世界が注目する実力派俳優・安藤サクラの出演映画22本<2008〜2018>

2018.08.17
映画

映画マニアと呼ばないで

夏りょうこ

カンヌ国際映画祭で最高賞にあたるパルムドールを受賞した『万引き家族』での演技が絶賛され、10月から放映されるNHK連続テレビ小説『まんぷく』では初ヒロインを務める安藤サクラ

万引き家族

映画ファンの間では以前から人気のあった女優だが、『万引き家族』で初めて知ったという人も多いのでは?

安藤サクラは1986年生まれ。父は俳優の奥田瑛二、母はエッセイストの安藤和津、姉は映画監督の安藤桃子という芸能一家で育ち、5歳のとき父の舞台を観て女優になろうと決意し、高校生になってから本格的に女優の道へ進んだ。

ちなみに夫も俳優の柄本佑で、義弟の柄本時生、義理の両親である柄本明と角替和枝も俳優という親類を含めてみな映画関係者だ。

そんな安藤サクラは、スクリーンに登場した頃からタダモノではない雰囲気を漂わせ、将来性を感じさせる女優であった。

そこで今回は、安藤サクラの出演映画22本をご紹介しよう。

俺たちに明日はないッス』(2008)

バカでやるせない男子の思春期

俺たちに

女子とセックスのことしか考えていない男子高校生の恋と性を描いたホロ苦い青春ストーリー。

原作は、さそうあきらの人気コミック。女の子とヤルことしか頭になく、気になる同級生がいても素直に接することができない主人公を、イケメンとは程遠い柄本時生が演じ、モンモンとしながらダラダラと日常を送る思春期男子の姿がリアル。海に沈んだ彼女を裸のまま追いかける後姿は、バカ丸出しなのにどこか切なくて泣き笑いしてしまう。

物語には3組のカップルが登場するのだが、そのなかのぷよぷよ系男子と巨乳美人の2人がサイコーだ。体目当てなのはどっち? 

安藤サクラはこの頃からすでに今の安藤サクラ。めんどくさそうにしゃべり、包容力のある母性を感じさせる。そんじょそこらの男子の手には、とても負えそうにないね。それでもちゃっかり欲しいものを手に入れて、幸せそう。女性が観ても面白い映画である。

愛のむきだし』(2008)

あまりにも純粋で壮絶な

愛のむきだし

神父を父に持つ主人公が、幼少時に亡くなった母親の「マリア様のような人を見つけなさい」という言葉を胸に、理想の女性像を追い求める。 

実話に基づいたエピソードで綴られる一大恋愛叙事詩。父から毎日懺悔を強要され、父との関係を失いたくないため罪作りに励む主人公がとうとう「盗撮」に行き着いてしまうとは、なんて面白くて哀しい話だろう。彼の行為は、親の愛を引き止めたいという心の叫び。なので、変態には思えない。

彼が見つけたマリア様は、不良少年の集団をパンチラさせながら叩きのめしていた女子高校生だった。そして、彼女が洗脳されて入団したカルト新興宗教団体にいるのが、安藤サクラだ。

かなりコワイよ。この安藤サクラ。その凍りつくような邪悪な目つきときたら。しかし同時に空虚な寂しさも感じさせ、いつも一緒にいる小鳥にささやかな癒しを求めているところが、いじらしい。

3時間57分という長い映画ではあるが、やや饒舌なところも含めてみごたえあり。いろいろなむきだしに、あなたは耐えられるか?

罪とか罰とか』(2008)

罪でも罰でも

罪とか罰とか

万引きの罪滅ぼしに一日警察署長をやらされるハメになった売れないグラビアアイドルが、刑事である元カレの秘密に振り回されていく。

秘密といっても、隠しちゃいけないレベルのとんでもない秘密である。なので、いくらまだ彼のことが好きだからといって……。でもまあそこが、演劇界の奇才ケラリーノ・サンドロヴィッチ作品のシュールさ。やめたくてもやめられない彼のクセに、こちらも笑いが止まらない。

主人公と一緒にスカウトされた高校の同級生は、のちグラビア雑誌の表紙を飾るほどの売れっ子になった。でもこの子、昔はあんなに大人しかったのに性格変わったな……それが安藤サクラである。その変貌ぶりに注目。安藤サクラ、ブラック・コメディも似合う。

僕らは歩く、ただそれだけ』(2009)

