まるで極上の絵画!美しさにうっとりする芸術の秋におすすめの映画7選

2015.09.27
まとめ

life is like a movie

KAWATA

美術館の映画

もう季節は芸術の秋。いろんな芸術に触れたいけれど、忙しくてゆっくり美術館巡りもできかったり、近くに美術館がないというあなたに、美術館に行けなくても美しい絵画を見たような気分になれる映画をご紹介します。

リアル版ミレーの落ち穂拾い!労働者の日々の営みと広大な農場風景が美しい『天国の日々』

天国の日々

この作品を初めて観たその瞬間に浮かんだ言葉は、「『ミレーの落ち穂拾い』のリアル版」。テレビ放映されていたのをたまたま見かけ、映像の素晴らしさに思わず目が離せなくなり、結局最後まで観てしまった印象深い作品です。

麦畑が広がるアメリカの農場を舞台に、日々を生きる若者たちの繊細な心の揺れが、移ろいゆく季節の情景とともに静かに美しく描き出されます。映像を観ていると、まるで1カット毎に完成された絵画を観ているような錯覚に陥ります。監督は「シン・レッド・ライン」や「ツリー・オブ・ライフ」等、映像美に定評のある作品で有名なテレンス・マリック。

映像だけではなく、自然の厳しさと豊かさを見せる広大な大地で、小さく寂しい人間たちが逞しくも慎ましやかに共に生きる姿は、ミレーの絵のテーマのように時代を越えて観る者の心に深く響くことでしょう。

印象派好きにおすすめ。光に包まれたルノワールの 世界を映像化した『ルノワール 陽だまりの裸婦』

ルノワール 陽だまりの裸婦

タイトルからもお分かりのように、画家ルノワールを題材にした作品がこちら。ストーリーしかり、映像でもルノワールが描き出す世界観を本当にそのままスクリーンに映し出した、とことんルノワールワールド全開な作品です。

原作は、オーギュスト・ルノワールの曾孫ジャック・ルノワール。そして、老いてなお美を追求し続ける画家ルノワールをミシェル・ブーケが演じています。

映画の中には奇抜なものは一切出て来ず、あるのは自然と人のみ

光、風にそよぐ木々、木漏れ日を纏った乙女の柔肌が画面の中で美しさを競い合う様子は、私たちのいる世界はこんなに美しかったのかということを思い出させてくれるでしょう。映画を観終わった後も、光に溢れたシーンばかりが思い出されるようなどこか心地よい余韻を残してくれる作品です。

光と闇の対比が観る者を惹きつける、カラヴァッジオ絵画さながらの『エル・スール』

エル・スール

「ミツバチのささやき」で世界にその名を知らしめた、ビクトル・エリセ監督の長編作品。スペイン北部で父と母と3人で暮らす少女が、ある朝父の死を悟るところから物語は始まります。

生前の父と過ごした日々を回想する中で、娘として、そして一人の人間として父を理解していく姿が、淡々と流れる生活風景と時間の中で丁寧に描かれます。少女は成長するにつれて距離ができてしまった父の本当の姿を知るため、父の故郷であり憧れの南部の地へと旅立つ…。

主人公の寝室に朝日が差し込む冒頭シーンから、本作が持つ独特の光と闇の映像美の魅力に惹きこまれるでしょう。

先にご紹介した、光の中に生命を見出し幸福感や温かさを観る者に与えるルノワールの作品とは対照的に、本作は闇の中に隠されたものを光が照らし出し、それらを浮かび上がらせるカットが印象的。画面を覆う漆黒の闇は、観る者に不安や恐れを感じさせると同時に静謐さや神秘的な印象をも与えてくれるカラヴァッジオの絵画を髣髴とさせます。

身近にいる人が突然いなくなった時、遺された者は今は亡きその人についてあまりにも多くのことを知らなかったということに気づかされます。それは光に照らし出されなかった、闇に隠されていた部分。

