【愛書家がセレクト】読書の秋に観たい「本好き」のためのおすすめ映画25本

映画マニアと呼ばないで

夏りょうこ

10月27日は「読書の日」。本が苦手なあなたでもちょっと興味が湧くような、本にまつわる映画を25本ご紹介します。

10月27日は「読書の日」。そんな記念日を知らなくても、気持ちの良いこの季節になると、公園やベランダでゆっくり本を読みたくなる。

映画でも、1冊の本が出会いのきっかけになっていたり、気難しい小説家が主人公になっていたり、また図書館や書店が舞台となっている作品がたくさんあるし、ヒロインの部屋の本棚が気になってしまうことも。

「彼(彼女)が読んでいるのは、どんな本?」なんて、読書好きとしては気になるシーンもあるだろう。

そこで今回は、本にまつわる場所や人物が登場する映画25本をご紹介しよう。

※以降は一部の作品でネタバレを含みます。

図書館

ベルリン・天使の詩』(1987)

ベルリン

主人公の守護天使は、長い歴史のなかで人間たちに寄り添い、彼らの人生を見守ってきたが、ある日親友の天使から「人間になりたい」と打ち明けられる。

それまでのキラキラした美しいイメージを覆し、見た目は人間と同じで、しかも自分の意志で人間になれるという新しい天使像。世界中で大ヒットし、続編『時の翼にのって/ファラウェイ・ソー・クロース!』(93)も製作。またその後、ハリウッドでもリメイクされ、『シティ・オブ・エンジェル』(98)として公開された。

ベルリン国立図書館で人間に寄り添っている天使たちは、本を読んだり勉強している彼らの頭の中を覗いているかのよう。人類の歴史が凝縮されている図書館は、彼らの英知や感情を学ぶのに最適な場所なのかもしれない。見えないはずの天使の気配に、ふと気づく子供の表情がいい。

耳をすませば』(1995)

耳をすませば

読書好きな女子中学生は、図書館で借りてくる本の貸出カードに、毎回同じ男の子の名前が書かれていることに気づき、見知らぬ彼に興味を持つようになる。

個人情報保護の観点から今はもうなくなってしまったが、アナログ時代には図書館の本に貸出カードがついていて、そこに借りた人の名前が記されていた。なのでこの2人は、同じ本を読んでいるということになるわけで、そりゃ気になるよね。

貸出カードが出会いのきっかけになるなんて、現代では叶わなくなってしまったが、恋心を抱いて実際に会ってみたら、意外と嫌な奴だったという展開は、あり得る話。夢の実現に向かっている彼に影響され、彼女は小説を書き始める。その没頭ぶりが思春期らしくて胸きゅん。ラストにはかなり違和感があるが、彼らはまだ若いんだなと思えば納得。

Love Letter』(1995)

Love Letter

事故で婚約者を亡くしたヒロインが、彼が昔住んでいた住所へとあてもなく手紙を出したところ、来るはずのない返事が届く。

手紙の誤送によって始まる不思議な文通。しかも相手は婚約者と同姓同名で、なんと女性である。その2人を演じ分けた中山美穂は、ブルーリボン賞など数々の主演女優賞を受賞。韓国でも社会現象を起こすほどの大ヒットを記録し、舞台となった小樽には観光客が押し寄せたという。

しかし、婚約者とその文通相手が実は中学時代の同級生で、当時彼らの間には淡い恋が芽生えていたなんて、ちょっと出来過ぎなんじゃ……どうやら2人は本が好きなようで、学校の図書室で貸出カードをチェックしては、彼の名前を見つけて密かに恋心を募らせる彼女。好きな人と同じ本を読んでみたい。そんな楽しみも今はもうない。

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図書館戦争』(2013)

図書館戦争

国家によるメディア検閲が法律化された架空の日本で、高校生の時に出会った図書隊員に憧れて入隊したヒロインは、鬼教官から指導を受けることになる。

「公序良俗を乱し、人権を侵害する表現 v.s. 知る権利や本を読む自由」という構図は現実にも見受けられるが、武力行使っていうのは困る。その権力による情報制限という弾圧に抵抗するのが、図書館自衛組織。ちなみに、彼らが根拠とする「図書館の自由に関する宣言」は実在する。

とまあ、図書館と軍隊というミスマッチは斬新だが、仕事や恋愛にオロオロと悩みながら成長していく主人公の姿は、ごく普通のOLだ。そういう王道をキチッと押さえているあたりがヒットの要因か。2015年には、続編『図書館戦争 THE LAST MISSION』が公開された。

ティファニーで朝食を』(1961)

