『岸辺の旅』黒沢清映画も!凄腕映画宣伝プロデューサーに学ぶ好きを仕事にする方法

映画好きなサラリーマン。

柏木雄介

岸辺の旅

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今年の第68回カンヌ国際映画祭にて「ある視点」部門で日本人初の“監督賞”受賞した深津絵里、浅野忠信主演映画『岸辺の旅』が10月1日(木)より公開されます。監督は『CURE』『回路』『アカルイミライ』など国際的にも名高い黒沢清監督。

特に日本でも評判が高かった『アカルイミライ』は、オダギリジョーの映画初主演作であり浅野忠信だけでなく、加瀬亮や松山ケンイチなど今では主役級の俳優が出ていることも驚きの映画です。そしてこちらの映画のPRを担当しヒットの一助をなした方が映画宣伝プロデューサーの野下はるみさん。

先日都内にて、スパイラル企画制作による『スクリーンに映画がかかるまで』というトークイベントが講演されました。内容は『ブラック・スワン』『英国王のスピーチ』など数々のアカデミー賞の主要賞に絡んだ映画のPRの手法についてから映画の仕事に就き始めた頃の話まで。

野下さんは、海外でも通用する日本映画を作り出したいという自身の想いから黒沢清監督と『アカルイミライ』をプロデュースしました。当時俳優の仕事から遠ざかっていた藤竜也さん。そんな藤さんをいまだ世界において名だたる人気があるという理由で熱い想いでキャステイングし、国際的にも見事ヒットさせたことを一端に業界内で多くの方に信頼されている凄腕プロデューサー。

今回はこちらの講演会に参加して聞いてきた、確実に結果を残すプロデューサーの仕事に対する向き合い方、そして”好きなことを仕事をする方法”についてご紹介します。

好きな仕事をすることの心構えとは何か?

好きなことを仕事にしたいと考えたとき、皆さんはどういうことを考え、何を実践するでしょうか。映画が好きな方は映画に関わる仕事に携わりたいと感じるかと思います。

しかし、誰もが好きなことを仕事にできるわけではありません。野下さんも当時好きな映画に携わる仕事をしたいと思うようになったとき、”閉鎖的”な日本の映画業界の壁にぶつかり就職活動をし始めた5年間は思うように中に入れなかったとのこと。知り合いなどつながりがないと仕事ができない。けれどもそもそもその接点が閉ざされているというジレンマを抱えていたようです。

好きな仕事をするためにどうしたらいいか?ということを野下さんは以下のように答えてくれました。

・お金をもらえなくとも、”自分ならどうするか”を考え続ける!
・入ってくる”収入”を安定させる!
・やりたいことに日付をつけ、周りに”話す”!
・自分も”相手”の時間も大切にする!
・自分の信念と違う時は、はっきり”断る”!

お金をもらえなくとも、”自分ならどうするか”を考え続ける!

スパイラルスコレー1

出典:https://www.facebook.com/SpiralSchole/posts/539782889520155

野下さんは映画の仕事に携わることができなかった5年間、公開されている映画に対して「自分ならチラシをこう作る、こういうコピーにする、邦題はこうだとか、”自分ならこうする”ということを「”ひとり”映画業界」さながら一から考えることに費やしていたそうです。

その結果、『スラムドッグ$ミリオネア』『ブラック・スワン』『英国王のスピーチ』『her/世界でひとつの彼女』など錚々たる映画のPRに携わることができ、その上これらの映画を日本でヒットさせ、自分が仕事をしたいと思う監督の映画をほぼ全て携ることができたとお話されました。

たとえ仕事としてでなくとも、”自分ならどうするか”を考えやり続けた試行錯誤こそが今の自分の糧になっていたのだと思います。

入ってくる”収入”を安定させる!