そんな物語の神聖を、静かな映像美が見事に表現している本作。決して華々しく明るい内容の作品ではありませんが、そのイメージが記憶の深い部分に残る美しい作品です。

シンプルで深みのある水墨画のような世界が魅力の クロサワ映画『蜘蛛巣城』

蜘蛛巣城

シェークスピア原作の「マクベス」を黒澤明監督が翻案した作品。この作品では、日本人が物語に入り込みやすいように舞台を戦国時代の日本に置き換え、能の形式を取り入れる工夫がされています。

本作を観ていると、黒と白のみの色数でもその濃淡にこれほどのバリエーションがあるのかと、水墨画にも通じるモノクロの世界の奥深さを思い知ることができるでしょう。

また、モノクロ映画の魅力のひとつは画面の中で動いているものの存在感を高めること。色彩を失って画面に映るものが背景として際立たなくなる分、登場人物の動作や表情、立ち込める煙の動きなどに観る者の目線は自然と引き寄せられます。

例えば本作で度々登場する、物の怪が登場する山中で霧のような白い煙が暗闇を漂うシーン。この黒と白がゆったりと入り混じる様をじっくりと見せることで、観ている者の感じる不気味さや不安はますます増幅されます。

シンプルを極めた中に、伝えたいことがダイレクトに伝わってくるモノクロの世界は、現代でもはや一般的となったカラー映画とは一味違う、新しい気づきを私たちに与えてくれるかもしれません。

計算された色彩美と造形美が織りなす世界観が美しい『ザ・フォール 落下の王国』

落下の王国

公開当時、第65回アカデミー賞衣装デザイン賞受賞の経歴をもつ石岡瑛子氏が衣裳デザインを担当したことでも話題になった作品。

ストーリーは、撮影中に大怪我をして入院し自暴自棄になっていた映画のスタントマンの主人公が、同じく入院中の一人の少女に出会うところから始まります。主人公は彼女の気を引くために即席で創り上げた物語を聞かせ始めるのですが、好奇心旺盛で想像力豊かな少女の中で物語はやがて主人公自身をも変える壮大なものになっていく…というもの。

砂漠の砂のオレンジと青空の対比、白い砂。光を湛えたまっすぐな子どもの瞳。月夜の海。海中を泳ぐ象などフォトジェ二ックな画の数々。広大な自然の圧倒的な造形美、そして人の洗練された感性により構成された色鮮やかな色彩美が入れ代わり立ち代わり映し出され、現実世界と幻想世界が画面の中で交錯しあいます。

自殺を望む主人公の見ている憂鬱でぼんやりとした色味のない現実世界、そして明るい原色が入り乱れる生命力にあふれた想像の世界という対極の世界が同時に展開される中、この二つの空間を行き来する爽快さはこの作品の醍醐味でしょう。

その上監督がおよそ16年かけて探したというロケ地の数々は、世界遺産などの景観の素晴らしさに定評のある場所ばかりで作品の映像美をさらに引き立てます。

精巧なCG技術が用いられる作品が多い昨今、CGを使わずに創り上げられたこの作品独自の映像の美しさは、一見どころか何度でも見る価値ありです。

18世紀のヨーロッパに存在した美を余す所なく堪能できる『バリ―・リンドン』

バリー・リンドン

どの作品も映像美に注目が集まるスタンリー・キューブリック監督ですが、こちらの作品もその手腕が光る傑作であり、まさに豪華絢爛とはこのこと!と言いたくなる贅沢極まりない作品。

とにかく衣裳も家具も撮影規模も上映時間もすべてがゴージャスで圧倒されます。それもそのはず、衣裳やセットは18世紀のデザインを忠実に再現、画面構成自体は18世紀の画家の絵画から着想を得ているとのこと。絵画好きの方なら、このシーンどこかで見たことがあるかも…と感じる方もいらっしゃるかもしれません。

