犬の魅力は“癒し”だけじゃない!超個性的な犬が登場するちょっと変わった犬映画16本

2019.01.11
映画

映画マニアと呼ばないで

夏りょうこ

1月11日は「犬の日」。

最近ペット数では猫が犬を上回ったそうだが、それでも犬の人気は衰えず。犬が主役ということで話題になる映画や、出番は少なくても強烈なオーラを放つ犬もいて、犬好きとしては嬉しい限りである。

家では犬を飼えないから、せめて映画で、かわいい犬たちに癒されたい。そういう方もいるだろう。

今日は「犬の日」にちなんで、犬が登場する映画をご紹介したい。
ただ癒されたいだけなら他の記事を読んでほしい。今回紹介するのは、個性派ばかりが登場する映画。十“犬”十色の世界観を楽しんでほしい。

ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲』(2014)

叫びが聴こえる

ホワイトゴッド

犬たちと一緒に悲しみ、怒り、走り出したくなる。雑種犬に重税をかける法律が制定されたことで捨てられてしまった犬たちが、我慢の限界に達して反乱を起こす。身勝手な人間よ。思い知れ!

ある日突然、可愛がっていた飼い犬と引き離された少女は、必死に行方を捜し続ける。一方、その犬はボロボロになって街をさまよい、出会った人間に裏切られ、虐げられ、挙句の果てに商売道具にさせられてしまう。理不尽な虐待を受けるにつれて、彼の顔つきが変わってゆくのが切ない。

鬱積した感情が爆発し、数百匹の犬たちが狂ったように街を疾走するシーンは、CGではない本物のド迫力。それは恐ろしくも美しく、哀しみをたたえた瞳に胸が詰まる。変わり果てた愛犬と再会した少女がとった行動は、彼らの魂にどう響いたのだろう。神々しいほどの静謐に包まれたラストシーンが、忘れられない。

犬

犬ヶ島』(2018)

ワサビの効いたおとぎ話

犬ケ島

カクカクした動きと、風にそよぐ犬の毛。どこを切り取っても凝りに凝ったアート映像に、一瞬たりとも目が離せない。

犬インフルエンザの蔓延により、離島に隔離されてしまった愛犬を探す少年と、そこに捨てられた犬たちが繰り広げる冒険物語。前回のストップモーションアニメ『ファンタスティック Mr.FOX』(09)は原作モノだったが、この作品は監督の日本愛がぎゅうっと濃縮されたオリジナル。技術的にもかなりヴァージョンアップしていて、前回よりみごたえ抜群だ。

隅から隅まで監督のこだわりと美学がいきわたり、マニアックな作業によって限定された世界を描いているのにスケールがでかい。ただ、視覚に訴えてくる情報が半端なく多いので、ストーリーはもうちょっとシンプルな方がよかったかも。脳がフル回転して処理しきれん。でもそのお陰で、何度観ても楽しめそう。

犬

ほえる犬は噛まない』(2000)

子犬を抱いて走る

ほえる犬

原題は「フランダースの犬」だが、ネロとパトラッシュみたいなのが登場して涙で締めくくられる感動モノだと思ってはいけない。マンモス団地で起きた連続子犬失踪事件。そんなことが!というまさかの展開にゾクゾクする。

真相を追うのは、正義感は強いがヤル気が空回りしている女の子。実は事件を解決して市民栄誉賞を取り、あわよくばテレビに出演したいという野望を抱いている。そんな彼女が追われて走るわ、追いかけて走るわで、たまに鼻血も出したりしてもう大変。サスペンスフルでコミカルという緩急のある演出に、ハラハラし通しだ。

犬を飼ってはいけない団地に響き渡る犬の鳴き声が、なんて不吉な。視聴者に対してあらかじめ「犬は大丈夫」という断りを入れなければならないほどの悲惨な目に遭う犬もいて、そこまでやり切るのが韓国映画である。アニメ「フランダースの犬」主題歌のパンクバージョンが流れるあたりは、なかなかニクイ演出。

フランケンウィニー』(2012)

