昨年、アカデミー賞に先駆けて『シェイプ・オブ・ウォーター 』に最高賞を授与したヴェネツィア国際映画祭が、今年も8月29日(現地時間)から開催されます。場所はもちろん世界遺産にも登録されているイタリア・ヴェネツィア。
カンヌ国際映画祭・ベルリン国際映画祭と並ぶ世界三大国際映画祭のひとつであり、1932年に始まった世界最古の映画祭です(カンヌは1946年から、ベルリンは1951年から)。
日本映画とも多くのつながりを持つヴェネツィア国際映画祭を紹介します。
1. ヴェネツィア国際映画祭をザックリと…
2. 主な賞とは?
3. 日本とのつながり
4. 第75回(2018年)の注目作
5. 最も多様で最も新しい映画祭へ
ヴェネツィア国際映画祭をザックリと…
ヴェネツィア国際映画祭は、1895年から毎年開催されている国際美術展「ヴェネツィア・ビエンナーレ」の中の映画部門として1932年にスタートしました。ゆえに“芸術の映画祭”と評されるヴェネツィア国際映画祭ですが、ファシズムの影響を強く反映した審査が行われるようになり、映画祭としての国際的な評価は下がっていきました。
とはいえ、イタリア映画は戦時中の他の国に比べて反体制的な映画が多かったと言われ、社会問題を批判的に描いた『無防備都市』や『自転車泥棒』などが製作されており、イタリア映画自体は世界的な評価を得ていました。
政権の影響から離れてからは、受賞作は国際色豊かになりますが、それでも自国推し傾向は残っているとの批判もありました(ただ、『アルジェの戦い』や『赤い砂漠』など受賞に値する名作もあるので、実際にイタリア映画自体が強かったという見方もあります)。それが劇的に変化するのは、多様なプログラムが組まれるようになった1980年。国際映画祭として再び認められるようになりました。
主な賞とは?
日本とのつながり
特に1950年〜1960年の間、日本映画はヴェネツィア国際映画祭からたびたび賞を受けていました。『羅生門』『七人の侍』『雨月物語』などは、アカデミー賞などでも評価されているので、単純にこの時期の日本映画が凄かったとも言えますね。
日本映画が低迷期に入っても、ヴェネツィア国際映画祭はコンスタントに日本映画を世界に紹介してくれ、1990年代に入ると、是枝裕和監督や北野武監督などを率先して評価してきました。
第75回(2018年)の注目作
最高賞となる金獅子賞などを争うコンペティション部門には、『ラ・ラ・ランド』のデイミアン・チャゼルがライアン・ゴズリングを主演にした新作『ファースト・マン』、『ゼロ・グラビティ』のアルフォンソ・キュアロン監督『Roma(原題)』、『君の名前で僕を呼んで』のルカ・グァダニーノ監督のホラー映画『Suspiria(原題)』、『ロブスター』のヨルゴス・ランティモス監督がエマ・ストーンを主演にした『The Favourite(原題)』、ジョエル・コーエン&イーサン・コーエン兄弟の『The Ballad of Buster Scruggs(原題)』、マイク・リー監督の『Peterloo(原題』、『サウルの息子』のネメシュ・ラースロー監督『Sunset(英題)』、『潜水服は蝶の夢を見る』のジュリアン・シュナーベル監督『At Eternity’s Gate(原題)』、『ディーパンの闘い』のジャック・オーディアール監督『The Sisters Brothers(原題)』など、すでに実績のある監督作が多く選出されています。
日本映画では、塚本晋也が監督を務め池松壮亮と蒼井優が共演した『斬、』がコンペティション部門に、またバーチャル・リアリティ部門には『攻殻機動隊 新劇場版 Virtual Reality Diver』と『結婚指輪物語VR』が選出されています。
最も多様で最も新しい映画祭へ
現在では最も地域的な偏りのないプログラミングになっており、欧州や英語圏に加えて、アジアや中東の作品も受賞作に名を連ねています。その内容も幅広くバラエティに富んでいます。
◼️新人監督育成プロジェクト
新人監督育成にも力を注いでおり、審査に通過した新人監督には、最大約1,800万円の制作費を与えて翌年のベネチア国際映画祭で上映されることを目指しています。
◼️ストリーミング配信映画への対応
映画界の新しい潮流にも先んじて対応していて、NetflixやAmazonなど劇場上映されないストリーミング配信の映画についても他の映画と隔たりがないという姿勢を示しています。
◼️VR部門(バーチャルリアリティー)設立
2009年には3D映画部門が新設されましたが、昨年からはVR部門(バーチャルリアリティー)も新設され、ユージーン・YK・チャン監督の『Arden’s Wake(Expanded) 』がVR作品賞を受賞しました。
ヴェネツィ? ?国際映画祭というと、“最古””芸術”というイメージがありましたが、今や最も多様で先鋭的な国際映画祭になりつつあります。また、翌年2月に開催されるアカデミー賞にも影響を与えるようになっているとのことです。今回の受賞作がアカデミー賞をはじめ映画祭を賑わす作品になるかもしれませんので、ぜひお見逃しなく!
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