これからの日本映画界をリードする若手女優・黒木華のおすすめ出演映画12本<『小さいおうち』『リップヴァンウィンクルの花嫁』など>

2018.11.03
映画

映画マニアと呼ばないで

夏りょうこ

映画にドラマに続々と出演している女優・黒木華のこれまでの出演映画を紹介しています。

ビブリア古書堂の事件手帖』、『日日是好日』、『散り椿』、『億男』。女優・黒木華が出演している現在公開中の映画だ。

10月期の地上波ドラマ『獣になれない私たち』でも、新垣結衣演じる主人公の恋人の“ニートの元彼女”を、絶妙な憎々しさで演じている。

黒木華(くろきはる)のプロフィール

黒木華は1990年、大阪府出身。幼少期より演技に興味を持ち、地元の演劇名門高校で演劇部に入部後は、3年間主役を務めていたという。

卒業後は大学の俳優コースに進学して女優を目指し、在学中に野田秀樹の演劇ワークショップに参加。2010年に野田秀樹の舞台でデビュー後は、中村勘三郎との共演や蜷川幸雄演出の舞台などにも出演し、舞台女優として高い評価を受ける。

映画デビューは『東京オアシス』(11)。ドラマでは、2012年NHK連続テレビ小説『純と愛』で腹黒い同僚役を好演した。

大きな転機となったのは、映画『小さいおうち』(13)にて、ベルリン国際映画祭最優秀女優賞(銀熊賞)を受賞したことであろう。これは日本人女優として史上4人目の受賞であり、しかも日本人最年少という快挙であった。

ちなみにこの作品と『母と暮せば』(15)で、日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を連続受賞した。

地味な顔立ち。芯が強そうなたたずまい。和装がしっくり似合うため、どこか昭和をイメージさせる黒木華だが、奥ゆかしい役柄だけでなく、野心のある嫌な女性もしっかり演じることのできる幅広い演技力は、これからの日本映画界をリードする期待の若手女優である。

そこで今回は、黒木華のいろいろな顔を鑑賞できる出演映画12本をご紹介しよう。

東京オアシス』(2011)

行き先がわからない

東京オアシス

女優の仕事をしている主人公が、さまざまな人たちとの出会いを通じて、普段の何気ない風景や自分自身を見つめなおし、再び人生を歩み出すまでを描く。

『かもめ食堂』(06)『めがね』(07)などと同じプロジェクトチームによる映画なので、キャストもトーンも似たような感じ。ただ、深夜の国道にいる喪服姿の主人公が、走るトラックに向かって駆け出すという謎めいたシーンから始まるので、ちょっとドキドキする。

進むべき将来がわからなくなったり、道を見失ってしまったり。美術大学を目指していた浪人生役の黒木華も、自分の才能に見切りをつけ、別の道を探そうと一歩を踏み出す。そんな現実に肩を落としながらも、見上げる空はどこか清々しい。黒木華の透明感が、ゆらゆらとした不安とほのかな希望を感じさせる。

舟を編む』(2013)

言葉の海は深い

舟を編む

独特の視点で言葉を定義する力を認められ、新しい辞書を編纂(へんさん)する部署に迎えられた主人公は、板前を目指す女性に出会って恋に落ちるが、彼女にうまく気持ちを伝えられない。

仕事とプライベートは別物。言葉のプロでありながら、自分の言葉で愛情を打ち明けられないというのは、ありがちなのではないだろうか。その不器用なオタオタぶりを松田龍平が好演し、個性的な同僚の中でも際立つキャラクターになっている。言葉の海で本当に溺れるなんてね。

黒木華は、辞書編集部に異動してきた元ファッション誌の編集者。最初はアクの強い者ばかりの職場にとまどい、派手めのファッションも浮いていた。そんな彼女が辞書の魅力に目覚めたきっかけが、「ダサい」という言葉。でも、酔った勢いでプロポーズするのはダサいかなあ。まあ用例だから、主観も反映されるってことで。

