唄って踊るだけじゃない!インド映画の祭典【IFFJ】観賞ガイド

Why So Serious ?

侍功夫

日本で唯一と言えるインド映画に特化した映画祭IFFJ(インディアン・フィルム・フェスティバル・ジャパン)が2015年の今年も開催されます。

東京は渋谷ヒューマントラストシネマで10月9日から10月23日まで。

大阪は大阪シネヌーヴォで10月10日から10月22日まで。

厳選された13本のインド映画(モチロン日本語字幕付き)が日替わりで上映されます。

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スケジュールはコチラを参照
<東京会場>ヒューマントラストシネマ渋谷
http://www.ttcg.jp/human_shibuya/topics/detail/41287
<大阪会場>シネ・ヌーヴォ
http://cinenouveau.com/sakuhin/iffj2015/iffj2015.htm

今年で4回目となりますが回を追うごとに来場者を増やしている、現在日本で最も注目すべき映画祭の一つだと言えるでしょう。

また、IFFJは他の多くの映画祭と違い、上映されるのは徹底した娯楽作品ばかりです。「映画祭」という言葉が孕む排他的なアカデミックさは無し! 広く門戸が開かれた、お子さんから老人まで誰でも楽しめる映画祭になっています。

そこで、今年の上映作品13本を5つのカテゴリーに分けて、観賞作品選びのガイドをいたします。アナタにとってのステキな1本が、ないし2本、もしくは3本…… 13本までなら今回の映画祭で見つかるハズです!

熱いラブ・ロマンスにノック・アウト!

豊かな詩情にあふれた情景とロマンティックな歌で、ヤケドしそうに熱い恋心を描くことでも有名なインド映画の真骨頂、ラブ・ロマンス映画です。

『銃弾の饗宴 -ラームとリーラ-』

原題:Goliyon Ki Raasleela Ram-Leela

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出典:https://en.wikipedia.org/wiki/Goliyon_Ki_Raasleela_Ram-Leela

シェイクスピア「ロミオとジュリエット」の舞台をインドへ移し、街を二分するギャング団の跡取り同士の抗争と恋の物語へ翻案した作品です。レンブラントを思わせる自然光の作る美しい陰影と、インドらしい華やかなドレスが舞う情景の中で、彫刻の様に端正な男女が銃弾の飛び交う愛憎劇を見せます。

『ハッピー・エンド』

原題:Happy Ending

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出典:https://en.wikipedia.org/wiki/Happy_Ending_(film)

金策のため不得手なロマンティック・コメディ映画の脚本執筆を迫られた作家が、糸口を掴もうと新進気鋭の女流恋愛作家に接近していくのですが、当の彼女は恋愛感情を全く信じないペシミストだった、というお話です。日本でもスマッシュ・ヒットを飛ばした『インド・オブ・ザ・デッド』監督による作品で、本作もやはり換骨奪胎した楽しさがあります。

『ロイ』

原題:Roy

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出典:https://en.wikipedia.org/wiki/Roy_(film)

新作映画の脚本執筆が進まない映画監督の恋物語と、小粋な絵画泥棒の物語が並行に語られる意欲作です。リゾート地でスランプに陥る映画制作者といえばフェリーニの『8 1/2』や『バートン・フィンク』などの傑作がありますが、それらとも趣の違った作品になっています。

『ヨイショ!君と走る日』

原題:Dum Laga ke Haisha

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出典:https://en.wikipedia.org/wiki/Dum_Laga_Ke_Haisha

カセットテープ屋で店番をする男が親の命令でお見合い結婚するも、花嫁がポッチャリなことに不満タラタラ。ついに離婚を申し出るも家庭裁判所から「もう半年、一緒に暮せ」とお達しを受けてしまいます。嫌々ながら暮らしていく内に、彼女の良い面や、自分の悪い所に気付いていくのです。ムキムキの色男と絶世の美女の恋物語とは対極の、平凡な男女のささやかでホノボノとしちゃう関係を描いた作品です。

インドの景色と人情に触れたい!