陽気な死体

フランケン

愛する者よ、生き返れ。しかしそれは、死者からすればなかなか安らかに死なせてくれない残酷な行為でもあり、残された者のエゴでもあり。

科学が得意な少年が、事故死した愛犬を電力で蘇らせることに成功。その犬はフランケンシュタインのようにツギハギだらけになってしまったが、ノーテンキな性格ゆえ自分が死んでいることに気づかない。なので、尻尾を激しく揺らしたり、クルクルと回ってみせたりして、そのご機嫌な様子が微笑ましいホラーだ。

この作品は同名短編映画(84)のリメイクで、監督の幼少期の記憶がモデルになっているという。なので、主人公の孤独なオタク少年が監督自身であることは間違いなく、ブラックユーモアにクスクス笑いながらも胸がきゅんとなるのは、そのせい。もう楽にしてあげて……でも落としどころは、きっちりディズニー。

犬

ドッグ・ショウ!』(2000)

うちの子を見て!

ドッグ

ああもう、人間どもときたら……ドッグショー優勝を目指す愛犬家たちの悲喜こもごも。ペットに対するエキセントリックな溺愛ぶりと、彼ら自身の独特なキャラクターがドキュメンタリータッチで描かれる。

自分たちのセックスを見た愛犬の様子がおかしいとセラピストに相談したり、高齢の資産家を夫に持つ若妻がドッグトレーナーの女性と恋人関係になったり。誰の犬が優勝するのかというよりも、ドッグショーによって彼らの人生がどうなるのかが気になってしまう。

愛犬の外見を飾り立て、うちの子が優勝すると信じて疑わず。その親バカな言動が大マジメだからこそ滑稽で、このコンテストが人間のためにあるのは明らかだ。溺愛と虐待は紙一重。シニカルな視点が嫌味にならないのが、うまいのよねぇ。いろいろな犬種を観ることができる楽しみあり。

わが家の犬は世界一』(2002)

犬を飼うのも金次第

わが家の犬

夜の公園で犬の散歩をしていた人たちが、パトカーが来るなり犬を抱えてわらわらと逃げていく。なんだ? なんだ? 

衛生上の問題から犬の飼育が厳しく取り締まられるようになり、警察へ高額な登録料を支払わなければならなくなった北京市民。未登録のために愛犬を捕らえられてしまった飼い主が、時間制限が迫りくる中、何とかしようと自転車で街を奔走する。

自分の犬が母親犬と似ているということで証明書を借りてみたり(失敗)、大事なへそくりを使おうとしたり(却下)。そんな時、今度は息子が暴力沙汰を起こして慰謝料を請求されてしまって、ああダブルパンチ。同じアジア人として、中国の庶民生活と家族の絆が郷愁を誘い、人情に泣き笑いしてしまう。忘れたものを思い出す映画。

ブルーム・オブ・イエスタディ』(2016)

放り出されて

ブルーム

こんなナチス映画が作られる時代になったのか。歴史をたどれば敵味方という男と女の出会いを通し、際どいブラックユーモアを散りばめながら愛と寛容について描く。

ホロコースト研究という共通の目標があるとはいえ、祖父がナチスの戦犯である男性と、祖母がナチスの犠牲になったという女性の組み合わせは、典型的な対立構造になっているのでミスマッチもいいところ。しかし、お互いにないものを補い合えるという利点はありそう。そんな彼らの行く末は、予定調和的には進まない。

気の毒なのは、二人のぶつかり合いのとばっちりを受ける彼の愛犬パグ。なんと、興奮した彼女によって、走行中の車の窓から外に放り投げられるのである。ひえ~っ。そのケガの治療でほっかむりをしている姿が、可哀そうやらブサイクやら愛おしいやら。そのユニークな存在感から目が離せない。

犬どろぼう完全計画』(2014)

犬が取り持つ縁

犬どろぼう

大人が思っている以上に子供は敏感で、親の心配をしているし、何とかして家計を助けようと思ったりしているものである。

父親が突然行方不明になり、ホームレスになって車中生活を送る母親と幼い娘。そんな時、たまたま犬探しの謝礼金が書かれた張り紙と不動産広告を見て、その金額が同じだと気づいた娘が、家を手に入れたくて犬を捜しはじめる。しかしそれは、子供らしい勘違い。可愛いね。健気だね。