小さいおうち』(2013)

小動物のように仕える

小さいおうち

東京郊外に建つ赤い三角屋根の小さな家で、お手伝いさんとして働き始めた主人公は、奥様がご主人の部下に心が傾いていくのを知って胸を痛める。

彼女の親戚である青年が目にしたノート。そこに書かれていた自分史が、この映画の物語である。しかし、それが秘められた他人の恋愛話だけならまだよかったのだが、驚くべき懺悔が告白されていたという……情熱に抗えない美しい若妻を松たか子が演じ、感情のさざなみにハラハラドキドキ。

このお手伝いさん役で、国際的な評価を受けた黒木華。太い眉毛でほっぺの赤い「いかにも純朴な田舎娘」という役が、これほど似合うとは。しかし、帰宅した奥様の帯を見て情事を見抜くとは、おぼこいように見えてなかなかやるなあ。世間的な道徳観ではなく、ただただ奥様が心配なだけ。ちっちゃい瞳でじっと見守る姿が、リスみたい。

繕い裁つ人』(2015)

洋服は思い出と共に

繕い裁つ人

祖母が始めた洋裁店を継いだ主人公は、古い足踏みミシンを使って洋服を丁寧に仕上げることに喜びを感じていたが、ある日ブランド化の話が舞い込んでくる。

その人だけの洋服。それは世界でたったひとつの宝物。おばあちゃんの着物をリメイクしたり、思い出のワンピースの襟を再利用したり。彼女は祈るようにミシンを踏み、お守りを探すようにボタンを選ぶ。1着の洋服に物語があるのことを彼女は知っているのだ。時代に取り残されようとも、彼女は一生添い遂げられる服にこだわり続けるガンコな職人。

そんな彼女の洋服に惚れ込み、ブランド化して多くの人に着てもらいたいと説得する青年。その妹が黒木華である。子供の頃、車椅子の彼女が街へ出かける気になったのは、ステキなワンピースをプレゼントされたから。ここぞという要で登場する黒木華は、画面にすっと馴染みながらも目を引く存在感だ。

幕が上がる』(2015)

灰皿を投げる

幕が上がる

地方大会でも勝ち抜いたことのない高校の演劇部にやってきた新任教師が、自分の演劇経験を生かした指導で、部員たちの潜在能力を引き出していく。

ももいろクローバーZのメンバーが出演しているので、ただのアイドル映画だと敬遠されがちなのが残念な気もする。劇作家である平田オリザの小説が原作ゆえ、演劇とはそういうものかと思わせるセリフやシーンがあり、彼女たちの青春を追体験しているみたいで、受験との両立や進路で悩んでいた頃を思い出す。

「学生演劇の女王」と呼ばれていた新任教師が黒木華。そのキャラは彼女そのものだ。「肖像画」という芝居、面白いなあ。生徒1人1人をよく観察し、丁寧で的確なアドバイスをする黒木華は「鬼」ではないのだが、稽古中に怒鳴りながら灰皿を投げるシーンがあり、それが堂に入っていて上手い! 

ソロモンの偽証』(2015)

カオスの中で

ソロモン

校庭で男子生徒の遺体が発見され、その事件の真相を自分たちの手で明らかにしようと、同級生である女子生徒が中心となって学校内裁判を開廷する。

「前篇・事件」「後篇・裁判」の二部作。長い話だが、事件の裏側を探れば探るほど謎が深まり、証言が絡み合って混沌としてくるので、スッキリしたくて何が何でも最後まで見届けてやろうという気持ちになる。まだ子供だろうに、志を同じくする12人の中学生たちが、世間を相手にここまで頑張るのかと感動。