様々な国に統治された歴史、巨大な国土ゆえに多様化した文化、それらをゴッチャに受け止めるマサラ体質を持ったインド特有の、壮大かつおおらかなロード・ムービーです。

『ファニーを探して』

出典:Finding Fanny

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出典:https://en.wikipedia.org/wiki/Finding_Fanny

大阪アジアン映画祭でも話題となったロード・ムービー・コメディです。47年前に出したラブレターが読まれる以前に届いてすらいなかったことを後に知った老人が、友人の若者を引き連れて、恋焦がれたラブレターの送り相手を探す旅に出ます。ポルトガル植民地時代の遺跡を多く残したインドのゴア州を舞台に、まるでヨーロッパ映画のようなロケ撮影が、キツめなブラック・ユーモアで彩られた作品になっています。

『ピクー』

原題:Piku

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出典:https://en.wikipedia.org/wiki/Piku

デリーに住む愚痴っぽい父親と、怒りっぽい娘ピクーの親子がコルカタへ、タクシーの長旅をするハメになるというロード・ムービーコメディです。アミターブ・バッチャン(『華麗なるギャツビー』)、ディーピカ・パードゥコーン(『恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム』)、イルファン・カーン(『ジュラシック・ワールド』)と日本にも馴染み深い俳優が揃った作品です。序盤と後半で登場人物の印象が変化していく様子が心地よい作品になっています。

インド最新アクション/サスペンス映画!

スリルとサスペンスをド派手なアクションで突破! インド製娯楽大作はハリウッド製とはひと味もふた味も違った魅力があります。

『バン・バン!』

原題:Bang Bang!

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出典:https://en.wikipedia.org/wiki/Bang_Bang!

トム・クルーズとキャメロン・ディアスの『ナイト&デイ』正式リメイクですが、設定がかなり変更されています。同じなのは平凡な女性が国際的な陰謀に巻き込まれる、という大雑把な構成のみです。要所々々に似た場面は登場しますが全体的に派手に楽しく改変されていますので、比べて観賞するのをオススメします。

『ベイビー』

原題:Baby

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出典:https://en.wikipedia.org/wiki/Baby_(2015_film)

イスラム過激派によるテロと暗殺のスパイ合戦が、本格的な描写で描かれます。インドのスパイ映画というと日本でも公開された『エージェント・ヴィノッド 最強のスパイ』や『タイガー ~伝説のスパイ~』がありますが、それらを派手で愉快な「ミッション:インポッシブル」とするなら本作はインド版「ジェイソン・ボーン」と呼びたい本格派です。

『女戦士』

原題:Mardaani

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出典:https://en.wikipedia.org/wiki/Mardaani

娘同然にかわいがっていた孤児の少女を誘拐された女性刑事が、持ち前のガッツとタフさでインドの黒社会に突入していく警察映画です。インド発のニュースというと女性の受難が多く取り沙汰されています。本作はそんな悪辣な男どもへ、ガラッパチなインド女性からのカウンターパンチになっているのです。

ダークサイド・オブ・インド

楽しかったり、美しかったり、美味しかったり、インドの持っているイメージは明るいものが多いですが、後ろ暗い面も当然あります。

『国道10号線』

原題:NH10

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出典:https://en.wikipedia.org/wiki/NH10

2015年のカナザワ映画祭「田舎ホラー」特集でも上映された作品です。インドの田舎町へドライブ旅行へ出かけた若い夫婦が、通りがかった村の若者たちによるリンチ殺人を目撃してしまったことで、村人全員から追われることになります。序盤で夫婦の鼻持ちならないスノッブな様子を見せた後で、真逆の田舎の人々を見せて対比させる構成が見事です。

『復讐の町』

原題:Badlapur

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出典:https://en.wikipedia.org/wiki/Badlapur_(film)

銀行強盗の人質にとった母子を殺して捕まった犯人と、殺された母子の復讐を誓う父親を描いた作品です。しかし、いわゆる復讐劇の様な作りにはなっていません。投獄された犯人は牢名主にいじめられ続けた上にガンを患い、母子を失った父親の復讐はおよそ共感出来かねる陰湿なものです。近年、イヤな気分になるミステリー作品を「イヤミス」とジャンル立てする様になりましたが、本作はかなり良質な「インド・イヤミス」と呼べるでしょう。

『野獣一匹』

原題:Ek Villain

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出典:https://en.wikipedia.org/wiki/Ek_Villain

愛妻を殺されたマフィアの殺し屋が犯人を追っていく様子と、妻に邪険にされ続ける弱い男が連続殺人を犯す様子が並行して描かれます。『復讐の町』と同じ「殺された妻の復讐」をテーマに持っていますが、「赦し」まで含めた人間の業と深淵を描いた作品になっています。

???IFFJ恒例、マジカル・ミステリー枠???

