【解説】映画『レディ・プレイヤー1』クロスオーバー作品で辿るSFX〜VFX〜CGの歴史

2018.09.12
映画

ビール片手に映画鑑賞

上薗隆浩

映画『レディ・プレイヤー1』のクロスオーバー作品を通して当時の撮影技法・映像技術(SFX〜VFX〜CG)の進化について解説。『キング・コング』『ゴジラ対メカゴジラ』『バック・トゥ・ザ・フューチャー』など。

「夢のコラボレーション」という言葉が、これほどまでにふさわしい映画は他にないと言っていいでしょう。スティーヴン・スピルバーグ監督作『レディ・プレイヤー1』。

レディ・プレイヤー1

アキラ AKIRA』の金田のバイク、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のデロリアン、ガンダム、キティちゃんなどなど、数々の人気キャラクターが登場することでも話題を集めました。

今回は、そうした『レディ・プレイヤー1』とクロスオーバーした名作の紹介を通して、当時の撮影技法、そして映像技術の進化について解説をしたいと思います。

※以下、映画『レディ・プレイヤー1』のネタバレを含みます。

キング・コング』:ストップモーション

キングコング

1933年公開の『キングコング』は、怪獣映画の元祖としてあまりにも有名な作品。公開当時、観客から「本当にあんな生物がいるのか」という問い合わせの電話が殺到したというほどのリアリティで、当時としては革新的な映像表現でした。

キング・コング

架空の生物キングコングを、実在する怪獣たらしめるために使われていた表現手法が、ミニチュアのモデルを使って撮影する「ストップモーション・アニメーション」です。

フィルム1コマごとに少しずつミニチュアを動かして撮影し、それをひとつにつなげて連続再生すると、まるで動いているように見える。つまりは、パラパラ漫画と同じ原理。ワンカットずつ撮影するこの手法は、別名コマ撮りとも呼ばれています。

また、人間と一緒にキングコングが登場するシーンでは、キングコングの頭や胸などのパーツを巨大サイズでつくり、役者と一緒にフレームにおさめることで実物の大きさを感じさせたり、カメラアングルを工夫することで巨大感を生み出しています。

ゴジラ対メカゴジラ』:着ぐるみ技法

レディ・プレイヤー1

1954年公開の『ゴジラ』を起源にしたシリーズのひとつ。その第14作目『ゴジラ対メカゴジラ』(1974年公開)で、メカゴジラは初めてスクリーンに登場しました。

そもそも和製キングコングを目指して製作された「ゴジラ」ですが、キングコングと技術的に大きく異なるのは、ストップモーション・アニメーションではなく、役者が着ぐるみに入って演じる手法をとっているところにあります。

ゴジラ対メカゴジラ

着ぐるみを使った撮影は当初、撮影時間の短縮を目的に考案された手法でしたが、それ以外でもさまざまな利点を発揮していくことになります。

着ぐるみの中にスーツアクターがいることで、意図したスムーズな動きを実現でき、演技を確認しながら撮影を進めることが可能になりました。

さらに、ストップモーションでは難しかった建物の爆発や崩壊の同時撮影、プールを使った海のシーンなど、「ゴジラ」ならではの表現が生まれていきます。

また、ミニチュアセットを多用している点も特徴です。これにより怪獣同士の戦いやそれから逃げ回る住民、攻撃する自衛隊の描写も細かく描かれていくようになりました。

キングコングの体長が5.5メートルなのに対して、ゴジラは50メートル。ゴジラを原点に“巨大さ”の描写や演出は、その後日本独自の“特撮”として進化を遂げていきます。

バック・トゥ・ザ・フューチャー』:ワイヤーアクションとSFX

レディ・プレイヤー1

1985年公開、マイケル・J・フォックス演じる主人公マーティ・マクフライが車型のタイムマシン、デロリアンに乗り過去や未来にタイムトラベルする、言わずと知れた名作中の名作。

未来編ではデロリアンのタイヤが折りたたまれて空を飛ぶシーンや、ホバーボードと呼ばれる宙に浮くスケートボードに乗ってマーティが空中を走るシーンは、今なお私たちにとってワクワクする“未来”であり続けています。

バック・トゥ・ザ・フューチャー

驚くべきは、本作ではCGが使われていないということです。今見直してみても、その事実にビックリしてしまいます。

ホバーボードのシーンは、クレーン車から伸びたワイヤーにマイケル・J・フォックスが吊られて移動することで、それがまるで浮遊しているように見えるのです。現在では香港映画の定番として、またかつて映画『マトリックス』などでも話題になった「ワイヤーアクション」の技法です。

デロリアンのシーンでは、光学合成と呼ばれる複数のフィルムを重ねて合成する手法が主に使われています。その代表的なのが、「ブルーバック」と呼ばれるもので、合成に用いる映像素材を撮影する際に、青い布やシートの背景を用いる撮影が行われます。(最近はグリーンもよく使われますね)

なぜブルーなのかというと、ブルーに対する感度が鈍いフィルムを使って撮影をすると、ブルーの部分が真っ暗に映り、そのフィルムを適正な露出で転写するとブルー以外の撮りたいものだけで映像素材を作ることができるからです。つまり、デロリアンが飛ぶシーンは、デロリアンの模型をブルーバックで撮影して、その素材に実際のセットで撮影した背景を合成してつくられているわけです。

