来る』は常識を覆す最恐エンターテインメント!まさに中島監督でしか撮れない作品で、そのセンスはさらに進化しています。彼は一体どんな人物で、どんなキャリアを築いてきたのでしょうか。
そんな中島監督のスタイルはいかに磨かれてきたのか、監督のキャリアを振り返り、最新作の魅力に迫ってみたいと思います。
CM界の巨匠から日本映画を代表するヒットメイカーへ
大学在学中から自主映画製作を始め、1982年に製作した『はの字忘れて』はぴあフィルムフェスティバルに入選。卒業後はCMディレクターとなり、サッポロ黒ラベルやフジカラー写ルンですなど数々の有名作を手がけ、CM界の巨匠として知られるようになります。
1997年には、少年の夏休みの出来事をノスタルジックに綴った『夏時間の大人たち』で長編映画監督デビューを飾り、2004年の『下妻物語』で若者の心を捉え大ブレイク。その後、『嫌われ松子の一生』、『告白』、『渇き。』など大ヒット作を次々と発表。日本映画を代表するヒットメイカーとなります。
役者に対して厳しい演技指導をすることでも知られており、多くの人気俳優のそれまで見たことのない一面を引き出しています。深田恭子をロリータファッションの少女に変身させ、中谷美紀に不幸の底に転落していく女を演じさせ、松たか子を復讐に駆られる教師役に起用したり、、、いずれも高い評価を獲得しています。
また、若手俳優の採用にも積極的で、モデルの土屋アンナを『下妻物語』で起用し、数々の映画賞受賞へと導きました。『告白』では当時中学生だった橋本愛を初めて映画に起用しています。また『渇き。』では小松菜奈を映画デビューさせ、強烈な印象を残しました。
『下妻物語』
嶽本野ばらの同名小説を深田恭子&土屋アンナ主演で映画化。ゴスロリ衣装に身を包んだ深田恭子と特攻服姿の土屋アンナのルックスが大きな話題を呼んだ。ポップで疾走感ある展開、アニメーション映像も挟んだ変幻自在の演出で、中島監督の作風を確立した作品と言える。
■テンポの良さ、飽きがこない。ずっと見ていられる2人。(味噌さん)
■コメディなのに胸にグッと刺さる。(アリサさん)
■キャスティングも世界観もぴっっったりで、元気がない時に見たくなるひとつです。(しおりさん)
『告白』
湊かなえの同名小説の映画化。松たか子演じる、娘を学校で殺された中学教師が生徒の中から犯人を探し出そうとするミステリー。いじめや少年犯罪、家庭内暴力など激しい内容をスタイリッシュに描く手法が見事にハマり大ヒットを記録。
■ホラーじゃないけれどどこか人間そのものの表現できない怖さがある(sirayukiさん)
■鳥肌。残酷で 美しくて 最後まで画面から目が離せなかった(namidaさん)
■奇跡的に原作を超えた映画(DDさん)
『渇き。』
深町秋生の小説「果てしなき渇き」の映画化。過激な内容ゆえに映像化は不可能と思われていた原作を、その過激さを損なうことなく見事に映像化。狂気と暴力に彩られた物語を、スタイリッシュな映像とシニカルな笑いのセンスとで見事にブレンドさせ圧倒的な映像体験を作り出している。
■最近で一番人間の汚い所を一番美しく写した映画だった(hira2さん)
■役者さんの表現力、映像の見せ方は本当にすごい(たこわささん)
■ハチャメチャでぶっとんでて、流れに遅れないように食いついて観てたらあっという間だった(花天狂骨お花さん)
ジャンルを超越する最新作『来る』
そんな中島監督の最新作『来る』は、第22回日本ホラー大賞で大賞を受賞した澤村伊智の小説「ぼぎわんが、来る」の映画化。岡田准一、黒木華、妻夫木聡、小松菜奈、松たか子など錚々たる面々を揃え、恐怖と絶望が渦巻く世界へと観客をいざなう。
