第31回東京国際映画祭閉幕!劇場公開が期待される注目5作品をピックアップ

2018.11.05
映画

「映画」を主軸に活動中のフリーライター

春錵かつら

第31回東京国際映画祭(2018)で上映された『アリー スター誕生』『華氏 119』『半世界』『輝ける日々に(『サニー』ベトナム版)』『漫画誕生』をご紹介。

2018年10月25日~11月3日に開催された「TIFF」こと東京国際映画祭。第31回目となる今年からは開催会場に東京ミッドタウン日比谷も加わり、例年にも増す盛況のうちに閉幕した。

今回TIFFに参加した筆者が、上映作品の中から話題を集めた5作品をピックアップしてご紹介。

『アリー/ スター誕生』

昼間はウェイトレスとして働き、金曜の夜は小さなバーで歌う日々を送るアリー。ある日、彼女の歌を耳にしたのは世界的シンガーのジャクソン・メインだった。彼女の歌に惚れ込んだジャクソンの手筈によって彼の舞台で歌声を披露したアリーは、瞬く間にスターダムを駆け上っていく。

今年のオープニングを飾った特別招待作品として上映された本作。アリーを演じたのは泣く子も黙るレディー・ガガ。ガガはこれまでにも『シン・シティ 復讐の女神』『マチェーテ・キルズ』などの映画に出演しているが、主演は今作が初めて。ジャクソンを演じたブラッドリー・クーパーも本作で初監督を務めた。

アリー スター誕生

物語はニューヨークのクラブでダンサーとして生計を立てていたガガ本人の人生を彷彿とさせる。度重なる挫折で夢を諦めかけている女性がその才能を世に知らしめ、スターへと駆け上がる……。物語もさることながらレディー・ガガの素晴らしい歌声、そして素顔の彼女の瑞々しい演技が光る。

しかしそれ以上に驚かされるのがブラッドリー・クーパーの歌声だ。ガガの魅力はもちろんだが、監督ブラッドリー・クーパーの歌声という新たな才能も目にできる一作となっている。タイトルにある「スター誕生」の称号を、彼にもあげたいくらいだ。

日本では2018年12月21日より劇場公開される。

アリー スター誕生

『華氏 119』

アメリカはなぜ、彼を当選させたのか。

2016年、あり得ない選挙結果が世界を驚愕させた。本命とされていたヒラリー・クリントンとその陣営は当然訪れるであろう勝利に沸いていた。ところが蓋を開けてみると、過激な発言で炎上を繰り返す“不動産王”ドナルド・トランプが第45代アメリカ合衆国大統領に当選したのだ。

選挙前にトランプが勝つだろうと予測していたマイケル・ムーアは、この理不尽な選挙結果とそれを現実のものとしてしまった要因を独自の取材でえぐり出してゆく。

華氏119

ボウリング・フォー・コロンバイン』『華氏911』など、アポなし突撃取材のスタイルでお馴染みのマイケル・ムーア監督による新作。ブッシュ政権を批判した『華氏911』と対になるようなタイトルの本作は、トランプ政権にモノ申すドキュメンタリーだ。

タイトルの『華氏119』は単に『華氏911』を逆にしたわけではなく、現アメリカ合衆国大統領ドナルド・トランプが勝利宣言した日、2016年11月9日のこと。本作でもムーア独特の風刺と観察眼は健在。今のアメリカ社会が抱える問題に鋭く切り込む。

現代日本にも重なるさまざまな問題点が浮き彫りになる中、マイケル・ムーア監督は観客に投げかける。「民衆が黙れば、民主主義は滅ぶ」と。まさに“今観るべきドキュメンタリー”だろう。

2018年11月2日から劇場公開されている。

華氏119

『半世界』

中学からの旧友で元自衛官の瑛介が、久しぶりに故郷に戻ってきた。山中で備長炭を製炭し生計を立てている紘は何かと瑛介の世話を焼くが、瑛介の様子がどこかおかしいことをもう一人の同級生・光彦の言葉で気づかされる。瑛介の帰還で再び揃った親友三人組。これをきっかけに、紘はなんとなく父から継いだ仕事に黙々と取り組むことで家のことは妻に任せきり、息子にも無関心だった自分の世界に向き合うことになる。

コンペティション部門の観客賞に輝いた本作。監督を務めたのは『』『北のカナリアたち』を手掛けた阪本順治。主人公の紘を稲垣吾郎、瑛介を長谷川博己、光彦を渋川清彦が40歳手前の男をそれぞれ魅力たっぷりに演じている。