ちなみに、日本映画界で初めてこの合成手法を使い、「ブルーバック・システム」と名付けたのは、『ゴジラ』を手がけ「特撮の神様」と称された円谷英二監督です。

ジュラシック・パーク』:VFX(初期)

ジュラシック・パーク

1993年に、マイケル・クライトンによる原作小説をスピルバーグ監督が映画化した、こちらも名作。

本編に出てくる恐竜は、CG(コンピューターグラフィックス)と特撮技法を使って製作されました。SFXからVFXに大きく移行するきっかけになった作品の代表です。

ジュラシック・パーク

ちなみに、SFXとVFXの違いについては、ご存知でしょうか。

SFXは日本語では「特殊効果(special effects」と呼ばれており、VFXは「視覚効果(visual effects」と呼ばれています。

言葉の響きを聞いても違いがわかりにくいと思いますが、主にSFXは撮影現場でつくる画面効果のことを指します。それに対してVFXは、撮影後のポストプロダクション(映画の製作における撮影後の作業の総称)というフェーズで追加する効果のことを言います。

CGの進化とともにフィルムからコンピューター上のデジタル処理に変化していき、撮影後の作業領域が拡張したことで、以前は撮影時にしかできなかったことが、撮影後の作業でどんどん可能になってきました。

ジュラシック・パーク』では、当初はゴーモーション(ストップモーションの一種)で撮影予定でしたが、アメリカのVFX制作会社I.L.M(インダストリアル・ライト&マジック)の一部のメンバーが密かに開発していたフルCGのティラノサウルスを見たスピルバーグ監督が、CGを使うことに方針変更しました。

公開当時、その映像と恐竜の迫力には驚かされましたが、CG自体は実際7分程度しか使われていないといいます。

ティラノサウルスに人が喰われるシーンでは、途中から役者がCGのデジタルスタントマンに置き換わっており、VFXならではの新しい技術的アプローチが垣間見えます。

それ以外の部分では「アニマトロニクス」と呼ばれる(生物の外観に似せたロボットを使って撮影する技術)やゴジラのような着ぐるみ手法が採用されています。

本作で印象深いCGアニメーション表現といえば、作品冒頭に出てくるブラキオサウルスではないでしょうか。あれほどまでに巨大な恐竜を下からのアングルで撮影するには、着ぐるみやアニマトロニクスでは限界があったのでしょう。

その課題をCGを駆使することで克服し、効果的かつ見事に表現しています。

出典元:YouTube(YouTubeムービー)

余談ですが、筆者が再び同じようなCG表現の感動をおぼえたのが『シン・ゴジラ』。予告編でも使われている、人々の頭上をゴジラの巨大なしっぽがかすめていく場面です。(下記動画 0:05あたり)

出典元:YouTube(東宝MOVIEチャンネル)

これこそゴジラが着ぐるみからCGになったことで可能になった表現のひとつであり、映像技術の進化の変遷をまざまざと感じられた印象的なシーンです。

トランスフォーマー』:VFX(さらなる進化)

トランスフォーマー

2007年公開のアメリカ映画。日本でもアニメ化された人気コンテンツで、CGの技術向上により実写化が実現しました。『レディ・プレイヤー1』では、オプティマス・プライムやバンブルビーが登場しました。

トランスフォーマー

トランスフォーマーと呼ばれる金属生命体が、地球の環境に溶け込むために自動車やヘリコプターなどいろいろな形に擬態します。

映画では、玩具やアニメよりさらにパーツの構成要素を細かくモデリングし、CGならではの表現で緻密に変形を描きました。しかもそれをワンカットで見せることで、繊細ながらもダイナミックな表現を実現しています。

この変形アニメーションを実現するために、開発当初、300台のパソコンが一斉にダウンするという事態を引き起こしたというのも頷けます。

トランスフォーマー『トランスフォーマー 最後の騎士王』のワンシーン

そうした手の込みようは、トランスフォーマー同士のバトルシーンにも及び、全てのカットは一度人間によって参考のアクション撮影を行い、そのテストショットをベースに手作業により動きをつけられています。

さらにトランスフォーマーの巨大さにリアリティをもたせるために、カメラから遠い場所にいる時は動きを遅く、近い場合はスピーディに動くように設定されています。

そうしたディテールにも、CGが対応できるようになったのは、技術の向上だけではなく、先人たちのアイデアと表現力を現在のCGクリエイターたちが引き継ぎ、さらに進化させていることにも起因するでしょう。

トランスフォーマー 最後の騎士王

いかがでしたでしょうか?

『レディ・プレイヤー1』でクロスオーバーした作品を取り上げながら、映像技術の進化をやや駆け足で振り返り、解説してきました。

VR世界オアシスで活躍する元キャラや元ネタ探しを楽しんだ後は、ぜひ先人たちの映像技術の積み重ねにも思いを馳せてみてください。

本作以外にも、技術的なターニングポイントとなった作品、演出方法について後世に影響を与えた作品は数多く存在します。そのご紹介は、また次の機会に。

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