映画『愛がなんだ』今泉力哉監督&岸井ゆきの「今泉監督は役者と一緒に悩んでくれる人」【インタビュー】

2018.10.25
映画
第31回東京国際映画祭コンペティション部門出品作品『愛がなんだ』今泉力哉監督&岸井ゆきの インタビュー。映画祭への思いや作品の魅力についてなど。

愛がなんだ

今年で31回目となる東京国際映画祭。今年は映画祭の目玉のコンペティション部門に2つの日本映画が選出されています。

そのうちの1本が、恋愛映画の旗手、今泉力哉監督の『愛がなんだ』。角田光代の同名小説が原作で、主演に『おじいちゃん、死んじゃったって。』の岸井ゆきのを迎えて究極の片思いを描いています。

今泉監督は、これまでも同映画祭の若手登竜門であるスプラッシュ部門などにも選出されてきた実績がありますが、今回は満を持してのコンペティション部門への挑戦。今泉監督と岸井ゆきのさんに、映画祭への思いや作品の魅力について語っていただきました。

愛がなんだ

スプラッシュ部門からコンペティション部門へ

――今泉監督は、これまで東京国際映画祭では日本映画スプラッシュや特別招待作品などに選出されてきましたが、ついにコンペティション部門に挑戦ですね。選ばれたことを知った時にどうお感じになりましたか。

今泉力哉監督(以下、今泉) 友人の深田晃司監督や松居大悟監督もスプラッシュ部門からコンペに行ったのを見てきたので、やっと自分も来られたなと素直に嬉しかったですね。

――岸井さんは本作が2本目の主演映画になりますが、コンペティション部門という大舞台に選ばれたことについてはいかがですか。

岸井ゆきの(以下、岸井) 本当に嬉しいです。私の願いは、ただただ映画を観てほしいということなので。やはり東京国際映画祭のような大きな舞台で上映されるとなれば、それだけ多くの方に観ていただけますので。

――1本目の映画主演は大きなプレッシャーもあったと思いますが、2本目となる本作ではどうでしたか。

岸井 初主演させてもらった『おじいちゃん、死んじゃったって。』は、私にとって宝物みたいな作品ですし、たくさん素敵な体験をさせていただきました。今回のお話をいただいた時は、主演でという情報を先に聞いていたので、まだ早いんじゃないかなという気持ちだったんです。だけど、「原作を読んだらきっとやりたくなるよ!」と言われまして。

――原作を読まれてみて、これはやるしかないと思われたと?

岸井 やりたくなってしまいましたね(笑)

岸井ゆきの

原作の魅力の核は5人の関係性

――今泉監督は、ご自身の企画のストックは持っていないとよく仰っていますが、今回もオファーを受けたのでしょうか。

今泉 企画のストックは全くないですね。今回もプロデューサーからメールをいただきまして、それから小説を読みました。僕は小説をたくさん読んでいるわけじゃなく、角田光代さんの小説を読んだのも初めてだったのですが、文体やリズムがすごいし、女性の描き方も巧みで、面白い小説ってこういうことなのかと思いましたね。

――今泉監督は、出演者が先に決まっている企画を手がけることも多いですが、キャラクターのあて書きがとても上手いなと感じていました。今回の主演の岸井さんは最初に決まっていたのですか。

今泉 いえ、今回は決まっていませんでした。澤井香織さんという女性脚本家と共同で脚本を書いたのですが、二人で脚本を作った上で、岸井さんが決まった後にさらに直しを入れています。ただ、僕は最初から岸井さんでやりたいと言っていました。若干年齢が原作よりも若いですが、ずっと彼女の芝居を観てきましたから。やれるはずだという確信があったんです。

愛がなんだ

――原作のある作品を手がけるのは『鬼灯さん家のアネキ』に続いて二度目ですよね。映画化にあたって、どんな部分を核として残そうと考えましたか。

今泉 テルコとマモル、そから二人の鏡になるように葉子とナカハラがいる、そういう関係性の配置と、すみれも含めた主要5人の距離感ですね。母親たちとか周辺の人物をどれくらい残すかもかなり悩みましたが、過去の自分の経験として、若者の群像劇をやるにしても、若者だけにすると世界が狭くなってしまうという実感があったので、シーンが少なかったとしても(周辺の人物を)残していこうと思いました。

