『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』で実力を見せつけた南沙良の夢「インコになりたい」【インタビュー】

世界のディズニーを翔る元映画サイト編集長

鴇田崇

人気漫画家・押見修造が自身の体験をベースに描いた代表作「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」が実写化、7月14日(土)に全国順次ロードショーとなります。全世代が感動、共鳴した原作では、10代の少女たちが経験する、誰もが抱いた苦悩や葛藤をモチーフに、戻れないからこそ現在を照らしてくれるつたなくて愛おしい日々を描写。今回の実写映画版『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』では、瑞々しい映像と繊細な脚本で、10代の心の機微を映し出します。

その主人公・志乃を、業界内外から注目を集める十代の実力派女優・南沙良が好演。現役モデルにして高い評価を得た『幼な子われらに生まれ』を経ての初主演作で、ある種、特殊な葛藤を抱く志乃というキャラクターを、誰もが共感しうる存在へと演じ上げています。その期待の新星に本作のこと、志乃のこと、女優業のことなど、さまざまなお話をうかがいました。

南沙良

ーー主人公の志乃は繊細なキャラクターかと思いますが、今回どういうことに気をつけて演じていましたか?

志乃は確かに、“吃音”というコンプレックスを持っていますが、それでも普通の女の子で、仲の良い友だちとはおしゃべりをしたりしているので、彼女の内にある子どもっぽさというか、高校一年生としての誰もが共感できる部分を大切に残してみた、ということはあったと思っています。

ーー吃音ということは前提であるけれども、そのコンプレックスは誰しもが持っている象徴として描いていて、感情移入できますよね。

そうですね。湯浅(弘章)監督とは撮影現場に入る前に、この映画は最後のシーンに持って行くためのストーリーで、そこへ向かってすべての感情を持って行ってほしいという説明を受けたので、そこまでの間に志乃が感じたことや思ったことを、彼女の中に忘れないでしっかり持っていようと、それは心がけました。

南沙良

ーー志乃のコンプレックスは押見修造先生の実体験がベースになっているものの、おっしゃるように一般化したキャラクターでもあり、惹かれるものがあります。

原作のことは、オーディションを受ける時に初めて知りました。原作を読んで観て、最初は志乃と自分が重なる部分がたくさんあって、すごく歯がゆいというか共感できる部分があり、それが印象に残っていますね。わたしも人前に出て、言葉や行動で自分を表すことがすごく苦手なので、そこがすごく重なりましたね。

南沙良

ーー記憶に新しい『幼な子われらに生まれ』では高い演技力に驚かされましたが、今回、初めて主演を務めていかがでしたか?

『幼な子われらに生まれ』の後が本作だったので、こんなに早く初主演をやらせていただけるとは思っていなかったですが、すごくうれしかったですね。今回、志乃が思ったこと、志乃が加代に言われたことなど、その場で感じたことなどを素直に出してほしいと監督に言われていたので、そこも大切にしていましたし、「自分の感情を素直に出すことは全然恥ずかしくない、何でもない」ということも胸に響きました。そこはつながっている部分なのかなと思います。

ーー役作りとして気持ちを用意していく作業とはまた別の取り組み方もあったということでしょうか?

そうですね。でもあまり深く考えずに行っていました(笑)。撮影現場に入ってみて初めてわかることもあると思うので、深く考えすぎず、現場に入ってからスタッフさんや共演者さんと接して感じたことを取り入れた感じですね。

南沙良

ーーところで、演技にはいつから興味があったのですか?

小さい頃から女優さんになりたかったですね。ひとりで絵本を読んでいるような子で、絵本に出てくるキャラクターになりたいと思っているような子でした。あとは、インコになりたくて……。

ーーインコ!?

はい。動物の(笑)。インコになりたくてなりたくて、飼ったこともあります(笑)。お芝居というレベルではないですが、絵本のキャラクターなどになりきって、ごっこみたいなお芝居遊びをしているような子でしたね。

南沙良

ーー女優さんでは、あこがれの方はいますか?

二階堂ふみさんが大好きです。ひとつひとつの作品によってまったく別の顔があり、この人は誰なんだろう?って思うようなお芝居で、すごく圧倒されます。『蜜のあわれ』という作品がすごく好きですね。世界観がすごく素敵で、少し不思議なところに惹かれてしまいます。

南沙良

南沙良

ーーデビューして4年ですが、いまの心境はいかがですか?

わたしは先のことを考えるのが苦手なタイプなので、具体的な目標などはないですが、型にはまらないお芝居をしていたいとずっと思っていて。それはお芝居を始めた頃から、ずっと自分の中にありますね。

ーー自由でいることは大変ではないですか?

大変と感じたことはないです。

南沙良

ーーいずれインコの役――それこそ『蜜のあわれ』でいう二階堂さんが演じた金魚みたいなキャラクターなど、型破りで挑みがいがありそうです。

インコになりたいです。期待しています(笑)。
二階堂ふみさんは、すごく生々しいお芝居というか、フィクションだけれどもすごくリアルで、自分の周りにもあるんじゃないかって思わせてくれる感じがすごく好きなので、そういうお芝居を目指したいと思っています。

南沙良

ーー今日はありがとうございました。最後に『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』を楽しみに待っている映画ファンに一言お願いします。

この作品に出会うまで自分の嫌なところ、コンプレックスがたくさんありましたが、この原作を読み、撮影が始まり、完成した映画を観て、その自分の嫌な部分、真っ白ではない濁っている自分の中のものを見つめることの大切さを知りました。そういうことに、そう向き合ってあげて、自分の中に帰す場所を見つけてあげたほうが大切であると、気付くきっかけを与えてくれた作品だと思うので、そういう自分の中のもどかしさ、真っ白じゃない部分を浄化できるきっかけを味わってほしいです。(取材・文=鴇田崇/写真=You Ishii)

映画『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』は7月14日(土)より、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー。

志乃ちゃん

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