12月16日は電話の日です。1890年のこの日に、日本国内で初めて電話が開通(東京 – 横浜間)したことが由来となっています。1890年といえばNHK大河ドラマ『西郷どん』の西郷隆盛が亡くなってからまだ13年しか経っていない頃です。
そして、時を同じくして1890年頃、映画が誕生しました。リュミエール兄弟やルイ・ル・プランスなどが競って映写機を発明し、『ラ・シオタ駅への列車の到着』や『ラウンドヘイの庭の場面』などのフィルムを残しています。
電話は映画のストーリーテリングにおいて重要な装置です。今回は電話の特性を活かした〝電話映画〟をいくつか紹介します。
『フォーン・ブース』(2002)
公衆電話で主人公の位置を固定する
2003年公開当時はすでに携帯電話が普及していて、すでに一般の人も移動しながら電話することができていました。そんな中、本作では逆に公衆電話という装置を使うことで主人公の位置を固定しました。
そのおかげで密室劇のような緊張感が生まれ、さらには〝公衆〟電話であることで警察官や野次馬から視線を集める劇場型のサスペンス性も獲得しました。
『オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分』(2013)
聴覚から得られる情報はわずか11%
人間は視覚に頼っているため聴覚情報は11%しか受け取っていないそうです。つまり電話では得られる情報が少なくなるのです。
本作の主人公トム・ハーディは電話をしながら車で逃走します。運転中に妻や会社の上司と電話で会話するので、観客はその会話内容から主人公がどういう状況で何をしようとしているのかがわかってきます。
しかし、当の電話相手はいくら会話をしても彼が何をしているのかわかりません。会話はできても姿は見えないという電話の特性を活かした映画だと言えます。
『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』(2017)
不便さがもたらすサスペンス演出
国家が国民を騙していたことを示す機密文書を巡っての壮大な社会派ドラマですが、つまりは「新聞に掲載するかどうか」というシンプルなストーリーなので映像に動きが出にくい。そこで巨匠スティーヴン・スピルバーグ監督の素晴らしい演出が出てくるわけです。それが、電話です。
舞台は1971年なので、電話といえば固定電話&公衆電話。「公衆電話をかけるときに焦ってコインをうまく入れられない!」「受話器のコードが短い!」「電話がかかってこない!「全然電話に出てくれない!」などなど、当時の電話の不便さがもたらすサスペンス性をうまく演出に使っています。
本作では、ニクソン大統領の電話音声がそのまま使用されているという点でも「電話映画」と言えますね。
『セルラー』(2004)
携帯電話あるある
固定電話と公衆電話あるあるをサスペンス演出に使ったのが『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』なら、携帯電話あるあるの傑作は『セルラー』でしょう。「電波が届かない!」「バッテリー切れそう!」など携帯電話を使っていると感じる不都合が映画を盛り立てます。
有線の固定電話と違って、携帯電話での通話は何かの拍子に切れちゃうんじゃないかという心もとない感じもありつつ、通話しながらカーアクションもできる(法的にはダメ!)のでかなりエンタメ向きです。
ブレイク前のクリス・エヴァンスとジェイソン・ステイサムも活躍していますので未見の方はぜひ!
「電話映画」はなくなる?
電話と映画は同時期に生まれましたが、スマホやSkype、FaceTimeなどの登場により両者の関係は転換期を迎えています。ある種の不便さが「電話映画」の面白さでしたが、現在ではコミュニケーションツールが発達しすぎて、不便さがもたらすサスペンス演出は難しくなったと言えるでしょう。
しかし、極限まで聴覚情報に特化した『THE GUILTY/ギルティ』や、発達しすぎたコミュニケーションツールに翻弄される『スマホを落としただけなのに』、FaceTimeなどのあらゆるツールを使って真実を探る『サーチ/seach』といった映画が生まれています。
今後、さらなる新しい発想で電話を演出・ストーリーテリングに活かした映画が登場することに期待しましょう。
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