卓球少年コンビ

当時の窪塚洋介にハマリ役の、アクの強い天才卓球少年ペコ。
一方、アグレッシブな選手たちの中でひとりクールなスマイルの存在感は異色……しかし、かつてこれほど井浦新のニュートラルな魅力を引き出した作品もありません。ペコとスマイルの一見分かりにくい絆は、スマイル役が井浦新だからこそ唯一無二の関係性として成立している気がします。

世界へ羽ばたくペコに対して、日本を代表する選手になれる実力を持ちながらも、勝つための卓球を捨て、別の人生を選ぶスマイル。
別の生き方を選んでも、高く、深いところで2人は繋がり続けているはず。ペコが試合でピンチに陥った時、スマイルの声が聴こえてくるあたりは、2人の絆の奇跡に心が震えます。
ちなみに『ジ・エクストリーム・スキヤキ』(13)も窪塚洋介・井浦新の共演作品。

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アリーキャット』(2017)

アリーキャット

窪塚洋介×降谷建志のロード・ムービー

こちらも窪塚洋介、ひさびさの主演作になります。
窪塚演じる、かつて東洋チャンピオンにまで登りつめた元ボクサーの朝秀晃(マル)と、降谷建志演じる梅津郁巳(リリィ)の2人がバディを組み、ストーカーと暴力団の双方に狙われている女サエコ(市川由衣)を守るために3人で東京を目指すロード・ムービー。
監督は、『木屋町DARUMA』などの榊英雄

バディ・ムービー度★★★☆☆ 破滅と再生の旅の相棒

ボクシング東洋チャンピオンから一転、試合で負った怪我がもとで引退に追い込まれ、後遺症に苦しみながらアルバイトで食いつなぐマル。哀愁が似合う年齢になった窪塚洋介の魅力を引き立てる役柄です。
挫折の影を引きずるマルの殻を破ってくれるのが、やんちゃ坊主みたいな男・リリィ。
本業はミュージシャンで本作が映画初主演となる降谷建志の、ちょっととぼけた存在感が、ダークな物語のいい抜け感になっています。

傷だらけの人生を生きる男・マルの、弱さもかなしみもまるごと愛おしくなってしまう、男っぽさ全開のバディ・ムービー。
過去を清算し、未来を破壊し尽くした先にあったものは?
相棒がいるからこそ痛みを覚悟で一歩を踏み出せる、破滅と再生の物語です。

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結び:バディ・ムービーの魅力とは?

以上作品をご紹介してきましたが、気になる作品はありましたか?
男同士の友情を描いた映画には、多人数でチームを組む職場や、団体競技を題材にしたものもあります。そんな中で、敢えてバディ・ムービーならではの魅力を挙げるとしたら、やはりそれは「唯一無二の関係性」ではないでしょうか。
現実の生活の中では、夫婦関係・恋愛関係以外で唯一無二の関係性を持つことはなかなかにないだけに、同性同士の無二の絆には強い憧れを感じてしまいます。

もうひとつ、どういうわけかバディ・ムービーにはとびきり魅力ある俳優がキャスティングされることが多いという事実も、バディ・ムービー人気が盛り上がる一因でしょう。
2人セットで眺めると魅力が相殺されるどころか、逆に普段とはまた違った魅力が引き出される……そんな効果がバディ・ムービーにはある気がします。
お友達と一緒に観賞して、「どっち派!?」という話題で盛り上がるのにもうってつけ。

年齢・性別を問わずそれぞれの観方で楽しめるバディ・ムービー。ぜひ、自分なりの楽しみ方を見つけてみてください。

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