モデルとしてキャリアをスタートさせ、数々の映画・ドラマの出演を経て、日本を代表する女優のひとりとして評価を集める二階堂ふみ。そんな彼女の出演映画をまとめて紹介しよう。
二階堂ふみ プロフィール
二階堂ふみは1994年9月21日沖縄県那覇市生まれ。身長157cm。
12歳の時にフリーペーパー「沖縄美少女図鑑」に掲載されたことをきっかけに芸能界入り。ティーン向けファッション誌「ニコラ」の専属モデルを務めるなど、モデルとして雑誌や広告を中心に活躍。
2007年にTVドラマ『受験の神様』で女優デビュー。その後、2009年に『ガマの油』で映画初出演、2011年の『劇場版 神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴り止まないっ!』で映画初主演を果たした。
園子温監督『ヒミズ』ではその演技が評価され、第68回ヴェネツィア国際映画祭で最優秀新人賞「マルチェロ・マストロヤンニ賞」を受賞。2018年、行定勲監督がメガホンをとった主演作『リバーズ・エッジ』では体当たりの演技が話題に。
2019年は『翔んで埼玉』『人間失格 太宰治と3人の女たち』『生理ちゃん』など出演作の公開が続く。
また、2014年には慶應義塾大学総合政策学部に合格するなど、女優としてはもちろん、写真家、雑誌・文芸誌での執筆活動など多方面で才能を発揮している。
『指輪をはめたい』(2011)
真実の愛探しをリードする謎の少女
伊藤たかみによる同名小説を実写映画化。婚約指輪を渡せずに記憶喪失になった男のもとに、彼女だと名乗る3名の女性が現れ、記憶と現実を奔走しながら本物の恋人を見つけ出すラブコメディ。
本作で二階堂ふみが演じるのは、記憶喪失の男(山田孝之)の相談にのる謎のスケート少女。無邪気にスケートリンクを滑りながら、時に厳しく時に優しく、男性にアドバイスを送る。実は物語の鍵を握る人物で、物語の終盤には無邪気なスケート少女とは別の顔を見せる。
『ヒミズ』(2011)
愛する人に守り守られたい15歳
古谷実の人気漫画を鬼才・園子温監督が実写映画化。平凡な15歳の少年・祐一と少女・景子の日常が、ある事件をきっかけに狂気に満ちたものへと激変する様子を描く。
本作で染谷将太とW主演を務めた二階堂ふみは、愛する人と支えあって生きることを夢見て、染谷将太演じる祐一に恋い焦がれて猛アタックする女子を熱演。第64回ヴェネチア国際映画祭でマルチェロ・マストロヤンニ賞(最優秀新人俳優賞)を受賞した。
『地獄でなぜ悪い』(2013)
敵の親分まで魅了するヤクザの娘
獄中の妻のために娘を主役にした映画を撮りたいヤクザと、それに巻き込まれた人々をコメディタッチで描く、園子温監督作品。
二階堂ふみは、映画を撮りたい父(國村隼)の娘ミツコ役で出演。ヤクザの娘らしい気の強さと持ち前の可愛さで、敵対する組の親分まで魅了する。可憐さと、日本刀を振り回す凶暴な立ち振る舞いのギャップに彼女の魅力が溢れ出る。
第70回ヴェネツィア国際映画祭で公式上映され、第38回トロント国際映画祭ではミッドナイト・マッドネス部門観客賞を受賞した。

『四十九日のレシピ』(2013)
家族再生を支える天真爛漫な少女
伊吹有喜の小説を実写映画化。すれ違いのまま死んでしまった母に、後悔の念で塞ぎ込む父と娘。そこに母が残した「レシピ」を持った少女が現れる。大切な人を亡くした家族が、残ったレシピを元に再生していくまでの49日の物語。
二階堂ふみが演じるのは、ゴスロリ衣装の少女イモ。塞ぎ込んだ家族にレシピと明るさを持ち込み、自身も心に傷を負いながらもまっすぐな姿勢を貫く役柄を演じる。本作に加え、同年に公開された『地獄でなぜ悪い』と『脳男』での演技が評価され、2012年ブルーリボン賞助演女優賞を受賞した。
『ほとりの朔子』(2013)
「大人」へ変わりゆく18歳の浪人生
深田晃司監督による日本とアメリカの合作映画。18歳の浪人生・朔子は夏休みに訪れた叔母の家で、様々な人と交流しながら過ごす。モラトリアムな時期に揺れ動く、10代の心情と恋心を描いた青春映画。
主人公の朔子を演じた二階堂ふみは、公開当時19歳。朔子と年齢が近く、少女から大人へと変わりゆく繊細な10代後半の心の機微を豊かな演技力で表現している。
本作はフランスの第35回ナント三大陸映画祭で最高賞となる「金の気球賞」と「若い審査員賞」をW受賞した。
『私の男』(2013)
禁断の愛に溺れゆく少女