ひたすら歩いて撮って

僕らは歩く

恋人がニューヨークへと去ってしまった女性が、その喪失感を埋めるようとして故郷に戻り、歩きながら写真を撮り続ける。

SPANK PAGEの歌「ame 〜rain song〜」がモチーフとなった作品だという。カメラを片手に街をブラブラしながら、写真を撮り続ける彼女。とにかく歩く。レンズを向ける。シャッターを押す。その過程で彼女はいろいろな人たちと出会い、別れる。ただその繰り返しが、彼女の傷ついた心を癒していくのである。

悲しいことやつらいことがあったときは、部屋に引き籠って1人でいたい。それはそれでアリなんだけど、外に出て体を動かし、たくさんの人に会うというのもリハビリとして有効らしい。そこで活躍するのがカメラ。人と人をつなぐ媒体としての写真。

失恋の悲しみを胸に、写真を撮り続ける主人公を演じた安藤サクラ。レンズを覗けばみんなの笑顔があり、自分も自然に笑顔になる。悲しんでばかりはいられないよ。安藤サクラの泣き笑いみたいな顔がいい。

クヒオ大佐』(2009)

騙されたいから騙される

クヒオ大佐

1970年代から90年代にかけてアメリカ空軍のパイロットを名乗り、女性たちから約1億円を巻き上げた実在の結婚詐欺事件を描く。

ジョナサン・エリザベス・クヒオ大佐。その詐欺師が名乗った名前である。アメリカ空軍パイロットというだけでなく、カメハメハ大王やエリザベス女王の親類なんだって。もちろん経歴も全てウソ。よくこんなんで騙されたよなあ。でもだから面白いんだけど。

堺雅人が付け鼻をして「外人風」に変身し、この何とも不自然で憎みきれない男を演じる。りっぱな軍服姿にすっかり騙される3人の女性のうち、自然博物館に勤める女性の同僚役が安藤サクラである。とぼけた表情。めんどくさそうなしぐさ。職場を訪ねてくる大佐をさりげなく観察し、「騙されてるんじゃないの?」と疑いを持つ。

堺雅人の笑っていない目がうさん臭く、立ち振る舞いがスマートなのにウソっぽい。当たり役だと思う。彼はなぜ女たちを騙すのか。女たちはなぜ彼に騙されるのか。可笑しくもちょっと哀しい気持ちになる実話。

すべては海になる』(2009)

愛は誰にもわからない

すべては海になる

家庭環境に悩みながら本を支えにして生きる男子高校生と、本に救われた過去を持つ女性書店員の心の交流を描く。

肉体関係を繰り返すことでしか愛を感じることのできない彼女は、勤務先の書店で「愛のわからない人へ」という本棚を作る。ほとんどの本は愛について書かれているし、ほとんどの人は愛についてわからないので、そのコーナーは大好評。そこへ、1人の男子高校生がやってくる。

母親が万引きするわ姉はグレているわの崩壊した家庭でじっと耐え、読書によって自分を守り、答えを探そうとしている彼を柳楽優弥が好演。あの目ヂカラで周りを静かに観察する姿が妙に大人びているだけに、彼の苦労がしのばれて胸が痛む。

安藤サクラは小説のなかの主人公として登場するのだが、ギャルみたいなメイクとファッションで別人のよう。「ブス」と言われたので、新しい美の基準を求めて世界中の男を渡り歩いたりして、ここにも愛がわからなくなった迷える女が1人。架空の人物なので演技もオーバー。めったに拝めないポップな安藤サクラである。

ケンタとジュンとカヨちゃんの国』 (2009)

ギリギリで生きている

ケンタと

児童養護施設で一緒に育ち、工事現場で低賃金労働をこなしながら、陰湿ないじめにも遭っていた2人が、人生の新たな一歩を踏み出そうと旅に出る。

自分の人生を自分で決められないという絶望感とイラ立ち。それは日々の不安や憤りが交じり合って膨らみ続け、いつかパンパンになって破裂するだろう。その瞬間に向けて、彼らは走り続ける。もうそれしか道は残されていないのだ。

とにかく嫌な予感しかせず、最後までドキドキ。安藤サクラがひょっこり登場するシーンが、夜の繁華街を1人でフラフラ歩いている「あんまりかわいくなくて頭が悪そうな軽い女」というのがひと目でわかる素晴らしさ。なぜか女神に見える。