 

野下さんが広報として、ウディ・アレンやデイヴィッド・リンチ監督の仕事場を訪ねたときの貴重なエピソードもお聞きしました。同監督は一般的な監督とは少し異なる気鋭の映画作家として有名ですが、そんな好きな映画を作っている監督たちに共通する特徴とは何でしょうか。

それは、大元(母体)が小さいことです。大元が小さいと、収入が低くとも出て行くお金は多くはありません。また出資者がいないことは人から指図されない、意見を言われないという利点もあり、自由に好きなものを作りたいと思う人にとって大元が小さいことは必要不可欠なことかもしれません。

テレビ局などが全面に出る現在の日本の「製作委員会方式」とは逆のシステムと言えます。

参照:映画『進撃の巨人』の過激表現から見る日本映画の行方

デヴィッド・リンチ監督は、監督業の他にオンラインで購入できる物販でも収入を得ているとのこと。コーヒー好きということで、オーガニックのコーヒーをプロデュースして販売しています。

参照:David Lynch Signature Cup Organic Coffee

事務所も小さくして固定費を最小限に抑え、スタッフも雇わずに学生と一緒に仕事を行うことで人件費を抑える。自分のペースを保つために経済的に自立することで、誰にも依存しない生き方を確立しています。資金面で自立しているからこそ、誰かに口を出されないで自分がやりたいことが実現されているのです。

ウディ・アレン監督も同じように最小限の範囲で自分のやりたいことを実現しています。自立しながらも、ハリウッドなどの大作に埋もれない素晴らしい映画の数々を生み出しています。

また監督は、アカデミー賞などの授賞式に出席しないことでも有名であり、ハリウッドとうまい距離感を出すという、異質感(インパクト)を出すことで自身をブランディングしています。

映画はもちろん作るだけで満足しているだけではなく、最終的に収益が出ないと続けることができません。入り口だけでなく、出口も含めて一貫性を持ったプロモーションができる人であることが、自由に好きな仕事をできる前提なのかもしれません。

このように彼らは、ただ好きなことを実現させるために支出を抑え採算を重視し、セルフプロモーションにも気にかける。そして過去の自分の作品を大事にしながらも、それまでの名声によらずに好きな映画を作っています。

野下さんが関わってきた監督のお話を聞き、大好きなことを仕事にしているひとには必要最小限の収入で暮らすというような共通点があることが分かりました。

やりたいことに日付をつけ、周りに”話す”!

スパイラルスコレー

野下さんは、講演の中でこれからの20年後の生き方も話してくれました。幼少の頃からやりたいことに期限をつけて実践してきたとのこと。

また、徹底した時短を意識した働き方も印象的でした。打ち合わせにも時間をかけない、メールも短文。夜8時以降の電話は取らないなど、集中して簡潔に仕事に取り組む姿勢が見られました。経済的に自立しているからということもあると思いますが、自分の信念と違う時は、はっきり”断る”ということの意味や人の時間を無駄にする人とは仕事をしないという言葉は耳が痛い想いでした。

自分がやりたいことを実現できている人は、実際にお会いしてみると非常に明るくてパワフル。だから話を聞いているこちらまで元気になってきます。

きっとそういう人だからこそ、また会いたいと感じさせその人の元にいろいろな方が集まり、結果的に自分がやりたいことが実現されるのではないでしょうか。その前向きさとパワフルな力強さこそが、自分が”好きな仕事をする”ことへの秘訣かもしれません。

スパイラルスコレー『スクリーンに映画がかかるまで』

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今回ご紹介した講座は、映画がスクリーンに上映されるまで、どれくらいの人が関わり、そこでどんな仕事をしているかを有識者を呼び講演するもの。

第1回はシネモンド代表、こども映画教室代表の土肥悦子さんによる「ユーロスペース時代の作品買付・宣伝の仕事」という〈映画をかう仕事〉映画買付の話。第2回は、実際に映画を作る過程の話で映画監督、諏訪敦彦さんの〈映画をつくる〉話。そして第3回目は、映画宣伝プロデューサー野下はるみさんによる〈映画をひろめる仕事〉。