第138回直木賞を受賞した桜庭一樹の同名ベストセラー小説を実写映画化。冬の北海道を舞台に、親をなくした少女を引き取った男とその少女の禁断の恋を描く。
二階堂ふみが演じるのは、遠縁の男・腐野淳悟(浅野忠信)に引き取られる少女・腐野花。世間知らずの可憐な少女から、男を愛することを知った妖艶な大人の女性になるまでを好演。成長の分岐点となる、赤い液体と身体が絡み合うシーンは印象的。インモラルな表現や内容も話題に。
第36回モスクワ国際映画祭のコンペティション部門に正式出品され、最優秀作品賞に選ばれた。
『日々ロック』(2014)
ロックとキュートを兼ね備えたアイドル
「週刊ヤングジャンプ」に連載された榎屋克優の人気ロック漫画を「SR サイタマノラッパー」シリーズの入江悠監督が実写映画化。日本一かっこ悪くて売れないロックシンガーとトップアイドルのロックな恋愛模様をコミカルに描く青春ムービー。
二階堂ふみは、舞台ではキュートに歌う反面、私生活ではアイドルのイメージとはかけ離れた、凶暴な振る舞いを見せるトップアイドル・宇田川咲を熱演。劇中では、RCサクセションの「雨あがりの夜空に」を熱唱する場面も。
『味園ユニバース』(2015)
大阪のおかん的バンドマネージャー
大阪のサブカルチャースポットとして知られる味園を舞台に、記憶を無くした男とその男を拾った女カスミが、歌を通じて未来へ歩み始める人間ドラマ。
当時、関ジャニ∞のメンバーであった渋谷すばるの初主演にして、ソロデビューを果たした映画。監督は『リンダリンダリンダ』『苦役列車』の山下敦弘。
二階堂ふみ演じる高校生のカスミは、アマチュアバンド「赤犬」のマネージャー。大阪のおかん的な優しさとたくましさでバンドメンバーをまとめる。関西弁での演技を見られる貴重な一作。
『ジヌよさらば かむろば村へ』(2015)
東京に憧れる田舎の女子高生
漫画家いがらしみきおの「かむろば村へ」をもとに、松尾スズキ監督・脚本で実写映画化。お金恐怖症によって、ゼニ(=ジヌ)を一切使わない生活を決心した男・タケ(松田龍平)が東北のかむろば村に移住し、村人たちと交流を深めていくヒューマンコメディ。
二階堂ふみは、東京に憧れるかむろば村の女子高生・青葉を演じる。東京に行くための交通費を稼ぐために男をたぶらかす日々を送り、タケにもお金目的で近づく。
『この国の空』(2015)
一番きれいな時を戦争に翻弄される少女
高井有一による谷崎潤一郎賞を受賞した同名小説を、終戦70周年記念作品として実写映画化。第二次大戦終戦間近の東京を舞台に、まだ恋愛を知らぬ少女と妻子のある男が許されぬ愛に溺れていく様を描いたヒューマンドラマ。監督は17年ぶりにメガホンを取った脚本家の荒井晴彦。
二階堂ふみが演じるのは19歳の少女・里子。戦争という極限状況の中で、結婚をできぬまま死ぬかもしれないという不安と禁断の愛の中で揺れ動く少女の葛藤を表現した。
『蜜のあわれ』(2016)
老作家を惑わす金魚の化身
文豪・室生犀星の幻想文学を石井岳龍が実写映画化。老作家と金魚の少女との不思議でエロティックな日常を描いたファンタジー。
二階堂ふみが演じるのは、老作家を惑わせる金魚の化身である少女・赤子。可愛らしい仕草に溢れるキャラクターで、踊って笑って怒って泣いてと、喜怒哀楽を表情豊かに演じた。
『ふきげんな過去』(2016)
現実を達観している女子高生
『ジ、エクストリーム、スキヤキ』に続いて2作目となる、劇作家・前田司郎のオリジナル脚本による監督作品。夏休みを過ごす女子高生・果子の前に、死んだと聞かされていた伯母・未来子が突然現れる。二人のやりとり、家族のやりとりを通じて、親子の繋がりを描くヒューマンドラマ。
伯母役・小泉今日子とのW主演にして初共演となる本作で、二階堂ふみはいつも不機嫌な女子高生・果子役を務めた。退屈な毎日の中で、「面白さなんて期待するのが間違い」と達観したように振る舞うニヒルさが印象的。
『SCOOP!』(2016)
ミーハーの新人から一人前の記者へ
1985年製作の原田眞人監督による映画『盗写 1/250秒』を原作に、『モテキ』『バクマン。』の大根仁監督がリメイク。中年パパラッチ・都城静(福山雅治)と写真週刊誌「SCOOP!」編集部メンバーによる激動の報道現場を描くエンタメ作。
二階堂ふみ演じる新人記者・行川野比は、編集部に配属されてすぐに都城と組まされる。破天荒な仕事の仕方に違和感を覚えながらも、次第に報道とは何かを理解し成長していく。