何の根拠もないけど、それは彼らにとってたった一つの小さな光だった。そんな頼りない希望と一緒に車に乗せられ、北へと向かう安藤サクラ。似た者同士のヒリヒリした時間は、むしろ幸せなひとときだったのかもしれない。

愛と誠』(2012) 

ウブなスケバン

愛と誠

良家のお嬢様と不良青年との運命の恋を熱く描く。

梶原一騎原作の1970年代大ヒット漫画を実写化。これまでも何度か実写ドラマになり、原作は昭和の匂いがプンプンするハードな劇画なので、今更それをどうやって……と思っていたら、パパイヤ鈴木の振り付けによるミュージカルという変貌ぶり。いらぬ心配であった。

タイトルは2人の名前。生まれも育ちも違う「愛」と「誠」が一緒になることで、究極の愛の形が完成する。安藤サクラは、いつもガムをくちゃくちゃ噛んでいるスケバンの「ガムコ」。転校生である誠に因縁をつけたら反撃され、その堂々とした男っぷりに惚れてしまう実は純な女子なのであった(パンツも白だし)。

学校の荒れ具合いといい不良のグレ具合いといい、平成の世ではSFファンタジーにしか見えないが、みんな歌って踊ってくれるので楽しい。

かぞくのくに』(2012)

見えない壁がある

かぞくのくに

北朝鮮に住む兄が、病気治療のため25年ぶりに来日して家族と再会するが、思想や価値観の違いに戸惑い、政治情勢に振り回される。

監督が自身の体験を基にして作り上げたという。脳に悪性の腫瘍を患い、その治療のために3ヶ月だけ滞在が許されて帰国した兄。しかしその傍らには、北朝鮮の監視役がピッタリとくっついていた。

兄の病状を案じ、何とか助けようと奔走する妹役が安藤サクラだ。本国からの理不尽な命令に怒り、嘆き、耐えようとする。彼女の「なぜ?」という問いかけに答えられる者はなく、再会の喜びは絶望に変わる。安藤サクラが兄の代わりに声をあげ、兄の代わりにどこへでもいくだろう。

一方、「そういう国なんだよ」と諦めている様子の兄も、心の奥底にはたぎるような怒りと悲しみがあるに違いなく、国家と個人、命の重みについて考えさせられる。ノンフィクションのようなシリアスさだが、映画としての評価は高く、俳優陣の演技力を楽しめる。

その夜の侍』(2012)

自分ならどうする

その夜の侍

ひき逃げ事件の犠牲になった妻の復讐に燃える男が、刑期を終えて出所した犯人に脅迫状を送り、ついに2人は対面を果たす。

原作は岸田國士戯曲賞にノミネートされた舞台で、その脚本、演出、主演をこなした赤堀雅秋がこの映画の脚本と監督も担当している。つまりこれは、原作者の作家性が強く反映された作品であり、良心との葛藤に苦しみながらも復讐を糧に生きてきた主人公が、果たして犯人を目の前にしてどうするのか。人間の狂気と残酷性の掘り下げられた描写がみどころだ。

山田孝之演じるひき逃げ犯が「お前なんか復讐されろ」と思わせる極悪人ぶりで、どうみても平均より弱そうな主人公(堺雅人)に勝ち目はなさそう。その彼が死ぬ覚悟で挑む決戦の日。男として最後は女と一夜を、ということでホテルに呼んだ商売女が、安藤サクラだった。

はすっぱな女性を演じたら右に出る者はない安藤サクラ。ここでもわずかな出演シーンながら、特に何かをするわけでもないのだが、猫背気味の下着姿が強烈な印象を残す。

今日子と修一の場合』(2013)

さあ帰ろう

今日子と

東日本大震災で故郷が被災してしまったのに、事情があって帰郷できない男と女が、それぞれの過去と向き合い、人生をやり直そうとする。

安藤サクラの父である奥田瑛二が、当時すでに夫婦だった安藤サクラと柄本佑を主演に迎えて撮った作品。東京で暮らすこの2人に直接的な関係はないのだが、「ワケあって故郷に帰りづらい」という共通点があり、それがどんな過去なのかが徐々に明らかにされていく。

実はもう1つ、彼らには罪を犯したという共通点があった。それは、彼は母親を助けるために父を殺し、彼女は同居していた恋人を過失致死で殺してしまったこと。どちらも不本意な行為だったとはいえ、心に深い傷を残しているのは確か。