ところが今度は、飼い主の元へ戻ったその犬を誘拐して謝礼金をもらおうだなんて、なんとまあ大胆なことよ。その飼い主は裕福だけど孤独なマダム。犬騒動が縁となって二人は出会い、お互いの境遇を知る。初めてアメリカのベストセラー小説を韓国で実写化。時々挟み込まれるポップな映像が印象的だ。

犬

希望のかなた』(2017)

希望はどこに

希望のかなた

淡々とした表情や行動からにじみ出てくる温かさ。優しさ。饒舌に声高に叫ばなくても、いや、叫ばないからこそ、それは誠実に伝わってくる。

内戦が激化する故郷を追われ、生き別れた妹を捜すためにヘルシンキへと流れ着いたシリア人青年。難民申請を却下され、理不尽な差別や暴力を受ける彼だったが、そんな彼に手を差し伸べてくれる人もちゃんといる。世の中そう捨てたもんじゃない。小さなレストランに灯された希望の光が、それを教えてくれるだろう。

この監督の映画に出演している犬のほとんどは、彼の愛犬だという。この作品に登場する白い犬は、主人公と同じように拾われ、アラビア語を教えられて改宗し、意識が遠のく彼のそばに現れる。この犬が可愛いだけではない役割を与えられているのは確かで、ラストシーンの解釈は人それぞれだろう。ちなみに主人公が山田孝之にソックリ。

犬

パターソン』(2016)

人生は詩に満ちている

パターソン

何も起こらないように思える単調な毎日でも、ささやかな彩りやほんのちょっとした面白さを見出すことはできる。それが出来るのが詩人。それは職業ではなく生き方。

ニュージャージー州パターソンでバスの運転手をしているパターソン。パターソンという言葉が被っているところが、すでに詩のような趣である。彼は毎日規則正しい生活を送りながら、仕事中に目に映る風景や耳にする会話、机の上にあるマッチ箱といった何気ないものに着想を得て、詩をノートにコツコツ書き留めている。

そんな彼には愛する妻とブルドッグがいて、この犬はオスという設定なのだが実は女の子。監督から「とてもよい即興詩人」と絶賛された彼女の存在が、物語にアクセントを与えている。そのキュートなブサかわときたら! 主人公との相棒ぶりを見ているだけで、頬が緩んでしまう。さすがはカンヌ映画祭でパルムドッグ賞受賞。

犬

マイライフ・アズ・ア・ドッグ』(1985)

その犬よりも幸せ

マイライフ

自分の気持ちをわかってもらえない無力で孤独な子供時代。それでも、何とか気を取り直してやっていこうとする少年のいたいけな姿が、共感を呼ぶ。

人類進歩のため、生体実験として人工衛星に乗せられて餓死したライカ犬。その犬より自分の境遇はマシだと思うことで、つらい現実を乗り越えようする少年が主人公だ。というのも彼はかわいそうなほど間の悪い子で、大人から見ると問題児なのだが、本当は母親思いの素直な子。そんな彼は母親の病気療養のため、親戚の家に預けられてしまう。

子の心、親知らず。子供だって、それなりに背負っているものはあるのだ。愛犬としばらく引き離されたけど、その代わりに現れたのは、どこか自分と似ている女の子。ほら、人生捨てたもんじゃないでしょ。つんと尖がった鼻と吊り上った瞳が賢い犬のような子役が、繊細な演技をしてピッタリ。監督の名前を一躍知らしめた名作。

僕のワンダフルライフ』(2017)

姿形は変われども

僕のワンダフルライフ

大の犬好きなら、ハンカチが少なくとも4枚必要だろう。大好きな飼い主に会うため何度も生まれ変わる犬の物語。犬好きの監督らしく、どのエピソードにも犬愛があふれている。

転生するたびに「僕」は犬種が変わり、飼い主も死因もさまざま。しかし、同じ魂を持ち続けている「僕」は愛する飼い主に再会できることを信じながら、それぞれの「犬生」を全うする。一方、その飼い主は少年から中年になっており、人生に疲れている様子。さて、彼にどうやって気づいてもらう?

