ストイックに鍛え上げた肉体美…「バレエ男子」を描いた映画5本

腐女子目線で映画をフィーチャーしてみる。

阿刀ゼルダ

バレエ男子、急増中!

バレエは敷居が高い、劇場で観ることは滅多にない、という方も、映画の中でなら意外にバレエを観ていらっしゃるかもしれません。

幼い頃からの厳しい練習に耐え、熾烈な競争を潜り抜けた者だけが、スポットライトを浴びる……そんな厳しいバレエダンサーの世界は、ドラマ性がある上に、とても華やかでスクリーン向き。映画の題材として人気なのも頷けます。

今回は、数あるバレエ関連映画の中でも、男性バレエダンサーにフィーチャーした作品をピックアップしてみました。

ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣』(16)

ダンサー セルゲイ・ポルーニン

まずは、人気のバレエ男子ドキュメンタリー『ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣』から。「バレエ男子」と言っても、このドキュメンタリーの主人公セルゲイ・ポルーニンは、とてもスペシャルな存在! ウクライナから13歳でイギリスのロイヤル・バレエ・スクールに留学、その後、史上最年少の19歳でプリンシパルに昇格したという、輝かしい経歴の持ち主です。その一方で、全身にタトゥーを入れる、インタビューはすっぽかすなど、スキャンダラスな行動の数々で「バレエ界のバッド・ボーイ」の異名を冠されたりも。

そんな唯一無二の存在感を放つセルゲイは、21歳で電撃退団へ。一体セルゲイの中で何が起きていたのか? 本作では、ウクライナでの彼の生い立ち、栄光と反逆のロンドン時代、そしてダンサーとしての新たな可能性を模索し始めた27歳の現在(2016年当時)までを追っています。

ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣

貧しい家計からセルゲイの学費を捻出するため祖母と父親が国外に出稼ぎに出たこと、それがもとで引き起こされた両親の離婚など、天才バレエダンサーを育て上げるためにポルーニン一家が払った壮絶な苦労話のほか、貴重な子供時代の練習風景も。

そしてロイヤル・バレエ団の公演の映像は、息をのむ華やかさ! 観客を熱狂させたセルゲイの美しいジャンプは、素人が見ても場を圧倒するオーラがあります。

くるみ割り人形と秘密の城

なお、セルゲイ・ポルーニンの最新映画出演作は、今年のクリスマス映画『くるみ割り人形と秘密の王国』。ダンスシーンのみの出演のため、お見逃しなく!

ホワイト・クロウ』(18)

ホワイト・クロウ

続いては、セルゲイ・ポルーニンも出演している『ホワイト・クロウ』。今年の東京国際映画祭で最優秀芸術貢献賞を受賞、来年には一般公開が予定されています。

こちらは20世紀を代表するバレエダンサーであるルドルフ・ヌレエフ(1938-1993)の半生を描いた伝記映画。ヌレエフ役には、タタールスタンの国立劇場でプリンシパルを務めるオレグ・イヴェンコを起用。俳優としての演技力は未知数だったにもかかわらず、ヌレエフの天才ゆえの傲慢さと繊細さ、激しい気性、それでいて人を惹きつけて離さない強烈な魅力を、納得の存在感で演じています。

本作で描かれているのは、1961年にヌレエフがソ連からの亡命を果たすまでの彼の前半生。ヌレエフの故郷の町、幼い頃の家族の光景などを心象風景のように散りばめながら彼の原点に迫っていくアプローチは独特で、詩的で美しい映像の中にヌレエフの中に終生消えなかったであろう故国への想いが感じとれます。観終わった後は、ヌレエフを熱く語りたくなること間違いなし!

愛と哀しみのボレロ

ちなみに、ヌレエフの亡命劇は『愛と哀しみのボレロ』(81)に登場するソ連のバレエダンサーの亡命シーンのモデルにもなっています。このダンサーを演じているのは、アルゼンチン出身のバレエダンサーであるジョルジュ・ドン。彼の生命力と躍動感に溢れるパフォーマンスも、見どころです。

バレンチノ』(77)

ヴァレンティノ

さて、ヌレエフと言えば、彼が主演を務めた映画『バレンチノ』はいかがでしょうか? 世界的バレエダンサーが、1920年代にハリウッドのセックスシンボルとして一世を風靡した俳優ルドルフ・ヴァレエンティノ(1895-1926)を演じるということで、話題を呼んだ作品。ケン・ラッセル監督ならではのブラックユーモアをたっぷり含んだ本作には、時代を経ても古びない味わいがあります。