ティファニー

ニューヨークのアパートで気ままに暮らしているヒロインは、お金持ちと結婚することを夢見ていたが、ある日同じアパートに作家を名乗る男が入居してくる。

日本で人気の高い女優オードリー・ヘプバーンの代表作。早朝に車から降り、ティファニーのウインドウを眺めながらパンとコーヒーを片手に朝食を取るシーンは、あまりにも有名だ。原作の彼女はコールガールなのだが、映画ではそれを曖昧にし、小悪魔的でエレガントな女性として描いている。

作家の男に連れられて彼女は、ニューヨーク公共図書館に行く。図書館が初体験と思われる彼女は、図書カードや貸出の仕組みに興味津々。図書館にある彼の小説を見て大はしゃぎしては司書に睨まれ、彼にサインをねだっては司書に怒られる始末だ(なんと彼はサインをする)。ヘプバーンだから許される無茶ぶり。

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書店

ワンダーストラック』(2017)

ワンダーストラック

1977年のミネソタ州で母親を亡くした少年が、遺品の中からまだ会ったことのない父親の手がかりを見つけ、父親を探すために1人でニューヨークに向かう。

一方でその50年前、ニュージャージー州で厳格な父に育てられた聴覚障がいの少女が、憧れの女優に会うために1人でニューヨークへ向かう。この全く異なる2つの時代を背景に、旅を通して大切なものを取り戻そうする子供たちの姿が描かれ、巡り巡って2つの世界が結びつく。

少年の物語はカラーだが、少女の方はモノクロでサイレントという対照的な世界。自身も聴覚障がい者だという少女役の女優が、強さを秘めた繊細な演技を見せる。少年はある書店のしおりに書かれたメッセージに導かれ、その書店にたどり着いて驚くべき事実を知るのだが、本当にこんなことがあったらいいなと思わせるSF風なファンタジー。

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ノッティングヒルの恋人』(1999)

ノッティングヒルの恋人

ロンドンにあるノッティングヒルで、パッとしない平凡な男が経営する小さな書店に、偶然ハリウッド女優がやってくる。

口をモゴモゴさせながら目をパチパチさせ、いかにも自信がなくて頼りなさそうな彼と恋に落ちたのは、ゴージャスな人気女優だった。当時はその設定が新鮮で、男女の格差が生み出す切なさをユーモアたっぷりに描き、今でもロマンティックな恋愛映画として人気が高い。

劇中で「ハンサムだった顔も崩れてきた」と言われてリアリティのあるヒュー・グラントだが、お茶目な品性は健在。優柔不断そうなところがむしろステキだ。彼が働くのは旅行書専門店で、世界のあらゆる場所のガイドブックを集めた本屋という設定も、女心をくすぐる。

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森崎書店の日々』(2010)

森崎書店の日々

失恋のショックで辞職して部屋に閉じこもっていた女性が、叔父の経営する神保町の古書店に住み込みで働くようになり、次第に本の世界に引き込まれていく。

本好きが憧れる日本最大の古本街が舞台ということで、街並みや古書業界の裏側を垣間見るだけでも楽しめる。本がゆっくり読めそうな落ち着いた珈琲店も登場。静かで優しい空気感に包まれ、主人公でなくても癒されそうだ。

失恋の痛手から立ち直れなかった彼女が、少しずつ前を向いて歩きはじめるまでの物語。彼女を見守り、時には背中を押す内藤剛志が、自分にもこんな叔父がいたらいいのにと思わせる程よい距離感である。屋上から見下ろす風景が、なぜか懐かしい。

天国の本屋〜恋火』(2004)

天国の本屋

天国にある本屋でアルバイトをすることになったピアニストの青年が、憧れの女性ピアニストと出会うが、彼女は事故で片耳の聴覚を失ったことでピアノから遠ざかっていた。

小説「天国の本屋」と「恋火」を合体させて映画化。ヤケ酒で酔いつぶれた主人公が目を覚ましてみると、そこは天国の本屋だった。そこに、一緒に見ると男女の恋が成就するという花火の物語が加わり、天上と地上でつながっていく愛の奇跡を描いたファンタジー作品である。

天国の本屋は天国らしく洋風で、自分の好きな本を持っていけば朗読してもらえたりする。人間が本来生きるべき寿命100歳より早く亡くなった人は、その100歳になるまで天国で平穏に暮らす。本屋は彼らの憩いの場所。やっぱり天国でも本屋は必要なのだなあ。竹内結子が1人2役を好演。

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静かなふたり』(2017)

