斎藤工の“家族のレシピ”は「麻酔銃のような麻婆豆腐」ーー『家族のレシピ』舞台挨拶【東京国際映画祭】

10月26日(金)から開催中の第31回東京国際映画祭にて1日(木)、映画『家族のレシピ』の舞台挨拶が行われ、主演の斎藤工さん、エリック・クー監督が登壇した。

家族のレシピ

日本という国と人々、食に魅せられてきたというクー監督。日本で作品を撮ることが夢だったと語る彼は、数年前、プロデューサーである橘豊さんから「日本とシンガポールの外交関係樹立50周年を記念した映画を作ってくれないか」と声をかけられ、本作の製作の乗り出したという。

クー監督の映画『TATSUMI マンガに革命を起こした男』(10)を観て衝撃を受けたという斎藤さんは、監督が日本人キャストを探しているという話を耳にしたとき「通行人役でもいいから出たい!」と強く思っていたそうだが、縁あってオーディションのチャンスを得て、スカイプで監督と話をしたとか。

家族のレシピ

この日の舞台挨拶では、観客からの質問に斎藤さんとクー監督が答えるQ&Aが行われ、鑑賞後の熱気ある質問が飛び交った。

邦題の『家族のレシピ』にちなみ、「家庭の味で思い入れのなるメニューは?」との問いに、「家族のレシピではないけれど、印象深いのは父の麻婆豆腐」と斎藤さん。

「麻酔銃を口に撃たれたかと思うくらい山椒が効いていて、僕と母はしばらく口が麻痺していましたね。山椒と胡椒の上に豆腐がちょこっと乗ったような麻婆豆腐」でしたと思い出を振り返り観客を笑わせた。

家族のレシピ

一方のクー監督があげたのは「母の作ったチキンカレー」。劇中でも登場させているというチキンカレーは、すでに他界している母親の味で、「この映画は母に捧げる作品」だと明かした。

また、撮影を通して、食でつながる絆を感じたというエピソードを語った斎藤さん。「撮影最終日に、エリック監督がチキンスープを作ってきてくれたんです。撮影中、監督というのは手がいくらあっても足りないほど忙しいのに、(煮込む必要のある)スープを作ってきてくれて、彼が費やした時間と想いに涙を流しました」。

「映画の中だけじゃない、そういった撮影裏のドラマもあって、あのスープの味は忘れません」。

家族のレシピ

本作では、松田聖子さんが物語の重要な役柄で出演している。その起用の理由を聞かれた監督は、「10代の頃、レコードも持っていたほど大ファンだった」とニッコリ。

「(プロデューサーの)橘さんが松田さんを知っていると聞いて、どうやったら彼女に会えるかと考えるようになり、美樹役をやってもらえないかと思うようになった。ただのいちファンです(笑)」とピュアに明かした。

高崎でラーメン屋を営む真人は、一緒に働いていた父の突然の死に際し、一冊の古いノートを見つける。真人が10歳の時に亡くしたシンガポール人の母が書いたもので、その中には、料理のレシピや写真など、様々な思い出が詰まっていた。幼い頃、シンガポールに住んでいた真人は、当時自分を可愛がってくれたシンガポールの家族のことを思い出す。忘れかけていた過去の1ピース、1ピースを埋めるため、真人はシンガポールへと旅立つ。
まずは行方が知れないかつての家族を探すため、以前より交流のあったシンガポール在住の日本人フードブロガー・美樹にアドバイスを頼むことになった。そしてシンガポールのソウルフード・肉骨茶(バクテー)のお店を営んでいた叔父との再会を果たす。祖母がまだ生きていること、父と母の出会い、自分を生む決意をした経緯など、初めて知る家族の過去と向き合うこととなる。
シンガポールと日本、一度はバラバラになってしまった家族を再び取りもどすため、真人が選んだ方法とは……?