『何者』(2016)
意識高い系の就活生
『桐島、部活やめるってよ』の原作者である朝井リョウによる、第148回直木賞受賞の同名小説を実写映画化。就職活動中の5人の大学生が、SNSや面接などで見え隠れする本音や見栄、葛藤を通じて、次第に本性が現れる様子を描く。
佐藤健、有村架純、菅田将暉、岡田将生ら若手俳優陣のなかで、二階堂ふみが演じるのは“意識高い系”の理香。横文字を駆使して海外経験などを積極的に語るも、思うように結果が出ずに不安を募らせていく。
『リバーズ・エッジ』(2018)
90年代の閉塞感の中で生きる女子高生
岡崎京子の人気漫画を『ピンクとグレー』や『ナラタージュ』の行定勲監督が実写映画化。1990年代、バブル崩壊後の閉塞感が漂う平成初期の時代を生きる高校生たちの悩みや欲望を描いた青春ドラマ。
女子高生・若草ハルナを演じる二階堂ふみは、高校生活に違和感を感じながらも、繰り返しの日々を過ごす。しかし、いじめられっ子の山田(吉沢亮)が見せてくれた「死体」をきっかけに日常が少しづつ変化していく。90年代ファッションに身を包む姿は新鮮。オールヌードを披露したことでも話題を呼んだ。
『いぬやしき』(2018)
悪役に想いを寄せる女子高生
「GANTZ」で知られる奥浩哉原作の同名漫画を実写映画化。事故をきっかけに人智を超えた力を手に入れた高校生と初老のサラリーマンが、それぞれの目的のために戦う姿を描いたSFアクション。
二階堂ふみが演じるのは、超人的な能力を手にいれた高校生・獅子神(佐藤健)に恋する同級生・渡辺しおん。身体がサイボーグ化した獅子神を目の前にしても怖がることはなく、獅子神の抱える葛藤に涙を流す心優しい女子を好演。たどたどしい話しぶりが印象的。
『翔んで埼玉』(2018)
東京都出身のエリート美少年
魔夜峰央による同名コミックを実写映画化。埼玉県民が東京都民から迫害を受けている架空の世界を舞台に、東京都知事の息子と埼玉出身の転校生による県境を超えたラブストーリーを描く。
主演の二階堂ふみが演じるのは、都知事の息子で、東京の名門高校である白鵬堂学院の生徒会長・壇ノ浦百美。アメリカ帰りの謎の転校生・麻実麗(GACKT)に想いを寄せ、お互いに惹かれ合うも、麻実が埼玉県出身であるという事実を知ってしまい…。
キャリア初の男性役を演じ、コミカルな作風の中にあっても凛とした美少年ぶりで、新たな魅力を発揮した。
『人間失格 太宰治と3人の女たち』(2019)
太宰治の最後の女
作家・太宰治が死の直前に発表して遺作となった「人間失格」。そのドラマチックな誕生秘話を『ヘルタースケルター』の蜷川実花監督が映画化。小栗旬演じる太宰治の恋と生き様をサスペンスフルに描く。
二階堂ふみが演じるのは、太宰治の愛人で最後の女である、未亡人の山崎富栄。出演に寄せて「とうとうこの作品に出会ってしまいました。美しく儚い、そんな夢を見ていたような現場でした」とコメントしている(作品公式サイトより)。
『生理ちゃん』(2019)
女性の共感をさらう、整理に振り回されるOL
女性の生理をポップに擬人化し、インパクトのあるキャラクターで多くの反響を呼んだ小山健の同名短編コミックを、二階堂ふみ主演で実写映画化。伊藤沙莉、岡田義徳、松風理咲らが共演。
二階堂ふみが演じるのは、出版会社の編集部に務める米田青子。突然やって来る “生理ちゃん”に振り回されながらも、仕事にも恋愛にも精力的に打ち込む。
『ばるぼら』(2019)
大酒飲みでだらしないのに、不思議な魅力溢れるミューズ
手塚治虫が1970年代に発表していた大人向け漫画「ばるぼら」を二階堂ふみ&稲垣吾郎のW主演で実写化し、2020年公開予定。手塚治虫の長男である手塚眞が監督を務めることでも話題。二階堂ふみはばるぼら役を演じる。
人気小説家の美倉洋介は、新宿駅の片隅で、ホームレスのような酔っぱらった少女ばるぼらに出会い、つい家に連れて帰る。大酒飲みでだらしないばるぼらだが、美倉はなぜか奇妙な魅力を感じて追い出すことができなかった。彼女を手元に置いておくと不思議と美倉の手は動きだし、新たな小説を創造する意欲がわき起こるのだ。ばるぼらはあたかも芸術家を守るミューズのようだった。
【文/真央masao】
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※2020年9月26日時点のVOD配信情報です。