安藤サクラは、離婚して故郷に幼い子供を残してきた母親の役を演じている。遠く離れた東京で、同じ年頃の子供を見かけて涙ぐむシーンが切ないなあ。上京後はひどい男に出会って人生が傾きかけていたが、震災をきっかけに大切なものを取り戻そうとする姿がたくましい。

ペダル ダンス』(2012)

海風が優しい

ペダルダンス

地元で暮らす大学時代の友人の妙なウワサを耳にした2人が、本人から真相を聞くため、新たに知り合った女性と一緒に会いに行く。

自分から飛び込んで溺れて助かった。それって自殺未遂じゃないの? そんな気がした女友だちが、彼女に一体何があったのかを知りたくて車を走らせる。運転手としてメンバーに加わった1人の女性だけが彼女を知らないのだが、周りにすんなり馴染んでいるのは身にまとっている空気感が似ているから。

安藤サクラは離婚歴のある女性の役。元夫から車を借りたりするので、憎みあって別れたわけではなさそうである。2人は目が合うと恥ずかしそうで、まだ愛が残っているみたいなのになぜ別れてしまったのか、それとも修羅場を乗り越えての今なのか、ほんのりと寂しい微笑みが意味深だ。ちなみに相手は安藤政信。

映像が全体的に白っぽいグレー色で、スクリーンいっぱいに風と波の音が広がる海辺のシーンが印象的。その繊細なビジュアルは、彼女たちの心象風景なのだろう。女性が気に入りそうな作品。

家路』(2014)

もう1度立ち上がろう

家路

東日本大震災による福島第一原子力発電所事故で、先祖伝来の土地を失ってしまった一家の前に、故郷を飛び出したまま音信不通だった次男が現れる。

福島のオールロケに福島の方言という臨場感あふれる作品。何も変わっていない福島の美しい自然風景と、土地を追われて仮設住宅に移り住んだ家族の苦悩が交差する。次男が1人で黙々と苗を育て、誰もいない田んぼにそれを植える姿に「ここで生きるんだ」という覚悟と決意を感じ、バラバラだった家族の気持ちが一つになっていく。

一方、突然の原発事故で生きる目的を見失ってしまった兄は、疲れているしヤル気が起きないしで脱力感まるだし。まあ弟は今までよそにいたわけだから、奪われた者の虚しさはわからないだろう。彼の妻を演じたのが安藤サクラ。仮設住宅暮らしに耐え切れず、娘を義母に預けてデリヘルで働くという……相変わらず疲れた様子がうまいね。

そんな彼女が夜中に義母と仮設住宅を抜け出し、コンビニのベンチで缶ビールを飲みながら語り合う。女同士でボソボソと本音を口にし、ため息をついて夜空を見上げる。何だかいいシーンだ。

0.5ミリ』(2014)

スレスレの距離感

0.5ミリ

ある事件によって仕事も家も失った介護ヘルパーが、住み慣れた街を離れ、生活のために見知らぬ土地で押しかけヘルパーを始める。

安藤サクラの姉である安藤桃子が、自身の介護経験を基に執筆した小説を映画化。エグゼクティブプロデューサーは父の奥田瑛二、フードスタイリストは母の安藤和津という家族ぐるみで製作された作品である。安藤サクラ演じる主人公が、嗅覚鋭くワケあり老人を見つけては、次々と彼らの生活に入り込んでいく。

寝たきり老人と寝る。もしそんな依頼をされたら、自分だったらどんな条件を提示しようかなどとつい妄想してしまうが、彼女は実際にそれを頼まれ、そのせいで大変な事態に巻き込まれてしまったのだから、甘い話には気をつけないといけないね。

お年寄りにモテモテな安藤サクラ。何でも受け入れてくれそうな雰囲気を漂わせているせいか、汚れちまった姿をさらけ出してもOKなような気がするのだろう。ボヤきながら唸りながら、それでも爺ちゃんたちの世話をするたくましさよ。安藤サクラの注目度がアップするきっかけとなった作品。

百円の恋』(2014)

ダメな自分に勝ちたい

百円の恋

自堕落な生活を送っていた女性がボクサーと出会い、衝動的に始めたボクシングによって人生が変わっていく。

山口県で毎年開催されている周南「絆」映画祭で、松田優作賞グランプリに選ばれた足立紳の脚本を映画化。安藤サクラと新井浩文というこれ以上ない魅力的なキャスティングに恵まれ、大ヒットした。