静かなふたり

田舎からパリに出てきて、慌ただしい都会暮らしに慣れないでいる若い女性が、ある小さな古書店でスタッフ募集の張り紙を見つけ、謎めいた店主と出会う。

年の差が祖父と孫くらいの2人が惹かれあったのは、孤独を分かち合えることができるから。一緒にいても沈黙が怖くないから。彼女は、都会の生活によほど疲れていたのだろう。しかし彼は行方をくらまし、彼女は彼の本当の姿を知ることになる。

カルチェ・ラタンにあるその古書店は、窓ガラスにガムテープを貼っているような古びた空間だが、歴史を感じさせる静けさが心地よい。そんな場所でミステリアスな展開が起こる。心理描写がやや省略されているため、「ん?」と引っかかるシーンは想像力で補うべし。

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私家版』(1996)

私家版

編集者の主人公は旧友である作家の新作を読み、30年前に自分の恋人が自殺した原因が彼にあることを知って、復讐を誓う。

作家の息の根を止める。しかも完全犯罪で。そのアッと驚く方法とは? 武器は1冊の本だ。主人公は直接手を下さないので、本人は誰が何のためにそんなことをしたのかもわからないまま、葬り去られてしまうことに……あな、恐ろしや。

このものすごく回りくどいやり方は、女性の復讐みたいである。彼が編集者という出版界の人間だからこそできるワザでもあるが、その手の込み方が芸術的でウットリ。復讐の炎を静かに燃えあがらせる紳士を、名優テレンス・スタンプが好演。ステキです。

王妃マルゴ』(1994)

王妃マルゴ

宗教革命に揺れる16世紀フランスの宮廷を舞台に、マルゴ王妃が新教徒である王と政略結婚したことにより、激動の歴史にのまれていく。

王妃なのに淫蕩な生活を送っている美貌のマルゴ。この実在する伝説的な王妃を、危うい色気を持つ美女イザベル・アジャーニが演じて、大いに説得力あり。カトリック教徒と新教徒の間で起こったサン・バルテルミの虐殺シーンも、目を覆うような陰惨さがリアルだ。

マルゴの母親が息子のために暗殺を企てるのだが、その手段として毒を染み込ませた本を使うのである。つまり、指を舐めながらページをめくると体内に毒が……なんという独創的で失敗率の高い方法だろう。案の定、その本を手にしたのは愛する息子だったという喜劇のような悲劇が起こる。指を舐めながらの読書に注意。

華氏451』(1966)

華氏

活字が禁止されている思想管理社会で、本の捜索と焼却を仕事にする消防士が、ある女性との出会いにより本について興味を持ち始め、やがて読書の魅力にとりつかれていく。

SF映画の傑作。華氏451度(約233℃)とは、紙が燃え始める時の温度のこと。焚書が消防士の仕事だという異様な社会で、最初は体制側だった主人公が、いつしか読書に夢中になってしまう姿が感動的だ。本という知的財産に対する敬愛と、思想統制への怒りが伝わってくる。

命がけで本を守り、後世に伝えようとする人たち。その究極の手段が、本を暗記して自分自身が本になり、口伝で物語を残していくことだった。文字がなかった原始時代みたい。本のタイトルが自分の名前であるという不思議な感覚。もし自分が「本の人々」になったら、どの本を選ぼうかな。

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やさしい本泥棒』(2013)

やさしい本泥棒

第2次世界大戦直前のドイツで、里子に出された少女が養父から読み書きを教えられ、本を通じてさまざまな知識を吸収し、生きるための勇気や希望を学んでいく。

読書までも禁止されてしまったナチス政権下で、大量の本が燃やされているのを見た彼女は、そこから1冊の本をこっそり盗み出す。それはH.G.ウェルズ「透明人間」。つまり、ナチスがこういう類の本を抹殺しようとしていたことがわかるわけだ。

絶望的な時代にいても、決して知的好奇心を失わない賢い女の子。その勇気と強さは、本から得たものだったかもしれない。彼女は運よく理解者に出会い、広い書斎に招かれて貪るように読書に没頭する。豊かな本の世界に浸るシーンは幸福感に満ちていて、自分もこんな風に本が読めたらと思わせる作品。

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恋におちて』(1984)

恋に落ちて

クリスマス・イヴのニューヨーク。書店でぶつかってしまい、お互いのプレゼントが入れ替わってしまった2人は、その後同じ通勤列車で偶然再会し、惹かれあうようになる。

いわゆる不倫の話だが、プラトニックなので純愛? いや、そんなことはどうでもよい。簡単にセックスをしてしまう昨今の不倫恋愛とは一線を画す、大人ならではの奥深い恋愛映画である。恋とは落ちてしまうもの。しかし、それを持続させるには愛が必要だ。