香奈(黒木華)と幸せな新婚生活を送る田原秀樹(妻夫木聡)の周囲で奇妙な事件が起こりだす。秀樹は親友の紹介で、オカルトライターの野崎(岡田准一)とキャバ嬢霊媒師の真琴(小松菜奈)に相談するが、それはさらなる事件の始まりへと繋がる。幼い頃に秀樹が体験したある事件が関わっており、その時の「あれ」が襲いかかって来るのだが、「あれ」はやがて事件に関わる人々の心の闇を明らかにしていき、『告白』や『渇き。』にも通ずる、本当に怖いのは「人間」なのだということを強く印象づける作品となっている。
現代の日本社会が抱える問題、家族のあり方や子育て感の変化、ネットで肥大化する承認欲求などの要素も盛り込まれ、まさに今私たちが生きている社会の物語なのだということを強く実感させます。さらに日本古来から伝わる民間伝承を参照しているのもユニークな点で物語のクライマックスでは現代社会とミックスされ、中島監督のセンスがみなぎるスペクタクルなシーンとなっており、ポップなのにおどろおどろしく、伝統催事をスタイリッシュに見せる技はさすがの一言。今まで観たことのない映像体験を作り上げています。
本作でも、一流俳優たちの今まで見たことのない面を引き出しています 。粗野なオカルトライターを演じた岡田准一はこれまでの端正な役どころとは正反対の汚れた印象を持つ男を演じ、新境地を開拓。同じく中島映画初出演の黒木華も、毒のある欠点だらけの主婦を演じ、彼女の印象がガラリと変わる瞬間に鳥肌が立つでしょう。
中島監督作品常連の松たか子や小松菜奈などもさらなる魅力を引き出されています。日本最強の霊媒師を演じる松たか子は強烈なカリスマを見せてくれますし、その妹でキャバ嬢霊媒師を演じた小松菜奈も、ピンクのショートヘアという奇抜な出で立ちで別人のような印象を与えます。
ホラー小説の映画化ですが、単なるホラーではなく人間の怖さや醜さをポップなセンスでミックスして、怒涛の感情の渦に落とし込んでくれます。「ホラー映画を作ったんだという感覚は、正直ないんですよね」と語る中島監督ですが、そんなジャンルを超越した物語体験を観る人に約束してくれる極上の最恐エンターテイメント作品です。
◆『来る』 information
あらすじ:オカルトライター・野崎のもとに相談者・田原が訪れた。最近身の回りで超常現象としか言いようのない怪異な出来事が相次いで起きていると言う。田原は、妻・香奈と幼い一人娘・知紗に危害が及ぶことを恐れていた。野崎は、霊媒師の血をひくキャバ嬢・真琴とともに調査を始めるのだが、田原家に憑いている「何か」は想像をはるかに超えて強力なモノだった。民俗学者・津田によると、その「何か」とは、田原の故郷の民間伝承に由来する化け物「■■■■」ではないかと言う。対抗策を探す野崎と真琴。そして記憶を辿る田原…幼き日。「お山」と呼ばれる深い森。片足だけ遺された赤い子供靴。名を思い出せない少女。誰かがささやく声。その声の主…・そ・う・か!・あ・れ・の・正・体・は、・あ・い・つ・だ! 決して「■■■■」の名を呼んではならない。「■■■■」は、声と形を真似て、人の心の闇に・・・来る!!! どんどんエスカレートする霊的攻撃に、死傷者が続出。真琴の姉で日本最強の霊媒師・琴子の呼びかけで、日本中の霊媒師が田原家に集結し、かつてない規模の「祓いの儀式」が始まろうとしていた。彼らは、あれを止めることができるのか!?
公開日:2019年12月7日全国ロードショー
配給:東宝
公式サイト:http://kuru-movie.jp/
(C) 2018「来る」製作委員会
※2021年3月28日時点のVOD配信情報です。