物語は18世紀のヨーロッパを舞台に、レイモンド・バリーという名の若者が貴族バリー・リンドンへと成り上がるまでの半生を描いた歴史大作。

作中には、自然豊かな山里での平民の暮らしから、勇ましい戦列歩兵の射撃戦、貴族たちの優雅な宮殿生活まであらゆる生活シーンが登場し、当時のヨーロッパ世界を丸ごと堪能できるのが大きな魅力となっています。

この作品を観た方は、「レストランに入って頼んだのは1品だったけど、出てきたのはフルコースだった」という予想以上の満腹感を得られること請け合いです。

日常に潜む美しさを静かに、そして丁寧に描き出す『言の葉の庭』

言の葉の庭

海外の映像制作集団CineFixが発表した「映画史上最も美しいアニメ映画TOP10」で、1位に選ばれた新海誠監督のアニメーション作品。新海監督の作品は、大成建設のCMでもそのビジュアルの美しさに目を奪われた方も多いかと思います。

2013年に制作された本作は、靴職人を目指す15歳の男子高校生と、現実に悩み傷ついた27歳の女性が雨の日に偶然出会い、交流をもつ中でしだいに心を通わせていく物語。この作品の美しさを生み出しているのは、ストーリーやキャラクター、自然音や音楽などももちろんですが、何と言っても丁寧に描かれた背景にあります。

特に映画の重要な要素である雨の表現は作中に何パターンも登場し、降り続く線のような雨、草の先端から落ちる露、障害物にあたって跳ねる滴といったいくつものタイプの水が一画面の中で何層も重なり合うことで生まれる奥行きと臨場感。雨の描画自体もとてもリアルで、水面を打つ雨を描いた冒頭シーンは実写と見間違える程の描写力です。

水たまりに映る景色や、ちょっとした光の加減で生まれる小さな虹など、日常に潜む見過ごしてしまいそうな瑞々しさや美しさを丁寧に掬い取り、零さず目の前に差し出してくれる、そんな素敵な作品です。

美しい映画から学べること

映画は総合芸術といわれますが、その魅力のひとつはさまざまな視点から作品をとらえることができることでしょう。映像が作り出す「美しさ」への視点もそのひとつ。今回ご紹介した美しい映画から学ぶことは、自分の視点を持つことの大切さです。

何気ない、面白みに欠けているように見える景色も、目線やとらえ方によってはより美しく印象深いものに変えることができる。「自分は今、目の前にある世界をどのように見つめているか」、そんなことに思いを巡らせながら、美しい映画と共に秋の夜長を過ごすのもまた一興かと思います。

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  • スコティ
    3.6
    映像美。 それ以外は、難解。 タイトルのことや、宗教と関連したストーリーゆえなのか、考えるほど分からなくなります。 いずれまた鑑賞したいです。
  • Qちゃん
    4.3
    2005年6月30日、鑑賞。  大草原の地平線、煙をはきながら走る蒸気機関車、イナゴの大群などなど大自然を美しく描いたテレンス・マリック作品。  リチャード・ギアの存在感すら感じさせないほど、大自然とそこに生きる人々を遠くから眺めた映画、という感じの作品である。  リンダという少女によって、物語は語られるが、そうした大自然との共存を見事に映像化したテレンス・マリック監督さすが。  こういう映画を撮れるのは、デヴィッド・リーンぐらいかも知れないが、テレンス・マリックが撮ると「何故か神々しくなる」のである。佳作だと思う。
  • HayatoIshikawa
    5.0
    映像とんでもない ほぼ全編マジックアワーと言っていいくらいマジックアワー推しですが それ以外のシーンも本当に素晴らしかった ずっと見てたい映像 音楽、モリコーネだったんですね ギターの曲が凄くいい 撮影はルベツキかと思ってたけど違いました でもかなり影響受けてそうですね
  • Saaya
    -
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「天国の日々」
のレビュー(708件)