「僕」が出会ったのは、孤独な警察官だったり無責任すぎる飼い主だったり。「困っている人を助け、あまり悲しみをひきずらず、生きている時間を楽しむ」と悟る姿は、まるで人間のようだ。

犬

アーティスト』(2011)

懐かしくも新しい

アーティスト

クラーク・ゲーブル似の濃いルックスが、モノクロだとちょうどよい。サイレントからトーキーへと映画産業が移り変わる時代に、人気が逆転してしまう男優と女優の恋物語。

この時代に、いや、こんな時代だからこそ作られたモノクロのサイレント映画。名作へのオマージュをあちこちに散りばめながら、より洗練された演出とテンポの良さが心地よい。シンプルな感情表現も新鮮で、何だかいいんだよなあ。これでいいんだよなあ。

彼の飼い犬は、ジャック・ラッセル・テリア・クラブ。「バン!」という音がすると撃たれたフリをする芸の持ち主で、その可愛らしい姿にメロメロ。落ちぶれて一人になってしまった彼に寄り添う忠実な友だ。保護犬でありながら才能を発揮して、カンヌ映画祭でパルムドッグ賞受賞。

犬

犬の生活』(1918)

ここ掘れワンワン!

犬の生活

「犬の生活=惨めな生活」という意味があるそうだが、チャップリンには猫よりも野良犬がよく似合う。だって彼らは社会のはみ出し者。孤独な似た者同士。

食べ物の奪い合いで、大勢の犬に攻撃されていた1匹の犬。たまたま近くにいたチャップリンはその犬を助け出し、路上生活を共にするようになる。モノクロ映画だから柄のある犬にしたそうだが、チャップリンのだぶだぶズボンにすっぽり入る小柄なその犬は、彼の良きパートナーとして大活躍する。

酒場に侵入した無一文のチャップリンが、犬のエサを調達しながら自分も空腹を満たすシーンが愉快で、サイレントならではのパントマイム演技が秀逸。上手くいきそうでいかずにハラハラし、ゲラゲラ笑ってもどこか物悲しい。有名な「山高帽にステッキ、パーマ頭にチョビ髭」というキャラクターが確立されたエポック的作品。

マーリー 世界一おバカな犬が教えてくれたこと』(2008)

犬で予行演習

マーリー

子供の代わりに犬を飼うという話はあれど、子供を持つ自信をつけるために犬を飼うとは。しかしその犬がおバカだったお陰で、彼らは人生について学ぶことになる。

家族になったラブラドール・レトリバーは、いくらしつけようとしても手に負えず。何でも食べたり、すぐ飛びついたり。そんな手のかかるペットがいるにも関わらず、夫婦にはその後子供が3人も出来てさあ大変。育児に疲れ、仕事に疲れ、生活に疲れて夫婦関係は険悪な状態に陥っていく。

愛犬との暮らしだけでなく、結婚生活における悩みや葛藤という普遍的テーマも描かれ、計画通りにいかないのが人生だと改めて教えてくれる。あまりパッとしなかった夫が、飼い犬のエピソードをコラムに書いて成功するなんて、ネタとしてはなかなかいいアイデアかも。おバカでよかった?

犬

マイ・ドッグ・スキップ』(2000)

一緒にいてくれた

マイドッグ

ペットは自分よりも先に老いて死ぬ。それがわかっていても、出会ってしまえば一緒にいられずにはいられない。

1942年ミシシッピー州の田舎町に住む少年は、一人っ子で友人もおらず、内気でイジメられっ子。そんな孤独な日々を一変させたのは、誕生日にやって来たジャック・ラッセル・テリアだった。実話に基づき、愛犬と過ごした豊かな少年時代をノスタルジックに描いた作品で、ダイアン・レインとケビン・ベーコンの夫婦がステキ。

繊細な性格ゆえか、いつも怪訝そうな表情で相手を見つめ、自分の感情をあまり語ろうとはしないそばかす少年。そんな彼の親友は飼い犬だけで、いつも一緒にいてくれる家族でもあった。ご主人様の姿を探し、様子をじっと見つめている犬って可愛いなあ。切ないなあ。子供の頃に犬を飼っていたら泣かされてしまう犬映画の王道。

いかがでしたか?

犬好きにはたまらない作品の数々。

監督が大の犬好きの場合は、犬への愛情がスクリーンからも伝わってくるようだし、保護犬が才能を発揮してパルムドッグ賞を受賞するケースもあり、犬種もバラエティに富んでいてなかなか楽しい。

愛犬と一緒に観てみるのも、いいかもしれない。

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