イタリア出身の貧しいダンサーだったヴァレンティノは、その洗練された美貌とダンスの腕前でハリウッド映画界の女性たちを魅了し、彼女たちに引き上げられて人気俳優の座を手に。彼のシンデレラ・ボーイぶりと、芸能界と女性に翻弄された末に、31歳の若さで世を去るという流星のような生涯を送りました。

ヴァレンティノが出演した無声映画が劇中劇として挿入されていたり、撮影シーンがあったりと、当時のハリウッド映画界の活気・華やぎが伝わってくる作り。ケン・ラッセル流のシニカルかつコミカルなトーンに意外にもすんなりと馴染んでいるヌレエフの名演をお楽しみください。

リトル・ダンサー』(00) 

リトル・ダンサー

バレエ界のビッグ・スターを扱った作品の後は、未来のビッグ・スターを目指す少年たちを描いた作品を2本。1本目は、『リトル・ダンサー』。イギリス北部の炭鉱町に父・祖母・兄と暮らす11歳の少年・ビリーが、さまざまな困難を乗り越えて、バレエダンサーを目指す物語です。

この映画の時代背景は1984年、サッチャー政権下で赤字公共事業の整理が始まり、その槍玉に上がった各地の炭鉱では大規模なストライキが始まります。

ビリーの住む炭鉱町も労組と警察とが一触即発の状態。ストが長引き、家計が圧迫されていく中で、親にナイショでバレエを習っていたビリーは、コーチに勧められたロンドンのロイヤル・バレエ・スクールを受けるべく、父親に切り出します。経済的な問題もありますが、「男がバレエなんて」という偏見が強かった時代のこと、父親は聞く耳を持ちません。この時代、男の子がバレエを始める最大の障壁のひとつは、彼らの父親を支配している古い「男らしさ」の物差しだったということがうかがえるシーンです。

しかし、町の人々の「ビリーの夢を叶えてやりたい」という熱い思いに支えられて、ビリーはロンドンへ。古い価値観が急速に壊されていく時代の流れの中で、ビリーは、彼の境遇ではひと昔前ならありえなかった夢への切符を手にします。成長し、晴れてバレエダンサーとなったビリーを演じているのは、本職のバレエダンサーのアダム・クーパー

マシュー・ボーン 白鳥の湖

アダム・クーパーが初代の主役を務めたマシュー・ボーン振付けによる『白鳥の湖』は、『白鳥の湖』を男性同性愛の悲劇にアレンジした、新解釈の『白鳥の湖』。バレエ男子の時代の到来を印象付けた作品です。『マシュー・ボーンの「白鳥の湖」』(11)としてこちらもDVD化されていますので(ただし、DVD版の主演はリチャード・ウィンザー)、ぜひチェックしてみてください。

バレエボーイズ』(14)

バレエ・ボーイズ

最後は、より身近なバレエ男子たちのドキュメンタリー『バレエボーイズ』で締めましょう。こちらは、ノルウェーのオスロでプロのバレエダンサーを目指す三人の少年を追ったドキュメンタリー作品。

中学校に通いながら、平行してバレエスクールで厳しいレッスンを続ける少年たち。仲のいい三人ですが、バレエに対する気持ちには微妙な温度差があります。迷うことなくプロの道を選ぶと言うルーカス、迷い続けるトルゲールとシーヴェルト。やがて、三人はそれぞれの道を選択することに……。

ナレーションを一切入れず、少年たちの生の声だけで進行していく形式。バレエと学校との両立、将来の夢・不安から、女の子のこと、更衣室でのとりとめのないおしゃべりまで、バレエ男子の自然な表情・ありのままの言葉を捉えていて、三人をとても身近に感じさせてくれます。

親友であり、ライバルでもある三人の中には、お互いに対するすこし複雑な感情も。無邪気にふざけ合う姿の中に、微妙に揺れ動く心模様を垣間見た時、とても愛おしく思えてくる。成長していく彼らの姿を、ずっと見守り続けたい気持ちになります。

ロンドンのロイヤル・バレエ・スクールに招かれたルーカスは、すでにロイヤル・バレエ団の舞台に立っているのだとか。

終わりに

麗しのバレエ男子たちの映画、いかがでしたか? これまで、「バレエ男子? う~ん、男のタイツ姿はちょっと……」と敬遠していた人も、上の作品を観れば、きっとバレエ男子を見る目が180度変わるのではないでしょうか? 華やかな舞台、その反面の厳しい練習と競争、そして意外に「男らしさ」が求められる男性バレエダンサーの世界……今年のクリスマス映画には、何かと奥が深いバレエ男子映画を1本加えてみてはいかがでしょうか?

(C)British Broadcasting Corporation and Polunin Ltd. / 2016

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