身も心もぶよぶよになり果てていた安藤サクラが、トレーニングを積み重ねてストイックなボディに大変身。精神力も鍛えられて別人のようになっていくのが、気持ちいい。どん底から這い上がるにはボクシング。これ定番。殴る相手は自分だ。

彼女のアルバイト先である深夜のコンビニで、常連客であるボクサーがバナナを忘れていく。バナナ……スポーツ選手には必須の食べ物が2人のなれそめだというのが面白い。いい加減な男と、いい加減だった女。彼は自分と同じ匂いを嗅ぎわけたのだろう。彼もまた、彼女と一緒に変わっていくのだ。ラストシーンのセリフがよい。

娚の一生』(2015)

年上の男に癒されて

男の一生

過去の傷から恋愛に臆病になっているキャリアウーマンと、恋愛を拒んできた大学教授が奇妙な共同生活を送ることになる。

西炯子の人気コミックを実写映画化。亡くなった祖母の教え子だったという50代の彼は、特に恋愛経験が豊富でもなさそう。しかも、主人公とは親子ほども年が離れているにも関わらず、わりと積極的にアプローチしてくるのである。

彼を演じる豊川悦司が、原作よりもギラギラしていて現役感あり。なので、本気度がわかりにくくてちょっと調子が狂う。もし年配の男性からこんな風に愛されたら……女の理想と妄想が炸裂する。

相手の気持ちが信用できず、自分の気持ちに素直になれず、なかなか一歩を踏み出せない彼女の親友として、安藤サクラは登場する。彼女の過去を知っているだけに2人のことが心配で、一緒に温泉に浸かり、布団を並べて寝転がりながら、彼女の気持ちに耳を傾ける。

大丈夫だよ。そんなことでも言いたげに、彼女の髪の毛をクシャクシャとする安藤サクラは、まるでお母さんだ。

白河夜船』(2015)

待ちながら眠り続ける

白河夜船

仕事に就かず、不倫相手からの電話をひたすら待ち続ける主人公は、親友の死も彼に告げることができないでいた。

よしもとばななの小説を映画化。原作者自ら「こんなにも完璧な映画化は奇跡的」と絶賛したという。「眠り」をモチーフにした風変わりな物語だ。彼女にとってその眠りは短い死なのか現実逃避なのか、それとも生まれ変わるための冬眠なのか。主演の安藤サクラが出ずっぱりで、少ないセリフと抑えた演技で揺れ動く感情の流れを見事に表現。

働いていない彼女は、自宅でずっと眠っている。親友の死に対する大きなショック。不倫での満たされない想い。眠っているときだけはそのつらさを忘れることができるが、夢は見ているかもしれない。電話のそばで眠り続けている姿は、土の中にいるセミの幼虫のようだ。

不倫相手の妻は交通事故で植物状態だし、親友はなぜ死んだのかわからない。状況はあいまいで静かで進まず、彼女には眠ることしかできない。それでも彼を愛そうとする姿がいじらしい。

ディアスポリス DIRTY YELLOW BOYS』(2016)

裏にうごめく人間の欲

ディアスポリス

密入国者たちによって作られた秘密組織の警官が、誘拐殺人事件をめぐって犯罪組織とデッドヒートを繰り広げる。

原作はリチャード・ウーとすぎむらしんいちによるコミックで、TVドラマの劇場版。コミックならではの作り込まれた世界観や、視覚的にもキャラが立った人物がゾロゾロ登場するエンターテインメント作品である。

東京に住む密入国者が、自分たちを守るために作り上げた裏都庁。その異邦警察「ディアスポリス」の警察官が追うアジア人犯罪組織の目的は何か。それをすばやく察知する女という重要な役を安藤サクラが演じ、それまでの出演作とは一風変わったテイスト。見た目的にも、金髪レインボーカラーのボブカットに赤いジャンパーといったクールな印象だ。

なんせアングラな裏社会を描いた作品なので、主要人物たちがみんな濃い。なので、脇役っぽい安藤サクラは少々インパクトに欠けるものの、ファンとしては「いいものを見た」という感じではなかろうか。

追憶』(2017)

荷を降ろすとき

追憶

富山県の漁港で殺人事件が起き、旧友の死をめぐって再会した男たちの過去と現在が交錯する。

親に捨てられた幼馴染の3人。大人になって再会したとき、彼らは刑事と容疑者と被害者という関係だった。物語は、彼らが子供の頃に関わったある事件を紐解く形で進んでいく。3人が共有し、忘れようとしても忘れられない、しかし忘れなければならない事件とは? 