半世界

稲垣吾郎演じる“紘”という人間は、悪い人間じゃないのだけれど、家庭のことについては面倒くさくて関わろうとせず、仕事をしていた方が気が楽で、旧友とは割と積極的に関わろうとする。現在の象徴的な40代前後の日本人男性像が感じられ、リアリティが溢れる。そして確実に、今まで出会ったことのない稲垣吾郎がそこに居る。

人物像や人間関係、小さなやり取りや生活習慣、そういったさまざまなものが本当に「日本」らしく、これが東京国際映画祭に訪れた海外の映画人たちの目にどう映ったのかがとても興味深い。

“大人に変わった男たちの変わらない友情”が微笑ましく、もどかしく、羨ましい。そちらも“世界”で、こちらも“世界”だ。どの人の眼の前にも“世界”は広がっている。

2019年2月に公開予定。

長谷川博

『輝ける日々に(『サニー』ベトナム版)』

入院中の母の見舞いに病院を訪れたヒュー・フォンは、別の病室にいた高校時代の友人ミ・ズンと再会する。ガンに冒された彼女の余命がいくばくも無いと知ったフォンは、今となっては音信が途絶えていた当時の仲良しグループ「荒馬団」のメンバーたちを25年ぶりに再び集めようとする。

2011年の韓国映画『サニー 永遠の仲間たち』のベトナム版リメイク。日本でも2018年、大根仁監督によって『SUNNY 強い気持ち・強い愛』としてリメイクされた。韓国版では1980年代後半だった高校時代パートをベトナム版ではベトナム南北統一の直前である1975年に、2011年だった現代パートを2000年に移して物語が展開する。

見どころは物語の肝のひとつである大立ち回りのシークエンス。敵対するグループと衝突する場面で、それぞれの時代に即したお国柄がよく表れるのが興味深い。また、ヒロインが憧れの人と一緒に家の近くまで帰るシーンは、本作ベトナム版では雨が降っており、束の間のミュージカルシーンがこの上なくキュートだ。

かつて田舎出身の転校生で、今となっては裕福な専業主婦である主人公フォンを演じたのはホン・アィン。高校生時代を演じたホアン・イェン・チビは、日本版の広瀬すずを彷彿とさせる。

つかの間の初恋、他愛のないことで笑ってばかりいたあの頃。3回に渡るリメイクがすべてアジアというのは、共通するセンチメンタルな要素があるのかもしれない。3つの国それぞれのバージョンを見比べるのもオススメだ。日本公開は未定。

『漫画誕生』

日本を代表する文化としていまや世界共通語となった「MANGA(漫画)」。そんな漫画を「漫画」と名付け、職業として確立したにも関わらず、歴史に埋もれてしまった人物を御存知だろうか。本作は「近代漫画の父」と呼ばれた“日本近代漫画の祖”、北沢樂天の人生を追った伝記ドラマだ。

舞台は明治時代。幼い頃から絵を描くことが好きだった樂天は、19歳の時に外国人向けの英字新聞の会社に入社。オーストラリア人漫画家から西洋漫画を学び、漫画欄を引き継ぐ。23歳で福沢諭吉が創刊した新聞を発行する時事新報社に入社し、人気を博していく。

監督を務めたのは新進気鋭の大木萠監督。主人公・樂天をイッセー尾形、糟糠の妻・しのを篠原ともえが好演している。樂天が日本人離れしたタッチで描く日本社会や文化は多くの庶民に受け入れられ、当時“ポンチ絵”や“おどけ絵”と呼ばれ評価の低かった風刺画を、大人から子供まで楽しめる「漫画」へと発展させた。

“漫画の神様”と呼ばれる手塚治虫も影響を受けた一人である北沢樂天。今となってはその名を知るものは少なくなった彼の作品の数々も本編では拝むことができる。本作を通して彼の功績をいま一度、振り返りたい。2019年に公開予定。

(C)2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC、(C)2018「半世界」FILM PARTNERS、(C)2018 CJ HK ENTERTAINMENT、(C)2018 Midwestern Films LLC 2018、(C)漫画誕生製作委員会

【あわせて読みたい】
※ 映画『半世界』阪本順治監督「映画は物語ではなく人語(ひとがたり)」【インタビュー】​
※ 【今月の観たい映画No.1は】11月公開映画の期待度ランキングTOP20発表
 『SUNNY』大根仁監督×『サニー』大好き芸人しずる・村上純 日本版の是非を問う【究極の対談】​

記事をシェア

公式アカウントをフォロー

  • RSS