入れ替わってしまったのは園芸本とヨット写真集だったが、それでお互いのパートナーがどんな人なのかがわかる仕掛けがうまい。若き日のロバート・デ・ニーロがハンサムで、メリル・ストリープが知的。相手を想いながらのつかず離れずの切ない日々と、ラストシーンには胸が締めつけられる。

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読書

めぐりあう時間たち』(2002)

めぐりあう時間たち

全く異なる3つの時代と場所で生きている3人の女性が、時空を超えて少しずつ関係し、それぞれの人生に影響を与えあいながら過ぎていく1日を描く。

1923年にヴァージニア・ウルフが執筆を始めた小説「ダロウェイ夫人」。1951年にその小説を愛読するロサンゼルス在住の妊婦。彼女には優しい夫と可愛い息子がいるのに、どうにも満たされない思いがあるようで、小説のヒロインに自分を重ねている。

本当の自分と求めている人生が、現実と大きく食い違っていたら……そこに虚しさと絶望を感じているのなら、こんなに不幸なことはないだろう。だから彼女は、その小説を読まずにはいられない。ウルフはヒロインを殺そうとし、彼女は自殺しようとするのだが、その気持ち、男性にわかるかな?

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いつか読書する日』(2004)

いつか読書する日

50歳になる独身女性は、10代の頃に引き裂かれてしまった恋のことが忘れられないでいたが、その想いをラジオ番組に投稿してしまい、彼の現在の妻に過去を知られてしまう。

30年以上もお互いを想い続けていられたのは、別れた原因が2人の親にあったから。運命のいたずらが2人の純粋な恋に影を落とし、その後はお互いの存在を気にしながら別々の人生を生きてきた。それが思わぬ急展開。孤独な彼女に幸あれと望まずにはいられない。

実は彼の妻は末期がんだし、彼は仕事で児童虐待問題を扱い、身近には認知症の人間がいるという深刻な社会問題も描かれる。それでも、2人はハッピーエンドに向かっているはずだと思っていたら……田中裕子でなければ、最後のセリフに重みを持たせられない。彼女はどんな本を読むのだろう。

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マリー・アントワネットに別れをつげて』(2012)

マリー・アントワネット

18世紀のフランス王妃マリー・アントワネットの朗読係を務め、王妃を敬愛している主人公は、フランス革命の最中に王妃から思いも寄らない命令を受ける。

実在したというマリー・アントワネットの朗読係。孤児であった彼女は、王妃の側にいるだけで幸せという若い使用人だ。女同士の奇妙な三角関係に身を置き、寄せては返す複雑な思いを、わずかなセリフと表情で見事に表現。夫人の狡猾な本性を見抜いているかのような眼差しが印象的だ。

現代女性がコスプレしているみたいな王妃にオーラが感じられず、少々物足りない気もするが、実際はこんな感じだったのかも。バスチーユ監獄襲撃直後のベルサイユ宮殿で、じわじわと迫りくる運命にざわめく様子が、パニック状態になっていないだけに何とも恐ろしい。

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読書する女』(1988)

読書する女

読書が大好きなヒロインが、「読書する女」という本を読みながら小説の世界にのめり込んでいき、朗読を職業とする主人公に自分の姿を投影していく。

彼女がその本を読み始めると、その物語のイメージがスクリーンに映し出される。彼女に朗読を依頼してくる顧客はみなクセ者ばかりなので、各エピソードのストーリー展開も不思議なものばかり。読んでいる本の登場人物と自分の境目がなくなる感覚は、読書好きなら想像ができよう。

フランス語のリズムと落ち着いた響きが耳に心地よく、いつまでも聴いていたくなる。でも、半身不随の男子にモーパッサンの官能的小説を読んであげたりするなど、ちょっとイジワルだったりもして。読書というより朗読かな。人間のことも好きでないとできない仕事だ。

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ジェイン・オースティンの読書会』(2007)

ジェイン・オースティンの読書会

愛犬を亡くした親友を元気づけようと、主人公が始めたジェイン・オースティンの読書会には、複雑な悩みを抱えた女性たちが集まっていた。

「高慢と偏見」などで知られる有名作家ジェイン・オースティンの小説について語り合う読書会。途中からSFオタクの男性が加わって微妙な変化が起こるものの、本へのアプローチを通して、それぞれのメンバーが抱えていた問題がほぐされていく。

悩みのない人間はいないし、その悩みのほとんどは結婚や恋愛や友情。それをオースティンの小説とリンクさせながら浮き彫りにし、あるべき場所へと導いていくのが面白い。「人生の解毒剤」は1人で読むより誰かと語るべし。