疑惑。不信。憶測。ずるさ。そういった人間の負の感情があぶりだされ、その闇の深さときたら。その中で人間の弱さを体現しているのが、担任の黒木華だ。告発状が届いたことでマスコミから疑われ、いきなり隣人から殴られる彼女は、オドオドしているだけに怪しくて目が離せない。その彼女が裁判で心情を吐露するシーンは必見。

母と暮せば』(2015)

初々しい恋人たち

母と暮らせば

1945年8月9日の長崎で被爆し死亡した主人公は、3年後に母のもとに亡霊となって現れ、しばらくの間母と一緒に暮らす。

井上ひさしが晩年に構想していた「戦後“命”の三部作」のうち、「ナガサキ」をテーマにした戯曲。タイトルからもわかるように、広島を舞台にした父と娘の物語『父と暮せば』と対になっている。授業中に主人公が突然被爆するシーンは本当に一瞬の出来事で、あまりにも静かゆえにむしろ残酷さが伝わってくる。

黒木華は彼の恋人で、小学校教師。黒木華の奥ゆかしい顔立ちが戦前という時代にピッタリで、部屋で彼とレコードを聴きながら仲睦まじくするシーンなど、嬉し恥ずかし。当時の恋人ぽくってなかなかの説得力だ。彼女なら、被爆死した彼のことを想い続けて独身を貫き通したとしても、違和感がないだろう。

リップヴァンウィンクルの花嫁』(2016)

どうなるどうなる?

リップ

派遣教員の主人公は、SNSで知り合った彼と結婚したが、思わぬ出来事から家を追い出されてしまい、知り合いのなんでも屋の紹介で、大金をもらう住み込みメイドの仕事を始める。

教師なのに声が小さい彼女は、大人しくて素直すぎる女性。なのに、ワンクリックで彼氏をゲットできたことをSNSでつぶやいたりして、どこか満たされないものを抱えている危うさがあり、そのせいで転落していく前半がホラーのよう。その主人公を演じる黒木華が上手すぎるので、気分が悪くなってしまうほどだ。

押しに弱くて健気な黒木華が出ずっぱり。そこに得体の知れない綾野剛と、型破りで闇の匂いがするCoccoが絡み、2人とも役柄が似合いすぎて本人そのものだ。特に綾野剛は、裏があるのかないのかわからない人たらしで、唯一リアリティのある人物かも。家族のフリをしたら、本当の家族気分になるという話がいいね。

永い言い訳』(2016)

知らなかった妻のこと

永い言い訳

人気作家の主人公は、浮気の最中に突然妻をバス事故で亡くしてしまったが、涙は流れず、悲しみに耐える夫を演じることしかできないでいた。

なぜ彼は悲しみを表せないのか。妻は夫の浮気を知っていたのか。妻は夫のことをどう思っていたのか。二人は幸せだったのか。その答えは観る人それぞれの心の中にあり、その答えも時が経つにつれて移ろいでいく。そんな映画である。彼と同じ境遇だが、夫婦関係も性格も正反対の男を竹原ピストルが好演。

黒木華が浮気相手の女性を演じていて、ちょっと意外。大胆なベッドシーンもあるのでイメージは壊れるものの、結局どんな役でもこなせることを証明した。罪の意識を感じて苦しみ、妻の死に対して無感覚でいる彼を理解できない。出番は少ないが、存在感のある役だ。黒木華にとって新境地かも。

ちょっと今から仕事やめてくる』(2017)

がんばりすぎないで

今からちょっと

ノルマの厳しい仕事で心身ともに疲れ果ててしまった主人公が、ホームでふらついて電車にはねられそうになったところを関西弁の男に助けられる。

主人公の幼馴染だと名乗る彼は、それから何かにつけて現れるようになり、一緒に飲んだり遊んだり。そうして、陽気で前向きな彼からいい影響を受けた主人公は、気分が楽になって仕事もできるようになるのだが、問題はその彼が何者なのかということ。その笑顔の裏には、何やら深いワケがありそう。