スパイラルスコレーによる同イベントは、11月にも予定しているとのこと。映画に関係する裏話はもちろん、ここでしか聞けない仕事の話を聞いて学べて、それを多くの人と共有できる貴重な場として次回の開催も注目です。

野下さんが受賞告知を担当された黒沢清監督『岸辺の旅』も是非チェックしてみてください。

▼『岸辺の旅』予告編

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※2022年7月27日時点のVOD配信情報です。

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  • yonyori
    3.7
    最後良かった
  • genarowlands
    3.9
    失踪していた夫が幽霊として帰ってきた。夫の過去を夫婦で訪ね、近くて遠かった夫婦の溝を二人で埋めていく癒しの物語。穏やかな浅野忠信と透明感ある深津絵里の演技が秀逸でした。ホラーのひんやりした怖さもありながら、人間の温もりも同時に感じ、不思議な余韻が残りました。 此岸と彼岸の間はお彼岸になると近くなり、あちらの方々がこちらに来やすくなる季節。 全体にリズムが緩くて、人々の会話に微妙な間合いがあり、瑞希が優介と共にいる時間のズレみたいでした。瑞希がピアノ講師に適さないと指摘される理由にも瑞希のテンポの違いがあり、瑞希が此岸の岸辺にずっといたのを表していると感じました。 「区切りなんかつけない方がいい」と瑞希。 生きている者の無念、亡くなった者の未練。 その思いで、この世に戻ってくる霊。 宇宙の原理を村人に話しながら「この宇宙に生まれてきてよかった」と優介。 二人の旅は瑞希だけの夢想の旅だったのかもしれません。旅の中で知らなかった夫の優しく誠実な一面に出会います。 あの世に行けない未練は、此岸の無念が引き寄せ、その無念を晴らす旅だったのでしょう。 瑞希が口には出すけれど、彼岸に行きたがらなかったのは優介の元愛人の存在。瑞希の無念は、優介への愛憎と相まって此岸で解消しなければならなかった最大のことでした。 元愛人を演じる蒼井優の凄みと強かさは深津絵里の透明感とクセの無さを際立たせます。緊張感ある二人の会話、他のシーンの柔らかいファンタジーと異質で怖かったです。平凡な日常に現れた刺客。まばたきしないで凝視する蒼井優の不敵な笑みはまるでホラー。いちばん怖いシーンでした。 二人の旅は現実の痛みを思い出しながら美しい地に向かいます。 どこまで夢想なのかわからないのがよかったです。こういうファンタジー好きです。 お彼岸にどうぞ。
  • 眠れないよ
    3.7
    死者が生者に見えていて双方の関わり合いが可能であるという、死生観が面白かった。生者は死者に気付けず、死者は自分が死者だと気づかない場合もある。 やり残したことや言い損ねたことがあるのは、死んだほうではなく生きているほうなのかもしれない。話していなかったことが沢山ある、笑顔でそう言ったみっちゃんを観ながらそんなことを考えた。 営みの美しさの中の不穏、というよりも不穏の中の営みの美しさ、という感じがした。それくらい、なんだか軽快な楽しさに目が奪われて、黒沢清監督の良さはその軽快さにあるような気がする。 そして、死や別れに囚われている人の顔が美しいこと。悲しいことだけれど、美しいのです。
  • datenao
    3.5
    とっても不思議な作品。 闇と光、そして静寂と動って感じなのかな? 映像の演出が面白かったですね。 普通に考えたら鳥肌もんの世界観だけれどもファンタジーな雰囲気にさせられました。
  • LDJin
    4
    触れ合ったら消えるかもしれない伏線が終盤で回収されてポリネシアンセックスみたいに5割増しで綺麗に見えた 黒沢清は象徴性を大事にしすぎていつも物語がボロボロになりがちだけど、目的地を転々とする語り方とはすごく相性がよかった この世とあの世の曖昧さを光と影の曖昧さに置き換え替えて、なにも起こってないのになにか起きたような、静かな息苦しさが延々と続いた
岸辺の旅
のレビュー(7025件)