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小説家

恋愛小説家』(1997)

恋愛小説家

甘い恋愛小説を書くベストセラー作家の主人公は、実は潔癖症で自己中心的な嫌な男だったが、いきつけのレストランで働くウェイトレスに淡い恋心を抱いていた。

神経質で傲慢で理屈っぽく、ブロックの縁を踏んで歩けないほどの潔癖症。そんなめんどくさい中年男をジャック・ニコルソンがコミカル(鋭い目つきはそのまま)に演じ、それまでのハードボイルドなイメージを一変させた作品である。

そんな彼が好きになったのが、ナイスバディの美人ではなく、どちらかといえば貧相な体つきのバツイチで子持ちだというのがよい。でも、ついつい口ゲンカ。男子高校生レベルである。彼女に叱られて大人になり、人生の喜びを見出した彼は、いい小説が書けるかな。

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ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ』(2015)

ベストセラー

1920年代のニューヨークで、ベストセラー作家たちを世に送り出してきた敏腕編集者は、持ち込まれてきた無名作家の原稿を読み、いち早くその才能に気づく。

F・スコット・フィッツジェラルドやアーネスト・ヘミングウェイといった有名作家が登場する実話に基づいた映画。編集者は作家にとってかけがえのない理解者であり、粘り強い二人三脚で作品を仕上げていく。それは、妻や恋人が嫉妬するほどの強い絆なのである。

彼らが挑んだ推敲は、原石を磨き上げて宝石を取り出すような作業だが、それにしても初稿の枚数が多すぎやしない? 縁の下の力持ちに徹する名編集者をコリン・ファースが好演。食事中でも帽子を被っている彼が、たった1度だけそれを脱ぐシーンが印象的だ。

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小説家を見つけたら』(2000)

小説家を見つけたら

友人にそそのかされて忍び込んだアパートにリュックを忘れてしまった主人公が、戻ってきたリュックに入っていた創作ノートを見ると、批評がびっしりと書かれていた。

文才のある少年なのである。その彼が密かに綴っていた文章を読んでしまい、思わず赤ペン先生をやってしまったのは、その部屋に住んでいたおじいちゃん。彼は、処女小説でピュリツァー賞を受賞後に姿を消してしまった謎の小説家だった。

若い才能を伸ばして育てるというのは、気持ちがいいんだろうだね。引きこもり老人という珍しい役を演じたショーン・コネリーが、少年の危機を救うため久々に自転車で外に出るのだが、ちゃんと手信号をする姿が可愛らしい。

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全身小説家』(1994)

全身小説家

1992年にガンで亡くなった小説家・井上光晴の最後の5年間を追い、関係者たちによる証言から、<虚構と現実>を生きた1人の小説家の全体像に迫るドキュメンタリー。

同業者である瀬戸内寂聴らの証言を通して、彼の文学活動を捉えつつ、人物像を浮き彫りにしていく。ガンと闘う姿を生々しくさらけ出しているが、それよりも近親者が語る彼の実像の方が衝撃的だという面白さ。

彼はなんと、自分の履歴や原体験を詐称する「ウソつきみっちゃん」で、それによって文学的虚構を創りあげていた。その事実が明らかにされていく様がスリリングに描かれ、しかもその虚構がイメージ再現されているので、虚構と現実の境目がますますわからなくなり……それが監督の狙いでもあり、小説家という人種の業の深さを知る。

危険なプロット』(2012)

危険なプロット

作文の添削ばかりで退屈な日々を送っていた高校の国語教師が、文才のある生徒と出会い、彼に小説の書き方を教えていくにつれて、思わぬ事態に巻き込まれていく。

その教師が作家志望だったというのが、そもそも悲劇の始まりであろう。目の前にきらめく才能のある生徒がいたら、叶えられなかった自分の夢を託したくなるのが人情。ちょうど刺激を求めてもいたし……ああ、人生の落とし穴は日常に転がっている。

最初は指導者として優位に立っていた彼は、気がつけば蟻地獄のような闇の淵にいた。自分のせいで生徒の才能が開花し、翻弄されてボロボロになってしまった彼の隣で、生徒がホッとしたように優しく微笑むシーンは、何を意味するのだろう。監督の真骨頂ともいえる心理劇。

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いかがでしたか?

主人公が本好きというだけで親近感が芽生えたり、図書館や書店が舞台になっていると、それだけで何となく知的な雰囲気になったり。そして本は、殺人の武器にもなる。

映画の中に登場する本のモチーフは、こんなにもたくさん。

映画を観た後は、ぜひ読書を。

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