ノルマが厳しすぎるのは、ブラック会社でパワハラもあるから。そんな職場で営業成績トップの黒木華は、主人公を優しく励ましたりアドバイスしたりする先輩で、唯一頼りになると思っていたら、とんでもない別の顔が……でも、それが哀しい話でねえ。ギリギリのところで追い詰められている姿に共感。こんな黒木華もいい。

散り椿』(2018)

散り際を見たい

江戸時代、不正を訴え出たために藩を追われた主人公は、死んだ妻の願いを叶えるため、身の危険を顧みず再び故郷へ戻り、かつて恋敵だった友人と再会する。

暗殺者にねらわれている彼は、実は殺人の疑いまでかけられていて、その彼が突然帰郷したのだから藩は大騒ぎ。忌まわしい事件の真相が少しずつ明らかになり、それと平行して、彼がこだわっている三角関係もスッキリしていく。岡田准一自身が作り上げたという殺陣がみどころ。特に岡田准一と西島秀俊の対決シーンは、手に汗を握る。

病死した彼の妻には妹がいて、それが黒木華。控え目で思いやりがあり、弟の世話をしていて婚期を逃したようなタイプの女性だが、帰ってきた義理の兄を慕うようになる。で、まだ姉のことを忘れられない彼だからこそ、心にずしんと響く言葉を使って、自分の想いを伝えるのだ。この遠まわしな告白が時代劇。 

日日是好日』(2018)

時間をかけてゆっくりと

日日

本当に打ち込めるものが見つからないでいる女子大学生が、母からお茶を習うことを勧められ、只者ではないというウワサの先生のもとへ通い始める。

一緒に習い始めた従姉妹とは、見た目も性格も正反対。そんな二人が何となく茶道の世界に足を踏み入れ、あまりの決まり事の多さに驚いたり面白がったり。四季折々の匂いを嗅ぎ、音に耳を澄ませてお茶を点てる。彼女は人生のさまざまな出来事と向き合いながら、時間をかけてその醍醐味を味わっていく。

不器用な黒木華は要領が悪いが、時間をかけたからこそ見えてくる景色があると知る。和服姿の黒木華を観ているだけでも心地よく、25年間の成長ぶりをどう演じているのかは、観てのお楽しみ。樹木希林の存在感はさすが。鋭いことをさりげなく温かく。ただ座ってうなずいているだけで、間が持つ。

いかがでしたか?

次々と新作が公開されるのを見ても、黒木華がいかに多くの監督から注目されている女優なのかがわかるだろう。

ちなみに今後も、11月1日公開の『ビブリア古書堂の事件手帖』、12月7日公開の『来る』と、2018年もまだまだ出演作が控えている。

ビブリア古書堂の事件手帖

黒木華×野村周平、文化系と体育会系のまったく違う撮影苦労エピソード『ビブリア古書堂の事件手帖』【インタビュー】

『ビブリア古書堂の事件手帖』は、古書堂の女店主が、持ち込まれた本を見ただけで、その持ち主の秘密を解き明かしてしまうという本好きにはたまらないミステリー作品である。

黒木華は、書籍については並外れた博識を持っているのに、極度の人見知りでちょっと人間が苦手というキャラクター。そこはかとなく文学的な雰囲気のある黒木華には、ピッタリではないだろうか。

これが当たり役になればシリーズ化される可能性もあるし、今後の活躍からますます目が離せない。

【あわせて読みたい】
※ 黒木華×野村周平、文化系と体育会系のまったく違う撮影苦労エピソード『ビブリア古書堂の事件手帖』【インタビュー】
※ 黒木華とお茶と宇宙と。樹木希林の言葉がじんわり心に沁みわたる『日日是好日』<4コマでざっくり紹介>
※ 「いまは仕事をがんばりたい!」女性におすすめするお仕事ドラマ6本<出版社・広告代理店編>

記事をシェア

公式アカウントをフォロー

  • RSS