安藤サクラが演じる女性は、3人にとって大切な存在だ。親の愛に恵まれず、孤独だった少年時代に温かく迎えてくれた恩人。彼らは家族のような時間を過ごしていたが、そのささやかな幸せを守ろうとして、その事件が起きた。

子供たちに接する安藤サクラの姿は、若い母親か親戚のお姉さんのようだが、笑顔の裏にはうっすらと影がある。何かワケありな過去を隠している雰囲気が、うまい。

奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』(2017)

騙されるのも快楽

奥田民生

ミュージシャンの奥田民生に憧れている雑誌編集者が、仕事で出会った女の子に一目ぼれをするが、奔放な彼女に振り回されていく。

渋谷直角のコミックを実写映画化。出会う男を次々と魅了する女。その魔性はどこから? それは相手の望みどおりの女になる。ただそれだけ。本人に騙しているという自覚はない。

2人がイチャイチャするシーンがこれでもかと映し出され、そのうち彼女に翻弄されている哀れな男は彼だけではなく、実は身近にも同類がいたという展開がホラーだ。でも、そうこなくっちゃ。

そんな男と女のラブゲームのなか、毛色の違う女が登場。それが安藤サクラである。クオリティの高い記事を書く人気コラムニストだけど、〆切を全く守らず。部屋のなかはネコだらけ。そのネコたちのせいで〆切が守れないと長々と訴えるシーンは、安藤サクラの一人芝居状態。彼女がいることで、物語に風穴が開く。

DESTINY 鎌倉ものがたり』(2017)

鎌倉ってこんなところ?

鎌倉ものがたり

幽霊や魔物も住むという架空の鎌倉を舞台に、心霊捜査に詳しい名探偵でもあるミステリー作家が愛妻と一緒に殺人事件を解決していく。

西岸良平の人気漫画を実写映画化。和装に身を包んだ古風な作家が、難事件の捜査に協力して活躍するというアドベンチャー・ファンタジーで、舞台が京都ではなく鎌倉なのがしぶい。若い妻と新婚生活を送っていてもあまり違和感のない堺雅人が、CGアクションに挑戦し、親子で楽しめる作品になっている。

怪奇現象を起こす魑魅魍魎の造形が、温かみがあってむしろ微笑ましい。道を歩けば魔物や幽霊、妖怪や仏様がいっぱい。それらに混じってひょっこり現れるのが、安藤サクラ演じる死神である。死神……なんて不吉な。いや、そんな不安が頭をよぎるヒマもない陽気な安藤サクラ。こんな死神なら会ってみたい。

こういうタイプのエンタメ系映画でチョイ役もやるのか~と、その振り幅の大きさに感心。いつもと違った顔を見ることができて、ファンとしても嬉しい限りだ。

万引き家族』(2018)

確かに家族だった

万引き家族

東京の下町で、足りない生活費を万引きでまかなっている一家の姿を通し、家族のあり方や人とのつながりを描く。

2018年のカンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞し、ロングランヒットを記録している話題作。物がゴチャゴチャとあふれる古い平屋で、大人と子供6人が肩をひしめきあって暮らしている。万引きをするのは主に子供の仕事。学校へは行ってなさそうだ。

この映画に主役はいないが、安藤サクラが演じるお母さん的存在が大きな要となっている。虐待されていた女の子に愛情を注ぐのは、過去の自分を癒そうとしているから。生きるためのなりふり構わないしたたかさと、全てを包み込むような母性。尋問中の問いかけに涙を流すシーンは、映画史上に残るだろう。

冬には鍋を囲み、夏にはそうめんとトウモロコシを食べて、みんなで海に行く。いい家族じゃん。入れ歯をはずし、老いた姿をさらけだした樹木希林の女優魂があっぱれ。

いかがでしたか?

ここ10年間の主な出演作をピックアップしてみても、これだけの本数があるのだが、「こんな作品に?」という意外な発見があったのではないだろうか。

今後ますます出演作が増えるに違いない安藤サクラ。

演技派俳優として各方面から熱い視線が集まり、広い世界へ大きく羽ばたいていくのが楽しみである。

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