あとは、旅行に行くシーンは3人から4人に増やしています。原作通りにやると、3人が何もせずに戻ってくるようになってしまって、映画的な盛り上がりに欠けるなと思ったので。

「監督が迷っている人で良かった」

愛がなんだ

――岸井さんはいろんな監督をお仕事されていますが、今泉監督はどんなタイプの監督ですか。

岸井 一緒に悩んでくれる監督さんです。もちろん、今までお仕事してきた監督の中にも一緒に考えてくれる方はいましたけど、その都度監督が答えを出していたと思うんですよね。今泉監督は二人で一緒に迷って下さって。

今泉 良いことのように言ってくれているけど、それだいぶヤバいよね(笑)。

岸井 でも、その時は正しいと思って選んだものでも、振り返ってみると他の選択肢もアリだったなということもあると思うんです。その方が可能性も広がるし、(この映画は)はっきりした形がないものを描いているんだっていうのを監督ご自身がわかっていらっしゃるんだと思います。

今泉 自分の実感としても、オリジナルの作品ですら出来上がったものを観た時に、「これはこういう映画になったんだ」と感じたことが過去に何度もあります。一人の想像力ではなく、みんなで作ったものの力を信じているんです。打ち上げで岸井さんに「監督が迷っている人で良かった」と言われたのをすごく覚えていて、それを許容してくれる人で本当に良かったなと思います。

観終わった後に誰かと話してほしい

――ここでFILMAGA恒例の質問をひとつ。お二人が影響を受けた映画を教えてください。

今泉 ジョン・カサヴェテス監督の『ミニー&モスコウィッツ』という作品がすごく好きで、大学時代に映画をもう一回きちんと学ぼうと考えていた時期に出会った作品です。

ミニー&モスコウィッツ

今泉 転機になった作品となると……、映画学校に行き直そうかと考えていた時期に、『ジョゼと虎と魚たち』を封切り初日に観たのも大きな転機になりましたね。映画の原体験は『ホーム・アローン』です。

岸井 好きな映画はいっぱいありますね。『グッド・ウィル・ハンティング』が大好きなんです。あとロビン・ウィリアムズ主演の『奇蹟の輝き』っていう映画も好きで、背景が油絵のシーンがあるんですが、この間新幹線に乗っている時に観て、たくさん泣いてしまいました(笑)。あとは『トゥルー・ロマンス』も好きです。あんな風に殴られても笑っているような役をやってみたいですね。カッコいい女性に憧れます。

奇蹟の輝き

――最後に、これから『愛がなんだ』をご覧になる方にメッセージをお願いします。

岸井 観終わった後にいろいろなことを考える映画だと思うし、それを是非言葉にして誰かと話してほしいです。たくさんの意見があると思うし、誰を応援したくなったとか、自分に重ねて観るのも良いと思います。本当に素敵な作品なので何度でも観ていただけると嬉しいです。

今泉 東京国際映画祭のような大きな映画祭で観てもらえるのは嬉しいです。映画祭で観る方はこの世界で最初のお客さんになるわけです。だから、ってこともないですが(笑)、楽しんでいただければ幸いです。(インタビュー・文:杉本穂高)

映画『愛がなんだ』あらすじ

愛がなんだ

28歳のテルコ(岸井ゆきの)はマモル(成田凌)に一目惚れしたときから生活のすべてがマモル中心となった。仕事中でも何をしていても、マモルからの電話は最優先。ある日、熱を出したマモルから呼び出されたテルコは頼まれてもいない家事や掃除まで徹底的にこなし、マモルに遠ざけられてしまう。

その後もマモルの気持ちひとつで、時には恋人のように親密に、時には訳も分からず冷たくされ、急に連絡を絶たれたりするテルコ。久々にマモルから呼び出されたテルコは、マモルの隣にいる年上の女性、すみれを見て動揺してしまう。

(C)2019「愛がなんだ」製作委員会

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