毎年十数本の映画を厳選して上映するIFFJですが、その中にインド映画好きにすら、あまり素性の知られていない作品を混入させるのが恒例になっています。

『どうして』

原題:Q

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出典:https://www.facebook.com/Qthefilm/timeline/

今年の“マジカル・ミステリー”枠作品はこの『どうして』(Q)です。静謐な雰囲気のあるポスターには各国映画祭への参加や受賞が記されていますので、本作に限りいわゆる“映画祭っぽい”作品なのかもしれません。

IFFJの楽しみ方

IFFJは日本で数少ないインド映画上映機会ですから、見られる限りチケットを取って、へろへろになるまでインド映画に首まで浸かるのが、映画ファンの楽しみ方です。

ですが、映画は1日1本のみ! という人は多くいるそうですし、インド映画に詳しくない人が、よく知らない映画13本の中から1本を選別するにも糸口が無い! とお嘆きの方もいると思います。

そんな人は『銃弾の饗宴 -ラームとリーラ-』『ピクー』『バン・バン!』いずれかの観賞をオススメします。他の作品も素晴らしいですが、この3作は今回選ばれた13作品の中でも、特に人気の高い作品です。2015年のIFFJを代表する作品だと言っても過言では無いでしょう。

IFFJでは、インド特有の言葉の響きや音楽の音色などの文化、祈る神様がクリシュナやガネーシャだったりする宗教観、底抜けに派手な結婚式、あんがいシャバシャバしたカレーなどなど。独特なインド文化に触れる稀な機会です。

上記した通り、日本で上映機会が多くないインド映画の上映会ですので、日本に住むインド人の方も多く来場されています。

上映作、会場の雰囲気、お客さん、なにもかもがインド色に染まったインスタレーション体験が出来るのもIFFJならではの楽しみです。是非、会場で素敵な「マサラ体験」をしてみてください。

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  • るーくはクール
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    4月10日(月) 鮮やか。赤がイメージカラーな作品。 両家とも強い個性 恋に発展するのも早くてテンポいい 最後は悲しい
  • r
    3.3
    一目惚れにも程があるだろって感じだった
  • Hatao
    4
    JAIHOにて鑑賞(現在は既に配信終了済) ずっと見たかったインド版ロミジュリことラームリーラー。 バンサーリー監督らしくやはり色の使い方がとても綺麗。 きらびやかで見てて美しいのですが、まーーー治安が悪い。 装飾が綺麗なだけで、治安の悪さだけで見たらドラマのミルザープルより絶対悪い。 インド版ロミジュリと呼ばれているのでオチはどうなるかある程度予想出来てましたが、想像より遥かにしんどい。 バンサーリー監督の描く悲恋は正直あまり自分には合いませんが、それでも見たくなってしまうのが凄いところ。
  • samaco
    3.8
    インド映画見て育ってきたけど、これは本当に曲も全部良い。 内容はロミジュリ的た感じ。 (小学生の頃見たから曖昧)
  • ロアー
    3.7
    インドのバズ・ラーマン、バンサーリー監督。 あるいはバズ・ラーマンがオーストラリアのバンサーリーなのか、、、ともかくバンサーリー監督のインド版ロミジュリを観ました。監督の感性が似通ってるとやっぱり「ロミジュリ」は一度はやってみたいお話なのかな?また例のごとくJAIHOの配信期限ギリギリに観たんですけど、今日はいつメンでバズ・ラーマンの「ロミジュリ」を観る予定だったからめちゃくちゃちょうど良いタイミングでした。 ⁡ ランビール・シン演じるラームがいわゆるロミオ、ディーピカー演じるリーラーがいわゆるジュリエット。 ⁡ 「ロミジュリ」がベースと言えども、どちらかというと前半は「ウエストサイド物語」の方に近い展開でした。でも町人全員が銃を持っているようなヤバい地域が舞台のお話なので、一個の銃でワーワーやってたジェッツとシャークスがかわいく見えちゃう。 特にサネラ家サイドの女ボスであるママンが怖過ぎて、実の娘にも容赦なくてヒエッとなりました。 ⁡ そんな両家の息子と娘なので、ラームとリーラーも中々やんちゃな肉食系。お互いフィーリングが似た者同士でバカップルないちゃつきがかわいかったものの、ベッドで踊るリーラーのお香ダンスやラームの腰パンもち●んこロードが見えるくらい際どくて中々エチーでした。「胸毛のない男は信用できない」にちょっと笑った。 ⁡ ゲストであるプリヤンカーのダンスシーンもキラキラで素敵だったし、クライマックスにはキラキラパレードまであったのに、、、ラスト・・・ちょ、、、 これ、胸糞映画ランクに必ず入るあの三文字のタイトルの映画と同じことが起きてるじゃないか・・・
銃弾の饗宴 ラームとリーラ
のレビュー(160件)