映画『家族のレシピ』は2019年3月9日(土)より、新宿シネマートほか全国順次ロードショー。

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  • 東京国際映画祭学生応援団
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    〈そうだ、シンガポールに行こう〉 9本目は第31回の東京国際映画祭でも上映されたこの作品です! 個人的にも映画祭でQ&Aも含めて鑑賞した思い入れのある作品です。 原題はRamen Teh 。名前はラーメンとバクテーを合わせた創作料理で、日本とシンガポールの国交樹立50周年をきっかけに生まれたこの作品の根幹にあるものは、やはり平和なのかなぁと… 過去には戦時中の暗い面もあり、斎藤さんの演技でもその深い傷跡を感じられる。 物語の中心である料理の力は、国境も言葉の壁も時も歴史をも越えて人間をつなげる力を持つことが実感できる。温かい優しさに包まれるような感覚になれる映画でした! 美味しそうな料理がたくさん登場するのでとてもお腹が空いてきます… えいじ
  • MasaichiYaguchi
    3.6
    エリック・リー監督の斎藤工さんと松田聖子さん共演による、2016年の日本とシンガポールの外交関係樹立50周年記念作品では、美味しそうな料理がたくさん登場して思わずお腹が鳴ってしまう。 この作品で取り上げられた肉骨茶(バクテー)をはじめとしてシンガポール料理に馴染みがないが、ピリッと辛そうな印象はあるものの何れも美味しそうで食べてみたくなった。 ただ本作は単なる「美味しんぼ」映画ではなく、料理を通して描かれる家族の物語。 群馬県高崎市でラーメン店を営む主人公・真人は突然死した父の遺品の中から、真人が幼い頃になくなったシンガポール人の母の日記を見付ける。 この日記には写真と共に思い出や料理のレシピが書かれている。 この日記を切っ掛けに真人は母と父の足跡や、今では疎遠となってしまった母のシンガポールの親族を訪ねる決意をする。 真人は現地のフードブロガーのアシストを受けながら古い記憶を辿る旅をするが、楽しく美味しいことばかりだけではなく、未だにシンガポールの人々に残る戦時中の日本軍が残した“傷痕”と向き合うことになる。 料理は人と人とを結ぶ架け橋と言われるが、真人は美味しい料理を作ることによって、この“傷痕”や横たわる“溝”を何とか修復し、乗り越えようとする。 台風や大雨によって多大な被害が出た今夏だったが、まもなく実りの秋、食欲の秋を迎える。 この夏の暑さで疲れ、傷付いた身体や心を、本作に登場した料理で癒したくなります。
  • しのまこ
    5.0
    日本式ラーメンの素晴らしさを伝える作品と思っていましたが、日本人とシンガポール人との国際結婚による悲劇を描いた感動を呼ぶ作品となっていました。料理の素晴らしさはもとより、シンガポールの街並みがとても素敵で一度行ってみたくなるシーンが多々ありとてもよかったです。
  • misumi
    3.7
    日本とシンガポールを跨いだ家族ドラマ。レシピが家族を繋ぎ、味が絆を修復する。涙なしでは見られない、心温まるストーリー。味は記憶に残り、思い出を呼び起こす。 ドキュメンタリーみたいに不器用に進んでいくシーンが多くて、不思議な気持ちになった。松田聖子が可愛い〜!美味しそうな料理の連続で、お腹が空く。おじさんのキャラが濃くて面白い!レスリーキーがめちゃくちゃちょびっと出てるらしい(私は気付かなかったけど友達が言ってました笑)
  • KUBO
    3.6
    思った以上にいい映画だった。 上映前に東京国際映画祭の矢田部さんが言っていた通り、お腹がすく映画だったのは確か。全編に渡って登場するシンガポール料理やラーメンが美味そう、美味そう! 揺れたり、水が出たりじゃなく、匂いが出る4DXがあったら、この映画に最適だろうなぁ。 ただ、それだけの映画じゃなくて、本作は太平洋戦争が落とした日本とシンガポールとの間の過去と再生を、家族と料理を通して描く。 主人公マサト(斎藤工)は日本人とシンガポール人のハーフ。日本人の父とシンガポール人の母との結婚はかつて一族に波紋を立てた。祖父を日本人に殺され、日本人を憎む祖母と、料理を通して心を通わせていくマサト。絶妙な脚本だ。 主演の斎藤工は最近ハジけた役にチャレンジしては失敗を繰り返しているが、本作では肩に力が入りすぎない自然な演技で好感が持てる。突然出てきた松田聖子には苦笑したな。下手ではないが目立ちすぎる。ここまで有名な人は、時に作品の空気を乱す。 エリック・クー監督とは2014年の東京国際映画祭の審査員顔合わせでご挨拶をさせていただきましたが、日本文化に造詣の深い監督さん。前作「TATSUMI」も知る人ぞ知る日本人漫画家を取り上げた力作だったが、本作も日本とシンガポールをつなぐエリック・クー監督の思いがこもった良作。1年遅れだが、見られてよかった。
「家族のレシピ」
のレビュー(267件)